異世界を拳で頑張って救っていきます!!!
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エルフの城で 【2】
【2】
「ど、どこって………」
僕の質問にイオラさんは戸惑った表情を浮かべる。
「王都の中心アイスル城に決まってるじゃないですか……」
「ふぇ……!?」
し、城!? そ、そうか……そう言えば王都に戻るって団長が言ってたっけ……。
「あ、そうですよね……そう言えば気絶して運ばれてきましたよね。ここはアイスル城、『アイスル国』最大のお城です、女王殿下や王子様やお姫様が住んでいらっしゃいます。あと聖騎士パラディンや賢者パンディットなど身分の高い方々もよくいらっしゃってます」
聖騎士パラディン? 賢者パンディット?? よ、よくわかんないけど強そうだ……。
「そ、そうなんですか……でも何で僕はお城に……?」
「それはね……私を守ってくれたからだよっ!」
なぜ城に連れてこられたかがわからず、イオラさんに質問するとドアのない入口から答えが返ってくる。
「ア、アリス!? 無事だったんですか!?」
「やっほー! あの後団長たちにしっかりと治療してもらったから平気だよー」
思わぬ人物の登場に僕は目を白黒させる。きれいな髪の色と同じ水色のレースが付いたドレスを着ている。肩を大きく出しており日焼けした健康そうな肌が覗いている。すごいなぁ……本物のお姫様みたいだ……。
「あ、アリス姫様。命令されたとおりにケント様には私が使える最大級の医療魔法で治療させていただきました」
「うん、ありがとー」
イオラさんがアリスに向かって恭しくお辞儀をする……え……ひ、姫……??
「あ、アリスって……お姫様だったんですか!?」
思わず僕は飛び上がる。
「うん、そうだよー。6人姉妹の一番末っ子ー」
「かるっ!? ッてか6人姉妹!?」
「そそ、6人姉妹。あ、イオラみたいにかしこまらなくていいからねー。私そういうの苦手だから」
お姫様だったのか……。しかしエルフのお姫様はギルドに入ってむさい団長と巨大トカゲ狩ってるのか……。僕が前居た世界とは全然違うな……。
「まあママと喧嘩中で生活費とか全部自分で稼いでる身なんだけど……」
あ、やっぱり何か事情があったんですね。
「あ、あの………」
「?」
「あ、あの時油断しちゃってごめんね……私がしっかりしてないとだめだったのに……あと、助けてくれてありがと……」
僕に近づいたアリスが目を伏せながら謝ってくる。草原で出会った時には全くしなかった香水の匂いがアリスの水色の髪からフワッと漂う。
「い、いいですよ。誰でも油断することはありますし……」
ちょっとドキッとしてしまい僕は顔が赤くなる。なんでエルフはこんなに美人なんだ………。
「それに、何となくですけど……とても楽しかった……」
「「えっ………」」
あの時の戦闘を思い出して思わず出てきてしまった言葉にアリスとイオーラさんが驚いた表情を浮かべる。
「あ、あれ……なんでこんなこと言っちゃってるんだろ…………」
僕は自分が発した言葉に戸惑いを覚え、思わず手で口をふさぐ。沈黙が花で囲まれたこの部屋を支配する。
「ま、まあ、ケントとっても強かったよね! ゴブリン50体を魔法も武器も使わずに素手だけで倒すなんてすごいよ!」
気まずい雰囲気を壊すようにアリスがニッコリと笑って僕をほめる。
「アハハ……、ゴブリンたちの急所が僕たち人間と同じで助かりました……」
「はて……ニン……ゲン……?」
僕の言葉にイオラさんが首をかしげる。
「あ、僕の…………なんて言ったらいいのかな……」
「種族?」
「そ、それです!」
僕がなんて説明しようか悩んでいるとアリスが助け舟を出してくれた。
「ケントさんはその……ニンゲンという種族なのですか?」
イオラさんが恐る恐る聞いてくる。あれ、まさかこれ僕以外には人間いない……?
「は、はい」
「聞いたことない種族ですね……。な、何か特殊能力とか持っているのですか? ウンディーネのように水魔法が得意とかサラマンダーのように炎魔法が得意とか獣人みたいに身体能力がかなり高いとか……」
ちょとまてちょとまてイオラさん、僕の知らない単語が3つぐらいでてきたんですけど!? ま、まあ水魔法と炎魔法は大体想像できるけど……ウンディーネ? サラマンダー?? 獣人??? 僕がどう反応していいかわからないという表情をしているとアリスが説明してくれる。
「あ、イオラ。言い忘れてたけどケントはニッポンという恐らくとってもとっても遠い国から来んだ、だから知らないことがたくさんあるんだよ。魔法もハンスが使っていたのを見たのが始めてみたいだったし……ウンディーネとかサラマンダーとか獣人とかもわかんないんじゃない?」
……遠い国か……まあほんとは別の世界から来たんだけど……そう言うことにしておこう。
「そ、そうなのですか。私が言った言葉でわからなかった単語とかはありますか?」
イオラさんが律儀に僕に聞いてくれる。優しい人だなぁ……。
「は、はい。ウンディーネとサラマンダーと獣人について説明してほしいんですけど……あと僕以外に人間って種族の人はいないんですか?」
僕が控えめに言うとイオラさんはにっこりと微笑む。
「では説明いたしますね、ウンディーネというのは私達エルフの国、『アイスル国』と隣接する国『シトレア国』という国に住んでいる種族のことです。水魔法の扱いと治療魔法がとても得意で私達の国と同盟関係を築いています、あとニンゲンという種族は見たことも聞いたこともなかったです……ケントさんを見たところ私達より耳が短い以外は特に変わったところはないように思いますけど……」
「「フムフム」」
イオラさんの説明を僕は頭に叩き込む。………というか何でアリスまで正座してきいてんの……?
「では次にサラマンダーについて説明しますね。サラマンダーは『ガレン帝国』と呼ばれている国に住んでいる炎魔法と『刀』と呼ばれる剣の扱いに長けた種族です。この『ガレン帝国』も私達が住んでいる国『アイスル国』と隣接しています。しかし『シトレア国』とは違いとても攻撃的な思考を持った国で、私達『アイスル国』とは敵対関係にあります……」
最後の方イオラさんはとても悲しそうな表情を浮かべた。おそらく争い事とかが苦手な人なんだろう……。
「あいつら……いつも喧嘩吹っかけてくるよね……」
アリスも厳しい表情でうんうんとうなずいている。よし、サラマンダーには気を付けよう。
「最後に獣人について説明しますね……」
イオラさんはそこで言葉を言ったん切る。
「彼らは体内に保有できる魔力が極端に少なく身体能力が極めて高いのが特徴です、昔は沢山いたらしいのですが、今の彼らの国際的な立場はとても低くよくこの国や他の国の奴隷市場などで売られているのが現状です……」
「ど、奴隷ですか……」
この国に、いやこの世界に奴隷制度というものがあることに僕は驚く。
「私はこの制度には断固反対なのですが……まぁ一端の医療魔法師が何と言おうと国は変わりませんけどね……」
「そう……なんですか……」
「はい……」
「「「……………」」」
本日何度目かの気まずい雰囲気が流れる。
「と、とりあえず話を本題に戻そうよ!」
「そ、そうですね!」
アリスが焦った表情で話を本題に戻す。この空気を何とかしたい僕も急いで話を切り替えるのに全力を注ぐ。
「種族にはそれぞれ何らかの特殊能力があるんですね……エルフはどうなんですか?」
「うーんとねぇ、エルフによってそれぞれ違うんだ。例えばイオラは植物系医療魔法を使うときに魔力を使わないでいいっていう能力があるし、私はケントに見せたと思うけど自分の魔力を筋力に変換する能力があるよ。ガバラン団長は腕力がほかのエルフとはケタ違いに高いって言う能力を持ってるんだ。あ、ハンスは魔法全般の使用効率が上がるって言う能力だった…気がする……」
僕の質問にアリスが答える。なんでハンスさんの能力はうろ覚えなんだ……。若干ハンスさんをかわいそうに思いながら僕は自分の手のひらを見つめる。
「僕にも……あるんでしょうか?」
「どうなんだろう……魔法は使えないでしょ?」
「はい、もちろん。ていうか見たのもこの国に来てから初めてです」
「じゃあ魔法系じゃないとおもうんだけどなぁ……」
うーん、とアリスが考え込む。
「あの……」
僕たちのやり取りを眺めていたイオラさんが控えめな口調で言ってくる。
「簡単に確かめる方法がありますけど………?」
「「ふぇ!?」」
マジデスカ………、ていうか何でアリスも驚いてんの……。
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