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リング

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201部分:ラグナロクの光輝その五十五


ラグナロクの光輝その五十五

「物腰といい」
「確かにあれは一介の海賊の首領のものではありません」
 ジークフリートは不思議な気品とカリスマ性を持っていることでも知られている。それは確かに海賊の首領のそれを遥かに越えたものであったのもまた事実であった。
「また首領はその夢で皇帝になることを告げられておられます」
「皇帝に」
「このノルン銀河の」
「新たな帝国の」
「そうです。全ては運命なのです」
 それが彼女達の言葉であった。ジークフリートに対する。
「運命」
「あの方にも私達にも定められた。運命なのですよ」
「あの方はヴァルハラで皇帝になられるのですね」
「そうです、ニーベルングを倒しラグナロクに勝利を収められ」
 パルジファルはワルキューレ達にそう述べた。
「それが私達の運命」
「はい」
 パルジファルはブリュンヒルテにまた頷いた。
「では貴方達はこの戦いの後は」
「それぞれに戻ります。かっての場所に」
「あの五人の方々はですね」
「ですね」
 ヴァルター、タンホイザー、ローエングリン、ジークムント、そしてトリスタンの五人である。彼等は元々帝国においてかなりの地位にあった。よってその本来の居場所に戻るだけなのである。もっともこの戦いの功績により彼等はさらなる栄達を受けることになるであろうが。
「ですが総帥、貴方は」
「私ですか」
「はい、どうなるのでしょうか」
「さて」
 だがそれへの返答は得られなかった。
「どうなるでしょうか」
「何か」
 ブリュンヒルテはその返答になっていない返答に戸惑うしかなかった。これでは何もわかりはしないからだ。彼女とても知らないことは多いのだ。むしろ今ではパルジファルの方が知っていることは多いであろう。
「それでは全くわからないのですが」
「私は元々アースの人間でした」
「はい」
「その中でもとりわけアースの血が濃い。ヴォータンとフリッカの子」
 バルドルは嵐と戦い、魔術の神である隻眼の神ヴォータンとその正妻である女性の守り神フリッカとの間に生まれた子なのである。実はワルキューレ達もまたヴォータンと智の女神エルダの娘達であり六人の戦士達もヴォータンの子孫なのである。実はジークムントの姓であるヴェルズングはヴォータンがヴァルハラから外に出た時に名乗っていた偽名なのである。これを知っている者はごく僅かであるが。他の者達も実はその祖先にヴォータンがいるのである。ジークフリートにしろローエングリンにしろ。そうした意味で彼等は同じなのである。英雄として、戦士として。
「本来はこのヴァルハラから出るべきではなかった」
「しかしノルンに出て」
「全てを知りました」
 そしてこう言った。
「同時に全てを思い出しました」
「アース族としても」
「私は考えているのです」
「何を」
「もう私達は必要とされていないのではないかと」
「まさか」
 流石にパルジファルもそれはまさかと思った。だが。
「いえ。あの六人の戦士達は確かに私達の血を引いていますがそれ以上に人間です」
「人間」
「限られた時間を生き無限の輪廻の中を旅する」
 その言葉は果てしなく広大で長大なものであった。
 
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