異世界を拳で頑張って救っていきます!!!
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遺跡出現までの10日間【2日目】 その5
【2日目】 その5
「全員下がれえええええ!!!」
僕は無我夢中で叫ぶが、槍使いのエルフさんは短剣使いのエルフさんが無残に殺された現場を見て呆然と立ち尽くし全く動いてくれない。ローラさんも悲鳴を上げるとその場にへたり込んでしまう。これは戦力にはならないな……。
「ちっ……」
僕は舌打ちしながら見方を逃がすことをあきらめ敵の迎撃に専念することにする。さっきチラッとだけ空間が不自然に動いているのが見えたがあれはいったい何なんだ……。また隠ぺい魔法ってやつか……。それにしてもあそこまで見事に気配を消せるなんて……生物なのか……。
「どこだっ! でてこい!!」
無駄と分かりつつ僕は見えない敵に向かって叫ぶ。あたりを必死に見渡すが全く見えない。
「ごふっ……」
「「!?」」
突然槍使いのエルフさんが口から血を吹きだす。いつの間にか槍使いのエルフさんの分厚い胸には大穴が開いており血が大量に吹き出していた。ん……? うっすらとだが何か腕のようなものが胸を貫いているように見えるぞ……。
「逃がすか……よおおおおおおおおおお!!!」
槍使いのエルフさんは瀕死の重傷を負いながらも自分の胸を貫いている腕のようなものを両手で必死に掴む。
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」
気づいた時には両足が動いていた、僕は無我夢中で槍使いのエルフさんへと駆け出すそして―――――――――――
「うりゃああああああああああああああああああああ!!!」
渾身の力を込めて体を半回転させながら槍使いのエルフさんの後ろに立ていると思われる『見えない何か』に向かってナックルをはめた右拳を叩きこむ。
バキンッ!!!
何か金属が折れるような音ともに見えない何かが吹っ飛んでいくのがわかる。とても固い……少なくとも木材以上……いやコンクリート並だ……。崩れ落ちた槍使いのエルフさんを横目で見るとロボットの腕のようなものが胸から突き出ていた。
「ゴフッ……」
最後の力を使いきった槍使いのエルフさんは冷たい大理石にバタリと力なく倒れる。
「なによ……あれ……」
ローラさんが驚愕の表情で『何か』が吹っ飛んでいった場所を指さしたので、僕は槍使いのエルフさんの死を悲しむ間もなく無理やりそこに視線を向ける。
「ミギウデノソンショウヲカクニン、『ステルスモード』ヲイジデキナクナリマシタ」
「ッ!?」
僕の視界には右腕から激しく青い火花を散らしながら立ち上がろうとしているロボットの姿があった。まるでどこかのSF映画に登場するような恰好をしたロボットはあちこちひび割れ、ところどころ塗装が剥げ、錆びついている。全身を黄色と茶色が混ざったような色に塗装されたロボットは卵型の顔に一つしかない大きなレンズを僕に向けた。
「テキノキョウイドレベルヲ、ナシカラ1ニヒキアゲ。『アサルトモード』二ヘンケイシダイコウゲキヲカイシシマス」
「おいおいおい………」
一つ目のロボットが無機質な声で言葉を言い終えるとほぼ同時に大量の青い光がバチバチと音を立ててロボットの左手から発生する。あれは……電気か……?
「ハイジョ」
「くっ!?」
凄いスピードでロボットが僕との間合いを詰める。その動きはとても速い、恐らく僕より早い。僕は両腕を交叉し、ナックルでかろうじて無造作に突き出された青い雷を纏った奴の左腕を受けることに成功するが――――――――――――
「ぐああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!?」
全身を焼け付くような痛みが襲う。こ、このナックルは電気を通すのか………。
電撃をくらった僕は立っていることができずその場に崩れ落ちる。
「ハイジョ」
顔に一つしかないレンズをしっかりと僕に向けて奴は青い雷を纏った左腕を振りかぶる。
やられる―――――――――!
僕は両目をギュッとつぶった。
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」
突然叫び声が聞こえたかと思うと両手に両刃の剣を携え僕とロボットの間に現れると僕を蹴り飛ばしロボットの青色の雷光を纏った左手を剣を交叉して受ける。剣の持ち手には分厚い皮が巻いており電気を通さなくなっているらしくライトさんは平気な顔でロボットの左手を受けている。
た、助かった……。ライトさんの背中を見ながら僕は体から力が抜けていくのを感じる。
「ロオオオオオオオオオラアアアアアアア!! たてええええええええええええええええええ!!!」
「!?」
ライトさんの叫び声にビクリとローラさんの肩が震えるがローラさんは立ち上がらない。
「ちっ、ケント、ローラ連れて逃げるぞ! このままだと全滅しちまう!!!」
「え………?」
「ハアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」
二本の両刃の片手剣で気合いとともにロボットをあっという間に切り刻む。つ、強い……これなら逃げなくても……。
と、そこでショックのあまり気づかなかったが、ライトさんの全身は真っ赤な血で汚れている事に気づく、よく目を凝らしてみるがライトさんには傷は一切見えない……ってことはまさか―――――――――――
「ちっ、もう追いついてきやがったか!!!」
「「!?」」
今戦っていたロボットとは違う形――――――、4足歩行のロボットがあちこちから現れる。色は赤、2本の前足が鎌のようになっておりその姿はまるで螳螂みたいだ……、先ほどのロボットと一緒なのは卵型の顔に一つの目というところだけ。それ以外は色も形も違うロボットに僕はどうしていいかわからなくなる。よ、よく見ると天井にもいるぞ……。
「あ………」
いつの間にか4足歩行のロボットの一体がローラさんの真後ろに忍び寄っていた。
「ハァ!」
僕は鎌のような形状になっている前足でローラさんの首を切り裂こうとしている4足歩行のロボットに渾身の体当たりを食らわせて突き飛ばす。こいつらはさっきのステルスロボットより弱い気がするな……僕でもやれるぞ!
「早く逃げるぞケント! ローラは背負ってくれ!!」
「無理です! こんなに囲まれてちゃ大広間から抜け出せません!!」
「ちっ、くっそおおおおおおおおおおおおおお!!!」
ライトさんは僕とローラさんに次々と襲い掛かってくる4足歩行のロボットを片っ端から切り刻んでいく。僕もナックルを振り回し、近づいてくる4足歩行のロボットからローラさんを必死に守る。しかし一向に数は減らない……むしろ増えてきている気がする。
僕の心を絶望が埋め尽くした。
「もう……無理だ…………」
このまま……終わるのか………。
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