ソードアート・オンライン〜Another story〜
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マザーズ・ロザリオ編
第249話 剣士の碑
前書き
~一言~
……毎話言っててすみませんん…… ほんと凄く遅れてしまって……。その上 今回の話 いつもより短いです……。 これ以上遅れてお待たせしちゃうのがほんと忍びなくって……。ちょっとだけ区切りが良かったので切りました。
色々と忙しくて 忙しくてと言い訳だけさせてくださいーーーっっ!! すみませんっっ!
次話からは ガンバリマスので…… 涙
最後に、この小説を見てくださって本当にありがとうございます。これからも頑張ります!
じーくw
本当に重い沈黙の中だった。一瞬にして あの穏やかで賑やかな空気が重くなってしまったんだ。
自分達が悪かったというのは重々承知していたアスナとレイナだったのだが、最後にもう一度だけ 頼んでいた。
――少しの間だけで良いから。解散までで良いから、と。
だけど、答えは変わらなかった。
ただただ ランは申し訳なさそうに表情を落としていた。――いや、その中には申し訳なさよりも、何処か深い悲しみもある様にも見えた。
そして あれだけ元気だった、いや元気と言う言葉そのものと言って良く、誰よりもそれが似合うユウキもランと同じ様に表情が変わっていた。
スリーピングナイツの皆が アスナやレイナ、そしてリュウキの視線から逃れれる様にもしていた。いつも穏やかで落ち着いていて、優しい目をしてたランが。話す時、話を訊く時 常に相手の目をずっと見て話していたユウキが、視線を逸らせていたのだ。共通すると言っていい2人のキラキラと輝くいている様な色の瞳。それらは 今は暗く淀んでいる様にもみえた。
先程までの陽気さが嘘の様だった。
重い空気、そして沈黙の中で微かに聴こえてくるのは『ごめんなさい』と『ごめんね』の謝罪の言葉だけだった。
これ以上踏み込んではいけない、と言うよりもアスナもレイナも、そして勿論リュウキもこれ以上辛そうに謝り続ける2人を、そして 笑顔が消えてしまったスリーピングナイツの皆を見たくなかったから、慌てて手を振った。
「ご、ごめんなさい! そんな、皆を困らせるつもりは無かったんだ……。その……ごめんなさい」
まずはレイナが慌てて謝罪する。謝罪をしているのはユウキ達だったから、謝罪に謝罪で返すのは正直終わらないかもしれない、ずっと互いに謝り続けてしまうかもしれない。
それでも、謝らずにはいられなかった。
「私も……同じ。無理なお願いしてごめんね。皆」
「いえ、そんな……。私たちの方こそ……私は、わたしたち、は……」
もう何も言えないユウキに代わり、リーダーである事を果たそうと懸命に言葉を出そうとしていえるラン。だが、その試みは露と消えてしまう。
何故なら、踏み込まれたくない先がある事を良く知っているリュウキも一歩前に出たから。その姿を、言葉を訊いて ランはもう何も言えなくなってしまうのだ。
「……悪かった。オレが言い出した事だ。……皆の分も詫びる。踏み込むには、……安易過ぎだった」
時間にしてみれば昨日今日の付き合い。信頼関係は時間ではないと言うのはあるが、それでも 自分達とスリーピングナイツとの繋がりはまだ大きいと言えないかもしれない。段階と言うものがある。
リュウキ自身も ずっと踏み込まれたくなかった領域はあった。それらは レイナの沢山の努力のおかげで徐々に堅牢だった壁をなくしてくれたんだ。どれ程のモノを抱えているのかは判らないけれど、生半可なものだとは到底思えなかった。その大きさは、皆の顔に現れているのだから。
「っ…… りゅ、、りゅ……き、さ……」
ランは何度も何度も口許を動かそうとするのだが、どうしても 言い出す事が出来なかった。
――本当は言いたい。だけど言えない。どうしても、言えない。ランは矛盾を抱えて続けて、苦悩と葛藤を続けていた。
「……」
ユウキ自身は 何も言えず ただただ表情を落とし きゅっ とランの服の裾を握りしめた。
今は、この話題から離れるのが先決だ、と判断したのはアスナ。最も最適でいて楽しい話題であり、皆が心待ちにしているであろう事を思い返し、口にする。
「皆! ちょっと暗くしちゃってほんとにごめんね。ほら 景気づけに アレ、見に行こう!」
「あっ、そうだね! ……えへへへ 私、ちょっと忘れちゃってたねー……」
暗くなった雰囲気を変えようと アスナもレイナも今できる精一杯の笑顔で言っていた。レイナは ちらりとリュウキの方を見て片目をぱちんっ と閉じてウインク。それを見たリュウキはゆっくりと頷いて笑顔を見せた。
「ははは……そんな事だろうと思ってたよ。レイナにはそういうトコ、あるよな?」
「むーっ! リューキくんも、覚えてたんなら教えてくれたって良いじゃんっ」
リュウキの胸元をポカポカと叩くレイナ。
その穏やかで朗らかな空気は、強張った今の空気をゆっくりと解してくれた様だ。
「え、えと…… アレってなんだっけ??」
「ほらっ、ユウキさんだって忘れてるから、別に変な事じゃないよーっ」
「いやいや、2人って似てるトコあるんじゃないか? なぁ アスナ。それにランも」
比較的近くにいたから、と言う理由で ランとアスナを選んで聞いてみるリュウキ。
「あ………」
ランの表情も ゆっくりだが緩める事が出来た様だ。
ここでもう一押し、と言わんばかりにアスナが真っ先に回答した。
「うんうんっ ちょ~~っと抜けてる所があったりするトコかな?」
「わっ! お姉ちゃんっヒドイっ!」
「そーだよーっ ボク 抜けてなんかないってっ!」
変わっていくのを感じたランはゆっくりと笑った。
「そう、ですね。んー でも、ユウは落ち着きない所が大きく占めてますし、レイナさんの方がしっかりしてる、って思いますよ? 率直な感想です」
「あ、それは私も思いますね」
ランだけでなく、シウネーも同調した様子。ここがチャンス、と言わんばかりに他のメンバーもどんどん乗っかっていく。
「だよなー。それはそうだ。猪突猛進な感じはレイナには無いって思うよ?」
「ユウキは あたしらがいないと どこ行っちゃうか判らないしなぁー」
「前にもありましたよね? 『道に迷っちゃったー』ってメッセージも何度か届いたと記憶してますし」
「そうそう。それで皆で探し回った事もありましたよね。当時のMAPのシステムでは細かな位置がはっきり判らなくて大変でした」
それを訊いて、凄く恥ずかしい記憶が蘇ってきたのか ユウキの顔がどんどん赤くなっていっていた。
「も、もーーーっ なにさー! 皆してヒドイよぉー!」
両手をぶんぶんと振るユウキの姿を見て、リュウキがぼそりと一言。
「……こういう所が一番似てるのかも、な」
「えっ? どういう事??」
傍にいたレイナがくるりとリュウキの方を見た。
リュウキは流石に皆に聞かれるのは恥ずかしいので、こっそりとレイナに伝えた。
「………ほら 凄く可愛いって言葉が似合うトコ、かな」
「っっ//// も、もーーっ リューキくんっっ!」
レイナもユウキの様にぶんぶんと拳を振るう。
そんな2人の姿を見たらもう笑うしかないだろう。暫く皆笑った後に 約束の場所へ 目的の場所へと向かうのだった。
~ 新生アインクラッド はじまりの街 中央広場~
この場所に来るのは随分と久しぶりに感じる。
ここは新生アインクラッドが実装されて最初に訪れる場所であり、現在は もう直ぐ30台に登ろうかと言う所まで開通されているから当たり前と言えばそうだと言えるが。登れば登る程 難易度が上がり 攻略に時間が掛かってしまうから。
そして 何より 22層での時間を重点的においてきた、と言うのが最大の理由だったかもしれない。
「やっぱり ここは広いなぁ……」
「うん。新生アインクラッドで一番の広さだからねー」
このALOの上空高く飛ぶ浮遊城の世界の広さを改めて堪能した後、その隣にいたリュウキは指をさした。
「……今は絶好のタイミングだ。皆 行こう」
絶好のタイミング…… と言うリュウキ。それに最初に疑問を持って口にしたのがユウキだった。
「え? どういう事?? ここって時間的なイベントってあるんだっけ??」
ユウキ達は この世界にまだまだ来て日も浅いが、それでも第1層のはじまりの街は何度も訪れている。……勿論 最大の目的でもある《黒鉄宮》にも何度も足を運んでいる。自分達の証を刻む為に頑張ってきたから。
だけど、イベントの類は今まであった事が無かったから疑問に思った様だ。
「はじまりの街はとても広く、イベントの数も凄く多かったと思いますが…… ここで何かあるのは私も知りませんでしたね」
気になったのはユウキだけでなく、ランも同じだった。
そして色々と話していく内に 皆の視線がリュウキに集まる。
「んー…… お姉ちゃん。ここで何かあったっけ??」
「うーん…… 判らない、かなぁ。私も」
間違いなくベテランであるアスナやレイナも知らない情報に当然更に視線が集まり、やがてちょっとした期待にもつながっていった。
それを見て、感じたリュウキはニコリと笑った。
「……行ってみてからのお楽しみだ」
その一言に少なからず 主にジュンからブーイングが飛ぶ。『もったいぶってないで教えろーっ!』と言えば、ノリがそれに乗っかって『そーだそーだ~!』と煽る。ユウキも『教えてよーっ!』と。
だが、目的地は本当に目と鼻の先。巨大な王宮に背を向けて 無数に存在する花壇の間を縫うように進むと、直ぐ前方に四角い《黒鉄宮》が見える。
今まさにすぐそばにいるんだ。
「もったいぶって悪いとは思うが……ほら、本当に直ぐ傍だぞ?」
指をさした先にははっきりと見える黒鉄宮。
「よーし! 皆突撃だよー! リュウキにしっかりと期待しよーうっ!」
リュウキに訊くのを止めて 足早に進むユウキ。そしてみんながそれに続いた。
黒鉄宮の高いメインゲートを潜り、建物の中に踏み込む。独特なひんやりとした空気が肌を撫でたのを感じた所で、レイナがそっと聞いた。
「ねぇ、リュウキ君。……ここってイベントの類は無かったって思うんだけど…… ほんとに何かあるのかな?」
「……もう直ぐだ。少しだけ早かったみたいだが、もう少し。……もう少しだ」
レイナはリュウキの言葉を訊いて、それ以上は何も聞かなかった。
当初は、あの時の空気を、暗く沈んだ空気を更に忘れさせるために、ちょっと言い方は悪いかもしれないけど、ウソの情報を言ったのではないか? と少なからず思ったりしていた。
そして ここに到着して、目的のものを見て…… 『皆と一緒に刻む事が出来た。それが何よりだという事』と言うのでは? とも思った。
だけど、リュウキの顔を見て レイナはどちらも違うという事が判った。
―――何かがあるんだ。
そう確信する事が出来た。
そして、ここ黒鉄宮の最奥、大広間に入る。ひときわ静謐な雰囲気に包まれた空間。その奥には巨大な横長の鉄碑が鎮座している。
最初こそはリュウキの言葉が頭の中に残っていたのだが、それを見た途端に忘却させた。
「っ あれか!」
ジュンとノリが アスナとレイナの間を抜けて走っていく。 それに続いてシウネーが、タルケンが、テッチが、走ってゆき 皆に続く形で アスナ、レイナ、ラン、ユウキ、リュウキが続いた。
そこにあるのは まるで自分達の事を待っていたかの様に 静かに鎮座している《剣士の碑》があった。
恐る恐ると言った様子で、視線を左から右へと動かしていく。それぞれのパーティが攻略をした証が刻まれていた。やがて一番の先頭。黒光する鉄碑のほぼ中央に全員の視線が集まった。
【Braves of 27th floor】
その一文の下に………アルファベットで10人の名前が深々と刻み込まれていた。
「……ボクたちの、名前………名前だ」
「うん。……うんっ……」
どこか呆然としていたユウキのつぶやきを訊いて、ランが頷きながらそっとユウキの手を握りしめる。その瞳がかすかに潤んでいるのを横目ではっきりと見たアスナとレイナ。胸が詰まる気がした。こみ上げてくるものがあったがが、どうにか押し留めて笑顔を作る事が出来た。何処かこういう事に弱いレイナは貰い泣きをする寸前の所で リュウキの肩に頭を預ける事でどうにか堪えた。
「おーい! 皆で写真とるぞー!」
そんな時にジュンの声が後ろから響いてきた。
この時の為に準備していた《スクリーンショット撮影クリスタル》だった。
「ほら、ユウキ。ランも」
「笑って! とびっきりのの笑顔をね? あの時 BOSSを倒した時にも負けない笑顔を、ね?」
ユウキとランの2人を挟む様に左右にアスナとレイナが立った。
「……やっぱり少しだけ固くなる、かな」
みんなで取る写真。勿論リュウキとて初めてという訳ではない。過去のアインクラッドのリズの武具店での写真撮影があり、それなりに皆との思い出を重ねる事に撮ってきていたんだが……、少しばかり固さが取れなかったりする様だ。
「ふふふっ リュウキさん」
ひょこっ とリュウキを見る様に顔を出したのはラン。
「笑顔です。アスナさんとレイナさんが言ってくれた様に。……あの時にも負けないくらいの笑顔を宜しくお願いします」
「そうだよっ。ボク、この写真 宝物にするからね? リュウキも笑顔で宜しく!」
「ふふ。女の子に頼まれたんだから しっかりとしないといけないね? リュウキくん」
「最っ高の笑顔、だよ? リュウキくんっ!」
「……あのな? 皆。こういう時に注目するのはオレじゃなくて、撮影のクリスタルの方だろう?」
熱い期待が注目するのがはっきりと分かったリュウキ。流石にそれは恥ずかしい、と言う事で前を向くように促した。
「はっはは! リュウキ。笑顔が完璧にできるまでタイマーセットするの遅らせようか??」
「大丈夫だ。……テイク1で済ます」
リュウキの言葉に場は笑いで包まれる。
テイク1で済ませる~と言う事はこう言うような状況は前にあったんだろう、と言う事が容易に想像できた。そして そこでもやっぱり固かったんだという事も同時に。
「よーしっ 全員良い笑顔だな! セットもおっけー!」
ジュンがポップアップウインドウを操作し終わったところで、走り寄ってきてテッチとリュウキの間に収まった。
カウントダウン表示がクリスタルの上に瞬く。それを見たら
『いち たす いちは、笑顔』
は必要ないだろう。とレイナは思い、おもわず更に笑みがあふれ出てきた。初めて写真を撮る、と言う事で教えた時の事を思い出したから。
やがて その瞬間がやってきた。全員が大きく笑った瞬間に、ぱしゃっと音がしてクリスタルが光った。
それを確認したジュンが駆け寄って中身を確認。
数秒間だけ真面目な顔をしていたジュンは、笑顔になり ぐっ と親指を突き立てた。
「おっけーっ!」
それを確認した皆は 笑顔でジュンを迎え、もう一度剣士の碑を見上げた。
ここに証を刻む為に、残すために頑張り続けたスリーピングナイツの皆。
胸にこみあげてくるものがある。BOSSを倒したあの時と同じ様に、抱き合おうとしたその時だった。
「……この瞬間。このタイミングだ」
リュウキの声が、静観とした場所に響いた。
感慨深く見上げていた皆にとっては不意打ちに等しい事であり、一体なにが? と聞くまでもなく…… それはやってきたのだった。
後書き
《それ》とは何か…… その正体は次回に!!
勿体ぶってすみませ~んっ!
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