異世界を拳で頑張って救っていきます!!!
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エルフの城で 【4】
【4】
「ここから先はケント様のみ入室を許可されておりますので私の案内はここまでとなります」
「は、はぁ……」
僕は城内を20分ほど歩かされ木で作られた巨大な扉の前に来ていた。というかこのお城広すぎでしょ……。ディズニーランドぐらいあるんじゃないのこれ…………。僕が空返事をしながらそんなどうでもいいことを考えていると、エルフの騎士さんは扉の端に立ちそれっきり動かなくなってしまう。
「ゴクリ……」
立派すぎる扉の前で僕は生唾を飲み込む……すると―――――――
ガコンッ!ゴゴゴゴゴゴ……
「!?」
か、勝手に扉が開いたぞ……。魔法かな……?
「ど、どうもぉ………」
恐る恐る中に入っていくと50か60mほど先のところに立派な王座に虹色の髪をものすごく長くしたエルフが座っていた。周りを見渡すと物凄い高い天井に豪華なシャンデリアが何個も何個もつりさげられている。す、すげぇえええええ、本物のお城みたいだ……………………あ、城か。
というかアリスもイオラさんもきれいだったけど……この人は……もっとすごいな……なんていうか……完璧な美女って感じ………。
「よく来てくれました、もっと近くにどうぞ」
かなり離れているはずなのに言葉が耳元で聞こえてくる。しかし僕は驚かない。こっちは『解析の魔道書』やら巨大トカゲやら魔法やらいろいろ見てきたんだこれしきのことで驚いてたまるか!
「し、失礼します……」
仮にも相手は初対面の女王様。失礼があったら打ち首にされるかも……と思いながら僕はおずおずとエルフの女王様に近づいて行く。
「あなたがケントさんですね」
「は、はい!」
僕と女王様が座っている王座との距離が10mぐらいになったところで女王様が話しかけてくる。ん……? 何で僕の名前を知ってるんだ……。
「フフフ、そんなに緊張しなくてもいいですよ」
女王様は完璧な微笑みを浮かべると僕に語り掛けてきた。
「私の名前はエリザベータ・キャンフィールドです。ご存じのとおり、ここ『アイスル国』の女王をしております」
「や、山崎ケントです……」
僕は縮こまりながらかろうじて自分の名前を口にする。
「フフフ、自己紹介はいりませんよ、あなたの事はすべて存じ上げております。異界の少年さん」
「!?」
この人は―――――エリザベータさんは僕が違う世界から来たことを知っている………。
「フフフ、可愛い顔をするのですね。安心してください、これは私の能力なのです」
「のう……りょく……?」
「はい」
僕が思わず聞き返すとエリザベータさんはにっこりと微笑み王座から立ち上がると大きな窓がある方へ歩いて行く。
「私には未来がわかるという能力―――――予知能力があります」
エリザベータさんはそう言うと大きな窓を開け放つ。心地の良い風と優しい日差しが流れ込んできて僕は思わず目を細める。
「この能力のおかげであなたが来ることを知りました、ずっとお会いしたかったのですよ」
「は、はぁ……」
「フフフ、こちらへいらしてください」
エリザベータさんはこちらに振り向くと手招きをしてきた。
「うわぁ………」
エリザベータさんに言われるがまま近づいて行くと彼女が明けた窓から凄い景色が僕の視界に入り込んできた。
「とても………きれい……です」
恐らくこの場所はとても高いところにあるのだろう……窓から城下町見下ろせる。下を見ると沢山のエルフたちがワイワイと楽しそうにしゃべっていたり、商談をしているのか太ったエルフとメガネをかけたエルフが紙を交互に見ながら怒鳴りあっているのが見える。その後ろでは数人の子供たちが追いかけっこをしておりそれを遠くから眺めている母親らしき人物がいた。さらに遠くに目をやると青々とした大草原が広がっておりその奥にはいくつもの山がそびえたっていた。
「フフフ、そうでしょう、私の自慢の国です」
エリザベータさんはとっても……とっても優しそうな表情になる。そうか……この人はこの国がとても大好きなんだ……。
「あなたにお願いがあります」
「は、はい」
突然、エリザベータさんが神妙な顔つきになる。
「一見平和に見える『アイスル国』ですが、見えないところで闇がどんどんこの国を蝕んでいます」
「それは……大変ですね……」
エリザベータさんは僕の瞳をジッと見つめてきた。
「そこでケントさんにこの国を……いえ、この世界を救っていただきたいのです」
「はい!?」
突然何を言い出すんだこの人は……。ぼ、僕に世界を救えって!?
「確かに私は無茶苦茶な事を言っております。しかし、この国は……もう限界なのです」
「は、はぁ……」
エリザベータさんは悲しそうに大きな瞳を伏せる。
「我が夫、アーサーがなくなってから武官である将軍が権力を持ちすぎ、影では沢山の犯罪が起きています……どうかあなたの力でこの国を――――――――」
「ちょ、ちょっと待ってください!」
僕はエリザベータさんの話を思わず遮る。
「僕はこの世界に来たばっかりなんです……まだ全然この世界のことがわからないし……こんな状態で世界を救えって言われても……」
エリザベータさんはそうでしたとばかりにパンパンっと両手を叩く。すると隅の方にある小さな扉から革袋を持った次女らしきエルフさんが現れた。
「今日から10日後に『遺跡』が現れます。それまでこの世界をゆっくり見て学んで、自分が命を懸けて守ろうと思うぐらい素敵な世界なのかどうかを確かめてください、これはその10日間分の資金です」
「!?」
い、『遺跡』!? なんだろう……また知らない単語が出てきたぞ……。
「あ、あの……い――――――――うお!?」
『遺跡』とは何なのかを尋ねようとすると無表情の次女エルフさんにポンッと革袋を手渡される。中身を見ると金貨が100枚くらい入っていた。
「金貨が150枚入っています、それで武器や防具、回復アイテムなどをそろえるといいでしょう。まあ、どう使うかはあなたの自由です」
「あ、あの……いいんですか……こんなにいただいてしまって……」
この世界の相場はわからないが決して安くはないと思われる金額に僕は目を白黒させる。
「フフ、先行投資ですよ。遠慮なく使ってください」
「は、はい」
とりあえず僕はその革袋を受け取ることにした。
「あら、もうこんな時間ですね」
「?」
エリザベータさんが窓から空を見上げながら言った。
「そろそろお別れの時間です」
「あ、そうですよね……色々とありがとうございました……」
「いえ、どういたしまして」
向こうは一国の女王様、決して暇ではないだろう。こんな見ず知らずの若者と話す時間などないはずだ。
「正門から出てしまっては目立ってしまうので裏門から出てください。上口へはそこの入口に控えている騎士に案内させますのでご安心を」
「あ、あの……」
「はい、なにか?」
「ここを出ていく前にアリスに挨拶をしていきたいんです……その……いろいろお世話になったので……」
僕の言葉にエリザベータさんは大きな瞳でパチパチと瞬きする。
「申し訳ありませんが、今あなたがアリスに別れを言いに行ってしまうとアリスはどんな手段を使っても必ずあなたについて行きます」
「は、はぁ……」
「あの子にはちょっと大切な話があるので、今あなたについて行かれると少し困るのです。フフ……フフフフフ………」
「は、はいいぃぃぃ」
ゴゴゴッとエリザベートさんから怖いオーラが湧き出てくる。アリスサン……イッタイナニヤラカシタンデスカ……。
「とりあえず、そういう訳なので、申し訳ありませんがケントさんにはすぐにお城を出てもらわなければならないのです…フフフフフフフフフフ………」
「ハイ! リョウカイデス!」
コワイデス! 怖いですエリザベータさん!! これ以上ここにいたら寿命が縮んでしまう……。
「では、10日後にアリスをあなたのもとへ向かわせます。その時にまた会いましょう」
「ハイ! 失礼しました!」
そう言うと僕はいそいそと扉の方へ向かって行く。と、とりあえず10日間でこの国を見物すればいいんだな! 『遺跡』がなんなのか聞けなかったけどまあいいや……。
「裏門まで案内します」
「あ、お願いします……」
僕は一度振り返ってこちらをニコニコと微笑みながら手を振っている女王様に一礼すると巨大な扉の前で待ち構えていた騎士さんに連れられて裏門まで案内されることとなった。
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