異世界を拳で頑張って救っていきます!!!
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エルフの城で 【3】
【3】
「えっと……、ちょっと待ってくださいね……よ、よいしょっと……」
そう言いながらイオラさんは豊満な胸を揺らしながら近くにあった木の棚から国語辞典ぐらいの大きさの本を取り出した。確かこんな感じの本ハンスも持ってたような気がする……。
「あぁ! それかぁ!」
アリスはポンッと手を鳴らす。
「?」
「これは『解析の魔道書』と言われている魔道書です。ケントさんここに手をかざしてください」
イオラさんが『解析の魔道書』と呼んだ本を開きながら僕に手渡してくる。開かれた『解析の魔道書』を覗き込むようにしてみると左側のページに不思議な模様の円が書かれていた。
「こう……かな……?」
僕は恐る恐る手をかざす。すると―――――――――
『解析の円に接触を確認、ただ今から解析の魔法を施行します』
「!?」
急に魔道書が光ったかと思うとどこからか声が聞こえ、右側のページに凄いスピードで勝手に文字が書きこまれていく。
「はい、終わりましたよー、手を放してください」
「は、はい!」
5秒ぐらいたっただろうか、あまりの出来事にポカンとしていた僕はイオラさんに言われて急いで『解析の魔道書』から手を放す。
「見せて見せて!」
「ぁ……」
ドレス姿のまま背中に飛びつかれた事にドキッといてしまい僕は簡単にアリスに『解析の魔道書』を奪われる。
「ふむふむ、特殊能力……」
「「ゴクリ」」
アリスが『解析の魔道書』の右側のページを読み始め、僕とイオラさんは生唾を飲み込む。
「……………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………ナシだって☆」
「「ズコッ!」」
アリスの言葉に僕とイオラさんはズッコケる。
「え、ほ、ほんとに何もないんですか……? なんかいっぱい書いてありそうでしたけど……」
僕の言葉にアリスは残念そうな顔で言う。
「ないねー、特殊能力の行間が空白だもん、あといろいろ書かれているのはスキル値と筋力とか知力とかを簡単に数値化したものだよ……むむ!? 年上が好み……か……」
「ブフォッ!?」
「ど、どうしましたケントさん!?」
驚きのあまりふいてしまった僕にイオラさんは心配そうな表情をする。
「い、いえ……なんでもありません……」
「そ、そうですか……」
何で僕の好みの女性のタイプまで解析されてるんですか……。
「そ、そんなにじろじろ見ないでくださいよっ!」
「ああー!」
泣きそうな顔になりながら僕はアリスから『解析の魔道書』を取り上げる。
「見られたくなかったらそこの右ページをちぎって自分で持っておくといいですよ」
「い、いいんですか!?」
それを眺めながらイオラさんがニコニコと微笑み言ってくる。
「はい、普通はみんなそうしますよ。あ、その魔道書、少し根が張りますけど普通に売ってたりするのでケントさんもよかったら買ってみてください」
「は、はい」
僕は頷きながら『解析の魔道書』の右ページを引きちぎるとポケットの中にねじ込んだ。
「ちぇっ、ケントのケチ!」
アリスは残念そうな表情を浮かべるがすぐにアッと思い出したように言った。
「そうだ、後で私の見せてあげるよ! そしたらケントのも見せてくれる?」
「えぇ…………」
「だ、だめ………?」
「グフッ!? わ、……わかりましたよ…………」
アリスの上目使いがあまりにも可愛くて吐血しそうになりながらもかろうじて答える。
「やった! 約束だよ!!」
「は、はいぃぃぃぃいいいい」
アリスは僕の言葉にパッと顔を輝かせると僕に飛びついてきた。いや、ほんと心臓に悪いです……。勘弁してくださいぃいいぃいぃいい。
「失礼します!」
「「「!?」」」
僕がアリスに飛びつかれて石像のように固まっていると、突然部屋に右手に大きな槍を持ち、西洋の騎士の鎧見たいな物に身を包んだエルフが入ってきた。頭には騎士がかぶるような兜も装備しており顔も髪もよく見えない。
「ヤマザキケント様! お迎えに上がりました!!」
だって、なんかちょっと怖そうだなぁ……。ヤマザキケントさん早く行ってあげ―――――――――僕じゃないですか……。
「情報が早いねー、さすがママだ」
アリスが僕に飛びついた状態で背中をポンッと優しく叩いてきた。
「行っておいでよ、大丈夫、命はとられないって!」
「え、いや……え……と、とりあえず行けばいいんです……よね……」
とりあえずベットから立ち上がると騎士の格好をしたエルフさんの方へ歩いて行く。うわ……制服が血で汚れてる……。着替えたいなぁ……。
「ではついてきてください……」
「いってらー!」
「行ってらっしゃいです」
「ハハハ、い、行ってきます」
部屋の入り口から元気に手を振ってくるアリスとイオラさんに見送られながら僕はガシャガシャと鎧を鳴らして歩く騎士さんに急ぎ足でついて行った。
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