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戦国†恋姫~黒衣の人間宿神~

作者:黒鐡
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二十五章
  いつもの風景×朝からの鍛錬と妾との会話

昨日の朝と同じように鍛錬をしてきたが、一時的に時間停止したのか俺の体は飛躍的に本調子の時みたいになっていた。これなら鬼相手でもドウター相手でも難なく倒せる余裕はあるだろう。躑躅ヶ崎館に戻ってきてから、俺の部屋で報告書を読んでいると障子から差し込んでくる太陽光により意識が覚醒してきた者達。耳に恐らく心が朝食を作っている音何だろうとね。そしたらゆっくり起き上がっていた者達。

「ふぁぁ~・・・・むにゅむにゅ・・・・もう朝なのです・・・・」

「ん・・・・」

俺が添い寝をしていたからなのか、足元付近と背後付近から可愛らしい声が漏れ聞こえていた。ま、俺は邪魔が無いように部屋の隅っこにいた。

「おはよう、綾那に歌夜」

「おはようございます一真様。その様子だと昨日と同じく朝鍛錬をしてきたんですか?」

「おぉ~はぁ~ぐー・・・・」

「まあな。なので起きるまで部屋の隅にいたが、昨日の夜までは添い寝をしていたからか。一瞬俺がいないと思って探している目だったぞ?綾那」

身体を起こした綾那だったが、俺がいない事を知ると周りをキョロキョロとしていた。俺を発見すると、眠気に勝てずにポテンと布団に横たわる。もう朝だから起きろと言ってから、綾那の背中をさする。

「ん・・・・もう朝ですか・・・・」

「人が見る夢と書いて儚い・・・・夢の世界というものは、何と儚いものなのでしょう・・・・また(うつつ)の生活が始まるのですね・・・・」

俺を囲んで寝ていた者らが、次々と目を覚ましていく。なお昨日のような事をしていないので、詩乃もいつも通りな感じで起きていた。俺が朝鍛錬で出かけた事については知っていると思うし。

「諸君おはよう。心が朝食を準備している所だから、早く起きなさいな」

「お造り定食を所望します・・・・」

「山国の甲斐では無理があるが、俺が作るのであれば話は別だがな」

「ご飯・・・・お腹が空くと不幸です・・・・」

「やはり軍師にとっては、朝が弱いと聞く。でもまあ今の内だと思うぞ?俺らの軍師は朝は強い方だからな」

「お二人共いつも遅くまで働いてくれていますから、ですが一真様の奥方衆には軍師がいると聞いてましたが詩乃や雫とは逆なのですね。私の方でお布団を畳んでおきますから、一真様は先にお食事に行ってもらってもよろしいですよ」

俺は朝鍛錬をしてきたのを聞いた歌夜だったのか、きっと起きた後に軽く食べたとしても今頃になって腹が減っていると察したようだった。するとさっきまで横になっていた綾那が一緒に行きたいと言って聞いていた。歌夜はしょうがないと言いながらも、先に行ってもいいと許可をもらった綾那。

「わーいです!歌夜、ありがとです!」

両手を万歳と高く掲げ、大喜びの綾那に背中を押されながら、俺と綾那は部屋を出て広間へと向かう。ちなみに服装は普段着を着ているから、少々浮かんでる気がするがもう慣れっこだ。その途中だったが、何やら厩が騒がしいので何かあったのか?

「それより一真様!早くご飯です!」

「分かったから引っ張るなっつうの」

「ごっはん!ごっはん!綾那はご飯を食べている時が一番幸せなのです!あ、嘘なのです」

「それについても最初から分かっているが、綾那の幸せは強い敵と戦っている時が一番幸せなんだろ?例えば俺とかな」

朝から物騒な言葉だったが、それは俺も同じ事。毎朝クロウ達との鍛錬では、本気で掛かって来い!と言いながらも鍛錬相手を倒してしまうからだ。徒手空拳から遠距離攻撃でのライフルやら狙撃、俺はスコープなど使わずとも狙撃が出来る仕組みとなっている。とそこへ見知った顔がやって来た。

「よう一真。今から飯か?」

「その様子だと桐琴はまだ寝ているみたいだな」

「母ならまだ寝ているぞ?昨日から晩酌をしていたらしい、それとオレみたいに腹が減って目が覚める程の母じゃねえよ」

「なら森のも一緒に行くですよ!」

「しゃーねぇ。付き合ってやるかー」

二人は意気投合した様子で、今日の朝食献立で盛り上がっていたがそうか。桐琴は夜酒を飲んでいた様子だと報告に上がっていたが、流石に成長途中の小夜叉よりもまだ寝ているとすると余裕振りなのか、ただの二日酔いなのかの二択だな。

「そういえば小夜叉は躑躅ヶ崎館ではどうなんだ?」

「どうって。つまんねーに決まってんだろ。早く殺り合いてぇよ」

「ですよねですー♪」

「ま、そうだな」

綾那と小夜叉は殺り合いたい口のようで、鬼を早く倒したいのか腕がワンワンっと鳴っているようだ。それに綾那はただ勝つという飾り名前でもなさそうだ。

「綾那の名前は本多忠勝だからか、ただ勝つのみという意味を籠められた名前なのだろう。意味を聞かなくとも良い名だと思うぞ」

「です!へへー♪」

笑顔の花を咲かせた綾那だったが、小夜叉は飯を食ったら付き合えやだったので仕合でもやるのか?食後の運動による仕合なのだろうが、ガチでやりあおうと言うがそこら辺は俺を倒してから言え。

「それだったら、食後の運動には俺との対戦はどうなんだ?鬼との決戦前だが、ここで死なれては困るんでな」

「おっ。それはいいねぇー。でも一真は一人だから、オレと綾那との二人掛かりになっちまうぞ?」

「そうですよ?」

「俺は分身出来る事を忘れるんじゃねえよ。ただし真剣でのガチ勝負ならの話だ、まだまだ俺に一回も勝ってない相手をまず倒す事を目的とした方がいいだろう?」

本来の主人公ならここで止めているが、生憎俺も前線でやり合う口なんでな。殺り合いがダメなら真剣でガチ勝負もダメとか、戦闘狂にとってはアウトな言葉だ。刃引きした鍛錬用の槍を使い、お家流禁止とさせて寸止めじゃないと許可しないなんてする訳ないじゃん。注文の多いお頭じゃないので、そこだけは安心している。二人でガチでの真剣勝負もいいが、俺相手だと更にガチになれるから俺も後ろで立つような真似はしない。

『盛り上がっている二人だが、相棒は随分と平気なのだな』

『そりゃそうだろドライグ。一真の旦那はここにいる武将よりも最強だぞ』

とかだったが、朝食が用意された広間へと向かった。心が準備してくれた朝食は、信州味噌の味噌汁に山菜の和え物と鮎の味噌焼きと白いご飯だった。恐らく最後の戦いに向けた士気高揚の為だろうけど、この米は俺らからのサプライズプレゼントをした米なのかいつもよりも美味しいと言っていた綾那達。

ここのよりも現代の米所である新潟のコシヒカリなのだから、後で知ったらきっと美空や秋子が驚くだろう。武田だけでなく、連合に参加している武士達は皆、いつもの飯よりも美味い美味いと感激していた様子だった。

「おらぁぁぁぁ!!」

槍を振る小夜叉だったが、難なく躱している分身体俺1。

「てぇえーーーーですぅーーーーっ!!」

分身体俺2は綾那を相手していたが、それも紙一重で躱し続ける。本体俺は近くで観戦していたが、分身体俺3は桐琴相手をしていたが流石の分身体でも敵わない相手だと察知したのか。

「へっ、流石はオレの目標である一真だな!」

「一真様も更に力を付けている様子なのです!」

「頑張れよー三人共。まだまだ手加減しているからなー」

心が準備してくれた朝食を食べ終わってから、すぐにそわそわし始めた三人は食い終わった瞬間にそれぞれの槍を武器庫から取り出した。庭でやらせるが、俺もそれぞれの分身体を創ってから擬態化から刀を持たせて早速鍛錬をしている。

途中から桐琴も参戦したので、更に分身体を創っては桐琴の相手をしていた。鍛錬とはいえ、三人から立ち上る殺気は普通の者なら並大抵ではないレベルだが、俺からしてみるとそれよりも更に殺気を練り上げられる。

「ほお。やっておるな・・・・主様が三人おるが、相手は二人とはな」

「よう一葉。おはよう」

「うむ。良き朝であるな、主様」

「良い朝だが、相変わらずの様子だからか。桐琴はすぐに終わらせたのでな、俺本体がここで監視をしている訳さ」

「なるほどのぅ。その辺りまで弁えておるだろうて、主様本体はそれぞれの槍武を堪能しておれば良い。それにしても鍛錬なら余も参加したい所じゃが・・・・」

俺らの鍛錬レベルは、素人から見たら大事故に繋がるが達人からだと見切れているから安心して見ていられる。一葉から見て二人はどうか?と質問すると、小夜叉も綾那も同質の闘気を持っているのが分かる。小夜叉は獣の闘気だが、綾那はそれにプラスして綺麗な雰囲気を持っている。

「要するに小夜叉が野性の虎であれば、綾那は誇り高き狼と言った感じなのかそれは?」

「主様がそう思うのならばそうじゃろうて。野性の獣という意味では同質なのかもしれんが、世の武人は鍛錬によって身につけた武術にて強さを競う事が多い。じゃがあの二人は武、そのものと言っても過言では無いじゃろう。主様もそうじゃろうに」

「まあな。持って生まれた強さ、という感じの者が多いが連合の中には武術という概念を取っ払った超越した武の力を持つ者が多いと見る。そう思わないか?幽」

「・・・・おや。気付かれておりましたか」

「気配で分かるし、俺ら黒鮫隊は気配が無くともそれを探査させてしまう力を持っている。後ろから様子を窺っていたように見えたが」

「水入らずを邪魔しては無粋と考えたまででござるが、確かにそのようですなぁ。何やらそれがし周辺にて、不自然な程な風が吹いている」

それはそうだろうよ。風による探査やら尾行まで出来てしまう程の風術を使う者は、ここで言うなら小波以上の探査能力と気配を消す力を持っている。俺と一葉からすれば幽も同じ家族のように見ていたが、どうやら少々違うようで。

「全部はやらんと言われても、時々おこぼれに預かるぐらいとも言うがもう分かっていて言っているのだろうに」

「やはり悟られましたか・・・・幕府の機密事項と言ってもバレている有様では内緒には出来ませんな」

「幽。お主も狙っておるのか?」

「はてさて。一真様との恋人条件は鬼と戦う者でありましたが、それがしもなりたいと言っても止めはしないと思いますぞ」

俺らのような戦闘狂は、ここにいる武人全てではない。連合にいる武闘派の武士共は戦闘狂ではないと言う定義なので、小夜叉や綾那と一葉のように突出しているがそれはただ目立っているだけの事。美空は良き戦狂いでもあるが、俺はそれさえも突き破る程の戦闘狂なのかもしれんな。幽曰く良い感じにバカが揃っているようで。

「良い感じなバカというのは、武田だと粉雪辺りか?」

「それがしが思うにはそうかと。ですが一真様はどうなのですかな?」

「粉雪は正直何でもかんでも信じるような小娘だからな、先行きが心配でもあるが三若もなかなかのバカ揃いに見える」

「確かにのぅ。あれはあれでなかなかのバカ揃いであるしな」

ウチにも三バカという仲間がいる所為なのか、親近感が湧いて来るがしょうがないか。考えている何やら太鼓の音が鳴ったから、一瞬何だ?と思った。

「ふむ?どうやら招集のようじゃな」

「いよいよ出陣ですかな」

「さて。連合も大きくなったは良いが、準備に今しばし時間が掛かるらしい。すぐに出陣とはいかんであろうが、主様から見るとそうかもしれん」

「ふむ・・・・それでは何の招集でしょう?」

「行ってみれば分かるであろうて」

「何やら招集が掛かったので、これにて鍛錬は終了とする」←分身体俺1

「そのようだが、俺らは少し準備をするのでな。綾那達は先に行っていてくれ」←分身体俺2

小夜叉と綾那は息が切れていたが、やっぱり決着がつかなかった様子だ。笑顔を浮かべながら、俺ら分身体と二人は拳を合わせたようだが武闘派同士の友情を確認し合ったようだった。用意していたタオルを二人に渡しすと、分身体は俺本体に戻っていくが二人分を相手していたにも関わらず汗一粒してなかったので、ハンカチで拭くだけとなった。

「では主様。余らは先に行っておるぞ」

「お先に失礼仕る」

「俺も準備が出来次第、そちらに行く。それと奥方衆代表である奏か沙紀を呼んで、状況確認に行ってくるよ」

一葉と幽を見送った後、汗に濡れた二人の頭をドライヤーのような風を送り乾かしながらペットボトルではなく竹筒を渡す。まるで父親のように接していたが、これはこれで良い。綾那や小夜叉みたいな者は、船にているが逆に成長した者もおるな。

「招集って何だよ?軍議か?」

「恐らくそうだな」

「いよいよです!腕が鳴るですーっ!」

「とはいえ、全体の準備はまだ整ってないからという話のようだ。すぐに出陣する訳ではないと思うが、これも仕事だと思えばいい事だ。久遠も準備に準備を重ねた上で、勝利の計算をしているからな。まだ勝算という結論が出てないように思える」

「戦は勢いなのですー!・・・・けど、織田の殿さんが言う事も分かるですー・・・・」

俺らが負ければ、鬼&ドウターと人間との勢力均衛が崩れる。鬼&ドウターを駆逐するために時間を掛ければ、また金ヶ崎での二の舞となってしまうだろう。まあ俺らは既に把握しているからか、幾分かは余裕を持っている。

何があったかはトレミーに行けば分かる事だし、前回のように船での大軍議はしないで沙紀が来てくれれば問題無い。小夜叉ら森一家の手綱は俺と久遠に預けているが、少し焦りが見えるに思えるからまだ一人前では無い証拠。

「俺らはもう負けられないからか、鬼とドウターを駆逐するには時間を掛ける必要がある。桐琴はもう分かっていると思うからさ、駆逐時間を掛ければ掛ける程被害が出る事も予測される。拙速を選択すると、準備中に発生しているであろう被害最小限に出来るかもしれんがここで焦ってどうする?勝っても負けても同じ運命を辿るが、鬼を俺らの拠点に行かせる訳にはいかないんだ。再起を図る長時間の間に出る被害もあるが、最善の結果を出す事がここで我慢した結果だと俺は思うぜ」

「そこまで分かっているし、今更真顔で言われても気にしてねえよ。今はまだ頼りにしていらぁ」

「綾那も!綾那も一真様に操を捧げてるんですから、頼りにしてくれなのです!」

防音結界のお陰か、周囲にいた小姓や侍女達も俺らが何を喋っているが聞こえないので素通りとなった。俺はここから別行動だと言って、二人の背中を押してからトレミーブリッジに向かった。評定の間に行く時までには現状把握したいし、そんでいくつかの確認を終えると俺と沙紀は評定の間へと向かったのだった。 
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