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異世界を拳で頑張って救っていきます!!!

作者:両谷ケン
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遺跡出現までの10日間【3日目】 その7

【3日目】 その7

「おぉ……」

 僕は目の前の光景に只々魅入られる。パンダの耳を生やした少女は先程までとは比べ物にならないぐらい可愛い姿になっていた。薄汚れていた顔が綺麗に拭かれ。花柄のワンピースを着た少女はその愛らしい小さな耳をしおらせながら落ち着きのない表情をする。

「うふ、どうかしら。結構な自信作よ、ま、元がよかったのもあるけどねぇ」

 厚化粧をした太ったおばさんエルフが僕の表情を満足そうに見ると不敵な笑みを浮かべる。

「値段はいくらです?」

 僕の質問に太ったエルフのおばさんはフムと顎に手を当てて言う。

「そうねぇ、あなた何となくあたしの好みだから安くしとくわぁ~。銀貨10枚ね」

「わ、わかりました」

 おばさんのウインクに寒気を覚えながら僕はポーチから銀貨を取り出す。あ……もうお金が残り少ないや……どうしよう……。

「うふ、毎度あり」

「で、では……」

「グギョ」

「……ッ!?」

 僕はパンダの耳を生やした少女の手を引っ張りながら足早に服屋さんを出た。少女は一瞬驚いた表情をしながら抵抗したがすぐにおとなしくなり僕に手を引かれ、されるがままになる。

 グルグルグー……

「!?」

 突然少女のお腹から音が鳴る。少女はハッとした顔をすると僕に握られていた右手をバッとすごいスピードで放し自分のお腹を手で覆い隠す。肩がブルブルと震えておりその泣きそうな潤んだ漆黒の瞳からは恐怖が読み取れる。

「あぁ……ご飯にしよっか……」

「グギョルル……」

 オウムが俺の時とは全く態度が違うぞという批判がましい瞳を僕に向けてくる。ていうかそもそもこいつは雌なのか雄なのか……どっちなんだろう……。

 そんなどうでもいいことを考えているとちょうど噴水広場の近くにレストランがあった。おいしそうな匂いが漂ってくる。

「あそこにしようか」

「グギョ!」

「いや、お前は来ないでいいよ」

「グギョ!?」

 僕の言葉にオウムは傷ついた表情を浮かべる。いやお前が来るとさらに料金とられそうで怖いんだよ。

「グギョギョ~」

 オウムは甘えた鳴き声を出して僕の足元にすり寄ってくる。

「もう、わかったよ……」

 人間臭いオウムに若干違和感を感じながら僕達はレストランへと入っていく。

「いらっしゃいませ」

 見せの中に入るとウエイターのエルフさんが僕たちの前に現れる。ウエイターのエルフさんは一瞬パンダの耳が生えた少女を見て驚いた表情をしたがすぐにその表情を隠した。

「3名様ですか?」

「あ、はい……」

 やっぱりこいつの分の料金とられるのか……。いや待てよ、ここはバイキングじゃない。ってことは僕の料理を上げれば安く済むな……。懐が寒い僕は必死に頭を回転させる。

「ではこちらの席へどうぞ」

 僕達はウエイターさんに案内された4人席に座る。パンダの耳を生やした少女はオドオドした様子で辺りをきょろきょろ見回していた。3時ぐらいなので

「メニューはこちらになります」

 僕たちが座ると丁寧な動作でウエイターのエルフさんが僕たちが座っている机にメニュー表を置いた。

「注文がお決まりになったら呼んでください」

 そう言うとウエイターのエルフさんは一礼しこの場から去っていく。

「さて、何にしようかな」

「グギョ!」

 オウムが『若鳥の香草焼き』と書かれた文字を羽で指さす。いや、共食いかよ……。

「お前は僕が頼む料理を少しあげる、これは頼まないよ」

「グギョルゥ……」

 甘い声を出すがこれ以上は譲れない僕は知らんぷりをする。

「君は何にする?」

「…………」

 僕の質問にパンダの耳を生やした少女は何も答えない。見ると向かい側の席に座っている女のエルフさんたちが食べている巨大パフェのような物を見るのに夢中になっているようだ。少女の目はキラキラと輝いており短いパンダの耳がヒクヒクと動いている。こんな表情もするんだな……。パンダの耳を生やした少女が始めて見せた明るい表情に思わず見とれる。イテッ!? こらオウム、僕の手をつつくな。

「すいませーん」

「はい、ご注文をお伺いします」

 とりあえずオウムのクチバシによる一撃で我に返った僕はウエイターさんを呼んだ。

「僕にはこの一番安いランチセットで、この子にはあの巨大パフェをお願いします」

「わかりました、ご注文が出来上がり次第お持ちします」


 とりあえず無駄遣いはできないので僕は一番安いランチセットを頼む。ウエイターのエルフさんは一礼すると厨房の方へと下がっていった。パンダの耳が生えた少女は驚いた瞳で僕をジッと見つめていた。

「あ、まさかあれ食べたくなかった……?」

 僕の言葉パンダの耳を生やしたに少女は腰あたりにまで伸ばした白黒の髪を揺らしながらブンブンと顔を横に振る。

「そっか、よかった。遠慮なく食べてね、あまり贅沢はできないけど……」

「「…………」」

 少女がコクンと首を縦に振ると特に喋る事がなくお互い無言になる。オウムに助けを求めようとするが目で合図しても僕を批判がましい目でジッと見ているだけだ。

 少し経つと巨大パフェが運ばれてきた。ウエイターさんが運んでくる巨大パフェを見た瞬間、パンダの耳を生やした少女の目がパッと輝く。いい表情だなぁ……イテッ!? だからつつくなって!! オウムと僕が火花を散らしていると少女がジッと僕を見つめてくる。

「食べないの……?」

 いつまでたっても巨大パフェに口を付けないので少し不安になった僕が質問するとパンダの耳を生やした少女はまたしてもブンブンと首を横に振り、その動作が終わったが早いがパフェにかぶりついた。

「ランチセットでございます」

 その食べっぷりに魅入っていると僕のランチセットが運ばれてくる。とりあえず皿に乗った魚を物欲しそう目でオウムが見ていたので分けてやる。後はパンと野菜スープだけだ。ま、パフェが結構高そうだしこれで我慢するかな。

「…………」

 僕の気づけばパンダの耳を生やした少女が驚いた表情で僕のランチセットをジッと見つめていた。

「ハハ、気にしないで。早く食べないとこのオウムが喰っちゃうぞぉ~」

「グギョ!」

「!?」

 僕の冗談にパンダの耳を生やした少女はオウムを見てビクリと体を震わすと再びパフェにかぶりつく。お、八重歯があるのか……妹を思い出すなぁ……。ってイテッ!? だからつつくなっ―――――あ、僕の魚!!!

 噴水広場のレストランでパンダの耳を生やした少女がおいしそうにパフェを食べている目の前で僕対オウムの戦いのゴングが鳴る。

 
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