異世界を拳で頑張って救っていきます!!!
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
遺跡出現までの10日間【2日目】 その2
【2日目】 その2
とりあえず僕とオウムは人目を避けるようにして先日お世話になった武器屋に行った。道がわかるかどうか心配だったが『セリムの宿』からエルフさん達の流れに沿って歩いて行くとこの前道案内してもらえた噴水広場についたのでそこから簡単に行くことができた。
「すいませ~ん……」
「いらっしゃい」
悪人面の武器屋のおじさんにどうしても一歩引いてしまう。
「ほう、レバルドオウムを手なずけたのか、やるな」
「あ、ありがとうございます」
僕の頭の上に止まっているオウムを見ながら武器屋のおじさんが驚いた表情をしながら僕を褒める。
「で、今日は何のようだ?」
武器屋のおじさんは僕に背を向けると店の中へと入っていったので僕とオウムもそれに続く。
「えっと、昨日壊れてしまった防具の腕の部分の修理をお願いしたいんです……」
僕はそう言いながら『アイスル鉱』の部分が溶けてしまったガントレットを両腕から取り外し武器屋のテーブルにごとりと置く。
「ほう、『メルトスライム』と戦ったのか……」
「は、はい。油断してたら攻撃されちゃって……この有様です……」
あれはメルトスライムって言うのか……覚えておこう……。
「あんたは確か拳が武器だったな」
武器屋のおじさんが僕の両手を見ながら言ってくる。
「は、はい。一応……」
「そうか、ならよかった。昨日うちの倉庫を漁ったらこんな物が出てきたんだが……」
そう言いながら武器屋のおじさんがカウンターの下からガントレットのようなものを取り出してくる。ただ拳の殴るところに丸い金属が両方に4つづつ付いており小手の部分も昨日もらった防具よりも太くなっている。
「『ナックル』って武器だ。滅多に使う奴がいないから倉庫に眠ってたんだよ。一応小手の部分である程度の剣なら盾のように防げるようになっている」
「け、剣が防げるんですか!?」
剣が防げるということは自分の行動の選択肢が増えるということだ、驚いた僕は思わず聞き返してしまう。
「あぁ、さすがに『魔剣』や『妖刀』は無理だが、普通の剣ぐらいなら受けれるぞ」
「か、買います!」
買わなきゃ損だと思った僕は即購入の意思を示す。というか『魔剣』と『妖刀』ってなんだろう……かっこいいなぁ……。
「どうせ売れないと思うしこの壊れた防具と交換でいいぞ」
僕の顔を見ながら武器屋のおじさんは僕にナックルを手渡してくる。
「あ、ありがとうございます!」
急いで僕はナックルを自分の腕にはめ感触を確かめる。ボクシングのグローブをはめてる感じかな……ちょっと重いけどなれたら大丈夫かな……。
「あの……」
「ん?」
「冒険者用の道具とか売っている場所ってどこにありますか?」
宿屋に何人もの冒険者らしき人たちがいたことから恐らく冒険者用の店があると判断した僕は、壊れた防具を奥の方へ持っていこうとする武器屋のおじさんに声をかける。
「あんた『集会所』に行ってないのか?」
武器屋のおじさんが驚いた表情を見せる。
「集会所……?」
「あぁ、沢山の冒険者ギルドが集まるところだ、そこで依頼を受けたりすることができるし冒険に必要な物もたくさん売っている。まあ例外があって『王国公認ギルド』はそこから依頼をあまり受けないがな」
「そ、そうなんですかぁ……そこに行くまでの道って教えてもらえますか?」
「あぁ、構わんぞ」
☆ ☆ ☆
「こ、ここが集会所かぁ……」
武器屋のおじさんに書いてもらった地図を見ながら武器屋から15分ほど歩くと沢山のエルフたちが集まっている大きな広場に出る。あちこちに露店が並んでおり冒険に役立ちそうな物が色々売ってあるのが遠目で見てもわかる。
「お、朝の不思議君じゃん!」
「!?」
僕の目の前にいきなり金髪のエルフが現れる。
「ど、どうもぉ……」
「そう言えばお前、どこのギルド入ってんの?」
「え……」
金髪エルフ―――――――ライトさんの質問に僕は戸惑う。確かギルドはアリスから勧誘を受けていたけど……。
「ギルドには所属してないです……。僕、王都に来たばっかりでギルドの仕組みとかわからないんです……」
「へえ、だったらうちのギルド体験してみないか? 見たところそのオウム従えているところ見ると結構強そうだし。どうかな?」
「あ、え……」
僕は急な勧誘にしどろもどろになる。体験か……いいかもしれない。ギルドってのを体験してみたいし……。
「じゃ、じゃあ体験扱いで……」
「お、そうか。じゃあついてきな!」
「は、はい!」
駆け出したライトさんの背中を急いで追う。
☆ ☆ ☆
「お、おっかえりー」
軽い感じで赤色のローブをまとった赤色の髪を後ろで結い上げた右目に泣き黒子があるお姉さんが手を振ってきた。後ろには鎧を纏ったエルフさんたちが7人テーブルでくつろいでいる。
「おう、しっかり勧誘してきたぜ!」
「お、今朝の可愛い坊やジャーン! よろしくね!」
ライトさんの言葉を完全に無視して赤色のローブをまとったエルフさんは僕の両肩をつかんでくる。
「よ、よろしくお願いします」
甘い香りが僕の鼻孔をくすぐり頭がぼうっとなる。
「あたしの名前はローラ。下級魔法使いの資格を持ってるよ。君の名前は?」
「け、ケントです」
とりあえず下の名前だけで自己紹介をする。
「君武器持ってないね? 魔法使い?」
ローラさんは僕をジロジロ見ながら言ってくる。
「え、あ、武器はこれです……」
両腕を上げて武器屋のおじさんにもらったナックルを見せる。
「へぇ……、珍しいもの使うんだね……」
「おいおい、俺をおいて話を進めるな!」
ライトさんが僕とローラさんの間に割って入る。
「とりあえず今から『ブラックスライム』50体の討伐をするぞ。遺跡はここから一番近い第1遺跡『マター』だ、あまり強くないが気を引き締めていくぞ」
「「「「「「「おう!」」」」」」」
ライトさんの言葉が終わると同時にテーブルに座っていたエルフさんたちが一斉に立ち上がる。
「じゃ、転送魔方陣の前に30分後に集合! 解散!!」
「じゃ、ケント君はおねーさんと一緒に露店まわろっかぁ。」
「あ、冒険に役立つ物とか教えていただければありがたいです……」
「お、いいよいいよ。じゃ着いてきてー」
「は、はい!」
「お、おれも行くぞ!!」
「えー、ライトは来なくていいよ」
「んなっ!?」
「さ、いこいこケント君!」
「りょ、了解です!」
ローラさんに冷めた態度をとられたライトさんはガーンとその場にうなだれる。それを横目で見ながら僕はローラさんに手を引かれていった。
ページ上へ戻る