ホウエン地方LOVEな俺がゲームの中に吸い込まれちゃった
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フレア団は痛い子
「ほーら、吐け、吐けよ。吐いちまえば楽になれるぜ」
「……ス、スマート」
突然赤い服を着た頭がトんでる人にバトルを仕掛けられた俺。まあぶっちゃけ瞬殺だった。当然といえば当然だけど、素人丸出しで本当に頭が逝っちゃってる感じ。本当に……関わりたくなかった。
だが一つだけ……こいつが洩らした『フレア団』という単語だけは聞き逃せなかった。
ポケモンで『〜団』とかもうアレしかないだろ。
つまりは悪の組織。
第三世代ホウエンはマグマ・アクア団。第四世代シンオウはギンガ団というようにポケモン世界の地方には必ず一つ以上悪の組織が存在する。
今回もこの例に漏れずカロス地方にはフレア団という組織があると考えて良いだろう。
と、言う訳で
「まずお前はここで何をしてたんだ?答えろ」
俺は今、人生初の脅迫を行っている。まあ逆に人生初じゃなかったら何なのという話なのだが。
「い、いうもんか!」
そりゃそうだよなー。こんなで吐く悪の組織があってたまるかって話……
『発電所の作戦に邪魔が入らないように見張っていろ』なんて言われてねえよ!」
……前言撤回、うん。まあ初めてだが情報を全て聞き出すのに時間はかからなそうだ。
***
「いけー!ズルッグ」
「やってしまえ!グレッグル」
「ずるーっぐ!」
「グレーグル」
「はあ、もうヤダ」
はあ、俺なんか悪いことしたか?はあ……ため息が止まらんよ。
見張りのフレア団(したっぱ)に情報をあらいざらい吐かせた後、取り敢えずカロス発電所がかなり重要そうだったので来てみたら、案の定フレア団だらけだった。進もうと進もうとフレア団フレア団フレア団。
おまけに戦いの面でもポケモンは弱いし同じ種類ばっかだしで、新鮮味が足りない。もっとこう血湧き肉躍るようなそういったバトルをしてみたい!
「むっ!また侵入者か!見張りは何やってるんだ!」
ーー俺がぶっ潰しました。とは言わないが取り敢えずまたかよ。もういいよ出てくんなよ。頼むから。本当に、100円あげるから。
でも一つ重要なこと言ってたな。『また』って。ということは俺が来る前にも侵入者がいたってことか?
そんなこんなでミロカロスにバトルを任せたままグングン進んでいくと、今度は一風変わったモヒカン頭の赤い奴が出てきた。
「今度はなに?」
「アケビさんに頼まれた。ここからは行かせん!勝負!スマート!」
ほんと話聞かねえし、スマートスマートうるさいし、相変わらず真っ赤だし、モヒカンだし、ダサいし、モヒカンだし。
なんか自分で幹部とか言っていたモヒカンのヘルガーをミロカロスはただのみずでっぽうで蹴散らす。
ヘルガーか。うん。ポケモンってだけで俺的にツボなんだけどヘルガーはそんなにスイッチが入らない。せめてポチエナとかなら俺大喜びなんだけど……
「いけ、グラエナ」
「グラァー!」
「お願い!ニャオニクス!」
「ニャオニー!」
「いたぁぁぁぁ!ポチエナ……じゃなくグラエナァアァ!」
噂をすればという奴だ。グラエナ……はそんなでもないがポチエナはひじょーーーーに思い入れがある。なんとゲーム開始直後に色違いが出てきたのだ。
まあそんな訳で抱きつきたい衝動を抑え、凝視するだけに留まった俺だが……
「ちょ!な、何でここにユウキがいるのよ!ホウエンに帰ったんじゃなかったの!?」
え?
「な、なんでセレナが……あとカルムも」
「おまけみたいに言わないで下さい」
セレナにカルムがいた。なに?なんで?ここ悪の組織が活動してるような場所だけど?しかも発電所なんていう微妙な観光スポットだぞ。そんな子どもが来るような場所じゃないはずなんだが……しかしそうなると考えられる可能性は一つ。
……まさか!?お前らフレア団の仲間だったのか!?
「見損なったぞ!お前ら!」
「……どういう起承転結があってそんな結論に至ったのか知らないけど、確実に勘違いしてるわね」
「……うん、僕もそう思う」
「あら?君はこの子達の仲間?」
「仲間……だよ?」
「疑問系!?やはりフレア団の仲間で、実際は邪魔な俺を潰そうとしていたのか!?」
「……まあごちゃごちゃ言ってるのを待ってあげる道理はないんだけどっ!『かみくだく』!」
「おいおい……ちょっと待てや。人が話してる最中に攻撃はやめろ。……ミロカロス、ハイドロポンプ」
「避けなさい!」
なんだろう。哀しいかな、普通に当たって瞬殺だった。
「……な!そ、そんな!?私のグラエナが一撃で!」
なんか言ってるが、グラエナのトレーナーらしきフレア団(?)の女が横槍入れてきたから適当にヤっといた。
「……で、お前らフレア団だったのか。悪役だったとはな……残念だぜ」
「は、早合点しすぎて僕たちの意見を聞いてくれない!?」
「あと私達が苦戦してた敵を会話の片手間で仕留めるとか……なんだろう。泣けてくるわ」
残念だ。誠に信じ難いがこの少年少女は悪に堕ちてしまった。……しかし相手が悪かったな。無力化して警察に突き出したあと、反省させて真っ当な道を歩くように更生させてやるっ!
「勝負だっ!」
「どうしようセレナ」
「う、うーん。えーっとどうしよう」
何を悩むことがある!来ないならこっちから行くぞ!
「ミロカロス!そのままれいとうビーム!」
「…………」
「……あ、あれ?」
……ミロカロスが言うこと聞いてくれない!なんで!?
「ミロッ、ミロカー(はあ、相変わらず結論を急ぐ性格だな。もうちょっと話を聞く癖を付けたらどうだ)」
なんて言ってるかわかんないけど確実に呆れられてるよ!そんな顔してるもの!『ふん!こいつは!』って鼻で笑ったよ!
「ニャオニクス、ユウキにねこだまし」
「え!!トレーナーに攻撃してどうするっ!……うおあ!」
ポケモンのねこだましでびっくりして尻餅をつき、自分のポケモンに拘束されるというなんともレアな体験をした俺だったが……
……これはあとで聞いた話。
二人は前々からフレア団に絡まれる事があり、迷惑をかけるあいつらを許せない!と旅先のあちこちで戦っているんだそうだ。
とどのつまり、二人がフレア団だという考えは完全に俺の早とちりで、本当は一足先に乗りこんでいただけのことだったのだ。
***
「すんません。反省しました。ごめんなさい」
場所は同じくカロス発電所。セレナとカルムに謝り、俺はミロカロスに適当な場所にあった個室に連れていかれた。
で、俺は今。俺の手持ち6体全員に囲まれている。
「いや、まじで。本当に。俺の早合点。早とちり。……全面的に俺が悪かったんだって!」
謝罪の言葉を述べる。だが俺のポケモン達は話し込んだまま動かない。取り敢えず硬直したまま動かない俺。
「ミロー。ミロッ。ミロカッ(君のことは許そう。いつものことだからね。でも一つだけ。君はある日を堺に何か……変わったね。それを教えて欲しい)」
う、うーむ。何を言っているのかサッパリだ。
するとポケナビに文字が表示された。きっとそんな様子を見兼ねたアイツがやってくれたのだろう。
しかしそれを見て俺は驚き半分、やっぱりかという気持ちが半分の感想を抱いた。
やはり自分のポケモンには俺が前と変わっているということを言っておかないければならない。いくら元は俺が現実でエメラルドを操作していた続きの世界だったと(仮定)しても、きっと俺は本当のご主人と性格も言動も果てはポケモンの呼び方だって違うかもしれない。
……そう思っていた。
だが俺のポケモン達の返答は意外なものだった。
【ソレハ違ウ。君ノ中身ハチ違ッテモ、全テ同ジナンダ。性格モ言動モ私達ノ呼ビ方モ】
「そ、それは……どういう」
【ツマリ君ハ、前カラ何モ変ワッテハイナイ。私達ガ従ッテキタノハ、中身ガ違ッテモ君自身ナンダ】
……なんと。
俺は前から変わっていない。てことはやはり、俺が『ユウキ』になったのは、エメラルドで操作したそのままがこの世界の結果になっているということだからか……
……訳が分からないね。自分でも訳が分からないよ。
まあ難しいことは置いといて、
兎にも角にも、俺は自分に自信を持って行動しても良いということが分かった。それだけで十分だ。
「みんなありがとうな。なんか自身持てた」
【皆君ヲ信頼シテイル。ソレヲ忘レナイデクレ】
「ああ。ありがとう」
何だろう。優しさが身に沁みる。
あ、でも丁度いいや。全員モンスターボールから出てきてるし長年の願望を今!!!
「とうっ!」
この後、俺が(はたから見れば過剰な)スキンシップを取ったのは言うまでもないだろう。
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