真田十勇士
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巻ノ百二 百地三太夫その十一
「茶々殿が江戸に入ってな」
「そして大坂もですな」
「あの城から出てもらう」
「そうしてもらいますか」
「是非共」
「そうじゃ、わしも大坂が手に入ればじゃ」
そうなればというのだ。
「よいと思っておる」
「大坂が手に入れば」
「そこから西国を治められますし」
「天下の財も集まります」
「あそこさえ手に入れば」
「豊臣家は潰すに及ばぬ」
まさにというのだ。
「そこまでせずともよい」
「左様ですな」
「大坂さえ手に入れはです」
「もう豊臣家を潰さずともです」
「特にいいですな」
「そこまでせずとも」
「豊臣家も大坂がないとな」
この場所から出ればというのだ。
「何の力もない」
「左様ですな」
「大坂にいるから財も集まりますし」
「それにあの大坂城にもいます」
「だからこそ力があります」
「しかしその大坂から出れば」
「何でもないわ」
所詮はというのだ。
「だから茶々殿が出ずともな」
「豊臣家には大坂から出てもらう」
「そういうことですな」
「では、ですな」
「豊臣家は大坂から出てもらう」
「それでいいですな」
「それが条件ですな」
「後は大和にでもな」
この国に移らせてというのだ、幕府にとっては。
「国替えをしてじゃ」
「そうしてですな」
「もう後はですな」
「百万石にでもして」
「官位も高くし」
「それでよいわ」
大体家康と同じ考えだった。
「おおよそな、しかしな」
「締めるところはですな」
「どうしても締めますな」
「そうされますな」
「うむ、大坂から出てもらう」
これは絶対だというのだ。
「そしてどうしてもな」
「切支丹はですな」
「これからの大御所様のお考え次第では」
「こちらも」
「あれはよくない」
切支丹はというのだ。
「幕府にしてはな」
「民を奴隷にするなぞ」
「言語道断です」
「信じられませぬ」
「その様なことをするとは」
「全く以て」
「切支丹であらずんば人にあらず」
秀忠は目を顰めさせて言った。
「どう思うか」
「平家と同じ、いえ平家より酷いかと」
「実際は平家はそこまでではありませんでした」
「家臣には寛容でした」
「しかしあの者達はです」
「他の者に寛容ではありませぬ」
「むしろその逆です」
まさにというのだ。
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