ホウエン地方LOVEな俺がゲームの中に吸い込まれちゃった
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砂漠に舞う妖精
「はあ、つまりホウエン行きの船が出ないからその間にカロスを満喫してやろうという事だったのね。……行き倒れてた癖にこの地方を回りきれていないってのに凄く突っ込みたいとこだけど」
手持ちのポケモン達をスリスリモフモフハスハスした俺はとりあえずみんなをモンスターボールに戻し、セレナとカルムに事の経緯を話した。
「まあはっきり言って特に予定も無いから適当に観光地を巡る予定だったんだけど……バトルしたいし、そういう施設に行くのもいいかなって」
「そっか……あ、それなら……」
「おいおい、一緒に行こうとかならお断りだぞ」
「なんで?」
「女……ましてやカルムがいるのに何言ってんだ」
「「彼氏じゃない!」」
そんなハモりながら彼氏じゃないとか言われてもねえ……
「まーいいや。なんにせよ俺は一人で行くからな。ツッコミ要因ってのは今すぐにでも欲しいとこだが……二人の邪魔は出来ないしな」
「邪魔って……いや……うん、わかった……」
何だその納得いかなそうな顔は!
「あとカルム」
「はい?」
「セレナと仲良くな(笑)」
「ちょ……!かっこわらいって口で言うことじゃ……!!」
言い終わる前に俺は発電所を飛び出し、当初の目的地ミアレシティを目指すのだった。
***
「いやー。焦った焦ったー、具体的にはフヨウちゃんにノーマル・かくとう技オンリーのケッキングで挑んでしまった時くらい焦ったー」
わかりにくい例えまでして何がって?そりゃ……焦りもするでしょうよ。
XYの主人公と会っちゃったんだから。
……おいおい、俺を鈍感系御都合主義主人公と一緒にするなよ。俺は鈍感でもなければ主人公でもない。
それに比べてあいつらマジ主人公してたし、ポケモン主人公の共通点『帽子被ってる』『バッグ背負ってる』を満たしてたからな。
第一、悪の組織に楯突いてる時点であたりはつくだろ。ポケモンの主人公ってのは某赤の人しかり、代々個人の力で悪の組織を壊滅に追い込む役割を担っているんだ。
とどのつまりセレナが女主人公、カルムが男主人公という訳だ。
さっきのセレナの誘いを強めに断ったのもそれが理由。結局俺はこの世界の歴史をめちゃくちゃにしたくはない。
勿論二人を置き去りにして悪の組織ぶっ潰して俺TUEEEEすることも出来るが……そんなことをすれば確実に世界が想定外の方向へと進んでしまう。
具体的に言えばあの二人の主人公が悪の組織を潰せなかったり、チャンピオンを警戒して悪の組織のリーダーが鬼畜スペックになったり……などだ。
え?フラグ?そんなわけ…………ないよね?
まあ兎に角だ。
よくある主人公無双展開を防ぐ言い訳のようだが、主人公が他地方のチャンピオンと接点を持っている時点で原作とかけ離れているんだ。これ以上の原作ブレイクは怖い。
……主に俺がっ!
……だってもし俺がストーリーに関わろうものなら、俺自身は主人公補正も効かないだろうからフレア団が……例えば伝説幻オンパレードだったシンオウ地方のギンガ団の様な組織だった場合、世界がやぶれて空間捻じ曲がって時間ブッとんで死亡……というのが目に見えてる。
いやー、まじで。俺基本新作ソフトが出た場合楽しみが増えるように事前情報をチェックしないんだよ。
……うわぁぁぁ!もう!なんで下調べしてなかったんだ俺はぁぁぁぁぁぁ!
もう凄い頑張ってたぞあの時の俺。CMすら見ないようにTVはDVDやら録画やらに限定してたし、日曜朝の某ポケモン情報番組も見なかったんだぞ!……なんという無駄な努力!今となっては全てが裏目にしか出てない。最悪だ!
と後悔はしつつも俺は延々続く砂漠を進んで行く。ミロカロスのあまごいも効果切れ、再度掛け直しまたびしょ濡れになるのは嫌という訳でパス。
じゃりじゃりとした感触を舌で感じつつ淡々と黙々と歩き続ける。
「さーばくは続くーよー♪どーこまでーもー♪ゴーゴーゴーグルでー♪」
何と無く歌ってみる。周りに誰もいないこともあって遠慮はない。……因みに作詞作曲俺である。
あー、楽しくなってきたー!いいねイイねイイヨ!ご近所さんを気にせずポケモン愛溢れる自作の歌詞を叫べる……何という幸せっ!
だがこの後、俺に輝かしき(黒)歴史の1ページが刻まれる出来事が起こる。
つまり。
「あれ!?声がきこえる?」
「ダートにマッハバイkっっっっ!!!!!」
びっくりしすぎて俺は舌を噛んだ。思いっきり歌っている姿を第三者に見られるとかポケモン廃人の俺には難易度高い。
(やばいやばいやばい。……聞かれた!?まさか!?どこにいる!?砂煙で見えないけど空耳ではないはず!まずいぞ!……は、恥ずかしすぎる!)
俺赤面。……を通り越して真っ白。
しかし、そんな俺は更に驚くことになる。
「だ、だれかっいるなら助けて!!!」
ん?今地面の中から声が聞こえた気が……?
「ナックラーに引きずりこまれちゃったの!」
「あらー大変……んんぇえぇ!?」
俺が素っ頓狂な声をあげた瞬間だった。
フワッとした浮遊感が俺を包んだ。何事かと下を見る。
黒々とした丸い空間……ああ、わかりますわかります。ダークライのダークホールですね。はいはい。
……いや、現実逃避は辞めよう。
まあ地面が割れていたんだよね♪
「はー、毎回だけど何でもかんでも唐突だろー」
***
……という訳で砂の中に引きずりこまれました。
「何でだよっ!」
会心の一撃ならぬ会心のツッコミ。
おっし、ツッコミを入れたところで状況を整理しよう。俺はポケモンの世界に来て、主人公と会って、バトルして、砂漠来て、悪の組織に遭遇して、砂漠来て、女の子の声がして、砂に引きずりこまれた。
……訳が分からないね。
自分で言うのもなんだがこれ全部一日で起きてるんだぜ。もはや俺の適応能力の高さに自分で驚くレベル。俺凄え。
で、今だが。
「砂の中にこんな空間があるとは」
少し湿り気のある土に、空気。人やポケモンが活動するのには困らないであろう必要最低限の条件は整っている。
「うーむ、さっきの女の子らしき声の主はいないか」
どこもかしこも土だらけ。唯一あげるとすれば天井が大きく開けーーこれに関しては俺が落ちてきた穴だろうーーそして右端に小さな通路があるくらいだ。
「あの子の話を信じるとするならばここはナックラーの巣穴か?」
今俺は仰向けになっている訳だが、そのサイズで少し余る程度というのがこの穴の大きさだ。ナックラーの大きさを考えると丁度良い。
「とりあえずあの穴から出てみるか」
この空間で唯一の通路らしき穴。おそらくナックラーの移動用であろうそれに俺は四つん這いになって這って行った。
***
探索開始から10分。しかし目ぼしい物は見つからない。俺に助けを求めた女の子もナックラーも全くだ。
しかし全体像は見えてきた。この空間の配置は俺の世界の普通の蟻と同じような一本道から各部屋に分岐していく型のようだ。
「おーい、聞こえるか?」
俺の声が狭い空間に木霊する。
……返答、なしか。
まあ予想はしていた。だが……もうこうなると最後の手段を取らざる得ない。
「出てきてくれ、フライゴン」
モンスターボールを手に、軽く放る。
「フライゴーーン!」
ふっふっふ。
意外にあっさり出てきてびっくりしただろ。更にポケモンに抱きつかなくなった。
俺だって成長しているということだよ、諸君。まあ決してフライゴンにスリスリしたくないわけではない。ただ、ちょっと真面目にしとかないと……女の子が助けを求めている、という一応シリアスな場面だから。
「ライゴーン!」
「お、おう、よしよし」
フライゴン自分からスリスリして来た!やばい可愛い!アレだよ、ポケモン図鑑にあった通り。本当妖精!砂漠に舞う妖精の名は伊達じゃないぜ!
「……って、違う違う違う」
「ゴーン?」
「いや何でもない。何でもないんだ」
折角自制してたのにアッサリ崩壊した……不意打ちは卑怯だぜ、フライゴン。
「……フライゴン、地面タイプなら土の中はお手の物だよな」
「ゴン♪」
おし、それなら問題ない。
探検して分かったがこの巣はある一点に近づかないよう巧妙に作られている。その一点こそが今俺がいる丁度真下の空間ということだ。
いやーフライゴンにやってもらうのは最終手段だったんだがそろそろ日も傾いてきたし時間ないからなー。
「じゃあヨロシクフライゴン!……真下に【あなをほる】」
「ゴーン!(その前に!)」
「ん?おお!?」
フライゴンが俺を背中に乗せてくれた。
ああ、なるほど。
「下を掘ると例の大きい空間に抜けちゃうから、飛べる自分に乗ってくれと」
ゴーン♪と嬉しそうに鳴き、フライゴンは鋭い爪を地面に突き入れた。
後書き
自分の中で砂漠と言えばゴーゴーゴーグル。
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