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真田十勇士

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巻ノ三十七 上杉景勝その四

「日々その書を読もう」
「わかりました」
「それではですな」
「我等も鍛錬に励みます」
「この城にいる間は」
「そうしようぞ」
 幸村は彼等に穏やかな声で応えた、そしてだった。
 彼は実際に書を読み鍛錬に励んで日々を過ごした、そうして。
 その鍛錬の中でだ、こんなことも言ったのだった。
「槍じゃな」
「槍ですか」
「それをですか」
「拙者はより学びたいな」 
 十勇士と共に鍛錬をしながらの言葉だ。
「剣や手裏剣もよいがな」
「どうも殿はです」
「忍術も出来てです」
「弓も出来ますが」
「まずはですか」
「鉄砲ですか」
「そう思う」
 だからというのだ。
「拙者はな」
「第一は槍ですか」
「殿に合っているのは」
「そちらですか」
「実際にやっていてもな」
 槍を使ってもというのだ。
「そう思った」
「だからですか」
「槍をですか」
「より学ばれたいですか」
「二本の槍をな」
 こう言うのだった。
「学びたい」
「二本の槍をですか」
「それぞれの手に持たれ」
「縦横に操る」
「その槍術をですか」
「極めたいのじゃ」 
 これが幸村の槍術への考えだった。
「是非な」
「これまで以上にですか」
「双槍の術をですか」
「極められ」
「殿のものにされたいですか」
「どう思うか」 
 幸村は家臣達に己の考えについて問うた。
「拙者はこう考えておるが」
「そうですな、難しいですが」
「二本の槍を同時に使うことは」
「それはどうしてもです」
「難しいです」
「一本でもかなりです」
 その槍を両手に持って使うこともだ。
「相当に難しいです」
「それが二本ともなれば」
「もうそれはです」
「槍を片手で使うことすらです」
「難しいのですから」
「それが両手になると」
「どうしても」
「うむ、しかしじゃ」
 それでもとだ、幸村は言うのだった。
「極めたい」
「ですか、それでは」
「殿がそう思われるならです」
「是非です」
「お励み下さい」
「その槍術に」
「確かに難しいですが」
 それでもというのだった、彼等は。
「殿なら出来ます」
「殿は文だけでなく武にも必死に励まれています」
「まさに文武に懸命に努力されている方」
「それならばです」
「殿ならばです」
「懸命に努力され」
 その二本の槍を同時に使う術もというのだ。 
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