戦国†恋姫~黒衣の人間宿神~
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二十五章
最後の大戦(4)
「申し上げます!ただいま二条館にて狼煙と信号弾が上がりました!別働隊が二条館の占拠に成功した模様です!」
「苦労。下がれ」
「はっ!」
「ふむー、意外と早かったっすねー。さっきの地震やら爆音と何か関係があるかもっす」
「ほんの少し、氣の匂いがした」
「それについては私達が知っているわよ。秋蘭、さっきの事を長尾衆に伝えといて。私は一真に報告するから」
「了解だ。恐らく壬月のお家流である五臓六腑を使ったと、先程戦艦から報告が上がっているよ。爆音については、戦艦からの空爆による音であり例えるなら爆弾を付けた矢を沢山撃って破壊したという事だ」
そう言って秋蘭は、バカ姉である春蘭に代わって説明をした。地震を起こすぐらいのお家流を持つ壬月だと伝えると、流石は鬼柴田と呼ばれただけはあるとかだった。秋子も同じ事を言っていたが、流石に爆音までは分からない様子であった。
「なるほど、氣の爆発は納得出来ましたが爆音についても秋蘭さんの説明なら納得ですね」
「流石は織田ってとこかしらね。家中に人の形をした化け物がうようよ居そうよね」
「化け物一号、柴田壬月さんっすー!」
「あの麦穂というお姉様もかなりの化け物と見る」
「三若ちゃん達もなかなかの傑物ではありますが、人材が豊富なのは織田家もそうですが黒神眷属と一真さんもですよね?春蘭さん」
「そうだ。我らの主を中心とした仲間の塊であるから、私もいつか勝てるように鍛錬をしている。それに長尾衆も化け物揃いなのではないのか?」
ここにいる柘榴や松葉も化け物だと言いたいが、松葉曰く一番の化け物が秋子なんだとさ。角隠しをしているそうだが、鬼の新手が来た様子だった。新手の後ろに織田木瓜を発見したらしいので、俺ら率いる黒神眷属と織田の本隊である。
「そろそろ来る頃だと思ってたわよ?私の旦那様はね、秋子!開門準備を急がせろ!」
「は、はい!」
開門準備と共に、新手の鬼達を撫で殺しをしながら本隊と共に長尾衆と奥方衆魏と合流を果たした。新手の鬼を瞬殺させてから、先に織田木瓜の本隊を入れてから黒神眷属を入れたのだった。
「一真!」
「美空、やはり華琳の言った通り無事の様子だな」
「何よ、私の心配はしてなくて華琳の心配はしていたのよ」
「冗談だ・・・・無事で何よりだな美空。にしてもいつの間に華琳らと真名で呼ぶようになったんだ?」
「まあ戦っている間に華琳ら達から呼ぶように言われたのよ・・・・それより久遠。約束通り、最速で禁裏を手中に収めたわよ」
「うむ。一真らのお陰でこちらは無傷だが・・・・で主上は?」
「主上には誰も近付けてないわ。もちろん私も近付いてないから、でも今出川卿には事と次第を伝えておいたわ」
「気遣い、すまぬ」
こういう大所帯なのか、やらないといけない気遣いだから美空は気にしていない様子だった。俺は華琳の報告を聞いてから、禁裏に入ったんだがトレミーからの報告だと五臓六腑と大量の爆撃により、二条館の城門やら壁ごと吹っ飛んだそうだ。無論鬼も殲滅したが、もう再生されているので安心である。
禁裏に入ったので、これからの事を久遠と美空が相談をしていたが俺と華琳と愛紗は今後についてを無言のまま聞いていた。奥方衆蜀は俺達と共にいたし、影ながら攻撃していたので久遠らと本陣にいた奥方衆呉と連携をしていた。ここに魏呉蜀が揃った事だが、魏と蜀は俺らと共に行く事にして呉は本隊守護を任した。
「これからどうするかは・・・・詩乃!」
「はっ!それでは主攻組指図役として、今後の動きのご説明を致しましょう」
久遠に呼ばれて前に進み出た詩乃が、堂々とした素振りで今後の作戦を発表した。ちなみに連合と黒神眷属では指揮系統が違うので、指示を出すのは俺となっている。連合側は詩乃だとすると、こちら側は主に軍師である桂花が華琳らであって朱里や雛里が愛紗らに指示を与える。桃香は医療班にいるので、連合本隊と共にいる。
「禁裏内に拠点を築けたとはいえ、禁裏はまだ鬼達に包囲されております。まずはその鬼達を駆逐する事が、それが作戦の第一。長尾衆は森一家と合流し、洛中の鬼殲滅をお願いします。ちなみに家屋の焼却は、織斑一真様が率いる戦艦によって既に任してあります」
「家屋の焼却っす?そんな事すれば、昔話に聞く応仁の大火と同じになるっすよ一真さん!?」
「それに関しては承知しているし、このまま建物があると隙が生じる事となり得るからだ。それにこの戦が終わればこの世界ともさよなら何でな、俺達に未練などないからさ。鬼の数は未知数でもあるが、討伐効率を上げる為には仕方が無い場合もあるのさ」
「なるほど、それなら一真の言葉を信じましょう。現実的に考えたって、市井の民はもう逃げているはずだしこの戦が終われば私達の帰る所はここではなくあの戦艦。それと共に連携をしている事ならば、一真の大きな背負い荷物を少しでも減らせるわ」
「えーっと、秋蘭さんが見ているそれは京の地図のようですがどうやら計画的のようですね」
そう言いながら俺達は、投影型端末で家屋の焼却がどのぐらいやっているのかを見ていたら秋子が見てきた。%ゲージは分からなくとも、数字を見ればどの程度まで進んでいるか分かるそうで、それに長尾衆の足軽達全員無事という事だけど指揮下はまだ美空に預けている。これが終われば八大夜叉大将の指揮下に編入させる。これで夜叉五千から数万となる。
「少々笑った所で行動を移そうか・・・・長尾衆は洛中のお掃除を頼む。奥方衆魏は俺達と一緒に行動を共にするとして、久遠は禁裏をお願いするがいいかな?」
「ああ。任せておけ」
「それと・・・・旦那様」
「ん?何だ美空」
「・・・・あんまり無茶な事はしちゃダメよ。華琳、一真が無茶しないように監視を頼んでもいいかしら?」
「ええ」
まだ合流出来ていない光璃に、他の妾達と久遠に美空を泣かせたら死んでも呪ってやると本来言うはずだった。だが華琳の一言でそれは無かった事となり、俺は俺でやるから美空もなと言っといた。武運を、と互いに言ってから長尾衆は洛中にて討って出ていった。
鬼共皆殺しだと言っていたが、七手組一番隊である柿崎柘榴が先陣を切ると言う雄叫びで毘一文字の旗が禁裏から出陣していく。奥方衆蜀は引き続き俺らと共に行くが、奥方衆魏は不在時に起きた事を簡潔に話した。
「麦穂!長尾衆に代わり、各方面の門を固めよ!」
「御意!」
「詩乃、苦労であった。あとは麦穂が引き継ぐので、一真隊に戻り黒神眷属と共に一真を支えてやってくれ」
「畏まりました」
「・・・・一真。仕上げを頼む」
「その言葉を待っていたが、任せておけ!エーリカを見つけ次第決着を付ける」
「・・・・(コクッ)」
頷いた久遠の頭を軽く撫でた後、俺はエーリカをどういう風に倒して身体から追い出す作戦を最後まで考えていた。そして最初に妾となった者と背を向けてから、黒神眷属であるヴァーリらの所へと行くのだった。
「いよいよ俺達黒神眷属と一真隊の出番だが、黒鮫隊は黒神眷属なのでそう呼ぶ事とする。皆の者、準備はいいか!?」
「おおおーーーーーーーっ!」
「いや一葉様、ちょっと張り切りすぎですから」
「指揮ばかりで疲れた。余は暴れてスッキリしたい」
「指揮ばかりって!一葉様は一真隊の指揮など、全てそれがしに丸投げしたでしょーがっ!?」
「・・・・ちょっとお待ちになって下さいな。・・・・それを貴女が言うのも可笑しな話ではありません事っ!?」
「あ。・・・・まぁそれは置いておいて『置いておくなバカが!』うぅぅ・・・・それがしの頭は木魚ではありませぬぞ」
夫婦漫才を強制的に終わらせてから、俺らは戦闘には慣れているし神の加護があるので問題ないがこの暴れ馬将軍である一葉に問題があった。それと幽の頭を叩いたのはハリセンだが、一々音を鳴らせるのも面倒なので音が鳴らない程の速度で叩いたのか音がまるで木魚となっていた。
「俺の事は余り気にしないで頂こうか。俺ら全員が化け物の類ではあるが、一葉は暴走しないで頂こうか。俺らの指示を聞いてから、身体を動くようにしないと拘束するからな?」
「・・・・うむ。注意はするが、出来るだけな!」
拘束という言葉を聞いた一葉は一瞬顔を赤く染めていたが、すぐに真顔へと戻った。良い笑顔になったが、言う事は聞くだろうしここには側室である華琳達がいる。位は将軍より下だが、俺=神なので半神としているし側室と愛妾では上なので指示は聞くと思う。
「幽さんの言う事も尤もではありますが、先鋒は黒神眷属の皆さんとして一葉様は私達一真隊でお守り致しますから中軍を定位置にして下さい」
「えー!綾那、もっと前に出たいですー!」
「うむ。余も同じじゃぞ、綾那」
「ねー♪だったら二人で前に出るです!」
「その前に華琳様達が冷たい目で見てますから、諦めて下さい綾那に一葉様」
「歌夜の言う通りでありますし、一真隊の指揮権は事実上一葉様が持っているのですから。自重してくれないとこちらが困りますよ」
「俺らよりも前に行ったらどうなるか、分かっているよな一葉?」
「うむぅ・・・・主様がそう言うのであれば自重してやろう」
まるで承知したかに見える言い訳の伏線でもあるが、黒神眷属は俺を中心に動くとする。神器や剣を持っているが、黒鮫隊は一真隊鉄砲部隊である梅が指揮をする八咫烏隊と共に後方支援する事となった。鉄砲の後ろにころ率いる長柄で、両脇に弓隊を配置させるが最前線が俺達なので必要ないとはいえ一応との事だった。
「俺達が斬り漏らした鬼や横から来る鬼共は黒鮫隊と八咫烏隊に鉄砲部隊が後方支援、鉄砲を前にして左右を中軍としてから一葉を中心とし、綾那と歌夜と幽を配置する。中軍の後ろとする本陣には詩乃、雫、小波、ひよを配置。俺はもちろんの事、奥方衆魏蜀とヴァーリチームと英雄チームと共にそれぞれの武装で殲滅する。一真隊の兵達は全員夜叉となっているが、八咫烏隊の兵達のみ夜叉にしてない」
「もし戦闘になると前方を一真様が担当します。一真様の後ろを、ヴァーリチームと英雄チームが左右にいる鬼共を殲滅する事でしょう。その奥に奥方衆魏蜀に大江戸チームを配置しますが、縦長とした陣形となり横長には一真隊を配置するという陣形となり山門から前にいる鬼共を殲滅して下さい。そういう流れで構いませんか詩乃さん?」
「本当は一真様も本陣にいて欲しい所ですが、仕方がありません。最前線にて漏らした鬼についてはお任せを・・・・それと陣形については畏まりました朱里さん。我らは夜叉によって守護してくれますけど、一真隊での指揮はお任せ下さい」
「鞠はー?ねぇ鞠はどうするのー?」
「鞠ちゃんは本来でしたら一真様の護衛ではありますが、この場合はどうしましょうか?『しょうがない、俺と共に行動を許可しよう』そうですね、鞠ちゃんは一真様が前線で戦う場合を前提としたお背中をお任せする事ですからね」
「分かったの!鞠は一真の戦い振りを見て、斬り漏らした鬼を倒すのが鞠の役目なの?」
「そういう事で・・・・浅井衆については梅の横にて、鉄砲戦後の肉弾戦主力を務めてもらう。ほとんどが黒神によってこちらに来るが、そちらに来る事も忘れずにな。鉄砲隊が撃つ準備前としてやってもらいたい。出来るか?」
「大丈夫。それこそ武士の本懐だ。任せてくれ」
「やっと活躍の場所が出来たようだし、ほとんど鬼がお兄ちゃんの所に行くと思うよ。でも活躍の場が出来たから、これはこれでいいか。まこっちゃん!」
「ああ!頑張ろうね、市!」
「うん!」
「そんじゃ一真隊の配置完了したが、桂花ら軍師は何か言いたい事はあるか?」
全体の指示を聞いていた桂花・凜・風と朱里・雛里は、隙の無い配置をしているのでいくら軍師であっても何も言えない状況となっていた。本来であれば、この場を仕切るのは竹中半兵衛である詩乃が言う場面であるが、今回は俺が言う事で全ての配置を終了した所で梅が思った素朴な疑問を言ったのだった。
「ところでハニー。エーリカさんを探すと言っても、京の都はなかなか広いですわ。どう致しますの?」
「エーリカさんが鬼達を指揮、もしくは鬼達の動きに合せて何かを為そうとしていると仮定するならば、洛外に本拠地を置いている事はまずないでしょう」
「最前線に身を置く事こそ、優れた大将の条件ではありますがそれはハニーの事でもありますわ。武士の基本ではありましたけど、ハニーにとっては後ろよりも必然的に前ですものね」
「いえそんな基本はありませんから、まあ一真様は規格外ではありますけどね」
「そうだよ。大将は本来、本陣にどっしり構えている方が良いんだから・・・・まあお頭は後ろでどっしりな事は一度もなかったもんねころちゃん」
「まあね。一真様が後ろで構えている所何て、見た事ないよ」
梅が言いたい事は燕尾の兜を追い掛けていれば戦功間違いないらしいが、俺らは俺らでやるとする。梅の牡丹自慢は置いておいて、エーリカについてだったが洛中に絞っても、巨刹は数限りがありどこが本拠地なのかは絞れない。俺は無言で考えているのに気付いた一葉が、質問してきた。
「・・・・主様。何を考えておるのじゃ?」
「・・・・桂花。確かエーリカは二つの名前を持っていたよな?」
「はっ。ルイス・エーリカ・フロイスが表の名前ならば、裏の名前は明智光秀であり、皆が知る名であれば明智十兵衛であります」
「・・・・??初めからそう名乗っておられたじゃないですか。それがどうかしたんですか?」
「俺というより、多分黒神眷属全員が思い当たる事があるんだ」
そう言うと黒神眷属全員は沈黙の頷きをしてから、俺らは投影端末で確認してから一応京に詳しい幽にも聞いたのだった。外史の京と俺達が知る京では、どこか道が違う時もあるからだ。
「幽。本能寺はここからだと、どのぐらい距離がある?」
「本能寺、でございますか?ここからそう遠くはございませんが・・・・まさかそこに居ると?」
「そこに居る可能性は・・・・十割だ」
甲斐・躑躅ヶ崎館にて出現した邪な魂により操られたエーリカによるとこう言っていた気がしたからか、トレミーにて記録が残っているので端末からある部分が書かれている文章を全員が読んでいた所だった。俺ら以外の者らは、沈黙となり見守っていた。
『私は、この外史のルールに則る事で成立し、存在を確立させる。そも存在とは何ぞや?存在とは、あると認識されてこそ、世に存在する事が出来る儚き観念。ルイス・エーリカ・フロイスという存在を支える普遍的観念とは如何に?明智十兵衛光秀という二つ名の、その存在を支える普遍的観念は如何に?』
エーリカの言う、その存在を支える普遍的観念の意味は分からなくとも、俺らは外史のルールに合せて成立させている。例えドウターが来たとしてもそれを倒せば、この外史は永遠に平和が続くのかもしれない。だが今回はゼットン化しているし、それはエーリカという器にゼットンと邪な魂であった明智光秀という役者だとしても今回は空間切断だけでは解放など出来ない。
「元々はルイス・フロイスの筈なのだが、明智十兵衛光秀の名があるとすれば・・・・俺らにとっては歴史通りとなる本能寺で起こる事を意味する。なのでエーリカはそこに居る可能性が高いと言えるし、歴史を知っている俺達だからこその直勘でもある」
「本能寺ですか。・・・・確かにあの大伽藍ならば、良い拠点となりますね」
「良い拠点という事は即ち、攻めづらい拠点という事であろう。どうする主様?」
「戦艦でも確認出来ていないが、動いた方がいいのかもしれんからさっさと動くとする。最前列を俺らとして、隊列を乱さないように鬼共の襲撃を警戒を厳にしながら動くとしようか。俺ら黒神眷属は先に行くから、一真隊は一葉や詩乃らの指示に従え」
「では一真様らが動いた後、一真隊も動きます」
奥方衆魏と浅井衆と合流を果たした俺達は、決戦に向けて増強した事で禁裏を出発して洛中に出た。基本的なのは、聖剣エクスカリバーで好きな武具の形をしてから斬り続ける事。なお紫苑達遠距離攻撃を得意とする四人は、秋蘭だけは中遠距離でのアサルトライフルに変更後に残りの三人は黒鮫隊の中に混じっていた。
祭は奥方衆呉であるが、冥琳の指示で来る事となった。大江戸チームは本能寺で合流後、一緒に戦う事とした。連合の兵士達は夜叉となり、無傷のまま鬼と戦い続ける事となるが俺達は本能寺へ向かう事となった。
『皆の者、警戒は厳にしろ。マップによってどんどん近付いているが、戦の喧騒が聞こえなくなってきている』
『そうよね。周囲が不気味と化しているから、静けさはあるわね』
『だがそれでも俺達は鬼共なんかに負ける訳ないだろうが、これは静か過ぎはしないか?相棒』
俺らは近付いていくが、静か過ぎて不気味さを感じていた。俺達黒神眷属は念話で語っていたが、後ろにいる一真隊でも静けさに不気味さを感じさせていた。
「・・・・とても静かだねころちゃん」
「時々遥か彼方から鉄砲の音が聞こえるけど、町中に生物の呼吸すら聞こえないよ」
「小波さん・・・・周囲の様子はどうでしたか?」
「鬼の声もなく、気配なども感じられません。・・・・それもこの一角のみ全くと言って良い程感じないのです」
「どういう事ですの?」
「先鋒にいるご主人様達もそう感じている様子ではありますが、他の区画を探ってみましたが多少なりとも鬼や連合軍の夜叉となった兵達の気配を感じます。ですがこの一角だけは・・・・」
「全く気配が感じないという訳ですか。一真様達の警戒という気配が強くなっていますが、一体どういう事でしょうね?」
「幽。精霊の気配はどうじゃ?」
「余程穢れた場所で無い限り、どこにでも存在するはずの精霊の息吹が全くありませんな。まるで全ての精霊が死に絶えているような不気味さがありますが、一真様周辺にだけ精霊が集まっておりますようにも感じております」
「どうやら主様達の勘は当たりのようじゃな。じゃから、ああやって警戒を強化したのじゃろうよ」
一真隊の主力メンバーがそう呟くのを聞こえないフリをしていたが、全ての精霊が俺らの所に集まっている。家屋にも人の気配無しとすれば、この一角だけマイナスパワーのようなフィールドとも言える。
「ご主人様から伝令です。隊列を整えるようにとの事、これだけ気配を感じない中でご主人様達が出現したのであれば、向こうは気付いていると思うわよ」
「御意です紫苑さん」
「それから梅は戦闘準備をお願いする。・・・・いつどこに鬼が来てもいいようにとお館様が言っておった、銃器を持つ黒鮫隊は良いとして鉄砲部隊であるお主達はいつでも撃てるようにとの事だ」
「お任せを、桔梗様」
「であれば・・・・準備を整えるのは良いが、どうやって本能寺の中に攻め入る?」
「一真様であれば、鬼の襲撃が無ければ堂々と正門から入ればいいとの事だ。儂もそう思うわ」
「何とまあ・・・・余の良人は剛毅な事だ」
それが俺であると紫苑、桔梗、祭が言っていたが、恐れても無ければビビる訳でもない。敵と認識したら斬るだけだし、銃器があれば撃つだけの事。罠の可能性もあるが、俺達黒神眷属は前進あるのみだ。なので一真隊のメンバーも小勢を出して全滅だとしても、夜叉なので意味は無いが一応の事だ。歌夜の心配は最もだけど、トラップがあったとしてもそれを破壊してまで進む事が俺らである。
「恐らくですが、一真様ならどのような罠があったとしても皆と一緒ならば突破するでしょうね」
「浅井衆はいつでも兄様の盾ともなるけど、足軽全員が夜叉となったから死ぬ運命にはならないと思う。だから一真隊の守護は、僕ら浅井衆に任せてほしい」
「お姉ちゃんの為、お兄ちゃんを守ろうとしても邪魔だと言われちゃうしね。市よりも強いし、だからひよ達を守るのが市の仕事だよ」
まあそう言う事で、俺達は一塊となって進んで行く。互いに守り合うとしても、俺らから前に出ると殺気と覇気のオーラにより前には出れないようにしといた。無人の町となった事で、ひたすら前に進むが鬼の襲撃も無いし状況変化も無い。
聞こえてくる音は、俺らの足音と一真隊の気配のみとなっている。静寂に包まれて町という所に進んで行くが、俺達黒神眷属らは早く戦いをしたいと皆がウズウズしている。現在奥方衆呉のみ、本隊である禁裏に置いてきたし大江戸チームも集まりつつある。すると俺達の目の前に大きな山門が見えてきた。
「いよいよ終幕の舞台が見えてきた。皆の者、気合を入れ直せよ?」
『了解』
「それと大江戸チーム、無事に合流を果たしたよ。一真」
「遊撃部隊の方はご苦労であったが、想の剣魂であるイオリを使って調べてくれないか?」
「了解しました」
俺達は巨大な山門に警戒しながら近付いたイオリらだったが、何も無い事を確認して頷き合うとゆっくりとした足取りで近付く俺らと一真隊。そして重々しい扉に手を掛けた。閂も掛かっていないが、すんなりと開いた山門を潜り、本能寺境内に侵入を後ろにいる一真隊全員と侵入を果たした。黒神眷属全員と一真隊全員で突入したが、予想していた伏兵はいないし敵影すらいない状況となっていた。
「・・・・誰も居ませんね」
「罠の類いもあるように見えないですが、これまで一真様の勘は外れた事はありませんがどういう事でしょうか?」
「まだ油断禁物ですわよ。黒神眷属全員も気を抜いていませんし、何よりハニー自身も警戒が更に強くなりましたわ」
「ふむ・・・・余らが入った途端、鬼共が襲いかかって来るといいなーと思っておったのじゃがな」
「貴女様は何つー物騒な想像を・・・・」
「つまらん。当たりだと思ったのじゃがなぁ、まさか主様の勘が外れるとは思わなかった」
そう一葉が残念そうに呟いた時だった。俺らが入った山門が勝手に閉じてしまった事で慌てる一真隊であったが、俺達はやはりと思いながらも警戒をし続ける。
「山門が!」
「閉じ込められるですーっ!」
山門が閉じた音が聞こえると共に、数人が門に駆け寄った時には既に遅しの状態となっていた。開けようとしても山門はビクともしないが、やはり俺の勘は当たるようだ。
「やはり主様の勘は当たるようじゃな!敵ながら演出が上手い」
「感心してる場合ではありませんぞ。これでそれがしらはこの境内に閉じ込められ申した」
「退路を断った後、次の手を打つとすれば・・・・」
地が揺れ始めるとやはり出て来た出て来た。
「鬼が・・・・っ!」
「素早く相手を包囲する。・・・・兵法の初歩ではありますが、既に一真様達は遠距離攻撃をしてますね」
「それに一真様は刀を振るうだけなのに、まるで斬撃を放つかのようなのです!」
「一真、凄いなの!」
「やはり俺の勘は当たりのようだし、風の斬撃をしていれば俺達を出迎えたヒトが居るのであればだけど。そこにいるのは分かっているぜ、エーリカ!」
聖なる刀が光を放つと同時に、刀を指差すかのようにすると満月が輝いていたのを見上げていたのだった。小波が空を見上げろと言ったので、黒神眷属以外の者らは見上げたのだった。それに上空から地上に降りた吉音達と剣魂もいつでも攻撃出来るようにしていた。
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