異世界を拳で頑張って救っていきます!!!
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第4話 遺跡出現までの10日間【2日目】 その1
【2日目】 その1
「ん……」
窓から差し込んでくる明るい日差しに顔を照らされ僕は目覚める。
「そのまま寝ちゃってたか……」
目をこすりながらベットから起き上がると上半身の防具をすべて外しテーブルに置く。
荷物はタンスの中に出もいれとこうかな……。一応麻袋に入っている銀貨を数枚革袋に入れ腰のポーチにしまい、すべての荷物をタンスにしまおうとする
「ギョエエエエエエ!!」
「!?」
奇声を上げながら昨日殺したと思ったオウムが麻袋から飛び出してきた。あ、こいつ袋の中にあったキノコ食べやがったな!キノコが食べられていることに気付いた僕はもう一発食らわせてやろうかと気勢を上げながらあちこちを飛んだり跳ねたりしているオウムに向けて拳を放とうとするが―――――――
「グギョエ!?」
僕と目が合ったオウムはいきなり赤色の羽を自分の頭に当て、その場で敬礼した。
「ふぇ……?」
突然のことに僕は口をポカンと開ける。オウムは僕の瞳をずっと見つめたままその場から動かない。なんだか殴る気が失せた僕は部屋の窓を開けるとそのまま木の扉を開けて部屋から出る。
「ギョウグエ」
なんでお前までついてくんの……。オウムはテクテクと二本の細い足で僕の後ろをついてくる。
まぁいいか……。起きたばかりでテンションが下がっている僕はそのオウムみたいなやつを追い返す気力もなくそのまま木で作られた古びた階段を下りていく。
「あ、おはようございます」
階段を降りると茶色の髪をポニーテールにした確か……アカリちゃんと呼ばれていたエルフの女の子とばったり出くわす。
「お、おはようございます……」
「昨日は最後まで案内できなくてごめんなさい……。わ、私、アカリといいます、私の母が経営している、ここ『セリムの宿』の従業員です」
「いえいえ……お忙しい中ありがとう……ございました……」
眠そうな僕の表情を見てクスリと笑うとアカリちゃんは
「顔はここを出て左に曲がると井戸があるのでそこで洗ってください、すっきりしますよ。では!」
恐らく朝から準備があるのだろう、それだけ言うとアカリちゃんは食堂がある場所へ小走りで向かっていった。健気な子だなぁ……っていてっ!? おいオウム、頭つつくなよ!
僕は自分の周りをグルグル回るオウムを手で追い払いながら井戸で顔を洗う。井戸を使うのは初めてで心配だったがもうすでに中に水が入っていたのでありがたく使わせてもらう。
「プファァ!」
近くに置いてあったタオルで顔を拭くと意識がはっきりとする。
「お腹減ったなぁ……」
「ギュギャギャ」
「いや、お前は僕のキノコ食ったでしょ……」
「ギョエ?」
「とぼけても無駄だよ、えいっ」
「グギョッ!?」
オウムは僕の言葉に首をかしげてとぼけるので僕はオウムのクチバシにでこピンすると食堂へ向かう。
「よいしょ」
「グギョ」
少し長い廊下を歩いて食堂につくと僕とオウム(?)は近くにあった古びた木のテーブルにつく。周りを見渡すとまだ早い時間帯なのに鎧やらローブやらを纏った何人ものエルフ達がテーブルで食事についている。
「朝はバイキングになっているのでお好きなものを選んでとってください。値段は一律銀貨1枚です」
「わ、わかりました……こ、こいつの分も払わないといけないですか……」
「グギョ!」
おい、当たり前だみたいな感じで背筋を伸ばすのやめてよオウム……。
「そうなりますね……というかその鳥、『レバルドオウム』ですよね。手なずけたんですか……お強いんですね……」
白髪のエルフ君は僕を尊敬のまなざしで見てくる。
「ハハハ、とりあえずこいつの分合わせて銀貨2枚です」
僕は革袋の中から銀貨を2枚取り出すと白髪のエルフ君に渡す。白髪のエルフ君は一礼してそれを受け取るとタッタッタッと中坊があると思われるところに走って行った。
「グギョギョグエ!」
赤色のオウムは早くしろと言わんばかりに僕の頭上を飛び回る。
「はいはい、わかったよ……」
僕はテーブルから立ち上がると色々な物がならべてある巨大なテーブルに並べられてある食材をとろうとテーブルに向かって歩いて行く。
「おいお前」
「はい?」
突然後ろから声を掛けられる。振り向くと複数のエルフが座っているテーブルから金髪の髪を逆立たせたエルフが立ち上がり僕に近づいてくる。
「見ない顔だな? 冒険者かなんかか? というかエルフなのかお前?」
ち、近いですよ顔……。
「き、昨日この国についた冒険者です……種族はエルフではないです」
僕は若干引き下がりながら金髪のエルフの質問に答える。
「へぇ、俺の名前はライト。ここあたりじゃ結構有名なギルド率いてるもんだ。ま、縁があったらよろしくな」
「は、はい。よろしくお願いします」
ライトと名乗ったエルフは僕ににっこりほほ笑むと仲間たちがいるテーブルへと戻っていった。って言うかオウム、僕が話している間に肉をついばんでるんじゃない。僕はオウムがつっついていたハムみたいなものとサンドイッチを3つ取ると自分が元いたテーブルに戻る。
「いただきます」
「グギョギョ」
僕はオウムと一緒にこの世界初の朝食についた。
☆ ☆ ☆
「さて、今からどうしよっかなぁ……」
朝食をオウムと一緒に食べ終えた僕は自室に戻ると思いっきり背伸びをして服を着替える。
そしてはずしていた防具の上半身を装備すると麻袋の中に入っていた銀貨と銅貨をタンスの中にしまいオウムが食べてしまったので少し量が減ってしまったキノコを麻袋に入れて自室を出る。
「とりあえず今日はリュックとかロープとか買おうかな……あとこの防具を直さないと……」
「グギョ」
「いや、お前はついてこなくていいから」
「ギュギョギョギョギョ!」
どうやらこいつは僕になついてしまったらしい……。ま、いいか……。
「はぐれてもしらないぞ」
「グギョ!」
僕とオウムはやる気に満ちた表情で宿屋を出た。
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