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戦国†恋姫~黒衣の人間宿神~

作者:黒鐡
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二十五章
  出陣の下知と陣立て発表

いよいよ最後の戦いが始まるのか、各衆の準備も終わった様子だった。

「長尾衆、準備完了したわ」

「武田衆も同じく・・・・」

「浅井衆、いつでもいけます!」

「松平衆、揃いましてございます」

「織田衆、準備は万端でありますれば、いつでも」

「余らもいけるぞ。のぉ詩乃」

「はい。一真隊一同、主の御下知に従い、どこまでもお供致しましょう」

「・・・・うむ。・・・・一真、出陣の下知を・・・・」

躑躅ヶ崎館の馬出に並ぶ、錚錚たるメンツ。その一人一人の瞳を見つめていくが、俺らは下知を飛ばした後にトレミーで現地へ行く事となっている。敵はただの鬼ならまだマシなのだが、強化体鬼とドウター化した鬼に関してはコイツらでは倒せないと判断したからだ。それについてはまだ久遠達には言っていないし、人より膂力強く素早い速度を持ち、人を喰うような天敵という鬼の存在をな。

『ご主人様、奥方衆の準備終了しました』

『ご苦労。俺はこいつらに出陣の下知を下したら、船にて現地へ赴く。本来なら嫌われるだろうが、強化体鬼に関しては普段から戦いの訓練を積んだ武士ならば普通の鬼ならば対応出来たかもしれん』

『確かにそうよね。軍の大半が、足軽と呼ばれた農家の次男坊か三男坊や食い詰め者で構成されているからかしら。私達の兵達も似たような感じだったもんね』

『普通の兵士なら鬼という訳の分からない存在だからか、恐怖の対象でしかならないわね。でも久々に私達も戦えるからとても楽しみよね?華琳』

『ま、華琳や雪蓮らの者達は戦慣れしているし、愛紗達もいつもの武器から聖剣エクスカリバーで擬態化させた武器の方が倒せるだろうな。ちなみに桃香ら医療班については、いつでも出れるようにしといてくれ』

『はーい。いつでも出れるから安心してねご主人様。にしても、ご主人様の目の前にはズラリと整列している兵達は久々に見るよね~気負いも無ければ恐怖が無いと言うかさ、壬月さん達やご主人様の鍛錬の賜物だよね』

『ああ。それにお前らは知っていると思うが、ここにいる足軽達全員が人間を止めた鬼神であり夜叉となった』

人間を辞めたからと言っても、今ここにいる者達全員は人間コーティングによって、武将達や一国の主である久遠達でさえもバレていない様子だった。まあ気配やらいつものと違う事に関しては、何となく感じているが全夜叉化計画にて聖なる儀式後にはいつもより動きが違うと言っていたからな。

「テメエら、我らの敵を倒す気あるかー?」

『応!』

「では行くぞ野郎共、これが最後の戦いであり、この世界での最後の大戦となる。全員気合を入れ直せー!」

『応!』

「それでは本来ならば、壬月が当主達の代わりに陣立てを発表させてもらうが、代わりに我が発表させて頂こう」

壬月が言おうとした言葉をそのまま我が言った事により、壬月らは我を見た時には大天使化をした我がいたからだ。

「この連合が到着する前に我ら黒鮫隊と奥方衆が、先に現地である京に行き出来る限りの強化体鬼とドウター化した鬼を倒す為である。その後連合が到着次第、各奥方衆と合流してもらい攻撃をしてもらう。その後である先手は、奥方衆魏と長尾衆である。なお奥方衆にはそれぞれの三国志に登場する国名が、それぞれの衆名となっている。それと我ら奥方衆は、愛妾ではなく側室なので喧嘩せずに曹操達の指示に従う事だ!」

「うぉっしゃっすーーーー!」

「・・・・っし!」

連合が到着するまでの間、我らが時間稼ぎをしていると聞いた後に先手が長尾衆だと聞いた後、天に向かって拳を突き上げて雄叫びを上げた。ただし華琳達の指示には従うという事で、家老である秋子が代表として言った。

「我々が到着するまでの間、黒鮫隊と奥方衆との合流を果たした後には先鋒とは是武士の誉れ、家の誉れなり。長尾衆、御大将と曹操様に従いて、見事血路を開いてみせましょう」

「ええーっすが、柘榴達が到着してから暴れ回るっすー!」

「任せる」

気合を入れ直した長尾衆だったが、それとは対象的に武田衆からは無念の吐息が漏れていた。

「くっ、黒鮫隊と奥方衆に長尾の後塵を拝する事になろうとは・・・・」

「一真さん直属部隊ならまだしも、長尾が先鋒とは悔しいです・・・・」

「くっそーだぜ!」

「むぅ・・・・残念なのら」

武田衆は先鋒じゃないからなのか、凄く残念な感じがあったがそれは武将だけだった。足軽達は見た目残念そうにしていたが、それはフェイクであり本当は早く夜叉としての初仕事をしたいとウズウズしているのだった。

「続いて本陣を発表させてもらう。本陣は最大兵力を持つ織田家で形成するが、我ら黒神眷属の仲間らと合流を果たした後に織田家先手を森一家とする。我を目標と掲げるのであれば、鬼に数百から数千がいたとしても薙ぎ払えるぐらいの力を我に見せてくれ!」

「応よ!ここらはガキが長尾に言ってやれ、ワシらもそうだがもたもたしていると鬼より先に潰しとな」

「うし!まあ本来なら一真の仲間と一緒に戦うが、長尾が遅れていたら鬼より先にテメエらぶっ潰して先鋒を奪ってやるからな。そこんとこ肝に銘じとけや、一真の仲間以外をな」

「おお怖いっすー。けど長尾衆を舐めたらいかんっす」

「置いていくから安心して」

「抜かせ。まあワシら織田家の切り込みである森一家が引き受けてやろうじゃないか!」

本来なら桐琴は死んでいるので、久遠が小夜叉に桐琴の分まで暴れろと言っていただろうがな。生憎と生きているので、そこの会話は省いた。

「黒神眷属と森一家の後ろに、佐々、前田、滝川、柴田を配置とする。また総大将織田久遠の陣は丹羽衆と一部の奥方衆が固めるとするが、主に軍師やら医療に関する部隊配置の事だ」

「ぬぅ、本陣警護までも他家と良人殿らの部隊に取られるとは・・・・!」

「悔しいです・・・・悔しすぎます!」

「何でだぜ!何でなんだぜ!」

「むー!こんなの理不尽なのらー!」

「やれやれ・・・・四天王の皆さんは、この備えの意味をちゃんと理解してないように見える」

「そうね。武田はもう一つの玄妙な門を開く鍵として動く・・・・と言う事になるでしょう」

「・・・・湖衣。畿内の地図、今持っている?」

「当然です。・・・・どうぞ」

「ありがとう。・・・・」

どうやら一二三と湖衣は、どういう経路で行くかを見るために地図で確認をしていた。東山道を通ってから、近江=滋賀県にある琵琶湖の北側を通過して坂本城を通ってから山城国にある京・二条に行くプランらしい。

湖衣と考えは一致している様子だったので、一二三は吾妻衆に指示を出しておくそうだ。城門前で馬出で、武士達=夜叉達が一喜一憂する中で、陣立ても大詰めを迎えていた。なお俺らは先に船にて、偵察をするので京の東西南北にそれぞれ黒鮫隊と黒神眷属を配置させる。

「本陣には足利衆を加えた織斑衆・・・・一真隊を配置するが、一真隊は遊撃扱いとする。鍵を握るのはこの我であり、黒神眷属と黒鮫隊との各部隊への連携を密にして動くように」

「はい。お任せ下さいませ一真様。先に行かれると思いますが、気を付けて下さいね」

「ああ。・・・・では後備!浅井衆に任せる事にする!」

「まぁこれだけの面子が揃ってるんだから、悔しいけど仕方ないかなー・・・・」

「どこに配置されても、鬼達をブッ飛ばすってのは変わりが無いんだから、ガンバだよ、まこっちゃん!」

「うん。兄様が先に行かれるが、市も力を貸してね?」

「もっちろん♪それにお兄ちゃんらの力も見ておきたいしね」

「以上の部隊を、逢坂口主攻とする!」

ちなみに逢坂口とは恐らく逢坂関の事を言うんだと思う。山城国と近江国の国境となっていた関所となっていて、現代で言うなら滋賀県と京都府の間にあるトンネルの事を言う。

「はて?織斑様。言い忘れがございませぬか?」

「忘れている訳がないだろうに、本来であれば連合の殿である織田久遠が言うはずだが我が代わりに答えよう。松平衆には最重要任務を任せたいが、その前に大軍議で言った事を忘れる事も無ければ約束を破棄する訳も無いのでそこだけは安心しろ。ちゃんと策を設けたのでな」

「私の我が儘なお約束を忘れていたなどと申しておりませぬ。それで?私らの最重要任務とは如何様に?」

「この連合の唯一の泣き所である駿府だが、越前には江北衆の大半を当てとしているが京攻めの衆に関しては、最低限に絞る予定だったのだが駿府への手当は残念ながら不充分だと確信した。なので松平衆は下山城の武田衆と連携し、駿府の封じ込めを頼みたいのだがよろしいか?」

「・・・・松平衆は主戦場ではなく、後ろを守れという事ですか?」

「後ろな訳があるか。我達の背中だ、葵」

「・・・・・」

「京の主戦場は最小限の犠牲を払うが、それでも犠牲になる者もおるだろう。もしもがあるかどうかは分からないが、我達が倒れた後の事も策の一つとして考えなければならない。その為に松平衆は駿府封じ込みを頼みたいのだ。やれるか、葵」

「・・・・・」

同じように無言となってしまったが、それはしょうがない。最前線ではなく駿府の鬼を封じ込める事も重要な任務であるが、我の問いかけに即答を避けて葵は目を閉じて沈思の姿勢を取った。まあ松平衆にいる足軽達も夜叉だからそこだけは安心している。数分の沈黙により、何を考えているのかは我であっても分からぬ事は分からない。葵は黙り続けたが、答えを見つけたかのようにして口を開いた。

「御下知に従いましょう。松平衆は遠江に布陣し、駿府封じ込めを行います」

「申し訳ない」

「・・・・一真隊となった本多、榊原、服部が居ますれば、松平として弓矢の名誉は守られましょう。甘んじて、御下知に従います」

「うむ。もしもの事となったとすれば、葵に任せる」

「はっ」

「久遠達が倒れた先、日の本の未来を任したい」

「御意。皆様のお背中を、松平衆は命に代えてもお守り致しましょう」

そう言って頭を垂れた葵の表情は、窺い知る事は出来なかった。が、もしも久遠達が倒れたとしても我達がいるし仮に死んだとしても蘇生させる事も出来る。でも今ここでは言わない方がいいと我は思ったのだ。まあ主戦場に参加出来ない事を悔しいのかもしれんが、戦況はいつ変わるかは可笑しくない。元々松平衆は金ヶ崎で大きな痛手を負ったが、今の松平衆は戦力温存出来たと言う事になりうる。

『やっぱり私や詠美ちゃんのようにはいかないんだね』

『まあそうでしょう。ちゃんとした歴史でも松平の殿であって、後々徳川家康になる者の考えは分からないわ』

『そりゃそうだろうな。だがこの日の本の未来などは、存在しないのだからな。エーリカとの決着がついた所で、最終局面を迎える事になっている。大量のドウターによる破滅した外史は、いくら俺でもそれを止める術はないのだから』

俺は吉音と詠美に話していたが、やはり葵の考えを読む事は出来ないな。とまあそう言う事で、最後に武田衆の下知を下す事となった。

「では最後に!武田衆への下知を申し渡す!」

「下知とかって、先手も本陣も他家に取られて、他に何をやれって言うれすか・・・・」

「悔しいよね、こなちゃん・・・・」

「だぜー・・・・正直、燃えられないんだぜー・・・・」

「・・・・やれやれ。四天王ともあろう方々が、そのような浅知恵でどうするんだい?」

「どういう事です?」

「そういう一二三の眼には何が見えているのだ?」

「簡単な事。玄妙な関門は、寺にしろ家にしろ、そして国にしたって常に複数あるんだ」

「ろう言う事なのら?」

「武田は京を裏口から攻めるという事」

「武田のお屋形の言う通りだ」

光璃の言葉に重々しく頷いた我が、姿勢を正してから声を張った。

「申し渡す!甲斐武田家と我ら奥方衆蜀は摩下の軍勢を率いて、東山道より北上し若狭(わかき)より京の北、大原口より禁裏に向かえ!」

「おお!主攻に入っていなかったのは、中入りを担当するのが武田であったからか!ならば良し!」

「よっしゃだぜぃ!先手は取られたけど、そう言う事なら燃えてきたぜー!」

「やれやれ。こなは単純なのら。兎々は見抜いていたからおろろきはないのら」

「こなちゃんも兎々ちゃんも。皆現金なんだから」

「若狭武田氏にも既に通告済みであるが故に、越前の鬼に関する動きにも気を付けたまえ」

「越前は放置するのか?」

「全員忘れてはいると思うが、再度通告をしておく。我らの敵と決着が済み次第、この世界は消滅する道となっている。本来であれば近北衆で手当をしているが、今は無理だと言う事だ。なお松平衆には時と共に後方支援を任せたい」

駿府同様であるが、我らの最終目標であるエーリカ内部にいる悪しき魂を完全消滅する事である。なので先程は俺らの背中と言ったが、戦況は時間と共に変化していくからこそ松平衆は苦戦中の時の為でもある。

「と言う事で武田のお屋形よ。よろしく頼む」

「・・・・(コクッ)」

「中入りとなれば、この戦の趨勢を占うは・・・・」

「たけら衆のそくろなのら!」

「そう言う事だね・・・・武藤一二三、吾妻衆を先行させ、詳細な地図を作らせましょう。先導はお任せを・・・・ただ既に織斑様直属部隊が到着後に、戦をしているからか。正確さを求めるなら、織斑様が作成する手筈となっております」

「露払いは私達と織斑様の部隊が行います。春日達は洛内での戦に備え、兵を温存しておいて下さい」

「助かる。・・・・してお屋形様はどうなさる?良人殿と共に征かれるか?」

「・・・・(フルフルっ)光璃は別動隊の大将をする。・・・・先に行かれるが、奏様と沙紀は一真をお願い」

「分かりました。私の夫を支える為の戦いでもあります」

「了解。必ずや隊長の守護者として、責務を果たしましょう」

「まあ俺がこの中で最強なのは全員知っていると思うが、気を付けろよ光璃」

「・・・・(コクッ)」

小さく頷いた光璃を合図に、皆が一斉に姿勢を正した。我らの衆は創造神の陣立てにて決したので、京都を守護するために我達は行く。この手で鬼を駆逐し、新たな歴史の一歩という事だったが、最終決戦後がどうなるかを知った為に無言となっていた。

「最終決戦時まで時間は余り無いが、皆の命は我らが預かる事になった!皆の命を糧にし、我らの力となれ!」

兵達の咆哮は勢いと熱情と覚悟に満ち溢れてた。いつまでも続く雄叫びの中で、我みたいな神々しい衣服に身を包んだ侍女達が三方を捧げて久遠達に近付いた。三方には打ち鮑・かち栗・昆布が載せられ、かわらけが添えられていた。ちなみに出陣前の三献の儀でもあるからか、かわらけとは土器のようなもんで我ら流で言うなら出陣前に酒が入ったコップを飲んでから地面に割る事があった。

『こちら側だとそうなりますが、久遠様側のだと一に打ち鮑、二に勝栗、三に昆布の順に食べるようですね。意味としては「敵に打ち、勝ち、喜ぶ!」と気合を入れて口にする。と歴史マニアがそう言っております』

『そのようだな。ブラック・シャーク隊流だと、酒をグビッと飲んでからガラス製のコップを割るんだったな』

「一真、あなたも食べなさい」

「あーんする・・・・?」

「それはそっち流なのだろう?我らにはそのような事はしないが、代わりにこれでするよ。奏に沙紀」

そう言ってから、縁起を担ぐ為の儀式であろうともこっちとは違うので断った。本来ならばあーんはして欲しいと言っては、美空と光璃はからかうような口喧嘩をする。美空もやりたかったそうだが、からかうのは面白いと言って光璃を性悪猫と言い頸を叩き落そうとしていたな。注がれた御猪口を三献、一気に飲み干した。我と奏に沙紀は同時に持っていた杯を地面へと割った。

「武田衆、先行する・・・・」

光璃は、俺らが先行するのも忘れてさっさと出発したのだった。ま、あれが光璃の交流方法だからな。

「一真は先に行っていると思うけど、気を付けてね」

「美空に言われる程、我は弱くない。まあ護法五神の強さを更に増したが、乱発だけはするなよ?」

「何か私の気が強くなったのもその所為かしらね。そっちで合流後に、あなたの奥方衆の力を見せて欲しい所よね。・・・・久遠、先手、動くわよ」

「ああ。・・・・武運を」

「お互いにね」

光璃と同じように三献を飲み干した美空が、長尾衆を率いて先行する。俺らは既に飲み干したので、あとはトレミー3番艦に乗ってから数分で到着する京。四方八方を囲んだ俺達は、連合が到着するまで京から漏れないようにするのが第一プランだ。連合軍はそれぞれの役割を果たす為、甲斐を出発し山城国へと駒を進ませる事となった。 
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