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IS~夢を追い求める者~

作者:かやちゃ
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第2章:異分子の排除
  第20話「代表決定と和解」

 
前書き
今更ですけど、ISの設定がちょっとオカルトよりになっています。
四属性(四属性だけとは言ってない)のどれかを気質で持ち合わせてるとかオリジナル設定もありますし。
 

 




       =秋十side=



「それでは、一年一組の代表は織斑一夏君に決定です。あ、一繋がりでいいですね。」

  翌日、クラス代表がなぜかあいつになっていた。

「...あのー、なんで俺が代表に?」

「それは他の連中が訳ありでなれない、もしくは辞退したからだ。」

  さすがに疑問に思ったのか、あいつがそう聞くと、千冬姉が答えた。

「俺たちは忘れがちだが企業の人間だ。仕事関連の事もあるし、代表になってられない。」

「....と、建前上の理由はそうだが、実際の所、実力差の関係で代表トーナメントの際に他のクラスの士気に関わるため、やむなくクラス代表は取り下げられた。」

  建前なんだ...その理由。

「そして、オルコットだが...彼女は推薦ではなく、立候補による参加だ。よって、自分から辞退する事も可能だ。だから辞退した。理由としては自身の力不足を痛感したとの事だ。....それと、言いたい事があったのだな。」

「...はい。」

  なにかを決意したような顔で、オルコットが前の方に立つ。

「...皆さん、先日は身勝手な発言と、侮辱をしてしまい、真に申し訳ありませんでした。...昨日の試合で、私は目が覚めました。...どうか、仲直りしていただければ....。」

  しっかりと、気持ちの篭った心からの言葉に、俺は感心する。
  多分、桜さんとの試合で何かが変わったのだろうけど、反省したのなら俺も許そう。

「オルコットはあの試合の後、まず私達に謝罪をしにきた。...詳しくは語らないが、試合中に何かに気付いたのだろう。お前たちも、こいつの誠意に免じて許してやってくれ。」

  千冬姉もそう言ってクラスを見渡す。
  ...まぁ、このクラスの雰囲気からしたら...。

「別にいいですよ~。」

「そうそう、謝ってくれたのに許さないとかそれこそ何様って感じだし。」

「むしろ素直に謝れる方が凄いって言うか。」

  ...とまぁ、こんな感じで、案外軽く流したりする奴ばっかりだ。
  その言葉に、オルコットも嬉しくなったのか...。

「ありがとう...ございます....!」

  感激したような声色で、再び頭を下げた。

「....さて、授業を始めるぞ。オルコットも、許してもらえた事だ。自分の席に戻れ。」

「...はい。謝罪の時間を頂けた事、ありがとうございます。」

  そう言ってオルコットは自分の席へと戻り、授業が始まった。

「(まさかオルコットじゃなくてアイツになるとはなぁ...。)」

  オルコットが辞退するとは思わなかった。

「(....あ、桜さんは大体予想していたみたいだ。)」

  あっ(察し)みたいな顔してるし。絶対そうだな。

「(...で、なぜかアイツは顔を顰めてる...と。)」

  どーせ、また思い通りにならなくて、とか思ってんだろ。

「(...ま、俺には関係ないな。)」

  そんなこんなで、授業は進み、休み時間になる。



「ねーねー!せっかくクラス代表が決まったし、記念パーティー開かない?」

「あ、いいねー!ねぇ、篠咲君達もいい?」

「ん?いいぞ。親睦会も兼ねれるし。」

  女性に近い容姿だからか、既に女子との会話に馴染んでいる桜さん。
  ....それでいいのか?桜さん...。

  それはそうとパーティーを開くのか...千冬姉許可するのか?

「そうだ。どうせなら四組と合同でパーティーってのはどうだ?」

「そっか、四組もクラス代表を決めてたんだっけ?」

「それがいいよ~。」

  どうやら四組とも合同でパーティーを開くらしい。
  マドカ達もいる事だし、俺も楽しみだな。

「...ちょっとよろしいですか?」

「ん....?」

  俺と桜さんに誰かが話しかけてくる。
  誰か確認すると、それはオルコットだった。

「どうした?」

「いえ、個人的な謝罪を...。」

「...俺たち、別にもう謝られなくてもいいんだがな。」

  桜さんもオルコットの事はもう許しているらしく、オルコットにそう言った。

「...これは私なりのケジメです。....すみませんでした。」

「そうか。...おう、いいぞ。これでもう、この前の件は解決だ。」

  オルコットが頭を下げ、桜さんが改めて赦す。

「はい。...えっと、桜さん...と呼ばせてもらってもいいでしょうか?私の事もセシリアと呼んで構わないので...。」

「秋十君と被るから、別にいいぞ?」

  ...オルコットはどうしてそこまで緊張した感じで桜さんと話しているんだ?

「では...桜さん、あの...昨日の試合の事なんですけど...。」

「...“心に水を宿す”って奴か?」

  そういえば桜さんはオルコットに何か教えていたな。
  プライベートチャンネルだったから聞こえなかったけど。
  ...なるほど、それを教えていたのか。

「はい。...できれば、時間の空いた時に教えて頂ければ...と。」

「いいぞ。ただ、他の人も交えてになる事が多いが。」

「よ、よろしいんですの!?...あ、ほ、他の方々を交えるのは構いません!」

  嬉しそうにするオルコット。...うーん、やはりどこか雰囲気が...。

「ああ。なんなら、心得ぐらいなら今日からでも...あ、今日は親睦会を兼ねた記念パーティーを開くんだったな。...明日からでも教えられる。」

「ありがとうございます...!」

「どういたしまして。...と、そろそろ時間だし、席に戻っておいた方がいいぞ?」

「あ、そうですわね。では、桜さん、また後で...。」

  そう言ってオルコットが席に戻った辺りでチャイムが鳴る。







「では、これよりISの基本的な飛行操縦を実戦してもらう。織斑、オルコット、篠咲兄、弟、試しに飛んでみろ。」

  ISの実践による学習にて、俺たちは見本になることに。

「分かりましたわ!」

「了解。」

「分かりました!」

  オルコット、桜さん、俺の順に、一瞬でISを纏う。
  しかし、アイツはなぜか手間取っているようだ。

「早くしろ!熟練したIS操縦者は、展開まで一秒とかからないぞ。」

  千冬姉に言われて、ようやく展開する。
  ....アイツ、あんなので俺に楽勝だと思ってたのか?

「よし。...飛べ!」

  千冬姉の合図に、俺たちは飛ぶ。
  しかし、アイツはまだ慣れていないのか、軌道がおかしかった。

【遅い!スペック上の出力なら、白式の方が上だぞ。】

  俺たちに呼びかけるための通信で、アイツは少し叱られる。
  ...そういえば、一応最終世代なのを隠すために制限してる俺たちのISは、スペックでは第三世代で白式よりは若干劣るって束さんも桜さんも言ってたっけ?

【そう言われても...自分の前方に角錐を展開させるイメージだっけ...?】

【...イメージは所詮イメージ。自分のやりやすい方法でやるのが一番手っ取り早いぞ。織斑。】

  なんかモタモタしているアイツに、桜さんが一言アドバイスする。
  アイツは少しムッとした表情をするが、アドバイスはアドバイスとして受け取った。

【理論的な思考で飛ぶ奴もいれば、それこそ空想上の物を思い浮かべて飛ぶ奴もいる。..俺の場合は“自由に動ける”事をイメージしてるな。これでも上手くいく。】

【....そのイメージ、言葉では簡単に言えますけど、実際にイメージして飛ぶのは相当難しいですわよ?...さすが桜さんですわ。】

  オルコットが桜さんを称賛している。
  ...やっぱり、オルコットの桜さんに対する態度が俺らと少し違うような...。

【俺の場合は“飛ぶ”よりも“跳ぶ”方が性に合ってるからな。別に普通に飛ぶこともできるが、地上を駆ける時のように動ける方が俺はやりやすい。】

「【あ、わかりますそれ。今まで体を自由に動かした飛ぶ事がなかったので、やっぱり“跳ぶ”方がやりやすいです。】」

  飛ぶ時の動きが桜さんと似てると思ったら、同じような考えで飛んでたんだな...。

【...私としては、跳躍のイメージであそこまで動ける方が驚きですわ...。】

【そこは個人の感性にもよるな。...っと、そろそろ次の指示だ。】

  千冬姉が通信機を使おうとしていた。
  ...どうしてタイミングが分かるんですか...。

【織斑、オルコット、篠咲兄、弟、急降下と完全停止をやってみせろ。目標は地表から10㎝だ。】

  千冬姉の指示を聞く。
  ...地表から10㎝って...慣れてないアイツにはきつくないか?

【了解しました!では、お先に。】

  まずはオルコットが急降下し、上手い事停止する。
  誤差もほとんどなく、やはり優秀なのだと理解させられる。

【じゃあ、次は俺が行く。秋十君も頑張れよー。】

  次にお気楽な感じにそう言ってから、桜さんが急降下した。
  もちろん、あの人が失敗などする事もなく、簡単に停止する。
  ...ちゃんと見本になるようにオルコットと少し違うだけのやりやすいやり方にしてるな。
  俺にはそんな器用な事できないんだが...。

【秋十君、別に見本になる必要はない。自分のやり方でやってみろ。】

「【は、はい!】」

  次々と急降下するのについていけないアイツを放置し、俺も急降下する。
  ...俺には桜さんのような柔軟な思考は咄嗟にはできない。
  しかも、飛び方もさっき言った通り“飛ぶ”ではなく“跳ぶ”方が得意だ。
  それでは完全停止のやり方が桜さん達のように上手く行かない。
  ならば.....!

「.....っ!」

  “停止”するのではなく、地表から10㎝の所に“着地”すればいい。
  こっちの方が俺はやりやすい。

「馬鹿者。そのような見本では負担がかかるぞ。...お前なら無事でも。」

「は、はい、すいません...。」

  しかし、やはりやり方は見本には向いていなく、怒られた。

「(桜さん..!やっぱりダメじゃないですか...!)」

「(...てへぺろ?)」

  怒られるのも少し予想していたのか、なんかぶりっ子みたいな事をする桜さん。
  ....無駄に容姿と相まって違和感がないですからやめてください。

「ぁあああああっ!?」

     ―――ドォオオオン!!

「爆撃!?」

  つい突然聞こえた音にそう言ってしまう。
  ...実際はアイツが地面に突っ込んだからだけど。

「馬鹿者!誰がグラウンドに穴を開けろと言った!」

「す、すみません...。」

  当然、俺よりも強く怒られる。
  しかも、穴を埋めておくように言われたようだ。
  ...ま、自業自得だし、千冬姉は厳しいからどうなったって俺は知らん。









       =桜side=



「織斑君のクラス代表になった記念に...かんぱーい!!」

「「「「「かんぱーい!」」」」」

  放課後、食堂の一部を借りてささやかな記念パーティーを開いた。
  どうやら、これぐらいの規模なら千冬もむしろ歓迎らしい。

「ねーねーさくさく~、楽しんでるー?」

「本音か。一応な。あまりこういうパーティーとかする機会ないし。」

  なんとなく秋十君と隅の方に移動しておいたら、本音が寄ってきた。
  しかもクッキーを頬張りながら。

「あっ、いたいた!おーい!秋兄ー!」

「桜さーん!」

  すると、マドカちゃんとユーリちゃんがやってきた。
  ....って、隣にいる子は....。

「あ~っ!かんちゃんだー!」

  確か、生徒会長の妹でユーリちゃんの友達になった更識簪ちゃんだっけな。

「なんで秋兄たちはこんな隅に?」

「...できれば目立ちたくないからかな?」

  一応、俺たちはメインじゃないからな。必要以上に目立っても良い事はない。

「あの....。」

「うん?」

  ふと声を掛けられたので、振り返ると、そこにはセシリアが立っていた。

「私もご一緒してよろしいでしょうか?」

「いいが...俺たちの言えた事じゃないが、パーティーの中心の方に行かなくていいのか?」

  確か、セシリアは貴族でもあったからこういうパーティーには慣れてるはずだが。

「....失礼な言い方ですけど、どうも織斑一夏は好きになれません。」

「....一応聞くが、理由は?」

「何かと私をいやらしい目で見てきますし、何より、何か企んでいるように見えるからですわ。」

  ふむ...勘が良いなセシリアは。まぁ、そういう輩とは会った事あるんだろう。
  貴族の娘だからそう言う事はあってもおかしくはない。

「ま、その判断は概ね正解だと思うがな。」

「そうですか。...ところでそちらの方々は?」

  セシリアはマドカちゃん、ユーリちゃん、簪ちゃんを向いてそう言う。

「四組の同僚って所か?一人は違うけど。ちなみにマドカちゃんは秋十君の妹でもある。」

「篠咲マドカだよー。」

「...更識簪。その...よろしく。」

「え、えっと...ユーリ・エーベルヴァインです。」

  ...うん。簪ちゃんとユーリちゃんはもうちょっとナチュラルに自己紹介できればな...。

「エーベルヴァイン...?エーベルヴァインは確か...。」

「っ....!」

「...セシリア、悪いがあまり詮索しないでやってくれ。」

「わ、わかりましたわ...。」

  ユーリちゃんの表情が変わったので、少し語気を強めてセシリアを止める。
  セシリアも俺とユーリちゃんの様子を見て、何か事情があると察して、これ以上は聞かないようにしたようだ。

「....気を取り直して、せっかくだからこのパーティーを楽しもうか。」

「...そうですね。せっかくですし。」

  各々パーティーで用意されたクッキーとかを食べだす。
  ...さっきの事はあまり気にしないようにしたみたいだ。

「....あ、上級生にインタビュー受けてる。」

「ありゃ、俺たちの所にも来るな。」

  俺たちは新聞部にインタビューされている織斑一夏の方を見ながらそう言う。
  なんか話題の新入生がどーとかこーとか聞こえたし。
  十中八九、男性操縦者についてだろう。

「あ、いたいた!新聞部でーす。ちょっと噂の新入生二人と四組代表にインタビューしたいけどいいかな?」

「はぁ...構いませんが。」

  俺も別に構わない。
  ...ただし、捏造しなかったらだけどな。

「二人はどうしてクラス代表を辞退したの?」

「まぁ、企業の専用機ですからね...。テストとしての側面が強いし、企業の仕事もあるのでそういう事はやらない方が...と言う訳で辞退したんです。」

「なるほどなるほど...。あ、セシリアちゃんはなんでかな?」

  今度はセシリアにも聞く。俺と対戦したからだな。

「単純に自身の未熟さに気付かされましたから...。あのまま代表になっていたらまた調子に乗っていたと思いますので。」

「そっかー。...んー、真面目すぎるなぁ。ま、そこら辺はこっちでちょちょいと...。」

「捏造はやめてくださいね?したら織斑先生に言っておくので。」

「ごめんなさいやりません!」

  さすが千冬だ。名前を出しただけで上級生がこうなるとは。

「次にえっと..ユーリちゃん!」

「は、はいっ!」

  あ、やっぱりインタビューだからか、緊張してるな。

「めでたく四組の代表になった訳だけど...なにか意気込みはある?」

「え、えっと...く、クラストーナメントでは優勝するつもりですっ!」

「おお~!言ったねぇ。可愛さもあるから、良い記事になりそうね!」

「え、あっ、い、今のなしです~!?」

  緊張のあまり思い切った事を言ってしまったユーリちゃん。
  ...んー、俺たちが出る訳じゃないから、案外優勝できると思うがな。

「次にそんなユーリちゃんと試合をしたマドカちゃん!ユーリちゃんと対戦してどうだった?」

「あ、やっぱり私にも来るんだ。...んー、純粋に強かった...かな。前に戦った時は簡単に勝てたんだけど、昨日のあの試合では本当に強いと思ったよ。油断してたら負けてたし。」

「かなりの高評価!これはますます頑張らないとだね、ユーリちゃん!」

「あぁぁ...!恥ずかしいですー!」

  赤くした顔を両手で覆うユーリちゃん。
  そんなユーリちゃんを、周りの人は皆微笑ましそうに見ていた。

「じゃあ最後に専用機持ちで写真を撮るよ!さぁ、寄って寄って!」

「え?えっ?」

「秋兄!一緒に撮ろ!」

  困惑するユーリちゃんに、結構ノリノリなマドカちゃん。
  セシリアと簪ちゃんも戸惑いはしたが、写真に写るように寄ってきた。

「ほら、ユーリちゃん。」

「あっ...さ、桜さん!?」

  まだ困惑していたユーリちゃんの手を掴んで引き寄せる。
  ...周りから黄色い声が上がったけど無視だ。無視。

「じゃあ撮るよー。はい、チーズ!」

  その言葉と共にシャッターが切られる。
  なお、その瞬間に周りにいた女子が何人か写真に写ろうとしていた。
  ...まぁ、記念だしいいか。

「...っと、俺、少し席を外すわ。適当に楽しんでおいてくれ。」

  とある集団を見つけたので、俺は席を外す。
  そして、その集団の方へ歩いて行く。



「よっ。」

「あっ、桜さん。」

  その集団は、所謂教師組。
  今は一組と四組が集まっているので、それぞれの担任、副担任もいるって訳だ。
  つまり、千冬と山田先生の他にアミタとキリエもいる。

「なんだ、あそこの集団にいなくていいのか?」

「いやー、せっかくだから俺も年上組にってな?」

  別に秋十君達と一緒にいてもいいが、こっちもこっちで面白そうだ。

「アミタとキリエはちゃんとやれてるか?」

「ええ、まぁ、まだ慣れてませんけど。」

「私は結構楽しいわよ~。」

  アミタとキリエはグランツさんの娘で、会社には実は所属していない。
  ほぼ所属しているように見えるが、それは女尊男卑によって居場所を失いかけたグランツさん(それとジェイルさん)を保護する時に、家族も...という訳で保護していただけである。
  つまり、仕事がなかった訳だ。
  だから今はIS学園の教師をしている。

「お知り合いなんですか?」

「パパの友人だからね~。パパの仕事関係で結構お世話になったし。」

「あの時はありがとうございました。」

  グランツさんを雇って保護した時の事を、アミタは改めてお礼を言ってくる。

「今更いいよお礼なんて。うちもうちで社員が欲しかったし、間が良かったんだよ。」

「いや、でも私達だってこうやって教師に...。」

「...俺はクラスは違えど生徒だけどな。」

  ...うん、なんだこの関係。俺は恩人だけど生徒って...複雑だな。

「そういえば一応聞いておきたいんですけど、織斑先生との関係は...。」

「ん?幼馴染だけど...。」

  敬語がなくなってるって?一応、勤務外時間だからいいんだよ。

「や、やっぱり....!」

「....どうした山田先生。なぜそんな化け物を見るような目で見る?」

「あ.....。」

  俺と千冬をそんな目で見てしまった山田先生は、千冬にアイアンクローを喰らった。

「それにしてもユーリ、強くなりましたよね~。」

「ああ。ユーリちゃん自身、勝とうと思ってたみたいだしな。」

  山田先生の悲鳴をBGMに、アミタ達と雑談を始める。

「あぁ、会社のマスコットがどんどんと高嶺の花に...。」

「なに言ってるんですかキリエ...。」

「ははは。まぁ、ユーリちゃんなら大抵は分け隔てなく接してくれるけどな。」

  邪な考えさえ抱かなければ...だけど。

「...ま、皆と親しくなれてよかったって思ってるよきっと。」

「...そうですね。」

「そうよね~。」

  IS学園に来てよかった。...そう、ユーリちゃんにも思ってもらえたら嬉しいな。

「あいたたたたたたた!織斑先生!無理!無理です!」

「...ふん、不用意な発言は控えるようにな。」

  ...と、千冬の方も終わったみたいだな。

  この後は、大人組としてささやかに盛り上がった。





       =秋十side=



「篠咲弟、後で話がある。」

  パーティーも終盤に差し掛かった頃、なぜか千冬姉に呼ばれた。

「...?分かりましたけど...。」

「場所は...そうだな。お前たちの部屋、1024号室だ。」

「えっ?桜さんは....。」

「んー?俺は席を外しとくよ。」

  そう言って一度桜さんは千冬姉に近づき...。

「(....決心したんだな?)」

「(...ああ。)」

  俺には聞こえなかったが、何かを言ったみたいだ。千冬姉も頷いていた。

「...一体なんの話なんだ...?」

  気になる...が、桜さんも分かっている事だ。
  きっと、悪い話じゃないだろう。

「...さて!そろそろパーティーは終了だ!きっちりと片づけるようにな。」

  千冬姉がそう言って、皆パーティーの片づけを始める。

「(...話...か。)」

  千冬姉とまともに話をしたのって、いつだったっけな...?







「篠咲、入るぞ。」

「..っと、そういう訳だ。俺は席を外す。」

「はい。」

  千冬姉が入ってくると同時に桜さんは席を外す。

「.......。」

「.......。」

  俺と千冬姉の間に、沈黙が走る。

「...えっ...と...話とは....?」

「っ.....。」

  ...なんだろう、いつも見てきた千冬姉と違うような...。
  でも、どこか懐かしいような....っ!?

「え、ちょ、ちふy..織斑先生!?」

  突然千冬姉は俺に抱き着いてきた。

「...すまない...!すまなかった....!」

「え.....?」

「私が...私が不甲斐ないばかりに...!」

  抱き着き、涙を流しながら、千冬姉は俺に謝ってきた。

「(まさか...洗脳が解けて...!?)」

「すまない...!すまない秋十...!」

  間違いない。明らかに千冬姉は洗脳が解けている。

「(桜さん...いつの間に...。...ありがとうございます。)」

  多分桜さんが解いたのだと思い、心の中でお礼を言っておく。





「...とりあえず、コーヒー淹れるよ。」

「...すまない。」

  ある程度落ち着いた千冬姉に、コーヒーを淹れてあげる。

「...俺としては、これからはかつての時のように接してくれればそれでいいよ。」

「だが、私は...。」

「千冬姉は悪くない。」

  悪いのは洗脳なんて事をしたアイツだ。

「確かに、当時はどうして千冬姉があんな事を...って思ったりもしたさ。だけど、今は桜さんに原因を教えて貰ったから、千冬姉には別になんの怒りも抱かないさ。」

「そう...か...。」

  ...なんか、ここまで縮こまっている千冬姉なんて新鮮だな。

「...それにしても、いつの間に桜さんは千冬姉の洗脳を解いたんだ?」

「...ん?聞いてないのか?」

「えっ?」

  あれ?なんか話が食い違っているような...。

「.....なるほど。そう言う事か...。」

  千冬姉は何か納得し、扉の方へ歩いて行く。
  ....今、足音が二つしたような...。

「桜!それと束!」

「に、逃げろ~!」

「やっぱこうなったか~!!」

  ....桜さんはともかく、なんで束さんがいるんですか...?
  IS学園のセキュリティどうなってんだ?いや、束さんなら侵入できるのか?

「桜!貴様、態と黙っていたな!」

「その方が面白いと思ったんだ!」

「束!なぜここにいる!」

「ちーちゃんが謝ってる所を見たかったから!」

  どっちも動機が不純ですね!?









  ...その日、織斑先生が侵入者を追いかけていたという噂が立ったが...俺は聞かなかった事にした。







 
 

 
後書き
今回はここまでです。
アニメだとパーティーの時間帯(おそらく夕方)に鈴がやってきてますが、アニメと展開が変わらないので、この小説ではそのシーンを省きました。 
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