魔法少女リリカルなのは -Second Transmigration-
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第2話 日常の中で
前書き
第2話です。
ではどうぞ~
転生から2年の月日が経った。
俺、天城悠里は間もなく6歳の誕生日を迎えようとしている。
最初にわかったことは俺が3歳から転生したこと、両親が原作の主人公である、高町なのはの高町家と付き合いがあること。
そして
……その高町家と隣同士で、尚且つなのはと俺が幼なじみということだ。
初夏、セミの鳴き声が聞こえ始めた時間、俺はまだ涼しいうちに起きて服を着替えて外に出ると、入口にはもう待ってる人がいた。
「お、今日も休まず起きたな。感心感心」
「……いつものことでしょ」
「ははは、それもそうだな」
そう言って父さん、天城琉聖は俺の頭をワシワシと撫でる。
ちなみに母さん、天城愛莉は半年前に亡くなった。
……予め知らされていたとはいえ、唐突で凄く驚いてしまったのを今でも覚えている。
「さて……んじゃ、ぼちぼち今日も行くとするか!」
「うん」
父さんの声と共に、俺達2人は走り始める。
この早朝の走り込みは、2年前から始めたものだ。いくら転生して体力が引き継がれても、それはいつでも発揮できなければ意味はない。初めは母さんが反対してたけど、父さんだけはすぐに承諾したな。
「男は強くなりたいもんな~?悠里?」
って言って、母さんが呆れてたっけ。
走り込みが終わると、俺と父さんは隣の高町家の道場に向かう。中からは剣を振る音と、気合いの入った掛け声が聞こえてくる。
「おーっす、おはようさん!」
「おはようございます」
父さんは扉を開けて挨拶する。中には高町家の大黒柱である士郎さん、長男の恭也さんと長女の美由紀さんの3人がいた。
「よう琉聖。今日も元気そうだな」
「当然。体調管理も立派な仕事だぜ」
2人は拳をぶつけ合って挨拶を交わす。父さんと士郎さんは古くからの友人であり、互いに剣の腕を競い合う仲だそうだ。
あと母さんと士郎さんの奥さん、桃子さんは幼なじみらしい。なんとも奇妙な関係だよな。
「んじゃ、今日もよろしく頼むぜ士郎」
「ああ、任せとけ」
「悠里、お前はこっちだ」
「はい」
俺は恭也さんに呼ばれて2人のほうへ向かった。
高町家のみんなが使うのは「小太刀二刀御神流」という剣術。本来は暗殺術の一種らしいが、詳しくは知らない。中でも恭也さんはもうすぐ師範代を任せられる程だそうだ。
ちなみに、父さんと俺が使うのは前世と同じく川神流の技。この世界では川神流の継承者はウチだけらしく、この技を使えるのは俺と父さんだけ、ということになる。……まあ、あんなコロニーレーザー撃てるようなモノ、そんなにいないよな。
俺は竹刀を取ると、3人でその日の鍛錬を始めた。
それから1時間後、俺と父さんは家に戻って朝食を取る。その後、荷物を持って外に出ると
「おはよう悠里くん!」
「おはようなのは」
出迎えたのはご存知、原作主人公の高町なのは。笑顔が可愛いいい子。正直、俺には勿体ない幼なじみだと思う。本当に。
「ほら悠里、そろそろバス来るから、早くなのはちゃんと行ってこい」
「うん。行ってきます」
「行ってきます、琉聖さん!」
俺となのはは家を出て迎えのバスの来るところへ向かった。
琉聖side
悠里となのはちゃんが幼稚園へ向かうと、俺は一通りの家事を終わらせてから高町家へ向かう。呼び鈴を鳴らすと中から士郎が出迎えてくれた。
「悪いな。もうすぐ半年なのに、迷惑かけて……」
「気にするな。長い付き合いだろ?……それに、あんな事があったんだ。悠里くんも心配だろ?」
士郎の言ってることは正しかった。あの日、愛莉が死んだ日から俺は仕事に行っておらず、今日まで悠里の世話をしていた。実際、今のままでは仕事に集中できるわけがなく、俺は家事に逃げていた。
「悠里が聞いたらなんて言うかね……いや、気付いてるんだろうけどさ」
「あの子も勘は鋭いからな。言わないだけかもしれないが……」
「ただ、今家を空ければ、悠里に危険がでる可能性もあるからな。……バカな親戚共の金銭争いに、あいつを巻き込む訳にはいかない」
幸い俺の仕事で蓄えた金があるので、生活には困らない。ただ、悠里に内容を仕事の内容が出せないのが心苦しいけどな……
「とにかく、お前はまず悠里くんを心配させるなよ。あの子は強いが、まだ子供だからな」
「強い、ねぇ……」
「どうかしたか?」
「いや……愛莉の葬式とかであいつは泣かなかったけどさ……終わったその日の晩……あいつ泣いてたよ……笑っちまうよな。あいつの親なのに、辛くないわけ無いのに、気付いてやれないなんてよ……」
葬式が終わった夜、悠里は仏壇の前で愛莉の写真をジッと見ていた。俺は歩み寄って顔を見るとそこで、泣いているのに初めて気付いた。声は出さなかったが、瞳からは涙が流れて頬を伝っていた。
悠里が泣いていたのを俺は初めて見た。確かに悠里は鍛錬を辛いとは言わなかったし、葬式も泣かなかった。初めはただ強いからと思っていたが、そんなわけはない。悠里はただ、人前でそれを見せたくなかっただけだ。誰にも心配されたくなくて、誰にも泣いてるところを見られたくなくて、それで一人で泣いていたのだ。
「悠里の奴、変な所で見栄っ張りだからな……もっと子供らしくしとけっての」
「それをお前が言えるのか?仕事で構ってやれない時もあったんだろ?」
「それを言われると本当に耳が痛いよ……」
仕事とはいえ、確かに悠里と愛莉には寂しい思いをさせた。
今になって思う。俺は果たして、悠里にとっていい父親なんだろうか、と。
「まぁ、とにかく今はあの子のそばになるべくいてやれ。それがあの子の為だ」
「ああ、そうする」
「それとな……悠里くんがお前のことなんて言ってたか、知ってるか?」
「……いや、知らない」
「『忙しくて会えない時もあるけど、俺にとっては強くて優しい、自慢の父さんです』だと」
それを聞いた時、俺は知らず知らずのうちに涙が流れていた。
悠里が……そんなことを。
「お前がどう思ってるかは別としてな、……悠里くんには、お前は立派な父親なんだ」
「……」
「だから、今はあの子をキチンと支えてやれ。それが俺達、親の務めで、お前にできることだろ?」
「……ああ、そうだな」
士郎の言葉を聞いて俺は今一度、悠里をしっかり支えよう、と心に誓うのだった。
後書き
あと何話か幼少期となります。
どうぞよろしく
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