異世界を拳で頑張って救っていきます!!!
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遺跡出現までの10日間【2日目】 その3
【2日目】 その3
「まず何かおっか?」
ローラさんが僕の両肩を揉み揉みしながら聞いてくる。ひぃ……今背中に柔らかい物が……
「当たってます! 当たってますって!!」
「えぇ、何が当たってるのぉ? お姉さんわかんなーい」
意地悪な笑みを浮かべながらローラさんは僕にさらに密着してくる。
「ギュエエエエ!」
「ちょ、なんなのこのオウム!」
僕の頭上を飛んでいたオウムがローラさんをつつく。よ、よくやったぞオウム!
「あ、冒険用のリュックを買おうと思ってたんです!」
辺りを見回すとリュックを売ってある露店を見つけたので僕から離れたローラさんをさらにつつこうとしているオウムの嘴をがっしり掴みながら露店へと走って行く。
「これください」
「へい、銀貨30枚ね」
「はい、ちょっと待ってくださ―――――――――――――――」
「ちょっとおじさ~ん、これ銀貨30枚はちょっと高いんじゃないの?」
「!?」
突然ローラさんが僕と露店に立っているエルフのおじさんとの間に入る。
「んな!? よく見てみろ、これは『アイスルホース』の毛皮を使っていてだな……」
「いやいや、それを差し引いてもこの作りじゃ―――――――」
――――――――――――――5分後―――――――――――――
「も、もう勘弁してくれ……わかったよ銀貨15枚でいいよもう……」
疲れ果てた表情の露店のおじさんエルフは銀貨30枚だったリュックを15枚でローラさんに売ってしまう。
「ありがとー! 仲間にも紹介しとくよ、この店!」
笑顔で手を振りながらローラさんが僕にリュックを渡してきた。
「あ、お金―――――――――」
「いいっていいって、ケント君のこと気に入っちゃったからプレゼントしてあげる」
お金を払おうとした僕の手を掴みながらローラさんはにっこり微笑んでくる。
「あ、ありがとうございます……」
「さあこの調子でどんどん買うぞー!」
「お、おー……」
「ギョグギョ……」
先ほどのえげつない値切りを見てドン引きの表情を浮かべながら僕とオウムはローラさんの後に続いた。
☆ ☆ ☆
「よしっ、みんな集まったな。じゃあいくぞー」
ローラさんに値切りをしてもらいながら必要な物を買いそろえた僕は集合場所だった転送魔法陣の前に集合する。転送魔方陣は直径10mほどの魔法陣でその中に入ることで所定の位置に転送することができる便利なものだ。しかし第一遺跡『マター』といわれる遺跡としかできないらしい。ローラさんから聞くには『遺跡』というのはここアイスル国の王、アーサーさんが死んでから突如出現したものらしい。誰がどのように、何のために出現させたのかも一切不明、ただ遺跡からは色々な武器や防具、便利なアイテムなどが見つかるらしい。
「さ、はやくはやく♪」
「は、はい……」
ローラさんにせかされ僕は急いで魔方陣の中に入る。オウムはリュックの中に物がほとんど入ってないのをいいことに入り込んだまま出てこない。
「じゃ、転送してくれ」
ライトさんは近くのローブをかぶったエルフさんに合図を送る。すると魔方陣が水色に輝き始めた。
「いくぜ! 第一遺跡『マター』へ!! 転送!!!」
ライトさんの叫び声とともに僕の視界は真っ白に染まっていった。
☆ ☆ ☆
「ん……」
「お、起きた起きた!」
気が付くと僕は魔法陣の中に寝転がっていた。上を見上げると四つん這いになったローラさんがこっちを見下ろしている。
「たまにいるんだよ、転送したら意識失っちゃう奴。ま、慣れればそのうち何ともなくなるぜ」
仲間の様子を眺めながらライトさんが僕に手を貸してくれる。
「あ、ありがとうございます……」
お礼を言いながらライトさんの手を掴み、目をこすりながら僕は起き上る。
「紹介してなかったが俺のギルドの奴らは皆いい奴ばっかりだぜ。暇があったらケントも話してみな」
「は、はい」
「ライトさ~ん、転送時毎回寒いセリフ吐くのやめてくださいよー!」
「ハハハハハハ、確かにぃ!!!」
「全く……マジで勘弁してほしいぜ……」
「ケント、さっきの言葉は聞かなかったことにしてくれ……」
そう言うとライトさんは仲間たちがいる方へ無言で走っていく。ライトさんが走って行った方角を見ると大きな木が一本立っていた。あれが遺跡なのかな………?
「うわー来た来た逃げろ~」
「てめえらまちやがれええええええええええええええええええ!!!」
逃げる仲間たちを必死に追いかけるライトさんを見ながらローラさんはクスリと笑った。
「ごめんね騒がしくて、ま、気絶したら私がさっきみたいにキスして起こしてあげるよ」
「ふぇ!?」
き、キキキキス!? さっき四つん這いになってたのってキスしたから!?
「あ、ごめん。初めてだった?」
「も、もうお嫁に行けない……」
しかも感触とか全然わかんなかったし……。
「う、嘘だよ。嘘だからね!? ね!?」
僕のどんよりとした表情を見て焦ったのかローラさんは嘘を急いで訂正する。
「おーい、何してんだおいてくぞー!」
僕たちがついてこないのが気になったのかライトさんが振り返って僕たちを呼ぶ。
「ささ、いこいこ!」
僕の肩を押しながらローラさんは遺跡と思われる巨大な木へと歩いて行く。
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