遊戯王ARCーⅤ 〜波瀾万丈、HERO使い少女の転生記〜
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二十話 ー復讐のダーク・ヒーローⅡ、ですー
前書き
vs不審者、決着です。
主人の危機を察し、デスガイドが優希への下へと駆けつけた時には、既に敵の攻撃宣言が行われ、敵へトドメを刺さんと流星の如き一筋の光が夜空を裂き、優希目掛け急降下していた。
それを無感情に見つめる優希は、度重なるダメージによりボロボロで、ポニーテールに纏められていた栗色の髪もほどけ、無造作に肩へと垂れ下がっていた。
「……っ⁉︎……ッ⁉︎」
ボロボロになった優希を見て、一瞬邪まな気持ちが芽生えるが今それを解放させてしまえば、今まで数々の誘惑に耐えてきた自分の努力が水泡になるッ⁉︎、とギリギリで自分を律することに成功する。
「……ヤバッ!」
状況把握や、欲望の制御に時間を取られている、数秒の間に破壊の閃光はすぐそこまで迫っていた。
流石に弱った少女を破壊光線染みた攻撃を食らわせるわけにはいかないと決起し、棒立ちの優希を抱き込むようにして、攻撃範囲を逃れようとする。
「っ……ぁぁ⁉︎」
直後、背中を火で炙られたかのような激痛とソリッドビジョンでは発生し得ない衝撃が襲いかかる。
だが、デスガイドは激痛に苦悶の表情を浮かべるも腕の中にいる少女を抱きしめ、攻撃の余波からその身を庇う。
「……はぁはぁ、大丈夫、ですか?」
「です、がいど……?」
安否を確かめる為、声をかけると優希は焦点の合わない瞳を向けられ、困惑気味に名前を呼ばれる。
(そ、その表情は……反則ですよ‼︎)
その姿にときめきを覚えて、手を出してしまいそうになるが今ヤッたら全てが台無しになると心に刻み込み、己を自制する。
だがデスガイドがそんな事をしている間に、優希は既に満身創痍の体を無理やり起こし、立ち上がる。
「っ!優希さん⁉︎」
「大丈夫、……まだ闘える」
「っ!……ゆうきさん」
そう言うものの立ち姿はフラフラとしていて酷く危なげない。やめてください‼︎と言いかけるが、優希の真剣な眼差しを見て言葉を噤む。経験上、一度やると言ったら聞かないと知っているデスガイドは優希を止める事を諦める。そして、
「なら……、絶対に勝ってくださいね‼︎」
「……うん!」
力強く頷くと、デュエルディスクを構え直し今一度敵へと向かう。
◆◇◆
「なぜ、まだ倒れていない……!」
辺りを覆っていた砂煙が晴れ、毅然とした姿で此方へと闘志を向けてくる優希の姿に男は狼狽する。
『RRーサテライト・キャノン・ファルコン』で攻撃力を0にした『E・HERO Theシャイニング』を攻撃した時、残りのライフは2800。そして、サテライト・キャノン・ファルコンの攻撃力は3000。
攻撃は確実に決まったという事は相手が先ほどよりもはるかに疲弊している事から伺える。だが、残りのライフは1000ポイント減った1800ポイント。
「こいつ、何をした……」
何かタネがあるはずだと、思考を巡らしていると不意に優希から声がかかる。
「わけがわからないって顔だね」
そう言うと墓地にある一枚のカードを取り出し、男へと見せつける。
「『ジュラゲド』……だと?」
その効果はバトルフェイズ時に手札から特殊召喚が行え、それと同時にライフを1000ポイント回復する効果。そしてもう一つ、自身をリリースする事によりモンスター一体の攻撃力を1000アップさせる効果。
つまり、ジュラゲドの効果によりライフを3800まで回復した優希はもう一つの効果でシャイニングの攻撃力を1000ポイントだけ上昇させた。
結果、1000ポイントのダメージに抑えたのだ。
「……小賢し真似を!俺はこれでターンエンドだ」
タネを明かされると男は眉間に皺を寄せ、優希を睨みつけると何も伏せずにエンド宣言を行う。
今、相手のフィールドに存在するのはオーバーレイ・ユニットを使いきったサテライト・キャノン・ファルコン。そして、サーチカードの『RRーネスト』のみ。そして、墓地には厄介な『RRーレディネス』は存在しない。つまり、サテライト・キャノン・ファルコン以外男を守るカードはない事になる。
「私のターン……」
最大にして恐らくは最後のチャンス。
優希は瞑目し、デッキトップへと指をかけると逆転の一枚を想像し
「真のデュエリストがドローするカードは全て必然!デステニードロー‼︎」
「なにっ⁉︎」
「なっ⁉︎」
ドローしたカードの軌跡は光の弧を空中へと描く。一瞬だけだが、確かに光輝いた一枚を見て、二人から声が上がった。
そして、優希の手札へと収まった時には既に光は失われており、本人はそれに気づいている様子は見られない。だが、今しがた引いたカードを確認すると口角を上げ、笑みを浮かべる。
「手札からチューナーモンスター『劫火の船守 ゴースト・カロン』を召喚‼︎」
「何をドローしたかと思えば、そんな弱小モンスター。俺のモンスターには敵わない‼︎」
「……それは、どうかな」
男の言う通り、召喚されたモンスターの攻撃力はたったの500。そして、シンクロ召喚を行おうには優希のフィールドには他のモンスターは存在しない。
しかし、優希はそんな状況でニヤリと笑ってみせる。
「相手のフィールド上にモンスターが存在し、私のフィールドにゴースト・カロン以外のモンスターが存在しない時のみ、墓地の融合モンスター一体とこのカードを除外する事でレベルを合計したレベルを持つシンクロモンスターをエクストラデッキより特殊召喚できる。
私はレベル8『エルシャドール・ネフィリム』とレベル2の『劫火の船守 ゴースト・カロン』でチューニング!」
「なん、だと……」
狼狽する男の目の前で、ネフィリムが墓地より復活し、緑色の輪へと飛び込んで行く。光の玉となったモンスターはみるみる加速していき、それに比例するようにリングの中央を奔る閃光が輝きを強くしていく。
「研磨されし孤高の光、真の覇者となりて大地を照らす!光輝け!」
そして、光の強さが限界を迎えるとともにその色は白から緋色へと変わり、夜空を紅く染め上げる。
「シンクロ召喚!大いなる魂、『セイヴァー・デモン・ドラゴン』!」
「な、ぁ……」
紅い光子を振りまく救世の竜を前にして男は掠れた声を漏らす。それほどまでに優希が召喚したドラゴンが放つ存在感は凄まじい。
「『セイヴァー・デモン・ドラゴン』の効果発動!相手モンスター一体の効果を無効にし、さらに攻撃力を自身に加算する!パワー・ゲイン!」
「サテライト・キャノン・ファルコンっ⁉︎」
セイヴァー・デモンが緋色の閃光を強くすると共に光の帯が伸び、ハヤブサを締め上げる。それと共に力を吸収したセイヴァー・デモンは纏う光を一層強くする。
サテライト・キャノン・ファルコンの攻撃力を加算し、セイヴァー・デモンの攻撃力は7000。
「これで、終わらせる!セイヴァー・デモン・ドラゴンでサテライト・キャノン・ファルコンを攻撃!アルティメット・パワーフォース‼︎」
「グァ、ァァァァァァァァ!」
特大の光の本流は鋼鉄のハヤブサごと男を呑み込み、残ったライフ全てを散らす。見事な逆転勝利を決めると、デュエルが終わり緊張の糸が切れたのかフラリとと体が揺れる。
「ちょ、優希さん‼︎」
「ないす、デスガイド……」
地面へと激突する瞬間、滑り込み受け止めてくれたデスガイドを讃えると彼女の体から伝わる心地良い温かさに安心を覚え、一気に疲れが襲ってくる。体をデスガイドに預けるとそのまま目を瞑り、睡魔へと身を預ける。
「あと、よろしく……」
「え?ちょっと、寝ないでくださいよ〜!」
そう叫ぶも優希の意識は夢の中。すぅすぅと気持ち良さそうに寝息を立てる彼女を起こすほど鬼にもなれず、どうしようかなどと悩んでいると周りの惨状へと目が向く。
左右を挟むように隣接する建物の外壁はひび割れ、所々崩れてしまっている。そして、アスファルトで舗装された道路も至る所にクレーター状の凹みができてしまっている。
だが、それらの被害が優希周辺だけではなく優希と闘っていた男の周辺にもできている点に疑問を覚える。
男の使用するデュエルディスクにはリアルソリッドビジョンシステムが内蔵されているので壁がひび割れようが地面が砕けようと不思議はないのだが、優希の使役するモンスターが放った攻撃で物理的な干渉を起こす事はあり得ない。強い突風が起きて相手を吹き飛ばすくらいが関の山だ。
だが現に男がいた周辺も地面が砕かれ、特にセイヴァー・デモン・ドラゴンの攻撃が着弾した地点には大きめのクレーターができている。
デスガイドはそれらの事実から一つの仮説へと行き着く。
「まさか……」
俗に言うサイコデュエリストの様な幻影を物質化させるような能力かもしくはそれに近い力が備わっているのではないか?
それが先天的なものなのか、所為転生特典のような後天的なものなのかは特定はできないが、それを本人が気づいていないとなると少々厄介だ。
今回は人に対する被害は出ていないもののもし、何かの手違いで友達や親しい人物を傷つけてしまえば、この少女は心に深い傷を負う事になるだろう。
「まぁ、それで塞ぎ込んでも言葉巧みに誘導して私一人にのみ注意を向けるようにすればいいんですけどね〜」
ツンデレもいいですが、デレッデレの優希さんも最高じゃないですか!というわけでである。今のデスガイドにとって、どこの誰がどうなろうと知ったこっちゃないのだ。彼女の溺愛する優希さえ手に入ればオールオーケー。
「ま、とりあえず現状に満足してるんであまり物騒な事はやめましょう。下手打って優希さんに愛想尽かされたら絶望ですからね〜」
これからもこの少女をすぐ側で見守って行こうと内心で誓いうと、腕の中で眠る優希へと視線を向け、だらしくなく頬を緩ませる。
「今は、このままで……」
もう少しだけ幸せな時間を味わっていようと考えている矢先、幾つもの足音が聞こえてくる。
「目標発見!例の襲撃犯はどうやら意識を失っている模様!他に少女二人と、LDS生徒三人を発見!」
「……わかった」
ビシリと敬礼を決め、報告をする制服姿の男と端的に答える赤馬 零児。
ここにきて、デスガイドは大きな失敗をしてしまった事を思い知る。
だが既に時遅く、周りをLDSのエリートクラスのメンツが取り囲み、一部も逃げる隙間はない。
精霊としての力を使えば逃げられない事もないが目立つ上に、満身創痍の優希がいるのだ。もし万が一があってはいけない。つまり、詰んでいる。
がっくりと肩を落とし、諦めたデスガイドを見て、零児は冷静な声音で話かける。
「……おとなしくついてくれると嬉しいのだが」
「はぁー、厄日ですかね?」
ため息と共に愚痴を漏らす。
デスガイドが幸せを傍受できるのはまだまだ先らしい。
後書き
最近遊戯王ARK-Ⅴが楽しくなってきましたね。当初対立していた黒崎とクロウが意気投合して、なんか良きライバルっぽくなっていてほっこりしました。(笑)
個人的にはユベリズム感を醸し出すセルゲイさんの出番を増やして欲しいんですがね〜。(じゃないとシンクロ次元編のキャスティングができまない!)
それでは次回も読んでくれると嬉しいです。
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