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魔法少女リリカルなのは -Second Transmigration-

作者:navi
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第3話 入院と溝

 
前書き

第3話です
ではどうぞ~ 

 

前回から一ヶ月後、それは突然掛かってきた1本の電話から知らされた。
士郎さんが事故で運ばれて、意識不明の重体になったという話だった。
夜中に掛かってきた電話だったが父さんはすぐに支度をして病院に向かった。俺は父さんから高町家でなのはと待っているように言われ、連絡を待っていた。


「お父さん……」

「大丈夫。きっと、大丈夫だよ」


まだ幼くても、その辺の事は感じ取っていたのだろう。この日は俺はなのはと一緒に夜を過ごした。朝、俺はゆっくりと目を空けると、朝の6時を回っていた。どうやらいつの間にか寝ていたらしい。いつも起きる時刻より遅かったのに驚いていたが、同時にかなり時間が経っていたことにも驚く。
隣を見てみると、なのはが俺の手を握りながら、顔を肩に預けて寝ていた。どうやら待ち疲れて2人とも寝てしまったらしい。
そう考えていると家の電話が鳴り響いて、俺は電話に出た。


「もしもし?」

『恭也だ。悠里か?』

「はい。なのはがまだ寝てるので、代わりに出ました」

『そうか……すまないな』

「いえ……それより、士郎さんは?」

『ああ……運ばれた後、緊急手術が行われてな。手術は無事に成功した。後は集中治療室に搬送されるから、命に別状はないそうだ。今から俺と母さんと美由紀で家に必要な物を取りに戻って、また戻るが……悠里はどうする?』

「そうですね……とりあえず、恭也さん達が来るまでなのはと待ってます」

『わかった。すまんが頼む』


恭也さんの電話が切れると、後ろの方でなのはが目を覚ました。


「ん……ぅ……」

「おはよう、なのは」

「あ、悠里くん……今の、お母さん達から?」

「うん、今から家に戻るって」

「そっか……お父さんは?」

「大丈夫だって。当分は入院だけど、命に別状は無いってさ」

「本当に?」

「うん、本当」

「よかった~……」


なのははそれを聞いて体の力が抜けたようだった。それと緊張が解けたのか、また重そうに瞼が動いた。


「眠いの?」

「……少し」

「じゃあ、少し寝る?俺は起きてるから」

「うん……あ、悠里くん」

「ん?」

「……隣にいてもらって、いい?」

「……まぁ、いいけど」


俺はソファのなのはの隣に座ると、すぐになのはから規則正しい寝息が聞こえてきた。やがて少しすると、なのはの顔が俺の方へ傾いてきて、肩に預けてきた。


「すぅ……すぅ……ん……」


別に重くはない。……うん、重くない。それにしても……すぐに眠りに落ちたところを見ると、よっぽど疲れたんだろうな。まぁ、一晩中だったから無理もないか。
そう思っていると、俺もいつの間にか睡魔が襲ってきて、俺も眠りについた。





「ただいま~……。なのは~?」


それから少しして、恭也達が戻って来た。美由紀は家に入るとなのはを呼んだが、返事がなかった。美由紀はリビングに向かい中に入った。
中に入ると、ソファの方に見覚えのある黒髪が見えたので歩み寄る。


「よかった。悠里くんそこにいたんだ。なのはs……」


声を掛けようとして、美由紀は言葉を止めた。そこへ、桃子と恭也、琉聖が入ってきた。


「美由紀、悠里はいt「しーっ!」……なんだ?」

「…あらあら♪」


恭也が喋ろうとしたところを美由紀は黙らせ、桃子は悠里となのはの様子を見て悟ったようだ。


「すぅ……すぅ……」

「くぅ……くぅ……」


ソファにはなのはと悠里が2人揃って静かに寝ていた。互いに頭を預ける形に、寝顔はとても安らかだった。


「待ち疲れて寝てしまったか…」

「昨日は遅かったからな。このままそっと運ぶか」

「そうね。……それにしても、本当に仲がいいわね。この2人」

「いつも一緒だもんね。なんかそれが当たり前みたいになってるし」

「将来が楽しみね~♪」

「母さん……それはまだ早くないか……?」


今までが忙しかっただけに、4人にとっては微笑ましい光景であった。
ちなみに……


「あ、琉聖さん、悠里くんを動かすのちょっと待ってて」

「どうかしたのか桃子さん?」

「悠里くんの寝顔は貴重から写真にしっかり残さないとね♪」

「お母さん、後で私にもちょうだい!」

「やれやれ……┓( ̄∇ ̄;)┏」

2人の行動に琉聖は肩をすくめ、恭也は呆れたように溜め息を吐いた。
愛されてるな、悠里……





士郎さんの入院から2週間が経った。結局、士郎さんが意識を取り戻したのは事故から3日経った日の朝だった。
入院した日から高町家は士郎さんの看護に追われ、必然的に俺と父さんはなのはといる時間が多くなった。
桃子さんは翠屋の営業を休みにして士郎さんに付きっきりで看病し、美由紀さんと恭也さんは交代で桃子さんの手伝いをする。こんな状態が二週間続き、今となってはなのはは俺の家にいるほうが多くなっていた。


「なのは、夕飯できたから持ってくの手伝って」

「は~い」


夕飯の準備を終えると、なのはを呼んで料理を運んだ。
そろそろ父さんも来る頃だし。


「ただいま~。悠里いるか~?」

「あ、来た。お帰り父さん」

「ただいま。なのはちゃんも準備ちゃんと出来たな。偉いぞ」

「えへへ~♪」

「……あれ?恭也はいないのか?」

「まだ来てないけど?」

「あ~、またか……悪い悠里、恭也呼んでくるわ」

「…?いってらっしゃい……?」


恭也さん帰ってたのか?いや、それより『また』ってどういうことだ?なのはを放って何かしてるのか?
父さんの言葉で俺の中に疑問が浮かんでいた。それを尻目になのはが一瞬だけ、悲しそうな表情になっていた。





琉聖side

俺は悠里になのはちゃんを任せて、ある場所へと向かっていた。それは高町家の道場で、俺は扉を勢いよく開けた。


「……やっぱりここか、恭也」


道場の中には恭也が1人佇んでいた。その手には竹刀が握られており、俺に気付いた恭也は琉聖を見た。


「……琉聖さん」

「なんつー目をしてんだ、恭也。今にも人殺しそうじゃねぇかよ」

恭也の目つきはいつも以上に鋭く、射抜くような視線を俺に向けてきた。俺はそれを気にせずに道場へと足を踏み入れた。


「なにやってんだお前は。なのはちゃんを放っておいて、鍛錬してる場合じゃねぇだろ」

「……琉聖さんには関係ないじゃないですか」

「関係あるないの話じゃねぇよ。今は士郎がいないって時に、長男のお前が家族を守らなくてどうするんだ」

「……」


恭也は耳を貸すことなく竹刀を片づけ始める。
……全く聞く気ないんだな。ならこっちにも考えがあるぞ。


「仇討ちか?」

「……!」


俺がポツリと言うと、恭也は反応して竹刀を握り締めた。
……当たりかよ。


「そんなことして何になる?犯人は警察が探してるんだ。お前の出る幕じゃないだろ」

「そんなことで済むわけ無いでしょう!?」


俺の言葉に反応したのか、珍しく恭也は声を荒げて叫んだ。
普段冷静な恭也だが、流石に今回はそうではいられないようだ。


「家族が……父親が瀕死の重傷だったのに、相手はまだのうのうと生きてる!俺達をこんな目に合わせた相手に報復することに、何が悪いっていうんですか!?」


まるで気持ちを吐き出すように恭也は言った。
確かに恭也の言い分は正しいだろう。悔しいだろう、悲しいだろう、そりゃ怒りもする。だが、それは違うんだよ、恭也。


「お前の言ってることは正しいよ恭也。……けどな、仇討ちして士郎が喜ぶか?桃子さんや美由紀やなのはちゃんが喜ぶか?誰も喜ばねえよ」

「そんなのハズない!あの事故が起きなかったら俺達は今も幸せに暮らせていた!それに警察だって、未だに手掛かり一つ掴めてない!自首さえして来ない奴に、そんな事を考える必要なんて無い!!」


恭也の言葉はドンドン熱を帯びていく。事件捜査が遅れているのは事実であり、証拠も少ない。恭也のイライラが募るのももっともだが……


「それに、琉聖さんが俺に何か言える立場にありますか!?悠里や愛莉さんを放っていたあなたが―――!」

ドゴン!!

次の瞬間、俺は拳を壁に思い切り叩きつけ、道場内に大きな音が鳴り響いた。


「……おいコラ、調子に乗ってんじゃねぇぞ恭也」


低く、唸るような声で琉聖は恭也を睨みつけた。睨まれた恭也は驚愕と恐怖の入り混じった表情をしていた。


「確かに俺は悠里や愛莉を放っていたかもしれない。けどな……家族を放って自分の為に剣を振る奴が仇討ちとか、笑わせんじゃねぇぞ」

確かに俺は2人に寂しい思いをさせた。それは自覚してるし、愛莉の事は悔いている。だが、それと今の恭也は全く別だ。


「お前は家族を理由に自分の行動を正当化してるだけだろうが。……自分の状況もしっかり捉えられない奴には、なに言っても無駄だろうがな」


俺は恭也の反論も聞かずに踵を返して道場を出ようとする。そこで思い出したように「ああ、それと……」と呟きながら恭也を見た。


「……一応言っておくけどな、今のお前は、悠里より弱いぞ」

「は……?」


それを聞いた恭也は唐突に言われた事に困惑を浮かべた。
何を言ってるんだ?、といった感じだったが、これは本当の話だ。今の恭也だと悠里には絶対に勝てない。これは俺が保証する。


「……本気ですか?悠里は今まで基礎しかやってないんですよ?」

「もちろん本気だ。俺はアイツの父親だぞ?……それにだ、お前は知らないだろうが、最近は技も教えてるんだ。しかも、凄い勢いで吸収してるからな」


基本の技は殆どマスターしてきてるしな。我が子ながら本当に末恐ろしい。
俺は恭也に飯の事を伝えて道場を出ると、家へと歩き出した。
その時に思ったのだが、恭也は一度負けた方がいいのかもしれない。今のアイツには犯人の事しか写っていない。けど俺では効果無いしな……


「……って、もしかして俺、悠里に相手が行くようにしちまったか?」


今頃になって、取り返しのつかない事に気付いてしまった。
……悠里になんて言おうか。
 
 

 
後書き

今回は士郎さんの入院話でした。
それでは次回で
 
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