Blue Rose
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第三十五話 欧州の美その十三
「相手は誰もが差別主義とか言う人こそ」
「差別主義か」
「ネットでもよくいるけれど」
所謂ネット右翼なぞがそうであろう、彼等はよく自分達が嫌う国やその国の人達に何かと言う。だがよく見ればそこには感情的な罵倒や偏見しかなく倫理、理知や教養という人を人たらしめている価値観は存在していない。そしてその罵倒や偏見はよく見ると実に容易に他文明や他文化、他宗教、他人種に向かう。愛国だの保守だの言っているがこれでは単なる無教養な差別主義者でしかなく真の愛国でも保守でもない。
「そうした人達はこういうところに来ても」
「何もわからないだろうな」
「そう思うわ」
優花は眉を曇らせて龍馬に言った。
「私はね」
「アジアと欧州の文化の融合か」
「それって素敵なことよね」
「ああ」
龍馬も優花のその言葉に頷いた。
「アレクサンドロス大王とかね」
「ヘレニズム文化ね」
「文化って一つ一つも素晴らしいもので」
「合わさるとね」
そうなると、というのだ。
「それがまたね」
「独特のものになる」
「こうしてね」
その陶器達を指差してだ、優花は龍馬に微笑んで話した。
「素晴らしいものになるのよ」
「そうなんだな」
「ハウステンボス自体がそうだし」
「日本でオランダの街を再現した場所で」
アジアの中にある日本において欧州の中にあるオランダの街を再現したものだ、それがこのハウステンボスの根である。
「これも、よね」
「ああ、アジアと欧州の文化が合わさった」
「そうした場所なのよ」
「そのせいでこんなにいい場所になったのか」
「そうかもね、ただね」
「ただ?」
「気候は違うわ」
そこはというのだ。
「オランダと日本じゃね」
「それはな」
龍馬も言われて頷く。
「仕方ないな」
「どうしてもね」
「気候が違うとワインの味も違うっていうな」
「こうした場所でビールを飲んでも美味しいけれど」
実は二人も優花の姉である優子もビールは然程飲まない、三人共アルコール度は比較的強めの酒を飲むことが多い。ワインにしてもそうだ。
「夏の暑い時とかに」
「ビアホールみたいに」
「飲むのが美味しいわね」
「ああ、向こうでも外で飲むにしても」
「少し違うみたいだから」
「ドイツみたいな感じか?」
龍馬はオランダの隣のこの国の名前を出した、ビールといえばチェコやアイルランドと並んでこの国だからだ。
「それだと」
「黒ビールね」
「あれか」
「秋とかに」
「夏は日本のビールか」
「ここでお外で飲むにしても」
「そんな感じか、何かここだと」
ハウステンボスだと、とだ。龍馬は考えつつ言った。
「黒ビールって感じだな」
「茹でたソーセージとね」
「いいな、その組み合わせ」
「そうね、じゃあ次は」
「土産ものだな」
「それを買いに行きましょう」
優花はここでも龍馬に微笑んで言った。
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