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真田十勇士

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巻ノ百二十二 集まる豪傑達その五

「その者達じゃ、土佐に流していた毛利殿も抜け出られておるな」
「はい、そうしてです」
「あの御仁はもう大坂に入られています」
「その他にも大谷刑部殿のご子息や仙石殿石川殿にです」
「加藤孫六殿の家から塙駄右衛門殿も入られています」
「そして切支丹の明石殿もです」
「細川殿のご次男殿もお父上の制止を振り切って入られています」
 細川忠興の子までというのだ。
「剣豪では宮本武蔵という者が入ったとか」
「そしてです」
「九度山でも」
「そうであろう」
 九度山と聞いてだ、板倉は静かに述べた。
「あの御仁はな」
「大坂ですか」
「あちらに行かれる」
「そうなりますか」
「幕府につく御仁ではない」
 それはないとだ、板倉ははっきりと言い切った。
「そうした巡り合わせの方ではないからな」
「だからですな」
「あの方は大坂に入られ」
「幕府に槍を向ける」
「そうされますか」
「惜しいがのう」
 板倉は今度は瞑目し無念そうに述べた。
「長曾我部殿もあの御仁も」
「幕府方で戦えば必ず武勲を挙げられ」
「大名に返り咲くことになりましたが」
「後藤殿にしましても」
「そうなっていましたが」
「大坂についた、そして間違いなく」
 彼等はというのだ。
「見事な武勲を挙げられてな」
「名を残される」
「そうされますな」
「そうなる、しかし生きられるか」
 名を残そうとも、というのだ。
「それはな」
「出来ぬ」
「大坂は敗れるが故に」
「それは難しいですか」
「散るのも武士の道やも知れぬが」
 それでもと言うのだった。
「どうにもな」
「悲しいですな」
「このことは」
「どうしても」
「真田殿程の御仁なら」
 長曾我部、後藤もその中に入る。
「幕府に従い戦えば」
「武勲を挙げられ」
「見事大名に返り咲かれる」
「毛利殿にしても」
「そうなりますな」
「明石殿もじゃ」
 彼もというのだ。
「宇喜多家では三万三千石の大名であった」
「ならばですな」
「切支丹でなく」
「そのうえで武勲を挙げられれば」
「それで、ですな」
「大名に戻れたわ」
 そうなったというのだ。
「どの御仁もな、しかしな」
「どの方も幕府とは縁が悪く」
「それで、ですな」
「大坂につき戦う」
「そうされますな」
「敵ならば戦いじゃ」
 そしてというのだ。
「討たねばならぬ」
「そうなりますな」
「真田殿にしても他の方々にしても」
「どうしても」
「そうじゃ」
 その通りだというのだ。
「何としてもな、それが残念じゃ」
「天下の豪傑達を討たねばならぬ」
「そのことは」
「大御所様も同じお思いであろう、しかしそれも戦」
 幾らそれを無念に思ってもというのだ。 
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