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遊戯王ARCーⅤ 〜波瀾万丈、HERO使い少女の転生記〜

作者:ざびー
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二十一話 ー揺れる眼差し、ですー

 
前書き
秘密の呪文:亀トカゲ猿マジシャン

手札が減らない魔法の呪文。
エンタメ()はほどほどにしましょう(力説)!

 

 
LDS襲撃事件から既に数日が経ち、優希は平穏な日常を取り戻していた。
だが真澄含め、いつもの三人は例の襲撃犯ーー黒咲 隼と言うらしいーーから受けたダメージが完全には回復しておらず、もう少し療養が必要らしい。だが、舞網チャンピオンシップには問題なく出場できるとのこと。

真澄に至っては、襲撃事件の事に対して何も感じていないのか首洗って待ってなさいよね!と優希に宣戦布告するあたりかなり元気である。

そして、現在優希はと言うと……

「なぁ、優希よ。少し考え直してみないか?」

「…………」

応接室で塾長と二人、向かい合って話し合いをしていた。真剣な話をしているらしく優希はだんまり。塾長もいつもの熱血ぶりは何処へやらだいぶ落ち着いている。

「確かにお前は強いし、うちに居てもデュエルの腕が上達するわけじゃないかもしれないが……」

応援ややる気を出させる事はともかく、説得や心理戦などが苦手である塾長はなかなか優希の意思を変えられず、困ったように後頭部を掻いていた。

「お前が辞めれば、きっと弟くんや他の奴らも悲しむぞ?それにデュエルだって強くなる事だけが全てじゃないだろう?」

「はい。けど、何言われても意思を変えるつもりはありませんので」

いつになく冷静な態度で塾長に返答すると席を立つ。そして、踵を返し、出口へと向かう間塾長が何か言った気がするが、全て無視をする。そして、扉の前まで来ると振り返り一礼

「……短い間でしたが、お世話になりました」

「おいおい、今生の別れじゃないんだから……」

暗いトーンの塾長の声を聞き流しながら、ドアノブへと手をかける。そして、いざ去ろうと開けた途端……

『おわっ!』
「グェッ……⁉︎」

驚きの声と共に人が雪崩のように倒れ込んでくる。盗み聞きをしていた事は火を見るよりも明らかだ。
他の連中に押しつぶされた遊矢から情けない声が聞こえてくるが報いなので無視する。

段積みになって倒れている人山に冷やかな視線を向け見下ろしていると、一番下で押しつぶされていた遊矢がもぞもぞと動き出し山から抜け出すと機敏な動作で優希の両肩を捕らえると問い詰める。

「お、おい!優希!おまっ、遊勝塾辞めるってホントかよっ⁉︎」


余りの剣幕に表情を引きつらせるが首を縦に振り、発言を肯定する。だが、それが余計に遊矢をヒートアップさせる。

「お前、あれだけジュニアユースを楽しみにしてたじゃんか!なのになんでこの時期に……。確かに色んな召喚が使えるし、こんな塾で学ぶ事なんかないと思うけど、「オイ、コラ!」……うげっ」

こんな塾呼ばわりした遊矢が塾長のゲンコツをもらい、頭を抑える。アレは痛そうだなーと楽観的に考えている一方で、痛みで冷静になったのか遊矢は慎重な声音で訪ねてくる。

「……理由は、言えないのか?」

「……ごめん」

確かに理由はある。けど、話せない。

ごめんと謝ると遊矢は諦めたのか口を噤んでしまう。他のメンバーも空気を読んで、私と遊矢のやりとりには口を挟んでは来なかった。

「じゃね」

「待ってくれ!」

沈黙が痛くて立ち去ろうと出口へと向かった時、ぐっと腕を掴まれ止められる。掴んでいたのは、やはり遊矢でその表情は俯いてわからないが何かの決意を決めた事が分かった。

「……俺と、デュエルしろ」

「は?」

「俺が負けたら、お前の言う事をなんでも聞いてやる!ただ、俺が勝ったら塾に残れ!」

「「「なっ!?」」」

余りにも大博打に一同絶句する。だがこちらを見据える瞳は真剣そのもの。彼の決意が生半可ではない事が伝わってくる。

「……なんでもとは、大きく出たね」

「あぁ。だけど、俺も強くなった!それに俺は理由も聞かずに辞めされられないんだ!」

「……ふーん。まぁ、いいよ」

こうして遊矢との二度目のデュエルを行うことになったのだった。

◆◇◆

「おーし、それじゃ始めるぞ。二人ともー!」

スピーカーから塾長の声が聞こえてくる。一方で向かい側に立つ遊矢はやる気十分で、ストレッチをして時間を潰しいる。

「いくぞー。アクションフィールドオン!『異次元の古戦場』、発動!」

リアルソリッドビジョンが発動されると共に。アクションフィールドが宇宙のような青と黒に彩られた異世界へと風景を変える。
遊矢と優希、二人が乗る大きめの足場の他には小さめな岩の足場や宇宙船の残骸と思わしき鉄塊が周囲を浮遊している。

「……おいおい」

誰となしに呟くと表情を歪める。そして、脳裏に浮かぶのは色々とアレなシーン。

「優希は初めてだと思うから、忠告しておくがここのアクションカードにはアクショントラップとかデメリット効果持ちのアクションマジックも混じってるから気をつけろよ」

「でしょうね〜」

遊矢の忠告に苦笑いを浮かべる。

「じゃあ、始めよっか。闘いの殿堂に集いし決闘者が!」

「モンスターとともに地を蹴り、宙を舞い、フィールド内を駆け巡る!」

「見よ、これぞデュエルの最終進化系!アクションーー」

決闘(デュエル)‼︎』

「先行は貰った!」

先行を取った遊矢は五枚の手札を確認すると笑みを浮かべる。
そして、両腕を上げ、対戦相手である優希と客席から観ている皆に向けて向き合う。

「さぁさ、お立ち会い!榊 遊矢の十八番、ペンデュラム召喚をご覧いただきましょう!
といきたいところですが、まずは下準備が必要です!
ライトペンデュラムスケールに『EM ギタートル』、レフトペンデュラムスケールに『EM リザードロー』をセッティング!」

デュエルディスクに二枚のカードを置くと共に左右に光り輝く柱が立ち上り、客席からよしと意気込む声が聞こえてくる。

「『EM ギタートル』の効果発動!もう片方のペンデュラムスケールに『EM』ペンデュラムモンスターがセットされた時、デッキから一枚ドローできる。さらに、セッティング済みの『EM リザードロー』の効果発動!もう片方のペンデュラムスケールに『EM』ペンデュラムモンスターがセッティングされている時、このカードを破壊する!」

ガラスが砕けるような音と共に片側の光柱が消失しつする。

「なんで?せっかくペンデュラム召喚できたのに!?」

「おぉと、ご心配なく!リザードローを破壊したことでデッキからドローできるのです!ドロー!」


「一気に二枚ドロー……」
「すごい、遊矢にいちゃん!」


前回デュエルした時より、はるかにペンデュラムカードの扱いがうまくなっていることに客席で観戦しているメンツから歓声が上がる。


「レフトペンデュラムスケールにスケール1『EM モンキーボード』をセッティング!
さらに、モンキーボードの効果発動!このカードはペンデュラムスケールにセットしたターン、デッキからレベル4以下の『EM』モンスターを手札に加えられる。俺は『EM ドクロバッド・ジョーカー』を手札に加え、そのまま召喚だ!来い、ドクロバッド・ジョーカー!」

黒と紫色を基調とした道化服に身を包んだ少年が紙吹雪を散らしながら、フィールドに現れる。
そして、シルクハットに手を突っ込むと、何かを取り出し遊矢へと投げ渡す。

「ドクロバット・ジョーカーの効果により、デッキから『EM ペンデュラム・マジシャン』を手札に加える」

ドクロバット・ジョーカーが投げたカードを難なくキャッチすると、準備が整ったと言わんばかりにほくそ笑む。

「さぁ、会場の紳士淑女の皆様、ご注目!待ちに待ったペンデュラム召喚のご時間です!」

ビシリと天から吊るされ、微かに揺れる水晶の振り子を指差すと声高に叫ぶ。

「スケール1の『EM モンキーボード』、スケール6の『EM ギタートル』がセッティングされていることにより、レベル2から5までのモンスターを同時に召喚可能!」

水晶が一際強く輝くと共にグンっと揺れ幅が大きくなり、光の軌跡が幾何学的な紋様を描く。

「揺れろ!魂のペンデュラム!天空に描け、光のアーク!ペンデュラム召喚!」

光が溢れ、3つの光球が遊矢の目の前へと降り立つ。

「手札より『EM ペンデュラム・マジシャン』、『EM シルバークロウ』!エクストラデッキより『EM リザードロー』を特殊召喚!」

「来た!」

「痺れるぅぅぅ〜!」

遊矢の十八番、ペンデュラム召喚に歓声が上がる。モンスターを三体召喚したにも関わらず、まだ遊矢の手札は三枚も残っている。
遊矢は、召喚したばかりのシルバークロウに跨るとフィールドへと散らばるアクションカードを獲得しに駆け出していく。

「特殊召喚に成功した『ペンデュラム・マジシャン』の効果発動!自分フィールド上のカードを二枚まで破壊し、その数だけデッキから『EM』モンスターを手札に加えられる。俺はスケールにセットされているモンキーボードとギタートルを破壊!そして、デッキから『EM モンキーボード』と『EM リザードロー』を手札に加える!」

「やるね……」

ペンデュラム・マジシャンの持つ振り子が光輝く。
ペンデュラムスケールを破壊し、手札を補充するOCGさながらの戦術に優希は額に手を当て、呻く。


「まぁ、いくらモンスターを召喚したところで先行は攻撃できないけど……、あった!」

浮島に飛び乗ると共にそこに置かれていたカードを手に取り、発動させる。、

「アクションマジック『りゅうせい』!自分フィールドモンスター一体につき、200ポイントのダメージを相手に与える!」

「遊矢のフィールド上のモンスターは四体だから、800ポイントのダメージ!」

発動されたアクションカードから光線が優希に向かって放たれる。だが、

「効果ダメージが発生した瞬間、手札の『ガード・ペンギン』の効果発動!

優希に直撃する寸前に装甲を纏ったペンギンに防がれる。

「このカードを特殊召喚し、さらに受けたダメージ分ライフを回復する。残念だったね」

「くっ、一筋縄にはいかないよな。俺はコレでターンエンドだ」

先制ダメージを与える事に失敗し、少し落胆した表情を見せるとターンを終える。

「私のターン、ドロー!『召喚僧サモン・プリースト』召喚し、自身の効果で守備表示に変更する。さらに手札から魔法カードを捨て、サモンプリーストの効果発動!デッキから『E・HERO シャドーミスト』を特殊召喚!さらに、シャドーミストの効果発動!デッキから『チェンジ』速攻魔法を手札に加えるよ!私は、『マスクチェンジ』を手札に加える!」

早々と優希のフィールドにレベル4のモンスターが三体並ぶ。
ギャラリー達は遊矢のペンデュラム召喚とは別の召喚方法が行われる事を予想し、ワクワクに胸を高まらせる。

「いくよ、遊矢!私はレベル4の『ガードペンギン』と『召喚僧サモンプリースト』でオーバーレイ・ネットワークを構築!」

優希の口上に反応し、銀河を彷彿とさせる輝く渦が現れる。そして、素材となるモンスター二体がそこへと吸い込まれると渦の中心から激しい光の奔流が放たれる。

「エクシーズ召喚!百発百中の狩人!ランク4『鳥銃士カステル』!」

肩に猟銃を担いだ狩人姿の鳥人が現れる。この世界では、希少なエクシーズ召喚にオォ!と確かな歓声が聞こえてきて、つい嬉しくなる。
だが楽しませるばかりでは勝てないのは、必然。デュエルは勝たなければ意味がない。

「オーバーレイ・ユニット二つを使用し、カステルの効果発動!」

カステルの周りを浮遊する二つの光球が銃口へと吸い込まれていく。そして、狙いをペンデュラム・マジシャンに定めるとトリガーを引く。

「ペンデュラム・マジシャンをデッキへと戻す!放てぇ‼︎」

「なっ⁉︎」

ドーンッと激しい音を立てて、銃弾が発射される。撃ち抜かれたペンデュラム・マジシャンは、デッキへと戻され消えていく。

「ペンデュラムの弱点その一。デッキへと戻されると召喚出来ない」

「くっ」

重要なサーチカードをデッキへと戻され、やられたと顔を顰める。もっとも下級EMをサーチできるモンキーボードがいるのですぐに手札へと加えられてしまうが、そのためのダークロウがいる。


「さて、バトルフェイズに移行!シャドーミストでリザードローを、カステルで、ドクロバット・ジョーカーを攻撃!」

「ぐぁ!」

遊矢:ライフ3800


ドクロバット・ジョーカーを貫通した銃弾が遊矢に被弾し、200だけだがダメージを与える。


「私はカードを二枚伏せ、ターンエンド」


「俺のターン、ドロー!まずは、これだ。『EM ギタートル』、『EM リザードロー』をペンデュラムスケールにセッティング!
『ギタートル』のペンデュラム効果発動!ペンデュラムスケールに『EM』モンスターがセットされた事で一枚ドローする!さらに、リザードローのペンデュラム効果発動!」

「その瞬間、シャドーミストを墓地に送り『マスクチェンジ』発動!
変身召喚!!来い、『M・HERO ダークロウ』!」

シャドーミストが光に包まれ、闇を纏った異形の戦士へと変身する。それと同時に自身の効果で破壊されたリザードローがエクストラデッキへと置かれず、除外されてしまう。

「なっ!?」

「ペンデュラムの弱点その二。ペンデュラムカードがエクストラデッキへと戻る場合、フィールドから墓地に送られる時のみ。よって除外される状況下ではエクストラデッキには戻れない‼︎」

「だ、だけどリザードローの効果でワンドローだ!」

弱点を露見させられ、焦るもドローは忘れない。デュエルの腕前だけではなく精神面でも成長したようだ。

「もう片方のペンデュラムスケールに『EM モンキーボード』をセッティング!そして、モンキーボードの効果によりデッキから『EM チアモール』を手札に加える」

「その瞬間、ダークロウを効果発動!ランダムで手札を除外してもらうよ!」

「くっ、だがこれで準備は整った!」

二つのペンデュラムスケールが揃ったことにより、遊矢のデュエルディスクに『PENDUIUM』の文字が浮かび上がる。

「俺はセッティング済みのスケール1『EM モンキーボード』とスケール6『EM ギタートル』でペンデュラム召喚!来い、俺のモンスター達!」

「エクストラデッキより『EM リザードロー』手札から『EM パートナーガ』、『EM チアモール』を守備表示で特殊召喚だ!」

遊矢のフィールドはEMモンスターに埋め尽くされる。だが、どれも私のダークロウには届かない。

「俺はパートナーガの効果発動一ターンに1度、モンスター一体の攻撃力を俺のフィールド上の『EM』モンスター数かける300ポイントアップさせる!そして、これはペンデュラムゾーンに置かれているカードも含める!
俺はシルバークロウを選択し、1400ポイント攻撃力をアップだ!そして、チアモールの効果を発動する!!元々の攻撃力より攻撃力の高いモンスターの攻撃力を1000ポイントアップする!」

二体のモンスターの支援を受け、シルバークロウの攻撃力は4200!

「バトルだ!シルバー・クロウでダークロウを攻撃だ!さらにこの時、『EM』モンスターの攻撃力を300ポイントアップさせる!」

「っぅ……!だけど、私が戦闘ダメージを受けた事で手札の『BK ベイル』の効果発動!」

「また、手札からか!」

一対となる円形の盾を装備した戦士が召喚され、同時に私に与えられたダメージが回復していく。

「ベイルの効果により、受けたダメージ分ライフを回復する!」

「せっかく与えたダメージが!」

「姑息な手を!」

どっちがだ、とはあえて突っ込まない。

「俺はペンデュラム・マジシャンとチアモールをリリースして、『オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン』をアドバンス召喚!」

「来た!遊矢さんのエースモンスター!」

「俺はカードを一枚伏せ、これでターンエンドだ!いくぞ、オッドアイズ!」

遊矢が信頼を置くドラゴン、ペンデュラム・ドラゴンが召喚され客席から声援が響く。シルバー・クロウからペンデュラム・ドラゴンへと乗り換えた遊矢は観客へ向けて手を振りつつアクションフィールドを駆けていく。

「私のターン、ドロー!『RUM(ランクアップ・マジック) リミテッド・バリアンズ・フォース》』発動!私はランク4のカステル一体でオーバレイ・ネットワークを構築!」

「ら、ランクアップ!?」

「まだそんな隠し玉があったの!」

驚く遊矢たちを尻目にカステルが光に呑まれ、新たなモンスターへと生まれ変わる。

「満たされぬ魂の守護者よ、暗黒の騎士となって光を砕け! S・H・Dark Knight!」

不死にて不滅。漆黒の騎士が赤黒い光彩を放つ槍を携え、古戦場へと降り立つ。

「さぁ、本当の勝負はこれからだよ!」

いつにもなくやる気の優希は声高らかにそう宣言した。 
 

 
後書き
vs遊矢二戦目。
長くなりそうなので二話に分けました。

遊矢君、『闇落ち洗脳をデュエルで救済(予定)』とか、完全に遊戯王におけるメインヒロインの立ち位置じゃないですか……()
シンクロ次元編、ラストはどんな展開になるんでしょうかね?ワクワクが止まりませんね。
 
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