魔法少女まどか☆マギカ こころのたまごと魂の宝石
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第10話
しゅごマギ 10話
佐倉杏子との戦いの後、あたし達はマミさんの家で杏子について教えて貰っていた。
「さっきも言ったけど、佐倉さんは私の弟子みたいなものなの。あの子がまだ新米魔法少女だった頃、魔女の探し方とか、魔女との戦い方を教えてあげていたわ。それで、そのままチームを組んで見滝原と風見野の平和を二人で守っていたの。」
そう話すマミさんは、とても懐かしそうな様子だった。
「あいつが?そうは見えなかったけど。」
さやかの言う通り、あたしもそんな風には見えなかった。
「佐倉さんも、昔は魔法を平和を守る為に使っていたわ。でも、ある時から変わってしまったの。」
「何が、あったんですか?」
まどかがそう聞くと、マミさんは目を伏せながら答えた。
「ある日、突然佐倉さんがこれからは使い魔は狙わずに魔女だけを狙って効率良くグリーフシードを集めるようにしようって言ってきたの。当然、私は反対したわ。使い魔だって人を襲うんだもの。でも、そうしたら佐倉さんはチームを解散して、互いの縄張りを見滝原と風見野で分けようって言い出したの。」
「何よ、勝手な奴。」
「私も、最初はそう思ったわ。でも次の日のニュースで私は知ったの。佐倉さんの家族が、佐倉さんを残して無理心中をしたって。」
「え・・・」
「佐倉さんのお家は教会で、お父さんは神父さんなの。彼は本当に心優しい人で、新聞やニュースで事件を知っては涙を流していたそうよ。だから、現代を救うには今までとは違う教えを説くべきだと考えて、聖書に書いてない事も説くようになったわ。その内容自体は間違ったものでは無かったのだけど、信者の人達はもちろん、教会からも認められずに破門されてしまったの。」
「どうして?間違った事は言って無かったんでしょ?」
「それでも、信者の人達は今までと違うものを受け入れる事はできなかったの。そして、それが原因で佐倉さん達は食べ物に困るまでになってしまったの。でも、そんな中でキュウべえが現れて彼女は願った。“皆にお父さんの話を聞いて欲しい”って。その結果、皆がお父さんの話を聞いてくれるようになった。そして、佐倉さんはお父さんが表で人々の心を救うのなら、自分は魔法少女として裏で人々の命を救う。そうする事に誇りを持っていたの。でもある日、そのカラクリがお父さんにバレてしまった。その結果、お父さんは佐倉さんの事を『人々を惑わす魔女』と呼んだの。そして・・・」
「無理心中と言う訳だね。」
マミさんが言葉を詰まらせる中、ミキが代わりに続けた。
「そんなの、酷いよ。杏子ちゃんはお父さんの為にお願いしたのに・・・」
「うん。どうして、そんな事になっちゃったのかな・・・」
まどかもあたしも、話を聞いて悲しくて仕方なかった。
「ええ。だから、佐倉さんはこう考えてしまったんでしょうね。“自分の願いが家族を壊してしまった”って。だから、もうそんな事が無いよう他人の為に力を使ったりはしないって。」
「もしかして、マミさんが他人の為に願いを使うならよく考えるように言ったのはあいつの事があったからなの?」
さやかが聞くと、マミさんは首を縦に振った。
「確かに、それも無くは無いわ。でも、一番大事なのはあなたの願いで上条君が不幸になるかどうかじゃなくて、あなたが何を求めてその願いをしたのかなの。少なくとも、佐倉さんはそこははっきりしてたわ。だから美樹さん。もう契約しちゃったから今更かもしれないけど、よく考えておきなさい。」
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何故か見滝原であすなろ市の連中と会ったあたしは、エンブリオとやらについて洗いざらい話させられた。
「だから、ホントにあのチア女が言ってたんだよ。イースターの社長が昔、エンブリオを自分のコレクションにする為に探してたって。ホント、金持ちってのは考える事が分かんねえな。」
「それ以外は知らないんだな。」
「ああ。チア女が話してたのをたまたま聞いただけだけどな。」
「そうか・・・」
あすなろ組のサブリーダー的存在のメガネが顎に手を当てながら何か考え始めた。ったく、こっちは腹減ってんだから、早く帰らせてくれよ。
「佐倉杏子。悪いが、少し手伝って貰うぞ。」
「はあ?何でだよ。」
「私達はエンブリオを探してるんだ。昔、イースターがそれを探していたと言うのなら、何かデータが残っているかもしれない。」
「まさか、それを盗むのを手伝えって言うのか?」
「その通りだ。」
「見返りは何だ?」
「グリーフシード5個でどうだ?」
「大盤振る舞いじゃねえか。」
魔女ってのは倒しても必ずグリーフシードを落とすって訳じゃない。だからグリーフシードは貴重だ。そして、奴らはチーム、それも結構な人数だから個人でやってるあたしよりも消費は大きい。正直、裏があるとしか思えねえな。
「何、ちょっとした裏技を手に入れただけだ。」
「へえ。なら、そっちの方を報酬に貰いたいね。」
「残念だが、それは私達の企業秘密だ。」
「そうかい。まあ、グリーフシード5個でも充分だし、やってやるよ。」
多少きな臭いが、報酬が魅力的だったから、あたしは話に乗る事にした。
「でもよ、何でそんな魔法のアイテム探してんだ?まさか、“ミチル”の指示じゃねえだろうな?」
あたしは奴らの“リーダー”の名前をだした。すると、向こうから返って来たのは衝撃的な答えだった。
「・・・ミチルなら、死んだよ。」
「はあ!?あいつがか?マジかよ・・・」
「ああ。だから、私達にはエンブリオが必要なんだ。ミチルを生き返らせる為に。」
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次の日。さやかはマミさんに言われた事について物凄く悩んでいた。そして、あたしとまどかも杏子の過去の話について同じくらい悩んでいた。
「誰かの為の願いが、不幸を引き起こす事もある・・・か。」
昔のイクトや歌唄それにルルみたいに、誰かの為に他の人を傷つけるとかじゃなくて、本当に純粋な願いから人を傷つけてしまう事があるなんて、考えてもみなかった。
「どうして、そんな事になっちゃうのかな・・・」
「あむちゃん。まどかちゃん。」
すると、ダイヤが話しかけて来た。
「人は、未来を完全に予知する事は出来ないわ。だから、自分の予想出来る範囲で最善の事をするしかないの。」
「でも、それが間違っていたらどうするの?」
「そう思うのなら、周りの人達に相談すればいいわ。あむちゃん、あなたは一人じゃないの。」
「そうだよ、あむちゃん!」
「僕たちだって付いてるんだから。」
「いつでも相談して下さいね〜。」
「私も、いつでもまどかについてるわ。」
「皆・・・」
「エイミー・・・」
しゅごキャラの皆のおかげで、あたしとまどかは気持ちが楽になった。そうだね、あたし達は一人じゃない。
放課後。あたしはまどかとさやかを連れて、気分転換の為に遊びに行く事にした。昨日、中断してしまった織莉子とのショッピングの埋め合わせも兼ねているからキリカも一緒で、これから織莉子とも合流する所。何故かキュウべえがさやかの肩に乗ってるけど、気にしない事にした。
「あ、居た。おーい、織莉子ー!」
待ち合わせ場所の公園で織莉子を見つけたあたしが呼びながら手を振ると、織莉子はこっちに来た。
「ごめん、待たせちゃった?」
「そんな事は無いわ。さっき来たばかりよ。」
「そう。昨日はごめんね。」
「急用が出来たのなら仕方無いわ。」
「ありがと。あ、紹介するね。あたしのクラスメイトのまどかとさやか。」
「か、鹿目まどかです。よろしくお願いします!」
「み、美樹さやかです!!」
まどかとさやかは何だか緊張した様子だ。どうしたんだろう?織莉子のお嬢様オーラに圧されちゃんたのかな?
「美国織莉子です。お二人とも、よろしくお願いします。」
「「は、はい!」」
まどかとさやかはそう返事すると、まどかはキリカに、さやかはあたしに耳打ちして来た。
「ちょっと。あの人の制服ってお嬢様学校の白女のじゃん。って事はお嬢様?何処で知り合ったの?」
「ええと、昔キリカが親切にしてもらって、その繋がりで。」
「それだけ?何か凄いね。」
「あの、どうかしたかしら?」
その時、織莉子が声をかけて来た。
「な、何でも無いよ!」
「そう。ところで、何でさやかは肩にぬいぐるみを乗せているのかしら?」
「「「「えっ!?」」」」
あたし達は織莉子にキュウべえが見えている事に驚いた。すると、キュウべえは織莉子に話しかける。
「おや。僕の事が見えているみたいだね。」
「しゃ、喋った!?これはさやかの腹話術かしら!?」
「それは違うよ。ほら。」
すると、キュウべえはさやかの肩から飛び降りて織莉子を見上げながら言った。
「織莉子、僕と契約して魔法少女になってよ。」
その結果、あたし達は織莉子に魔法少女とついでにしゅごキャラについて説明する事になった。
「魔法少女に魔女、それにしゅごキャラ?」
「そう。織莉子はどうするの?」
「僕は決して強制はしないよ。」
あたしとキュウべえがそう言うと、織莉子は腕を組んで悩み始めた。
「今の私には特に願いは・・・あ、一つだけあったわ。」
「何だい?」
「ケーキ作りが上手くなりたいの。好きで何度も作っているんだけど、中々成功しなくて・・・」
意外と可愛らしい願いで、私達は思わずクスリと笑ってしまった。
「え!?何かおかしかったかしら?」
「そんな事無いよ。ただ、織莉子って結構大人びてるから、意外と可愛らしい願いだなあって。」
「そう。あの、キュウべえ。あなたはどう?」
「僕としてはどんな願いでも構わないよ。」
「それじゃあ・・・」
「ダメ!」
その時、キリカが織莉子の契約に待ったをかけた。
「どうしたの、キリカ?」
「織莉子。魔法少女の戦いって、結構命懸けなの。私も手伝ってて死にかけた事があるし、私は反対だよ。織莉子に危険な事をして欲しく無い。」
「でも、そう言うあなたも、そんな危険な事をしてるじゃない。」
「それは、そうだけど・・・」
織莉子の返しにキリカは言葉を詰まらせる。そんな中、助け船を出したのは意外にもさやかだった。
「でも、織莉子さん。その願いは戦う運命を受け入れてまで叶えたいものなんですか?」
「それは・・・」
「あたしも、それで悩んだ結果決めて魔法少女になったんです。」
「・・・分かったわ。もう少しゆっくり考えてみる。」
「はい。きっと、そうした方がいいと思います。」
織莉子の契約が保留になった後、あたし達は今日の目的のショッピングに向かった。
「こんな大勢で一緒に遊ぶのは初めてね。」
「あれ?もしかして織莉子さん、学校で友達居ないの?」
「さやかちゃん、失礼だよ!」
「何人か親しい人は居たけど、こうやって一緒に遊ぶのはキリカとあむが初めて。」
さやかの失礼な質問にも、織莉子は怒る事無く答えた。
「そうなんだ。それって、やっぱり織莉子さんが綺麗過ぎるからかな?あたしも最初、あたしなんかが御一緒してもいいのかなって思ったし。」
「私も。」
「実は、あたしも最初は・・・」
「あむまで!?」
さやかとまどかだけじゃなくて、あたしもそうだったと知って織莉子はショックだったみたい。ヤバ、やっちゃった。
「でも、それだけ織莉子が綺麗だって言う事だよ。」
すると、キリカがフォローに回ってくれた。ナイス!
「ありがとう、キリカ。それじゃあ、まずまずはどこに・・・」
「グスッ、グスッ・・・」
織莉子が予定を聞こうとした時、泣き声が聞こえた。その方向を見ると、小学生の女の子が泣いていた。
「あれ?あの子・・・」
「え?もしかして、あむちゃんの知り合い?」
「ううん。この前ちょっと見かけただけ。」
あの緑色の髪をツインテールにした子は、この前キリカと織莉子と一緒にクレープを食べていたら、あたし達の方を見ていた子だ。
「どうしたの?」
すると、いつの間にかあたしは女の子に近付くと話しかける。
「お父さんとお母さんが、何処かへ行っちゃって・・・」
「そう。迷子になっちゃったんだ。探すのを手伝ってあげるから、泣かないで。」
「うん・・・」
「って訳だから皆、ちょっとだけ待ってて。」
「何言ってんのさ。あたし達も手伝うよ。ね、まどか。」
「うん。」
「え?でも・・・」
「私はこの街を守る魔法少女だよ。その為には、魔女を倒すだけじゃなくて小さな人助けもして行かなくちゃね。」
「私もだよ。」
「ありがとう。ええと、キリカと織莉子は・・・」
「もちろん、私も手伝うよ。仲間だから。」
「私にも、手伝わせて。これくらいならいいわよね?」
「ありがとう。それじゃあ、君の名前を教えてくれるかな?」
皆が協力してくれる事が決まって、あたしは女の子に名前を聞いた。
「ゆま。千歳ゆま。」
「千歳ゆまちゃんのお父さんとお母さん、何処ですかー!」
あたし達は近くを探し回った。でも、どれだけ探してもゆまちゃんの両親は見つからない。
「全然見つからないね。」
「何処行っちゃったんだろ?」
あたし達も大分疲れていた。それを見てゆまちゃんが不安そうな表情をする。その時、織莉子がゆまちゃんに聞いた。
「ゆま。あなたが何処でご両親とはぐれてしまったか覚えてる?」
すると、ゆまちゃんは首を縦に振った。そうか、両親がはぐれた場所まで探しに来てるかもしれないから、今度こそ見つかるかも。
そう思いながらゆまちゃんに案内されて行くと、そこはひと気の少ない路地裏だった。
「こんな所ではぐれたって、どう言う事?」
さやかは首を傾げながら言う。すると、ゆまはこう答えた。
「パパとママは、ここが近道だからって。そしたら、急に消えちゃって。」
「え・・・?」
それを聞いて、あたしは嫌な予感がした。その直後、周囲の景色が歪んで、悪趣味な空間が広がった。周りにはハンバーガーとかフライドチキンとか、ジャンクフードや油っこい食べ物ばかりで、見てるだけで太りそうな感じだ。
「これは、魔女の結界!?」
「って、事はゆまちゃんのパパとママはこれに引きずり込まれたって事!?」
「多分、そうなっちゃうね・・・」
なんてあたし達が言ってると、まん丸の胴体に豚っぽい顔と二本足を生やしたような使い魔があたし達を取り囲んだ。
続く
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