異世界を拳で頑張って救っていきます!!!
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遺跡出現までの10日間【3日目】 その6
【3日目】 その6
「では右手を出してください」
燕尾服を着たエルフ―――――奴隷商に言われるがまま僕は右手を出す。すると奴隷商はポケットからペンを取り出し僕の手の甲にすらすらと黒いインクで魔方陣の様な物を書き始めた。
「これでよしっと。さて契約に移りますね」
「!?」
奴隷商は満足そうな表情をするとパンダの耳の少女の右手の人差指をどこから取り出したのか小さなナイフでスパッと切り、僕の右手のに書かれている魔方陣の中心に押し付けた。
「くぅっ……!?」
少女の顔が苦痛に歪む。それと同時に僕の右手の魔法陣が一瞬赤色に輝き、スッと消えた。
「これで完了です、この奴隷紋は普段は消えていて見えませんが主が念じるといつでも出現します。ちなみに奴隷紋があればペナルティ設定や自分の奴隷がどの場所にいるのかなどがわかるようになります。機会があればぜひご活用ください」
「は、はぁ……」
とりあえず何となく念じてみると奴隷紋が浮かび上がり僕の視界に赤色の文字が浮かび上がってくる。
ん……これがペナルティ設定か……まあなしでいいかな……勢いで買っちゃったけどこの子を奴隷扱いする気はないし……。
「では、これにて失礼します」
「あ、はい。ありがとうございます」
「いえいえ、また機会があれば」
奴隷商は恭しく頭を下げるとステージを作っていた木箱などを馬車に積み込み始める。
「い、行こっか……」
「ッ!?」
パンダの耳の少女に声を掛けると少女は大きな目を見開かせビクリと肩を震わせる。そ、そんなに怖がらなくても……。あ、鎖がついてるからかな……取ってみよう。
「ちょっと失礼」
「ヒイッ!?」
「そ、そんなに怖がらないで、君に危害を加える事はしないからさ……」
……自分で言って思ったけどなんかこのセリフ性犯罪者っぽいな……。とどうでもいいことを一瞬考えながら鎖に触れる。
パキンッ……
どうやら鎖は主がはずそうと思いながら触れると簡単に外れる仕組みだったらしく指が触れただけで簡単に外れた。これでよしっと……。……でもこれからどうしようか……。
「グルギョオ!!」
「ッ!?」
これからどうするかを真剣に考えていた僕の頭上に今までどこに行っていたのか急にオウムが現れ肩に止まってくる。その光景にパンダの耳の少女は怯えた表情をして後ずさる。よっぽど僕たちが怖いみたいだな……ていうかお前どこ行ってたんだよ……まぁいいけどさ。
「と、とりあえず宿を取ってるからそこへ行こっか」
「……」
怯えた瞳で少女はコクリと小さくうなずくと若干距離をとりながら僕の背中についてくる。
☆ ☆ ☆
「あ、ケントさんお帰りなさい!」
宿に戻るとフッド君が声を掛けてきた。
「ただいま、ねえフッド君、ここらへんに女の子用の衣服が売ってある店ってどこにあるか知ってる?」
僕の質問にフッド君は驚いた表情をして後ずさる。
「え……まさかケントさんそんな趣味が……」
な、なんか誤解されてる気がする……。
「ち、ちがうよ! この子の服を買おうと思って……」
「!?」
僕の後ろにいて見えなかったパンダの耳の少女の肩を掴み自分の前に立たせる。
「奴隷を……買ったんですか……?」
「う、うん……つい成り行きで……」
フッド君が信じられないようなものを見るような目で僕を見てくる。
「どうしたのフッドー、早く洗濯物の取り込みてつだ―――――――」
アカリちゃんがジャストタイミングで現れる。
「あ、アカリちゃん、服っていっつもどこで買ってる?」
「ふぇえええ!? ふ、服!? 私が着ている物がそんなに欲しいんですか!?」
「い、いや……この子に買ってあげようと……」
「この子……?」
僕の答えにアカリちゃんが怪訝そうな表情をする。
「な、成り行きで奴隷を買っちゃってね……こんな服じゃあ可哀想だし服を買ってあげたいと思って……」
「あ、なるほど! そういうことでしたか! 服屋ならケントさんと初めて会った噴水広場に行けば見つかると思います! でかい看板が出ているのですぐわかりますよ!!」
何故か凄い早口でアカリちゃんは喋る。そして喋り終わったかと思うとすごいスピードで階段を上がって行ってしまった。
「ケ、ケントさんがロリコンにぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!」
…………………何も聞こえない、聞こえてない。2階から何やら叫び声が聞こえた気がしたが聞かなかったことにした僕はフッド君にお礼を言ってセリムの宿を出る。
☆ ☆ ☆
「ここが……服屋か……」
アカリちゃんに言われた通り噴水広場に向かうと「HUKUYA」と書かれた大きな看板が目に入った。
「どうもー」
「……」
「グギョ」
パンダの耳を生やした女の子は多少距離をとってはいる感じがするが僕に着いてきてくれている。
「あっらぁ~、いらっしゃ~い」
「「「!?」」」
色んな衣服が並んだ店の奥から紫色のドレスを着た厚化粧をしている太ったおばさんエルフが出てきた。
「あの、この子の服が買いたいんですけど」
何となく関わりたくないと思った僕は簡潔に用件だけを言う。
「あら、あなた奴隷にうちの服を着せるの? 別に構わないけどうちの服は奴隷には少しお高いと思うのだけど……」
厚化粧をした太ったおばさんエルフが戸惑った表情で言う。
「構いません、この子に似合う服をお願いします」
「!?」
僕の言葉に驚いた表情でパンダの耳を生やした少女は僕を見てくる。何をそんなにびっくりしているんだろう……?
「わかったわぁ、あらま、この子可愛いじゃない。いい原石ね、たっぷりと磨いてあ・げ・る♡」
「ひぃ……」
少女の口から小さい悲鳴が漏れる。うん、今のは僕も寒気がしたね。こらオウム、逃がさんぞ。このままいると面倒くさい事に巻き込まれるオーラを感じたオウムがそろりそろりと飛ばずに逃げ出そうとしていたので捕まえる。
「ではしばらくお待ちを」
「は、はい」
厚化粧をした太ったおばさんエルフは僕にウインクをするとパンダの耳を生やした少女を店の奥へと連れて行った。
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