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IS~夢を追い求める者~

作者:かやちゃ
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第2章:異分子の排除
  第21話「セカンド幼馴染」

 
前書き
こういうアンチされる側の異常な性格って何気に苦手なんですよね。
精進しなきゃ...!(使命感) 

 




       =桜side=



「ね~ね~、知ってる~?」

「ん?何をだ?」

  パーティーの翌日、本音ちゃんが俺にそう話しかけてきた。
  ...ちなみに、昨日は束は逃げ切れたが、俺は結局寮住まいなので捕まって説教を受けてしまった。半分照れ隠しな所とかあったから説教っぽくなかったけど。

「中国からのー、転校生だよー。」

「あぁ、その事か。」

  噂の伝達力はさすが女子と言った所だな。昨日学園に来ただけなのにもう知れ渡ってるとは。
  ちなみに俺は束から教えられてた。

「でも二組にだろ?俺らには直接関係は..あるかもしれないか。」

「うんー、代表候補生らしいからねー。」

「この時期となるとむしろ俺らに関係ない方が珍しいか。」

  セシリアと違って、この中途半端な時期だと十中八九俺ら男性操縦者関連だろう。
  どういう人物なのか調査してこいって所か。
  代表候補生なのはせっかくだから技術も磨いてこいって事だろう。

「しかしそれだとどうして一組に来ないのか分かりませんわ。」

「...確かにな。」

  セシリアの言うとおり、なぜ一組ではなく二組なのか。
  “知識”で知っている俺にも分からん。

「まぁ、これでクラス対抗でのパワーバランスがマシになるだろう。」

「...何気にユーリさんも強いですからね。」

  俺たちと違ってユーリちゃんの方は他に立候補もしくは推薦された生徒はいなかったからな。
  マドカちゃんもユーリちゃんより強く、俺たちと同じ理由で却下されたし。
  それと、企業の仕事についてはマドカちゃんが補佐をする事で兼任できるようにしたらしい。

「何気に偏ってるんだよなー、専用機持ちって。」

  一組に四人、四組に三人だ。
  ...本当に偏りすぎだろ。俺たちの強さ関係なしに士気に関わるぞ。

「どの道、専用機持ちは一組と四組にしかいないのには変わりないから、警戒するのは四組だけで大丈夫だよ。」

  会話に参加していた女子の一人がそう言う。

「その情報、古いよ!」

「っ.....。」

  突然、教室の入り口からそんな声が聞こえてくる。
  ...その声を聞いて秋十君は少し反応した。

「二組も専用機持ちがクラス代表になったの。そう簡単には優勝できないから!」

  入口の方を見れば、茶髪のツインテールの少女が仁王立ちしていた。

「(...なるほど、彼女が鳳鈴音(ファン リンイン)、秋十君の二人目の幼馴染か。)」

「鈴...?お前、鈴か!?」

  俺がそんな事を考えているのを余所に、織斑が彼女に対して反応する。

「そうよ!中国代表候補生、鳳鈴音!今日は宣戦布告に来たって訳!」

  そう言ってビシッと織斑を指差す。
  ...なんかカッコつけてるけど似合わないな。

「...宣戦布告するなら四組じゃないのか?あそこ、今の所一番強いし。」

「そうだよねー。桜さんも秋十君も出ないんだし。」

  俺の言葉に隣にいた女子が同意する。
  それが聞こえたのか、鳳はこちらに反応した。

「....えっ!?篠ノ之束!?」

「あ、やっぱ勘違いされた。」

「(昨日本物がいたなんて言えない...。)」

  秋十君、聞こえてるぞ。確かに言えない事だが。

「...って、あんたが噂の女性そっくりな男性操縦者?...本当に女性にしか見えないわね...。」

  そう言って鳳は俺をじろじろ見てくる。
  ...胸に視線が行くのはあれか?コンプレックスか?

「あー、とりあえず先に教室に戻れ。皆のトラウマが振り下ろされるぞ。」

「トラウマ?何を...。」

  “言っているのか”と続けようとした鳳の後ろに千冬が立つ。

「誰が“皆のトラウマ”だと?」

「ち、千冬さん...!?」

「織斑先生と呼べ。...もうSHRの時間だ。早く戻れ。」

「す、すいません...。」

  いや、あの出席簿は一度喰らうと軽くトラウマになるぞ?
  凄く痛いし、なぜかたんこぶはできん。俺も同じことができるが。

「...また後で来るからね!逃げないでよ一夏!」

  鳳はそう言い捨てて自分のクラスに戻った。

「っ......。」

「...気をしっかり持て。今更だろう?」

「...はい。」

  やはり織斑の洗脳に掛かっているのを見るのがつらいのか、秋十君は歯噛みしている。
  ...箒ちゃんはもう慣れてきたのだろうし、千冬の場合は普段の性格はあまり変わらなかったからな。改めて実感させられたのだろう。

「(俺は秋十君の幼馴染達は知らない。鍵となれるのは、秋十君だけか...。)」

  洗脳を解くには強く印象に残った出来事を連想、もしくは再現しなければならない。
  ...だが、千冬と束以外は俺には無理だ。



「...ところで秋十君。」

「なんですか?」

  SHRが終わり、一時間目が始まるまでの時間に秋十君に話しかける。

「おそらく次に俺が鳳と話す時、秋十君も交える事になる。...いや、それだけじゃないな。鳳がいるのだから必然的に織斑もいる。...今の内に覚悟しておけ。」

「っ...分かりました。」

「...なに、ユーリちゃんとマドカちゃんもついてくるだろうから、お前を責める奴なんて少数になるさ。」

  マドカちゃんの正体がばれるだろうけど、それはご愛嬌だ。
  別にばれてもいいってマドカちゃんは言ってたし。

「あ、ちなみになんで交える事になるかって言うと...俺がそうするからだ。」

「あんたのせいかっ!?」

     ―――スパァアン!

「おぅ...さすがは血の繋がった姉弟...威力と叩き方が似ている....!」

  秋十君はノート(丈夫な奴)で俺を叩いた。
  ...うん、出席簿には劣るが流石の威力だ。







       =秋十side=



「よう、鳳。隣の席からで悪いが、SHRでの縁だ。ちょっと話いいか?」

  桜さんは俺たちを連れて敢えて鈴やあいつが座っている隣のテーブルに場所を取る。

「ん?なによ。」

「なんでわざわざ“消去法”でクラス代表に選ばれた織斑に宣戦布告したんだ?」

  ...桜さん、初っ端から挑発してますよ...。

「なっ....!てめぇ....!」

「言っちゃ悪いが彼はズブの素人。ISの知識すらままならない。まぁ、それなのにクラス代表に選ばれた理由は推薦が原因なんだが...今は置いておこう。...で、そんな“雑魚”相手に宣戦布告した理由は....。」

  うわぁ...どんどん煽っていくなぁ...。
  心なしか、桜さんの顔が輝いているように見えるし、オルコットやユーリ、マドカ達は微妙に引いてるし...。

「貴様!一夏に対してなんて事を!」

「お前は黙っとけ。ちょいと邪魔だ。...で、どうなんだ?」

  憤った箒をなんでもないように抑制し、鈴に聞く桜さん。

「....あら、あんた、一夏の凄さを全然分かってないようね。」

「当たり前だ。まだ会って一週間ぐらいしか経ってないぞ?」

  余裕そうな態度を取る鈴。同じく余裕な態度な桜さん。
  ...なんだこの対決。

「...ま、大方数年ぶりに会ったクラスメイト、ひいては何かしらの想いを寄せてる相手とIS学園で会ったから...って所か。」

「っ...な、なんで分かるのよ!?」

「お、合ってたか。カマをかけただけなんだがな。」

  ...まぁ、ある程度ヒントは出てたしなぁ...。
  あいつを知っている口ぶり。あいつの久しぶりに会ったような言動。
  そして分かりやすい仲の良さそうな雰囲気。
  桜さんならここから予想するぐらい楽勝だよな。

「強いクラスに宣戦布告と言う意味では四組にするべきだし、ただ男性操縦者に宣戦布告するだけならあまりにも親しすぎる。...そこから適当に予想しただけだがな。」

「ぐっ...合ってるわ...。それより、四組が強いってどういう事よ。」

「そのままの意味だが?贔屓目抜きでもユーリちゃんは強い。」

「あぅ......。」

  桜さんの言葉にユーリは恥ずかしそうにする。
  ...昨日のあの言葉を思い出してしまったのか。

「....そうは見えないけどねぇ...。」

  ...と、そこで予鈴が鳴る。
  さっさと戻らないと千冬姉に叱られるな。

「...っと、秋十君、時間だから戻るぞ。」

「そうですね。」

  ...うん?今桜さんが俺の名を呼んだ時、鈴が反応したような...?
  ...あー、気づかれたな。これは。
  それに、何気にアイツがユーリの名前を聞いてから怪訝な顔をしてるし...。







「....で、話ってなんだ?」

  放課後になり、今度は鈴から俺だけを屋上に呼び出してきた。

「...ふん、あんた、一夏に勝ったとか言われていたわね。」

「ああ。事実だが?」

  多分、クラスメイトとかに聞いたのだろう、クラス代表決定戦の事を言ってくる。

「嘘つくんじゃないわよ。どうせあんたが卑怯な真似したんでしょ?」

「っ....。」

  ...やっぱり、俺には辛辣なんだな。

「第一なに?“篠咲”って。なんかもう一人の家族になってるみたいだけど、そうだとしたらもう一人が可哀想ね。こんな“出来損ない”を家族にするなんて。」

「......今、なんて言った?」

  ...別に、俺が貶されるのはもう慣れた事だし別にいい。
  鈴が俺に対して辛辣なのも洗脳のせいだと言えば耐えられる。
  ...だけど、今、桜さん達を侮辱した?ふざけるなよ?

「てめ「おい、もう一度言ってみなよ。」って、マドカ!?」

  俺がキレそうになった瞬間、マドカが鈴の背後から声をかけていた。

「なっ..!?なんでアンタが...!?」

「いいから、もう一度言ってみなよ。秋兄を、私を助けてくれた桜さんが“可哀想”?バッカみたい。本当に可哀想なのはお前らなんだよ。」

  ....あれ?マドカ、俺よりキレてね?口調が荒いし。

「わざわざ秋兄と桜さんを侮辱するためだけに呼び出したのなら、もう帰らせてもらうよ。ほら、秋兄行こっ?」

「あ、ああ..。」

  “話す価値もない”そう言わんばかりの素っ気なさでマドカは俺の手を引いてそこから立ち去った。



「...なぁ、なんでマドカがあそこにいたんだ?」

「んー、尾行してた。」

「ちょ....!?」

「だって洗脳をまだ受けてる奴に連れて行かれてるんだもん。気になるに決まってるよ。」

  ...あー、まぁ、そうだけどさ...。

「秋兄一人でももう大丈夫だとは思ってるけどさ、妹として、やっぱり心配なんだよね。」

「....ありがとう。」

  マドカはマドカとして俺の事を心配してくれたんだな。

「....ね、確か、洗脳を解く鍵って、印象に残った思い出を思い出させる事だったよね?」

「そうだが...いつ知ったんだ?」

  確か、マドカは洗脳の解き方は知らなかったはず...。

「束さんに教えて貰ってた。」

「そ、そうなのか...。」

「...それで、秋兄はなんか心当たりはない?彼女の印象に残りそうな出来事とか...。」

「うーん....。」

  鈴の印象に残りそうな事か....。

「すまん、分からん。」

「そっか...あ、でも秋兄なら無自覚にそう言う事やってのける事があるんだよね。」

「そ、そうなのか?」

  俺、そんな事やってたっけ?

「まぁ、今は気にしてもしょうがないよ。」

「.....そう、か。」

  洗脳が解けないのは嫌だけど、解く条件を満たせてないならしょうがない。
  地道に条件を探すしかない。







       =桜side=



「...で、今度は何の用だ?」

  秋十君とは別に、俺は織斑に呼び出されていた。

「どういう事だ...なぜユーリ・エーベルヴァインがここにいる!?」

「...あ?なんだ?お前、ユーリちゃんと知り合いか?その割にはユーリちゃん、なんの反応もなかったけどさ。」

  そういえば、こいつ俺の事を“転生者”とやらと決めつけていたな。
  となると、ユーリちゃんもなにかしらの“原作”に登場するのか?
  俺が与えられた知識にはユーリちゃんはいなかったし。

「しらばっくれるな!彼女のエグザミアはどうした!?マテリアルは!?」

「....エグザミアはユーリちゃんの専用機だぞ?それと...マテリアル?なんだそれ?」

  確か原材料って意味だったはずだ。
  ...まぁ、こいつが言ってるマテリアルはまた違うものだろうけど。

「惚けても無駄だ!どうせお前も魔法が使えるんだろ!?卑怯者め!」

「....はぁ、あのな、いくら天才でも魔法を再現するには至ってねぇよ。できたとしても、それは魔法に似た科学なだけだ。」

  ちなみに束は科学で魔法の再現に取り掛かってたりする。
  なんか夢で見た魔法を再現してみたいんだって。
  ...おや?何か今、ピンク色の砲撃が頭をよぎったような....?

「第一、お前はユーリちゃんがどういった環境で育ってきたか知らないだろ?」

「あ?なに言ってやがる!」

「...本人があまり広げたくないから言わないがな...少なくとも、平凡とはかけ離れた環境だったさ。だから俺たちワールド・レボリューションが引き取った。」

  ...っと、論点がずれてたな。

「あー、いくらバカでも予想できる。...お前に言っている“ユーリ・エーベルヴァイン”と、ユーリちゃんは別人だ。いい加減、目の前の現実を見ろ。」

  こいつは“原作”に囚われている愚者だ。
  千冬も束もマドカちゃんも秋十君も、その幼馴染たちだってこいつのせいで人生がかき乱された。...後、一応俺にも影響してたな。

「なにを....!」

「...ふん、一言だけ言っておいてやる。...ここは、お前の知っている世界とは全く違う。」

  そう言って、俺はその場から立ち去った。
  別に、背後から襲い掛かられようとも対処できるからな。

「...あーもう、これならネットとか二次元に依存してる奴とかの方がマシだな。」

  あれ、ガチで空想と現実を混同させてるだろ...。

「...ユーリちゃん。」

「あ、あはは...やっぱりばれますよね...。」

  物陰からユーリちゃんが姿を現す。

「すみません...大丈夫だとは思ったんですけど、やっぱり心配で...。」

「...ありがとう。」

  心配してくれたんだ。お礼は言っておかないとな。

「そ、それよりも桜さん、さっきのあの会話は....。」

「...俺にも分からん。織斑の奴、一体どんな思考をしてるんだ...?」

  自分の事だったのでユーリちゃんは少し怯えているようだ。

「...戻ろう。秋十君もそろそろ戻ってるだろうし。」

「そうですね。」

  戻れば秋十君とマドカちゃんが一緒にいた。
  多分、マドカちゃんも秋十君が心配で行っていたのだろう



  ...その日、1025室で何か揉め事があったようだが、俺たちには関係ない。







「はぁ.....。」

「.......。」

  翌日、今日は偶然俺一人で食堂で昼食を取っている所、鳳が隣の席で溜め息を吐いていた。

「.....なぁ。」

「...なによ。」

「いや、昨日と様子が大違いだから気になった。」

  なんかもう、失恋..よりはマシだけど、なんかそんな感じだった。

「別に...一夏があたしとの約束を間違えて覚えてたのがイラついただけ。」

「...そりゃひでぇ。」

  いや、もう人格とか関係なく間違えて覚えてるのはひどいわ。忘れたのはともかく。
  約束した方は滅茶苦茶傷つくし。

「....で、アンタはアンタでなんで一人なのよ。」

「他の皆はとある代表候補生の専用機の整備を手伝ってる。皆が皆、友達が作りづらい性格してるからな。交流のためにも、年上の俺は遠慮した。」

「...年上だったわね。そういえば。」

  ...同学年だから忘れられてたか。

「...ふと気になったが、お前と織斑の出会いってなんだ?」

「なによ...。」

「ほら、容姿が女性よりだから恋愛事にも興味ある的な?」

  実際は印象に残った思い出に見当をつけるためだけど。

「なっ...れ、恋愛って...!?」

「...いや、モロバレだし。」

「うぐ.....。」

  勘のいい人は皆気づいていると思う。

「...小学校に転入してきた時よ。当時は、ちょっとしたイジメを受けていてね。それであいつに助けてもらったって訳。」

「...ベタだな...。」

  洗脳の効果は記憶の置き換えもある。なら、それが秋十君の可能性が...。

「うるさいわね。...それ以来、あいつとは仲良くやってるわ。」

「...やっぱ、それって印象深いか?」

「ええ。それこそ、今でも鮮明に....鮮明に....あれ?」

  首を傾げる鳳。...思い出せないのか?

「....思い出せないのか?」

「いえ、状況とかは思い出せないけど、鮮明には...って程度。...はぁ、これじゃ、あいつの事言えないわね。」

「.......。」

  ...間違いない。これが秋十君との印象深い思い出だな。

「...ちょっと話したら少し楽になったわ。」

「...そうか。それならよかった。」

  本人の気分もマシになったみたいだし、これでいいだろう。

「じゃ、時間もあるし俺は行く。」

「そう。ありがとね。」

「...どういたしまして。」

  本当、洗脳が関係なかったら良い奴なんだよな...。









 
 

 
後書き
実際、どうして鈴は二組に転校してきたのでしょう?
シャルもラウラも一組だったのに。(原作に理由が載ってたりしたらすみません。)

そしてとりあえず“展開”をかき乱すためにはっちゃける桜さん。書いてて楽しいです。
原作束さんの外道(?)っぷりを桜は少し持っていたりします。

少し洗脳に関して大体の効果の解説を入れておきます。
・主に記憶を改竄されており、好きになった相手などが秋十から一夏にすり替えられている。
・秋十に対する扱いをひどくさせている。(嫌悪感を抱かせるなど)
・ただし、秋十に対するだけなので、他の男性には特になにもない。
・上記から、桜に対する言動などは特にひどくはなっていない。
...ぐらいですね。
つまり、洗脳を施した際に既に知り合っていた人物(この場合は秋十)への印象を書き換えるだけだったので、桜に対しては普通に接しています。(ただし一夏関係になると分からない) 
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