真田十勇士
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巻ノ百二 百地三太夫その十
「この世を去られていっています」
「そうなっていますな」
「そしてです」
「次の代の方々にな」
「移っておりまする。ただ代替わりもあって」
幸村さらに言った。
「これまで四天王の方々のお力が強かったですが」
「それがですな」
「今は本多殿の分家の」
「あの親子の方々に」
「そして柳生殿、天海殿や崇伝殿がです」
「幕府で力をお持ちですな」
「武から政に移っています」
今の幕府はというのだ。
「そうなっています」
「天下を治める様になっていますか」
「戦で勝つのではなく」
「ふむ、大きく変わっていますな」
「その幕府でのことです」
凶兆が見られたのはというのだ。
「果たしてこれはどういうことか」
「やはり気になりますな」
「どうしても」
そうだとだ、幸村はまた答えた。
「そこは」
「変わり目での凶兆となると」
「余計にです」
「おかしなことになる」
「そうなるものなので」
平時の時のそれよりもというのだ。
「ですからそう思いまする」
「そうですな、さてどうなるか」
百地も考える、しかしだった。
三人共食べ終えるとだ、百地はあらためて言った。
「このことに気をつけつつ」
「はい、そしてですな」
「今は」
「休むべきかと」
こう言うのだった、霧隠にもかけた声だった。
「今は」
「ですな、幕府のことであり」
「我等にはですな」
「おそらくですが殆ど」
「では」
「はい、休んで」
そしてというのだ。
「また明日です」
「修行にですな」
「励みましょうぞ」
こう言うのだった、そしてだった。
彼等はこの日は休んだ、そしてまた修行に励むのだった。
しかしこの頃だ、江戸では秀忠が難しい顔で幕臣達に言っていた。
「わしも父上と考えは同じじゃ」
「豊臣家については」
「そうなのですな」
「うむ、お拾殿は千の婿じゃ」
それになるというのだ。
「そのこともあるしな」
「だからですな」
「それで、ですな」
「上様にしましても」
「豊臣家については」
「潰すつもりはない」
そうだというのだ。
「そこまではせぬ、あくまでな」
「他の大名家と同じくですな」
「扱いそうしてですな」
「国持大名でいてもらう」
「そうなのですか」
「そう考えておる」
まさにというのだ。
「わしもな、しかしじゃ」
「それでもですな」
「それには条件がありますな」
「豊臣家を潰すには」
「それなりの条件が」
「そうじゃ」
まさにというのだ。
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