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真田十勇士

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巻ノ八十二 川の仕掛けその六

「特に伊賀の服部半蔵と十二神将はな」
「噂に聞く、ですな」
「伊賀忍軍の棟梁と上忍の十二人」
「まさに鬼神の如き強さだとか」
「そう聞いていますが」
「あの者達は出なかった」
 その彼等はというのだ。
「内府殿に従っておったか」
「そしてですな」
「そのうえで、ですな」
「戦の場に赴いた」
「そうなのですな」
「そうじゃな、あの者達が来ても退ける自信があったが」
 それでもというのだ。
「伊賀者はあちらか」
「そして甲賀者もですか」
「あちらに行っておりますな」
「内府殿の方に」
「そうされていますな」
「そうじゃな、それも幸いしたか」
 昌幸は冷静な顔で述べた。
「この度は」
「若し伊賀者や甲賀者がいてです」
「服部殿と十二神将もいれば」
「その時はですか」
「この様に容易には」
「やはりいきませんでしたか」
「わしと源次郎、そして十勇士がおるが」
 だがそれでもというのだ。
「それでも一人足りぬわ」
「十二神将で手が一杯ですな」
「頭数で考えてみますと」
「どうしてもそうなりますな」
「そこは」
「うむ」
 その通りとだ、昌幸は家臣達に答えた。
「そうなる」
「やはりそうですか」
「そうなりますか」
「服部殿の相手をする者がいない」
「あと一人欲しかったのう」
 昌幸はその時のことを考えて述べた。
「若し伊賀者達がおればな」
「ですな、確かに」
「その時のことを考えますと」
「伊賀者、甲賀者がいなかったのは幸いでした」
「我等にとって」
「その場合は攻め落とさせぬにしてもな」
 それでもだったというのだ。
「より苦しい戦になっておった」
「ですな、間違いなく」
「そうなっていましたな」
「それが幸いでした」
「只の軍勢だけで」
「そうであった、若し再び伊賀者甲賀者達と戦う時があれば」
 その場合についてもだ、昌幸は述べた。
「我が真田忍軍とじゃ」
「十勇士にですな」
「あと二人程必要ですか」
「そうなりますか」
「真田家が一つになって戦うならばな」
 その場合からだ、昌幸は話した。
「源三郎と源次郎、わしでいけるが」
「家が分かれていますと」
「その場合はですな」
「この度の様に」
「その場合は」
「その時が問題じゃ」
 あくまで冷静に言う昌幸だった。
「どうするかな」
「やはり人ですな」
「人を育てるべきですな」
「その時に備えて」
「そうしておきますか」
「そうするか、しかしこの度の戦は終わった」 
 あらためてだ、昌幸は言った。 
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