異世界を拳で頑張って救っていきます!!!
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遺跡出現までの10日間【2日目】 その4
【2日目】 その4
「ウワワワワワ!?」
「ブシュ、ブシュゥゥゥウウ!」
第一遺跡『マター』と呼ばれる巨大な木の内部にはとても広い空間がたくさんあった。どうやら何個もの階段があるらしくそこからどんどん下の方に行ける構造になっているらしい。僕はおそらく地下2階にある土と岩だけで作られた空間と思われる場所で沢山の緑色のスライム―――――『メルトスライム』に追いかけられていた。
「いいよいいよケントくーん、そのままそいつら引きつけといてー!」
「はやくしてくださあああああああああああああああああああああああい!!!」
こいつらは厄介なことに僕が知っている人間の弱点が一切通用しない。そもそも人の形を一切していないのでどこを攻撃していいかわからない。
「ファイアーストーム!」
「ブシュウウウウウウウウウウウウウウウウ」
ローブの中から取り出した木の杖と魔道書を両手に持ったローラさんの明るい声で唱えられた呪文とともに大きな炎の竜巻が現れ、僕を追いかけていた大量の『メルトスライム』が焼け落ちていく。ていうか一つ間違えれば僕が燃えるじゃないですかこれ……。
「ハアッ……ハアッ……ハア…………」
「いやー、助かるよ~。じゃ、次着たらまたお願いね~」
「は、ハイイィ………………」
まだ次があるんですか……もうこれで5回目なんですけど……。
遺跡につくと二人一組で3階まで探索することになった僕はローラさんと組んで3階まで向かうことになった。どうやら3階までは強い敵が一切出てこないらしくできるだけたくさんのPTに分かれてダンジョンに眠っているアイテムを探すのが目的だそうだ。
3階からはそこそこ強い魔物が出てくるらしく大人数で行くという。ローラさんは炎魔法をメインに使う魔法師らしく、自然と僕が強敵スライムを攻撃して囮になり、その間にローラさんが魔法を詠唱しスライムを焼き殺すという戦法になった。
「ところでオウム君はどこに行ったの?」
ローラさんが僕のリュックが小さくしぼんでいることに気付く。
「あぁ、あいつは遺跡に入った瞬間どっかへ飛んでいきました……」
「あら、逃げられちゃったの?」
「そのほうが嬉しいんですけど……」
「グギョギョ!!!」
「「!?」」
オウムの話をしているといつの間にかその当人が僕の真後ろにちょこんと立っていた。嘴に何か咥えているな……。早くとれというようにオウムが嘴を動かすので僕はオウムが咥えていた布に包まれた骨のようなものを嘴から取る。
「わっ! それ金の棒じゃない! すごーい!!」
布を取ると金の棒が出てきた。オウムはエッヘンと胸を張る。こいつ言葉理解してるのかな……。
「そう言えば、『レバルドオウム』は主人の役に立ちそうなものを持ってくる習性があったわね」
「そ、そうなんですか……」
お前、結構使えるんだな……オウム。とりあえずオウムの頭をなでてやると再びどこかへ飛んでいった。
「いいペットね、私もほしいわ」
「ハハハ、一人分の食費がかかりますけどね……」
などとローラさんと喋りながらどんどん進んでいくと少し大きな下の方へと続いて行く階段が見えてくる。
「おーい! ケント! ローラ!!」
「やっほー!」
先についていたライトさんたちが僕たちに手を振ってくる。というか僕たちが最後だったみたいだ……。
「ローラ、ケントはどうだ?」
「とっても役に立ってくれた囮になってくれたわ。また一緒に組むのも大歓迎」
「へぇ、結構やるんだなケント」
「ハハハ……」
ローラさんの言葉にライトさんは感心した表情を見せる。いや、僕囮にされてただけなんですけどね……。
「じゃ、お前らこれから3階に行くぞ。稀に強い魔物が出るから気を引き締めていけよ!」
「「「「「「「「「おう!」」」」」」」」」」
「お、おう!」
みんなの気迫に圧倒されながら僕は階段を下りていく皆について行った。
☆ ☆ ☆
「さて、今日の目的は『ダークスライム』50体の討伐だ。『メルトスライム』より少し強いから気を付けろよ。倒したら核――――――丸い球みたいなのが出てくるからそれは拾っておいてくれ。50体倒した証明になる」
「「「「「「「「「はーい」」」」」」」」」」
ギルドのみんなのいい返事にライトさんは満足そうにうなずく。
「とりあえずいつも通り俺の班とローラ班に分かれる。ケントはローラの班な、地図によると4階に行くには絶対に大広間を通らないといけないことになっている。そこの大広間で集合だ」
一通りライトさんの指示を聞いた僕たちローラ班はライト班と別れてダークスライムを倒しに歩を進める。5分ぐらい歩いただろうか突然5体の黒いべとべとしたスライムが現れた。
「せあ!」
「てい!」
「ファイアーストーム!」
僕が手を出す暇もなく勝負が終わる。どうやら一人が短剣使いでもう一人が槍使いのようだ。どっちも男のエルフさんだな……っていうか短剣とやりだと攻撃がはいるのか……。
「あ、ケント君はそいつらの核でも拾っておいてー」
「は、はい」
短剣使いのエルフさんに雑用を押し付けられる。役に立ってないので断るわけにもいかず僕は焦げて跡形もなくなったダークスライムさんたちの核を拾ってリュックの中に詰める。あ、オウムが返ってきた。今度は何だ……? 玉……? 戻ってきたオウムが僕の手のひらにポトリと丸い球を落としてくる。
「お、それ煙玉だな、そんなのもたまに落ちてるんだよなぁ」
槍使いのエルフさんが僕の手のひらを覗き込んで言う。け、煙玉か……一応とっておこう……。僕は煙玉を腰のポーチにしまった。その後も短剣使いのエルフさんと槍使いのエルフさんとローラさんのコンビネーションでどんどんダークスライムを倒していく。もちろん僕はひたすら核集め。
「あれ、まだライトたち来てないみたいね」
あっという間にライトさんがいっていた大広間につく。凄い広いな……体育館3つ分くらいありそうだ。
僕はすべて大理石で作られた大広間をぐるりと見渡す。
「ん?」
「どうしたのケント君?」
僕の声に一番近くにいたローラさんが反応する。
「いや、今何かユラって揺れたような……」
背筋に寒気が走る。なんだこの感覚
「え、ちょっと怖いこと言わないでよ! キスのことまだ根に持ってるのー?」
「い、いや違いますって! でもなんか変な感じが……」
「なんだ? 急に怖くなったのか?」
僕たちから一番離れていた短剣使いのエルフがニヤニヤ笑いながら僕に近づいてくる。あ、あれは―――――――――――――
「よけろおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」
叫びながら僕は全速力で短剣使いのエルフに向かって走って行くが―――――――――
「え―――――――――――」
次の瞬間、短剣使いのエルフの胴体と足が離れる。
「キャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」
ローラさんの悲鳴が大広間に響き渡った。
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