| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

グランバニアは概ね平和……(リュカ伝その3.5えくすとらバージョン)

作者:あちゃ
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第96話:実力の差を道具で覆す……実力を上げる方が重要だと思う。

(グランバニア城・国王執務室)
リュカSIDE

物事が良い方向へ推移してるのかは不明だけど、マリーが音痴を克服すべく猛練習するようになったらしい。
ポピーの歯に衣着せぬ物言いが効いたのか、相方のお嬢ちゃんが突然熱心になったのか……どちらの比重が大きいかは判らない。

因みに、相方のお嬢ちゃん……ピエッサだったけ? そのピエッサはピピンの部下のレクルトと付き合ってるらしい。
彼女が城に来る事が多くなったのが付き合い始めた大きな原因だろうけど、有名人になったピエッサに如何やって近付いたのかは不明だ。ウルフも不思議がってた……

上級メイドに同性愛者なジョディーを就かせた為、世間的にも同性愛者への視線が緩んだらしく、城を中心にカミングアウトする人々が増えてきたらしい。
国王として“お触れ”的な注意喚起をすれば逆効果が生まれ、同性愛者が殻に閉じこもったり、それを批判する連中が陰湿化する可能性があったから、何も出来なかったけど……

王家の側で従事してる者が、自然な形で恋人を見付けてくれたから、他の同性愛者達も遠慮(周囲の目を気に)せずに恋人を見付ける事が出来ている。
ユニの見立てには助けられたばかりだ。

更に軍部も大分変わってきた気がする。
と言うのも、ウルフに利用された事で自分(軍部)も自ら考えて行動しようと思い始めたらしい。
今までは面倒事(特に経費削減とか)を他人(ウルフ)任せにしてたけど、利用されてウルフに嘲笑われてからは自分達で考えるようになってきた。

当然っちゃぁ当然なのだが、目下(年下)のウルフに押し付けるクセが付いていたみたいで、大物になった後も気にせず押し付け続けていたのだ。
本人(ウルフ)は気付いていたようだが、今回の為に黙って従っていたとの事……
軍部の慌てっぷりを見て気分爽快だったに違いない。性格の悪い男だ。

だが現状の軍部は長い目で見ると最悪な結果になるかもしれない。
何故かと言うと、本来上に立つ王家の力が弱まった時、自ら(軍部)が取って代わろうと考えるかもしれないからだ。しかも軍部の力を強める、面倒な代物も出来上がってしまった。
そう、俺の目の前に置いてある面倒な代物……鉄砲という面倒な代物だ!

完成したのは、つい先刻(さっき)
新任武器開発部長のザイルが俺の執務室に持ち込んできた。
本心は不愉快だったが、俺が開発を依頼したのだし丁寧にお礼を言って執務室から送り出したよ。

どんな代物かを説明すると、見た目は“AKライフル”その物だ。
AKライフルとはカラシニコフとも呼ばれており、前世では海外の映画やドラマにチョイチョイ登場してたアサルトライフルだ。因みにカラシニコフとは、この銃の開発者の名前らしい。

何故AKライフルと同じ形になったのかを説明すると、俺も実物を直接見た事は無く、それこそ映画やドラマ……もしくはケーブルテレビの専門的ヲタクチャンネルで観た記憶しか無いからだ。まぁ日本人だったので、本物の銃を見る機会なんて皆無だったろう。

そんな本物に触れる機会を得ない俺にとって、AKライフルは外見も構造も知識として知り得られる最たる鉄砲だったのだ。
しかもだよ……もう一つ有名なアサルトライフルに“M16シリーズ”ってのが存在するのだが、そっちは内部構造が複雑すぎて、俺の脳味噌には理解出来ない銃だったのだよ。

こっちの世界で他の国に模倣されない為には、複雑な構造の兵器にするべきなのだろうけど、理解出来ない物を製造するのは不可能に近く、渋々ながらカラシニコフさんを真似する事になったワケなのですよ。ゴメンねカラシニコフさん……この世界に転生してきて『パクられた』って訴えないでね。

さてさて、そんな俺にも理解出来る単純鉄砲だが、多分間違いなくオリジナルより大きくなってると思う。
別に大艦巨砲主義とかじゃ無いから『大きいのが最強』なんて思ってはない。(暴れん坊将軍は大きいのが最強! だから俺、最強)

では何故に大きくなったかを説明すると、ザイルに大まかな銃の構造を説明したんだよ。
でね、勿論弾薬の説明もする訳ですよ……そしたらね、ザイルってば意外に頭が良くってね、俺が説明した物より高性能な弾薬を開発しちゃったんだよ。

あのスノウに騙されて春風のフルートを盗んじゃうようなお茶目野郎だったクセに、薬莢を必要としない弾薬を開発しちゃったんだよ。因みに薬莢とは、銃弾(弾頭)を勢いよく発射させる火薬を入れる真鍮製の筒の事。

正確には違うな。薬莢を必要としないのじゃ無くて、真鍮の薬莢が必要無くなったって事だね。説明するとね、薬莢を薄い紙に変えちゃったんだよ。火薬自体を固めて銃弾(弾頭)を覆った為、真鍮の代わりに薄紙を巻くだけで済んじゃったんだ。

と言う事で、銃の引き金を引き弾薬の雷管に衝撃を与えた時に火薬が薬室で直接燃焼する仕組みになっており、排莢作業が不必要になったって事なんだよ。そんな危険なシステムにすることが出来たのも、グランバニアだけで採掘出来る丈夫な金属……グランバニア鉱石のお陰みたいなんだ。

このグランバニア鉱石が頑丈だから、次弾の火薬へ引火すること無く、しかも銃内部を損傷させること無く爆発させて、高圧なガスを発生させて銃弾(弾頭)を発射させるらしいんだ。天才ザイル君が生き生きと語ってくれた……

んで、話を元に戻すと……銃本体の強度を上げる為に俺の想定よりも大きな銃が出来上がったってワケさ。
更に言えば、真鍮の薬莢分のスペースにも火薬を詰めることが出来た為、オリジナルよりも威力と有効射程距離がアップしたワケなのさ!

威力は兎も角、有効射程距離を説明すると……
オリジナルは800メートル~1000メートルくらいってケーブルテレビで言ってたけど、グランバニア製品は1200メートル~1500メートルくらいに跳ね上がったんだよ。

因みに腕前次第で1500メートルも飛ぶから、肉眼で狙ってもターゲットが見えないだろうから、標準装備で高性能なスコープも作らせました。
無駄撃ちされるのは嫌だからね。

なお、弾倉(マガジン)はロング仕様で、1つに50発装填出来るタイプとなっております。
まぁ勿論、アサルトライフルなのでセミオートorフルオートの切り替えが出来るんですが、フルオートで撃ちまくったら10秒くらいで打ち終わっちゃうけどね。

あぁ……こんな高性能な鉄砲、ジャパネットだったら下取り有りで幾らぐらいの特価になるのだろう?
我が国ではプライスレス……未来の暗黒時代という高値でご提供。
何であの馬鹿娘は火縄銃なんて厄介な物を提供しやがったんだろう!?

(すげ)ー武器だったら“斬鉄剣”でも良いじゃねーか。
……でも斬鉄剣の作り方って分からないなぁ。
だけどもさぁ……あの娘なら知ってそうじゃねぇ?

斬鉄剣だったら使用者の力量次第で戦局も左右されそうだし、所有してる国だけが圧倒的な軍事力所有者って事にはならないだろうに。
……って言うか、斬鉄剣って本当に存在するの?

はぁ……現実逃避してても問題解決にならないし、さっさとホザックに乗り込んで軍事力の違いを見せ付けてこよう。
弾倉(マガジン)10本ほど持って行けば足りるかな?
無駄撃ちしなければ大丈夫だよね。

うん。きっと大丈夫さ。
ウルフとリュリュを呼んで、ホザックに行って来よう……

リュカSIDE END



(グランバニア城・宰相兼国務大臣執務室)
ウルフSIDE

まさかまさかでレクルトがピエッサさんと付き合い始めたので、ほぼ毎日の如く冷やかしに行ってる俺。
今日も三時休憩時に日課の如くレクルトの下へ行こうとしたら、丁度リュリュさんが俺の執務室へ渋い表情を浮かべながら入ってきた。
ノックはしろ!

「ウルポン……お父さんが私達2人を呼んでる」
「ウルポンって呼ぶな! ってか、大好きな父親からの呼び出しなのに、何で渋い顔してんだ? 口と股間からヨダレ垂らして喜べよ」

「私だけをじゃなく、ウルポンも呼んでるし……何よりウルポンを呼ぶのに利用されたのが嫌。ユニさんも仕事じゃ無ければ、ウルポンへの伝言とか伝えるの嫌でしょ?」
「えぇまぁ……仕事である事と、リュカ様からの指示である事で、自身を納得させてはおります」

「ユニさんは兎も角……リュリュさんは、そんなに嫌だったらMH(マジックフォン)で呼び出せば良いじゃん!」
「え!? こんなに近場に居るのに、ワザワザMH(マジックフォン)を使うの? いくらウルポンに対してでも失礼じゃないかしら? 常識人の私には出来そうに無いわぁ……」

「惚れてる相手が非常識なクセに、変な所で常識人ぶるなよな。お前等の血族は全員非常識人なんだよ。自覚しろ!」
「……ほら。だから嫌なんですよ……ねぇユニさん!」
言い返せなくなったリュリュさんは、綺麗な顔を顰めてユニさんに同意を求めた。

「解りますわリュリュ様。上司で師匠で義理の父親が呼んでるのだから、ここでグダグダ言ってないで、サッサと行けば良いのに……だから皆に嫌われるんですわ」
え、何コイツ等? 本当にムカつくんですけど!

「ほらぁ……この国で一番偉い国王陛下が呼んでるんですよ。サッサと行きましょうよ下っ端宰相閣下」
「ぐっ……この(あま)ぁ」
本当は言い返してやりたいけど、これ以上言って更に『グダグダ言ってる』って言われたくないから、大股で部屋から出てリュカさんの下へ急いだ。

ウルフSIDEEND



(グランバニア城・宰相兼国務大臣執務室前廊下)
レクルトSIDE

「もうホント最悪……ウルポン最悪。お父さんの、あんな姿は見たくなかった……お前ホント最悪だわ」
ほぼ最近……三時の休憩時にウルフ君が現れて、僕とピエッサさんの事をからかいに来るウルフ君が夕方になっても現れなかったから、やっと飽きたのかと安心してたら、陛下・リュリュさんと共に何処かへ出かけてた事が判明した。

だが如何やらリュリュさんには不本意な外出だったらしく、今まで見たことのないくらい顔を顰めてウルフ君に文句を言い続けている。陛下がご自身の執務室へ戻られてからずっとウルフ君に言い続けている……
何があったのか解らないけど、ウルフ君もウンザリ気味に執務室へと向かっている……早足で。

100%面倒事だったのは確実だったから、巻き込まれないようにウルフ君の進路から身を引いて道を譲り、彼が執務室に入ることを望んだんだけど……
ダメでした。

丁度ユニさんが執務室から出てきて、溜まった仕事の催促をした為、心がやさぐれてるウルフ君は逃げ出したくなったみたいで、目の前に居た僕に突然……
「おいレクルト。今から飲みに行くぞ! ほら、お前が通ってる店に……大丈夫、今日は俺が出す! アイツ連れてこい。あの貧乳キャバ嬢。お前のお気に入りキャバ嬢を!」

ってな感じで誘われて、拒否権無しな強制連行されました。
別に僕のお気に入りじゃ無いんだけどなぁ……どっちかつーと、お気に入られって言うの?
しかも僕の財布だけを気に入られてる。

ユニさんがキツイ口調で「仕事は!?」って言ったのですが、凄く不機嫌な声でウルフ君は「うるせぇよ……今日はもう仕事の気分じゃねーんだよ! 今日仕事サボったくらいで潰れるような国なら、サッサと潰れちまえば良いんだよ」って言っちゃった。

本当に凄く不機嫌なウルフ君……
マジで付き合いたくないんだけど、言い訳すらさせて貰えなさそうな雰囲気で僕を飲みに誘ってくる。
彼は僕より年下なのに、何でこんなに強気なんだろうか?

僕より出世してるのは、そんな性格だからなんだろうと思うけど、巻き込まれるのは本当に嫌だな。
でも僕より出世してるって事は、それなりに苦労も多いだろうし、愚痴くらいになら付き合ってあげようとも思う。
なんせ年下だからね……

レクルトSIDEEND



 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧