戦国†恋姫~黒衣の人間宿神~
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二十五章
躑躅ヶ崎館での軍議
俺らはトレミーで軽いブリーフィングをしてから、評定の間へと行く。
「悪いが遅くなった。船からの情報を聞いていた」
「まあそれもそうよね。沙紀さんも上段に上がってね」
「恐れ入ります美空様」
上段に着席後、俺と沙紀は通信機を付けてからスマホを片手に持ちながら軍議が始まるのを待っていた。
「全員揃ったな。・・・・では軍議を始める」
久遠の言葉を受けて、広間に詰めた武士達が一斉に平伏するがそれも時間の問題と共に平伏しないだろう。何しろここにいる武将達以外の兵達全員が既に夜叉となった身でいる。なので平伏は人間コーティングを取っ払った新たな姿となるまでの間となっている。
「今朝方、躑躅ヶ崎館に早馬が来た。摂津の国人衆が一人、高山右近と言う者が発したもの」
「高山右近・・・・摂津を拠点とする奉教人の一人ですね」
「どうやら同じ奉教人である雫は知っているようだな」
「一度、京の礼拝堂で言葉を交わした事があります。大変真面目な御方だな、という印象でした」
「なるほど・・・・光璃が発する前に俺らからの情報提供だ。山城国は既に鬼が充満しており、禁裏においては鬼とドウターに囲まれている様子だ。畏き所にも危機一髪のようで」
「やれやれ。洛中は結界にて守られているはずであるのに鬼が跋扈するなどと・・・・世も末ですなぁ」
「禁裏は強力な結界があろうから、早晩で落ちるという事はなかろうが・・・・心配じゃの。じゃが主様が言っておるのであれば、深刻さは増しているようじゃ」
そんで美空からだと書状には連名として、中川清秀と荒木村重という名で記されていた。
「ほお。中川に荒木、それに高山と来るか」
「知っておるのか、爆弾正」
「誰が爆弾正か!・・・・だがまぁ、確かに数寄は感性を爆発させてこそ数寄である、と常々思っているが」
「戯れ言は良いからさっさと言いなさいよ。この三人って誰?何なの?」
美空の短気な事は軽くスルーしてから、白百合は語った。
「高山家は元来、私の主家でもあった三好家に仕えておってな。何度か私とも轡を並べた事もある、なかなか良い武者の娘だ。連名しておる荒木、中川も摂津を中心として勢力を伸ばす新興勢力であれば、地所の頭を抑える京の都で鬼が動けば、次は自分だと恐れるのは自明の理であろうて」
「早馬の報せは弱小国人の悲鳴であるな。ほぼ正しく報せてきたのであろうな、俺らの情報もだいたい一致している」
「・・・・デアルカ」
白百合と俺の言葉を受けてから、久遠は沈思の姿勢を取っていた。一方俺らも情報共有として、スマホからそれぞれの名である高山右近と中川清秀と荒木村重に関してを見ていた。ちなみに摂津というのは、今でいう大阪府北中部の大半と兵庫県南東部に位置する場所である。
高山右近・・・・戦国時代から江戸時代初期にかけての武将、大名。代表的なキリシタン大名として知られる。父は摂津国人・高山友照、母は洗礼名マリア。同じく摂津国人の中川清秀は従兄弟とされる。洗礼名はポルトガル語で『正義の人』を意味するジュストまたはユストとも言う。
荒木村重・・・・戦国時代から安土桃山時代にかけての武将・大名。利休十哲の一人であり、幼名を十二郎、後に弥介(または弥助)とされる。荒木氏は波多野氏の一族とされているのか、先祖は藤原秀郷とされている。
中川清秀・・・・戦国時代から安土桃山時代にかけての武将。幼名は虎之助で、通称は瀬兵衛と言う。本姓は源氏にあり、家系は清和源氏の一家系摂津源氏の流れを汲む多田源氏(あるいは河内源氏傍系石川源氏)の後裔と称した。父は中川重清、母は中川清村の娘。子に秀政、秀成、池田輝政先室(池田利隆母)・糸姫。妹は古田重然(織部)室。キリシタン大名である高山右近は従兄弟に当たる。
と長い説明書だったのか、俺らはタブレットを取り出してから見ていた。なるほど、摂津とは今でいう大阪兵庫と言う感じか。部下の一人が歴史に詳しいのか、俺らでも分かりやすいように省略をしてくれたようだった。久遠は目を閉じて微動だにしない姿を見ていた広間にいる武士達(夜叉達)は一様に固唾を飲み、久遠の発言を待っていたのだった。
「・・・・一真、美空、光璃、一葉」
「何かな?」
「何?」
「ん・・・・」
「おう」
「それぞれの状況を教えてくれ」
本来ならば三人となるが、一真隊ではなく黒鮫隊の事を指しているのだろう。俺を最後にしてから言うので、まずは美空から言った。
「ならまずは私から。どうせ一真の方が最後に聞いた方が面白そうだしね。長尾衆本隊は海津にて待機中だから、いつでも出られるけど飼い葉の調達に難儀している所かしらねぇ・・・・」
「飼い葉は武田に任せれば良い。だけどこちらは兵糧と玉薬、矢銭がまだ不充分・・・・」
「兵糧、玉薬の手配はご心配なく。八方手を尽くし、美濃岐阜城に充分な量を集積しております。ただ・・・・こちらも替え馬と飼い葉の手配に難儀しておりまして・・・・」
「ならば飼い葉は武田で負担する。他はそちらを頼る」
「御意」
「岐阜かぁ。でも岐阜では少し遠くないか?観音寺城に集めるのは駄目だったの?」
「京を占拠している鬼とドウターが襲ってくる可能性があるので、絶対的に距離を取る必要がありました。部隊を動かすのと同時に、物資は観音寺城に輸送する手筈です」
「うむ。・・・・兵の部隊はどうなのだ?」
兵の練度については武田衆と長尾衆も大丈夫だと言った粉雪と柘榴だった。足利も大丈夫であれば、一真隊と合流していれば問題は無い。織田衆も万全とは言えんが、少なくとも鬼と対峙して逃げ腰を持つ者は居なくなったんだと。
「尾張兵は軟弱れ、られも期待してないから、安心すると良いのら」
「何だとー!このウサウサめ!好き勝手言いやがってー!」
「ふふんっ、事実を言ったまれなのら」
「うっせー!だぢづでどって言ってみろ!」
「らりるれろ!ふふんっ、ちゃんと言えるのら!」
「言えてないけどねー」
「そ、そんな事ないのら!?」
『パシイィィィィィィィィイン!パシイィィィィィィィィイン!』
と春日と壬月が注意する前に、俺のハリセンが火を噴いた。
「お前達やかましいぞ!あとで春日と壬月と俺での説教をしてやるから覚悟しとけよバカが」
兎々は春日によってであり、和奏は壬月の説教となるはずだったがその前に手出しをした俺。この軍議が終わり次第説教という拳骨が待っている事を知ったが、怒られたのは二人してお前の所為だと言っていた。
「やれやれ・・・・一真様からのそれを畏怖しながらもとは」
「拙らも結構苦労しているが、そちらもか」
二人のやり取りに広間の中に笑いが起きたが、あとでお仕置きが必要があるなあの三バカは。
「浅井衆も特に問題無し。いつでも行けます、お姉様」
「松平衆も同じく」
「デアルカ・・・・」
「さて。物資のやり取りもそれなりに上手く行きそう。兵の練度も上がり、連合の雰囲気も良いと来ておる」
「残りは一真だが・・・・何か言う事でもあるか?」
そう聞いてきたので、俺は言う事は言ったが部隊も仲間も全員いつでも戦に行ける準備は整っている。なのであとは久遠の下知により、動くのみとなったので無言の頷きと共にぱしりと膝を叩いて勢いよく立ち上がる。
「皆々、聞けぃ!」
久遠が言葉を発すると共に、広間に詰めた武士達(夜叉達)の顔つきが変わる。
「長き雌伏を経て、今、時は来た!目指すは鬼の殲滅、そして京の奪還である!ここにおる創造神黒鐵様直属部隊を筆頭とし、足利・武田・長尾・松平・浅井とそして織田の連合。その力を合わせ、混迷の様相を呈すこの天の下、誰もが認める強き武を布こうではないか!」
「「「応!」」」
本当は足利筆頭のはずが、俺筆頭と言う風になったのはやはり俺を頂点として見ているのかもしれん。久遠が発した後、次は長尾衆の番となった。
「越後が龍の爪牙を務める、北国最強長尾衆!愛する良人の上洛を、不惜身命、守護し奉ろう!柿崎ぃ!甘粕ぅ!」
「っすー!」
「あい」
「我ら主の輝かしき覇道、その露払いを務めぃ!」
「っす!」
「了解」
柘榴と松葉による事で、返事は軽く聞こえた。今度は武田衆である。
「・・・・武田衆」
「応さ!武田四天王が筆頭、馬場美濃守春日信房。武田が武勇を天下に示し、屋形の王道を支え奉る!」
「山本、山県、内藤、高坂、そして武藤が先導仕る!」
「御旗、楯無もご照覧あれ。愛しき人と駒並べ、天下に安寧を取り戻す」
武田衆も気合の籠った言葉と共に次は織田家となった。ちなみに兵を最小限にする事については、皆が覚えているので安心出来るが夜叉化となった兵達のお披露目はどこにしようかな?あとそれぞれの衆に蜀・魏・呉の王だった者らと一緒に戦う恋姫チームと大江戸チームをどこに配置するかが問題かな。
「掛かれ柴田の言葉を聞かせぃ!」
「織田が宿老、柴田権六!下天の夢を現とする為、この身、この槍、この命!殿にお預け致しましょう。続け三若ぁ!」
「応よー!黒母衣衆筆頭、佐々成政!一番槍はお任せを!」
「赤母衣衆筆頭前田利家!鬼共ギッタギタでーす!」
「滝川衆もぼちぼち頑張りまーす」
「き、さ、ま、らぁ!少しは気合を入れんかぁ!」
「その通りだ!もうちったー気合を入れろ!」
「ぎゃー!壬月様に一真も暴力反対ですー!」
「やーん!耳引っ張るのは堪忍ですよー!」
「二人が折檻されている今の内に・・・・コソコソ・・・・」
俺と壬月による公開折檻を受けた二人と、逃げようとしても無駄だと分かっていながらの雛を捕獲してから三若じゃなくて三バカを公開折檻をし始めた。公開折檻をしている姿を見たので、広間は更に笑いに包まれていた。
「・・・・どうも尾張衆は締まらんな」
「尾張衆らしいから、これはこれで良いと思うぞ」
皆が笑った後、広間に詰めた武士達の視線は俺へと集まってくる。なのでここで大天使化をしてから、それぞれの神仏や奥方衆代表である沙紀が俺の言葉を待つようにしていた。この連合の旗頭は俺となり、既に俺ら神仏の後輩夜叉として見ている。期待に応えるべく、俺は俺の言葉で言ったのだった。
「我の名は創造神黒鐵として、全ての武士達に告げる。今日にて、全ての鬼を根切りにしドウターを全て倒すのが我らの宿願。我らの策は、ここにいる武士達全員が生存をしている事が最大の策であるからだ。それに我らの奥方衆は、連合軍の前にて見本として戦う事をここで宣言する!我らの見本という戦をこの目で見るがいい!」
我が宣言と共に、全武士達の返事を聞いた我は大天使化を解いた。風が心地よくなり始めた甲斐・躑躅ヶ崎だったが、風の精霊がまるで出陣準備に勤しむ仲間達を優しく撫でつけていく。いよいよ最後の戦いが始まると同時に、俺とエーリカの決着がまもなく始まる。
それに俺達は元々船での移動なので、準備に手間取らない。一真隊は一真隊で任せているが、黒鮫隊の準備は念頭にしてあるがいつでも出動出来るように完全装備をしてから待機となった。奥方衆は、現地にて待つとの事なので船で戦闘服を着てからそれぞれの武器を確かめていたのだった。
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