ソードアート・オンライン〜Another story〜
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マザーズ・ロザリオ編
第250話 太陽の名を持つ少女
前書き
~一言~
うぅ…… 少しだけ早く投稿出来ましたが、またちょっと短いですぅ……。へ、平均1万字をきらない様にしなくてわ!!
そして ここからがマザロザ編の核心部……デスヨネー。 原作でも BOSSってどこかおまけっぽくて、寧ろそこから先が凄く重くて悲しくて、それでいて ほんわか ほのぼの としてて……ですからネ。
なので、凄く難しいです! 悲しい系って何処か苦手なので。
で、でも 私 じーくw は あくまで ハッピーエンド派なのです! りゅ、リュウキ君も帰ってきてくれましたし……、ランさんも復活出来てますし!? ユウキはぜ~~ったい生存、って書いちゃってますし!
はぁ…… ど、どうしようかなぁ、ここから先…… (悩)
と、愚痴はこの辺りにしておきまして……いつも通り お礼を!
この二次小説を読んでくださってありがとうございます! 今後も少しずつ頑張っていこうと思いますので、これからもよろしくお願いします!!
じーくw
黒鉄宮。
つまり、黒鉄の宮殿の略で名付けたであろうその空間。
そう改めて名を訊けば 何処となく『暗い場所』と言うイメージがついて回る事が多いだろう。事実、この場所は鮮やかとも言える黒水晶石の床タイルが一面に敷かれ、外壁も全てが黒一択。更にはその中央に鎮座している鉄碑は静謐さをひときわ演出している。それらを総合して 他の施設に比べたら圧倒的に暗いのだ。
そんな空間だったのだが、リュウキが『このタイミング』と言った途端に、姿を変えた。
目も眩む……とまではいかないが、光が満ちてきたのだ。
或いは、明るい陽射しがこの宮殿内部を全て照らしてくれているとでも言えばよいだろうか。
「うわぁぁ……」
「すごい………」
暖かな光が全身を包んでくれるこの一瞬。ユウキとランは その光の輝きにも負けない程、目を輝かせていた。
「こんなことが……」
「凄い……」
「うん………」
他の皆も みな唖然としていたのだが、直ぐに笑顔になっていた。
密閉空間と言う訳でもないから外の光は必ず差す様になっているのだが、ここまでの光に包まれる事は、ここに幾度となく足を運んできたアスナやレイナにとっても今までに無かった事だ。
「リュウキくん……、これって一体……」
直ぐ隣にいたレイナは そっとリュウキに訊いた。
実は ここだけの話、レイナは いつもとても頼りになる(なり過ぎるところがある??)リュウキにあまり頼り過ぎないように少しくらいは自分も! とちょっぴり自分を戒めようとしていたりもしていた。だから、この現象も自分で考えようと頑張ったのだが、どうしても 言葉が出てこなく、考えもまとまらなかったからすぐに白旗をあげてしまったのだ。
因みにレイナが そう思っちゃったのは、リズが言い出した事が切っ掛けである。
『有能過ぎるリュウキに頼ってばっかじゃ ダメダメになっちゃうかもよ~? 旦那さんを支えるどころかちょー依存しちゃったりしたら目も当てられなくなるわよ~??』
と面白おかしく言い出した。
ここ仮想世界では言わずもがなであり、それどころか現実世界においても最強……。レイナの得意分野であったはずの勉強面でも 引けを取らない様になり……相応の実力を発揮しているリュウキ。正直誰の目から見ても『お前は完全無欠か!』と叫びたくなるものだ。
と言うより、がーーッ! と叫んだのはリズだ。(絶対リズ以外にも思ってる筈だけど)
本当に仕様がない事だ、と言う事は改めて言っておこう。
そんなリュウキはと言うと、何処となく穏やかな表情をしていた。その表情にもレイナは気になったのだが、今はこの光について教えてもらいたかった方が強かった。
「……ああ。今この新生アインクラッドは シルフ領土。大体ルグルー回廊の付近を浮遊している」
「えっと…… そう、だったの??」
「ああ。空を飛んだ時 大体位置を把握したよ」
新生アインクラッドは、浮遊城。つまり当然空に浮かんでおり、各領土を周回している。
其々の種族の領土内からあまり離れられないプレイヤーの為の措置であり、その名前の通りに演出する為と言う理由もあったりするが、とりあえず一カ所には留まったりはしていないのだ。
でも、普通は地上から空を見上げる事で新生アインクラッドの位置を把握するものなのだけど…… どうやらリュウキは 空からでも大体の位置を把握したみたいだ。ここから見える地平線の先に見える地形とか、空気の流れ? とか身体全体で感じ取っているとでも言うのだろうか……? この場にリズやクライン、……キリトとかがいれば、盛大なツッコミを受けそうな気がするのだが、その辺りはスルーしよう。
「このアインクラッド位置と時間帯。それらの条件が合わさってこの景色を作り出しているんだ。そこの天窓から照らされる日光がこの鏡の様な床タイルや壁に当たって上手く反射を繰り返して、『光の部屋』を形成しているみたい、なんでな。……黒鉄宮、と言う名はこの時は改めた方が良いかもしれないな……」
リュウキも光に手を伸ばしながらそう言っていた。
包まれている感覚がする。……普通ここまで光が集中してくると眩しくて目も開けにくいと思ってしまうし、光熱だって凄いものになりそう、と思ってしまうのだが、不思議とそんな不快感は一切無かった。
「……凄く綺麗ね。それに流石リュウキ君。こんな情報、私訊いた事無かったよ」
「まぁ、オレも知ったのはつい最近だ。……アルゴの情報でな。『光の宮殿ニなるカラ 見に行コウ!』とか何とか言ってきてさ」
アスナにそう説明すると、レイナがそれを決して聞き逃さず リュウキにぐっ と近づいた。肩をきゅっ と握って。
「……それで、アルゴさんと一緒に来たの……? ここに……?」
「ん? いや。丁度皆との約束だってあった時だったから。……ほら、森で囲まれた22層で新たに解放された森林浴するのに更に最適な場所にピクニックに行こうってあっただろ?」
頬をやや膨らませ、ちくちくとプレッシャーが突き刺さると思うが当然 暖簾に腕押しである。
でも、レイナにとっては嬉しい解答だったから、直ぐに笑顔になった。
「……あっ、あったね! うん、覚えてるっ!」
「キリトくんやユイちゃんも含めて家族水入らずで行った場所、だね。家からはちょっと離れてたけど、凄く素敵な場所だったっけ。……成る程。あの時なんだかリュウキ君、渋い顔してたから少し気になってたんだけど、そんな事があったんだ」
「まぁ、な……。アルゴには色々と大変な目に合されてるし、全然悪意がない状態ででも巻き込まれるところがあるから、更に厄介なんだ……。読みようがないから」
リュウキに嫌われる事を何よりも嫌がるアルゴだから、そんな喧嘩を売る様な真似は絶対にしない。……が、持ち前の情報力を駆使して、リュウキが好みそうな情報をリークし、本人は絶対に好意的に情報を…… と言う事が多いのだけれど、結果として色々あったりするのが多すぎるのがアルゴの情報なのだ。
『ハート型の剣』の一件だって、そもそもの情報源はアルゴだからだった。
「ん……」
アルゴの話はとりあえず終わらせた リュウキは、ゆっくりとスリーピングナイツの皆の方へと歩み寄った。実を言うとリュウキにとっての本題は ここから先だったから。
「……これが オレには ただの偶然とはどうしても思えないんだ。この光景が生み出されるタイミング。……結構シビアだから。だって、オレ達。……オレの仲間達がここに来た時には一度もなかったから。……ただの一度だって…… なかったから」
ユウキとランが、その言葉を訊いてゆっくりと振り返る。
笑顔だった。……本当に笑顔だった。ユウキに言ったっては、まるではしゃいでる子犬のよう。猫妖精族にしかない尻尾が見える様だ。
ランもユウキに比べたら凄く大人しいと言えるが、それでも笑顔だけは輝いて見えていた。
そんな2人を、いや スリーピングナイツの皆を見ながら、リュウキは続けた。
そして 次のリュウキの言葉が―――――再びこの場所に静寂を生む。
「……そう、だな。まるで、誰かが 皆を祝福している様に見えた。…………オレには、視えてならないんだ。皆の事を……」
光に包まれた時以前にも、賑やかの代名詞である、と言える皆と一緒にいた事もあったし、それに加えて光の宮殿が出来た事に感動し、一際静寂に包まれていた黒鉄宮が賑やかになった。
そんな空間だったのに、リュウキの声が透き通って皆の脳にまで届いてきた。
リュウキは光に両の手を差し出す様に 前に出し掌を上に向けた。
「日の光――って、凄く気持ちいいよな。これは光の反射なんだけど、全く変わらないよ。………ただ、暖かいだけじゃない。何だか包んでくれている様に感じる。……ここの光は、現実のものと全く変わらないってオレは思う。とても 優しい光」
光を全身に浴び、全身で感じながらリュウキは眼を閉じる。
「暖かい光―――。……いや、太陽と言うべき、かな」
『!!!』
その言葉は 無意識にずっと、避けていたワードだったかもしれない。
光や暖かさと言った、それに連想させるようには何度か言い続けていたのだが、ここで初めて その言葉を口にしたのだと、皆が意識した。
そう――《太陽》と。
リュウキは 今度は眼をはっきりと開いて皆の方をみて 訊いた。
「……すまない。1つで良いんだ。教えてくれないか。 皆は、……皆は 彼女を……知っているのか?」
「え………っ。か、かの……じょ?」
一番前にいたのはユウキだった。
太陽の言葉を訊いた時、そして リュウキが《彼女》と言った時。
ユウキにもようやくたどり着く事が出来た。
どうして、姉のランがあそこまでリュウキの事が気になっていたのか。……今まで見せた事のないような違う種類の笑顔を彼に見せるのか。
どうして、リュウキの傍にいると、自分自身も心が安らぐのか。
勿論、ユウキは アスナやレイナの事も大好きだ。
ここまで自分達の為に力を貸してくれて、更には悲願だったBOSS攻略も出来たのだから。
だけど、リュウキのそれは何処か違う感覚がしたんだ。
勿論、白馬の王子様の様にあの時格好良く助けてくれたから、と言う訳ではない。いや、全くないと言う訳ではないが、何処か本質的に違うところがあったんだ。
だけどどういえばいいのかが判らなかった。
あえて言うならば、何だか懐かしささえ感じた。今までにあった人達、プレイヤー達とは全く違う感じなのに、心の深奥は 彼を知っていた様な気持ちにもさせてしまった。
元々深く考える事を苦手とするユウキは、『そう言う事だってあるよねー』と軽い気持ちで済ませていたんだが、今判ったんだ。
―――リュウキとあった事がある訳ではない。彼の事を話す人が……、話してくれる彼女がいたから。
そして、リュウキは更につづけた。
その顔は、視線は 誰も見ていなかった。
ただただ、光の中を見続けていた。
「太陽が何よりも好き。………彼女はそうだったよ。そう言えば部屋から殆ど出なかったオレを、結構強引に外に連れ出して……色々教えてくれた事もあったよ。……籠りっぱなしのオレに外に引っ張り出した人は、彼女が初めてかもしれない、な」
光の中に手を伸ばした。
それは、この自分自身の物語の、……全ての始まりだったんだと思う。
彼女と出会い、……別れて。SAOの世界に囚われ、運命の人と出会った。
彼女の事は自分にとっては特別な存在だと言う事は今も判っている。
だからこそ、もしも……傍に彼女がいるのであれば、色々と礼を言いたい。とリュウキは思っていた。
そして、自分自身のエゴかもしれないけれど、……好きになると言う気持ちを理解する事が出来たから、それをする事で嫌がられるかもしれない、と思うけれど、それでも リュウキは運命の人を、……愛する人を、結城 玲奈を紹介したい。
『リュウキは負けちゃダメだから。絶対、負けちゃ駄目だから』
彼女はそう言ってくれた事があった。
そして、負けそうになっていた自分を救ってくれたのも、きっと玲奈だ。
そんな玲奈を紹介する時、どんな表情をするだろうか。あの幼き頃 きっと自分自身は彼女の事が好きだったんだと思う。その気持ちをはっきりと理解しているとは思わないけれど、きっとそうだったんだと思う。
彼女もそうだったのだろうか。……もし、そんな中で 玲奈を紹介したりしたら、頬を膨らませて怒るかもしれない。それこそ玲奈の様に。
だって、思い返してみると 彼女は玲奈と何処となく似ているところがあったから。
だから、リュウキはもう一度 この世界で彼女の名を呼ぶ。
もう一度会って、話をしたいから。
「《サニー》と言う名の少女の事。……太陽の名を持つ彼女の事を、皆は知っている……のか?」
黒鉄宮に光に満ちた。
こんな光景、アスナとレイナは初めてだった。
この新生アインクラッドが実装されて、皆でBOSS攻略をした後に何度かここに訪れた事があった。アスナもレイナも何度かパーティーリーダーを引き受けた事があって、この剣士の碑には自分達の名前が少なからず載っている。だから ちょっぴりスリーピングナイツの皆には 何だか申し訳ないって 戦いの後も少なからず思ってしまったけれど、それでも ここに来る事で皆の悲しそうな顔が笑顔に戻ってくれると思っていた。仮に皆がそれを見たとしても。
『わーー! アスナとレイナもあるよーーっ!』
『凄いですっっ!』
『うわっ! ほんとだ! おおっっ!! リュウキのだってあるじゃん!』
『すごーーいっ! あ、キリトって名前もっ! あの助けてくれた人だよねー??』
『『『わいわいわい!!!』』』
と、目を輝かせながら大盛り上がりを見せるだろうとも想像がつく。
そうなったらそうなったで、凄く恥ずかしい事になりそうだとも思う。でも一貫して言えるのは 笑顔に戻ると言う事を確信できた事だった。
そして、更に黒い宮殿を光の宮殿へと変える自分達も知らなかった大サプライズ。
やっぱりリュウキは頼りになると同時に、改めて 知識の宝庫だと言われている事実を目の当たりにして何度でも驚く。レイナも、勿論アスナも 本当に誇らしく、それでいて憧れの視線を送っていた。
送っていたからこそ、そんなリュウキの顔が、表情がいつもと違っていた事に気付く事が出来たんだ。
スリーピングナイツの皆に問いかけるリュウキ。そして 太陽の名を持つ少女 サニーの話。
レイナは勿論知っている。アスナは少しだけだが訊いた事があった。
それは過去に失ってしまった大切な人の話。
リュウキが他人を信じる事が出来なくなってしまった事件の事。
そして、全てが繋がった現代。凶悪とも言える須郷と狭山の企みにより再び戻ってきた時の事。
知っているからこそ、どうして今 その話をするのだろうか、と強い疑問も生まれていた。
何故ならユウキやラン、彼女達が知る筈がない、と思っていたからだ。
だって――サニーは10年以上も前に……。
混乱しかけたその時だった。
「ど、どう……して? どう、して…… りゅ、りゅう……きが、……さ、さに……っっっ」
大粒の涙が ユウキの目から零れ落ちた。口許を抑えて涙を流し続ける。
何度も何度も瞬いては、その目から涙が零れ落ちる。それはまるで留まる事を知らなかった。
「ぁ……ぁぁ…………っ」
いつもユウキの事を気にかけてくれているラン。
そんな彼女にも今は何も言えなかった。ただただ、立ち尽くしたままで ユウキと同じ様に涙を流していた。一筋に流れる涙は やがてランの頬から零れ落ち、その滴を宙に舞わせた。
『こんにちはー。今日は天気が良くて、とっても気分が良いですねー』
彼女の声が、ユウキとランの脳裏に、いや耳元に伝わってくる。
そう、あの場所もこんな感じだった。太陽の光でいっぱいだった。
『ここ――わたしのお気に入りの場所なんですよ。お天道様が顔を出して、包んでくれて、とっても気持ちいいんです。あなた達もどうですか?』
視界がぼやけて 輪郭が崩れて―――彼女の顔が目に浮かぶ。
『……お別れ……じゃないですよ。また、またきっと会えます。また、会えたその時に 沢山の思い出、聞かせてください』
最後に言葉を交わしたのはいつの時だっただろうか。
本当に時間を忘れて楽しんだあの時の事は今でも覚えている。そして――最後のその時は 時間が止まった様に感じた。
皆は 会える状態じゃなかったのに、彼女と最初で最後の対面をする時に、皆が駆けつけてくれた。
ベッドで眠っている彼女を見た。透き通ってる様な白い肌。本当に、ただ……眠っているだけの様に見えた。
私達が来た事に気付いた彼女は、ゆっくりと眼を開いたんだ。それで 微笑んで『お別れじゃない』って言っていた。
『また、会えます』
最後のその瞬間まで、彼女は笑っていた。微笑みを浮かべたまま――目を閉じたんだ。
丁度、太陽が沈み……夜になったその時に。
リュウキが言っているサニーと言うのが、自分たちが知っている彼女であると決まった訳ではない。ただ、同じ名前を付けただけかもしれない。
その人も、太陽が好きだっただけかもしれない。
つまり、確信なんてない。決まった訳ではない。だけど――――――。
「み、みんな?」
「どう……したの?」
スリーピングナイツ全員の顔から笑顔が消えてしまっていた。ユウキやランの涙と一緒に 他の皆の笑顔を流してしまった様に思えた。
シウネーも、……あの勝気なノリでさえも この時は眼に光るものがあった。男性陣、ジュン、テッチ、タルケン。その3人も 何も言えず ただただ顔を俯かせるだけだった。
「皆…… 知っているんだな。彼女は、サニー。……現実での 名は……」
リュウキが最後まで言う事はなかった。
「ご、ごめん、なさい…… わ、わたし……、わたし………っ」
光の粒子状となって まずランが消えてしまった。
何か操作をした訳でもないと言うのに消えてしまった。
ランがいたその場所には 小さく【DISCONNECTION】という文字列が浮かび上がっていた。
それが引き金……だったのだろう。ユウキも同じ様に光の粒子となってしまった。
残った皆も次々と消えてしまう。まるで悪夢を見ている様な光景、だった。
「え……え、み、みんな……っ」
「どう、して……?」
思わず駆け寄るレイナとアスナ。
そして その場所に 残ったのはシウネーただ1人だった。
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