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Blue Rose

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第三十五話 欧州の美その十四

「そうしましょう」
「親父とお袋にティーカップ買うか」
「私も姉さんにお土産買うわ」
「御前は何を買うんだ?」
「そうね、扇かしら」
「扇?欧州のか」
「そう、あっちの扇をね」 
 これもアジアから欧州に入ったものの一つだ。何でも日本で最初に作られてそれが中国で流行りさらに欧州に伝わり貴族の持ちものになったのだ。プッチーニの歌劇トスカでも重要なアクセサリーの一つとして出て来る程だ。
「買ってね」
「優子さんへのお土産にか」
「したいわ」
「御前相変わらずお姉さん思いだな」
「この世で二人きりの家族だから」
 だからとだ、優子は龍馬に答えた。
「だからね」
「優子さんのことは好きで」
「大事よ。ずっと元気でいて欲しいわ」
「そこまで思われているからな」
 優花のその言葉を聞いてだ、龍馬は。
 少し遠いものを見る目になってだ、そのうえで優しく微笑んでこう言った。
「優子さんも御前を大事にしてくれるんだな」
「お互いにっていうのね」
「今もな」
「そうなのね」
「家族でもバラバラの場合があるからな」
 家による、家族の仲が悪い家なぞそれこそ何処にでもある、家の中で喧騒が絶えない家はそれだけで幸福から離れているという人もいるであろう。
「けれど御前と優子さんは違うな」
「だから二人きりの家族だから」
 両親が事故で死んでから、というのだ。
「私達はね」
「それで絆が強まったんだな」
「そうだと思うわ」
「二人きりだと思うからこそ」
「私も姉さんもね」
「お互いを大事にしてるんだな」
「そうだと思うわ」
 こう龍馬に話した。
「本当にね」
「今の部屋にも二人の写真飾ってるか」
「二人じゃないじゃない」
 優花は龍馬の今の言葉は笑って否定した。
「神戸の時に飾ってた写真は」
「ああ、俺もいたな」
「今もその写真を飾ってあるから」
 長崎のアパートの部屋でもというのだ。
「そうしてるから」
「そうか、あの写真をか」
「ええ、療養所でもそうだったし」
「ここでもか」
「龍馬もね」
 優子だけでなく、というのだ。
「私の大切な人だから」
「友達としてか」
「そう、だからあの写真を飾ってるのよ」
「嬉しいな」
 ここまで聞いてだ、龍馬は微笑んで優子に応えた。
「それはまた」
「そんなに?」
「ああ、本当にな」
 心からというのだ。
「嬉しいさ、俺御前と友達でいられて本当によかったよ」
「それは大袈裟なんじゃ」
「大袈裟じゃないさ」
 笑ってだ、優花の言葉を否定した。
「本当にそう思ってるよ」
「私と友達でいられて」
「そこまで思われてるからな、じゃあな」
「ええ、今からね」
「二人でお土産買いに行こうな」
「そうしましょう」
 優花もにこりと笑って応えた。 
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