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真田十勇士

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巻ノ百七 授かった術その五

「ほんのな」
「そうだったのですか」
「それが世だ、永遠と思えるものでもな」
「ほんの一睡のことですか」
「一瞬のな、そういうものだ」
「そのこともですか」
「覚えておくのだ」
 幸村にこうも言うのだった。
「よいな」
「はい」
 幸村は不動に確かな声で答えた。
「そうさせて頂きます」
「ではな」
「はい、有り難うございました」
 幸村は不動に最後は深々と頭を下げた、そしてだった。
 気付くともう座禅の場にいた、そして彼はすぐに立ち上がって十勇士のところに戻って修行のことを話した。
 するとだ、彼等は唸って言った。
「そうですか、その様なものでしたか」
「それが殿の修行ですか」
「いや、そんなものとは」
「仏界で修行とは」
「しかも不動明王と」
「不思議なものじゃ」 
 幸村自身も言う。
「こうしたことがあるとはな」
「全くですな」
「あるとはいえど」
「いや、仏界とは」
「そこでの修行とは」
「何とも」
「そしてじゃ」 
 幸村はさらに話した。
「今話した通りにな」
「七曜ですな」
「その力をですな」
「殿は授かった」
「不動尊より」
「そうじゃ」
 まさにというのだ。
「これもじゃ」
「ですか」
「ではその七曜の術で、ですか」
「これからは戦う」
「そうされますか」
「そのつもりじゃが」
 しかしとだ、ここで幸村は十勇士達に言ってだった。そのうえで彼等にその七曜の術を見せたが。
 しかしだ、ここで彼等はその術を見て唸って言った。
「その術を使えば」
「かなりですな」
「敵も戸惑います」
「凄い術ですな」
「拙者もこう思う、この術を使えばな」
 まさにというのだ。
「かなりのもの、これからはな」
「その術も使い」
「そして戦い」
「敵に勝つ」
「そうされますか」
「そのつもりじゃ、しかしこの術は今使ってみたが」
 試しにというのだ。
「かなり気力と体力を使う」
「だから普段は使えぬ」
「そうそう使える術ではないですな」
「そうした術ではないですな」
「どうにも」
「そう思った、だからな」 
 それでというのだ。
「いざという時の切り札でじゃ」
「普段は使わぬ」
「そうされますか」
「ではそうしてですな」
「ここぞという時に使われますか」
「そうするとしよう」
 こう言ったのだった、修行を終えた後で。この世での修行の時はまさに一睡のことであったが彼にとっては気が遠くなる位の時を経てこれ以上はないまでの術を備えることが出来た。
 幸村は昌幸にも修行とその結果のことを話した、すると昌幸は驚きこそしなかったがこう言った。 
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