英雄伝説~光と闇の軌跡~(FC篇)
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外伝~黒翼の少女~後篇
~メンフィル大使館前~
「頼む、闇の聖女と会わしてくれ!」
ロレントにあるアーライナ教の聖堂を尋ねたガイだったが今は大使館内にいることを聞き、大使館の門番に面会を希望した。
「なんだ貴様は!約束もなしにお忙しいペテレーネ様に会えると思っているのか!」
門番は当然のごとくガイの面会を断った。
「人の命がかかっているんだ!頼む、会わしてくれ!」
「黙れ!これ以上騒ぐと痛い目にあうぞ!?」
「……さわがしいな。何があった。」
そこに仕事の息抜きをしていたリウイが騒ぎを聞き、門の所に来た。リウイを見た門番達は慌てて敬礼した。
「へ、陛下!」
「お騒がせして申し訳ありません!今すぐこの者をつまみ出しますので!」
「かまわん。そこにいる者が原因か。……うん?お前は確か教団の拠点制圧に参加したクロスベル警察の者だったな。クロスベルからわざわざこんなところに何の用だ。」
「あんたはメンフィル皇帝!ちょどよかった、頼む!闇の聖女に会わしてくれ!」
「貴様、陛下に向かってその口の聞き方と無礼はなんだ!?」
リウイに詰め寄ろうとし門番に取り押さえられながらもガイはリウイにペテレーネに会わすように必死で頼んだ。
「ペテレーネに用か?珍しいな。……放してやれ。」
「「ハッ!」」
リウイの命令を受けて門番達はガイを取り押さえるのをやめた。
「会わしてくれるのか!?」
門番に放されたガイは希望を持った顔でリウイに聞いた。
「こんなところで立ち話もなんだ。中で話を聞こう。」
そしてガイは会議室に入り、呼ばれたペテレーネを交えてここに来た経緯を話した。
「……という訳なんだ。頼む、忙しいのはわかっているが少女を助けてくれ!」
「……その症状でしたら確かに私かティアさんなら可能と思いますが、リウイ様。よろしいでしょうか?」
ペテレーネはリウイに大使館を少しだけ離れる許可を聞いた。
「ああ。……ただし俺もついて行く。”儀式”の影響で翼がついてしまったその少女に一言言いたいことがあるしな……(クロスベルか。ちょうどいい、あの二人の縁者もそこだったな。少女を治した後会いに行くか……)」
「頼みを聞いてくれて感謝する!早速で悪いんだが今から来てくれねえか?」
「いいだろう。軽い旅支度をして行くぞ、ペテレーネ。」
「はい、リウイ様。」
2人から良い返事を貰ったガイは笑顔でお礼を言い、少女の所に向かうためにリウイ達と共に会議室を出た時、たまたま通りがかったレンと出会った。
「あ、パパとママ!そこにいるお兄さんはだあれ?」
レンはリウイとペテレーネに近寄りガイのことを聞いた。
「……実はそこにいる男の妹が重い病にかかってしまってな……治せるのはペテレーネだけだそうだから、こうして頼みに来たそうだ。それでペテレーネは快く頼みを承諾してな、俺もそのつきそいで外国へ行ってくる。1週間ぐらい留守にするからそれまではプリネ達と共に留守番をしてくれ。何、連絡は通信を使って毎日するから、安心しろ。」
「は~い。パパ達が帰ってくるまでレン、お姉様達といっしょに待っているからお土産よろしくね。」
リウイの頼みを聞いたレンは快く返事をした。
「ええ、だからいい子にして待っててね。」
ペテレーネはその場でしゃがみ、レンと目を合わせ頭を撫でた。
「(気持ちいい……)うん!レン、いい子にして待っているわ!」
頭を撫でられたレンは気持ちよさそうな顔をした後、笑顔で答えた。
「さっきから気になってたんだが、この子もメンフィル皇帝、あんたの子供なのか?」
3人のやり取りを見ていたガイはリウイに聞いた。
「……ああ。レン、自己紹介を。」
「はい、パパ。……ご紹介が遅れ、申し訳ありません。メンフィル皇女、レン・マーシルンです。どうぞよろしくお願いします。」
リウイに自分の事を紹介するように促されたレンは、短期間で身についた王族としての行儀作法でガイに挨拶をした。
「っと、これはご丁寧に……クロスベル警察のガイ・バニングスだ。ちょっとだけお父さんとお母さんを借りるのを許してくれ。」
「フフ、ママは奇跡を起こす聖女としても有名ですから仕方ありません。いつものことなので気にしないで下さい。」
ガイの軽い謝罪を受けたレンは上品に笑いながら、気にしていないことを言った。
「それより、レン。どこかに向かっていたんじゃないの?」
「あ、いっけない!ファーミシルスお姉さんやカーリアンお姉さんに戦い方を教えてもらう約束の時間で早く教えてもらうために急いでたんだわ!……それでは失礼いたします。」
ペテレーネの言葉で本来の目的を思い出したレンは、ガイにお辞儀をした後その場を去った。
「なあ、気付いたんだが今の娘、あの作戦でわずかに生き残っていたもう一人の少女じゃないのか?」
レンのことをよく見て、あることに気付いたガイはリウイ達に自分の持っている疑問を聞いた。
「………ああ、そうだ。あの娘は俺達と血の繋がりはない。」
「だったらどうして……あの娘にも親がいるんじゃねえのか?」
「……申し訳ありませんがあの娘にもいろいろ複雑な事情があるんです。……だからこれ以上の詮索はしないで下さい。」
ペテレーネの言葉を受けたガイは謝罪した。
「っと悪い。失言だったな。すまねえ。」
「何、気にするな。」
そしてリウイ達は一般の飛行艇を使ってクロスベルへ向かった。
~ウルスラ病院内~
「失礼するぜ。」
「あら、ガイさん。昨日、急に飛び出しちまってビックリしたけどどこに行ってたんだい?」
ガイに気付いたマーサは何をしていたか聞いた。
「ああ、ある人をここに連れてくるためにちょっとリベールまで行ってたんだ。」
「ある人?だれかね、その方は?」
ガイの言葉に疑問を持った医師は聞いた。
「まあ、会えばわかるよ。……ここにいる少女がそうだ。頼む。」
「はい。」
「ああ。」
ガイの言葉を受けてリウイとペテレーネは病室に入った。2人の姿をみて、医師とマーサは驚愕した。
「おや、まあ……!聖女様にメンフィルの皇帝様じゃないかい!」
「なんと……!まさかたった一人のために聖女殿がわざわざこんなところまで足を運んで下さるなんて……それにメンフィル皇帝殿まで……!」
「私がその子を治したいと思って来ているだけですから気にしないで下さい。………なるほど、何があったのかはわかりませんが強力な
闇がこの子の頭の中に集中していますね……」
ペテレーネは少女に近づき状態を確かめた後、少女の額の所に両手をかざした。するとペテレーネの両手から紫色の光が出、やがて紫色の光は少女の体全体に広がり消えた。
「……今のはどういった治療の仕方なんでしょうか?」
医師はペテレーネの魔術を目にして驚いた後、効果を聞いた。
「……この子の頭の中にあった強力な闇を体全体に行き渡らすことで脳内にあった闇をなくしました。恐らくもうすぐ目を覚ますと思います。」
「今、闇を体全体に行き渡らすって言ったけど大丈夫なのか?」
ガイはペテレーネの言葉を聞き、心配になって聞いた。
「ええ。むしろ体全体に行き渡らすことで、闇の恩恵を受けれるようになりましたから、私が使っているアーライナ教の魔術が恐らく使えるようになっていると思います。」
「へえ~……」
答えを聞いたガイは感心した声を出した。そして少女が目を覚ました。
「こ……こ……は……?」
「気がついたのか!ここは病院だ、もう恐い目に会わなくて済むんだぜ!」
少女が目を覚ました事にいち早く気付いたガイは少女に話しかけた。
「病……院……?」
「ああ、そうだ。具合は悪くないかね?」
医師も少女に状態を聞いた。
「いえ………別に……今まで目の前が真っ暗だったのですがそれが取れたので目を覚ませたと思います……体にも特に異常は……!?」
医師の質問に答えた少女は背中にある違和感があるのに気付き、その部分を手で触った。
「え……これ……は……翼……!?」
少女は自分の背中に翼が生えている事に驚き、信じられないような顔をした。
「気の毒と思うんだけど……見てもらえばわかるわ。」
マーサは手鏡を少女に自分の背中が見えるようにした。そして自分の背中に黒い翼がついていることを認識した少女は渇いた声で笑った。
「あはは……感覚が鋭くなった上この翼……私……とうとう人間じゃなくなったんですね………どうして私みたいな化け物が生きているのでしょう……?」
「バカ野郎!」
少女の自虐の言葉を聞きガイが一喝した。
「え……?」
「命を粗末に扱うんじゃねえ!感覚が鋭くなった?翼が生えた?そんなことよりまず、助かったことに喜べよ!」
「………………でも、この翼は今は小さいからいいですけど……大きくなった時どうやって隠せれば………」
ガイに叱責され少女はしばらくの間、黙っていたが一言呟いた。
「……その事に関してですけど、もしよければ翼を隠せる方法を教えてもいいですよ。」
少女を見兼ねたペテレーネがある提案をした。
「あなたは………?」
「私はアーライナの神官、ペテレーネ・セラです。あなたは?」
「………ティオ・プラトー………」
「ティオ……いい名前ですね。ティオさん、魔力を感じていませんか?」
「………はい。何かが体を包んでいるのがわかります。魔力かどうかはわかりませんが………」
「幸か不幸かわからないけど、ティオさん。あなたには魔術師としての才能があります。今回の件でそれも目覚めてしまったようです。もし、短期間でもよければ私が魔術や魔力の使い方を教えます。」
「………それが翼を隠す方法と何か関係があるのですか……?」
少女――ティオはペテレーネの提案に戸惑い聞いた。
「ええ。魔力を背中部分を覆うことによって翼が見えないようにし、最終的に幻影の魔術を使って普通の人間の背中に見えるようにします。……こんなことができる方はよっぽど限られてきますが、あなたなら練習すればできると思いますよ?」
「……そうですか。一応お願いします………」
ティオは少しの間考えてペテレーネの提案を受けた。
「はい、わかりました。……すみませんが1週間ほど、この病院で寝泊りをしてもよろしいでしょうか?」
ペテレーネは医師やマーサに病院に寝泊りする許可を聞いた。
「聖女殿のような方がこの病院に寝泊りするなんて……!我々や患者達の励みにもなりますのでぜひ、お願いします。」
「先生の言う通り、お願いします。」
2人は恐縮しながらも答えた。
「ありがとうございます………リウイ様、申し訳ありませんがクロスベルを発つ時までこの子に付きっきりで魔術を教えなくてはならないのですが、よろしいでしょうか?」
「かまわん。俺はクロスベル市にあるホテルにいるから、何かあればそこに連絡してくれ。」
「かしこまりました。」
そしてリウイはティオに近づいた。
「あの……?」
リウイを見上げたティオは戸惑った。
「ティオと言ったか………もし、どうしても周りの環境になじめないというのなら、ここを訪ねてこい。」
リウイは一枚の封筒をティオに手渡した。
「メンフィル大使館……?もしかしてあなた達は”闇夜の眷属”なのですか?」
ティオは手渡された封筒に書いてある住所を見てリウイに尋ねた。
「ああ。その封筒の中に入ってある手紙を門番にでもみせれば俺達に会えるようにしてある。……俺達”闇夜の眷属”は人間に迫害された存在の中でも秩序と調和を重んじる集まりでもある。………もし”人間”として生きれなく”闇夜の眷属”として生きたいのであればここを訪ねて来い。その時はお前を”仲間”として暖かく迎えてやる。」
「………………………はい。その時はお願いします……………」
ティオはリウイの言葉を受けて、視線を封筒に戻し少しの間黙っていたが、答えた。
「そうか。では俺はこれで失礼する。ペテレーネ、後は頼んだぞ。」
「はい、リウイ様。」
そしてリウイはティオのことをペテレーネに任せ病院から去った。
そしてティオは短期間でありながらもペテレーネに魔術や魔力の使い方を教えられ、必死に練習した結果ペテレーネがクロスベルを去る頃には、なんとか翼を隠せることに成功した。この練習が後に数年後にクロスベル警察のある部署の大きな助けとなる人物になる始まりの一歩目だった………
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