ダークヒロイン
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2部分:第二章
第二章
「私が。まさか」
「少なくとも俺はそうさ。だから冒険なんてどうでもいいんだよ」
「いいって。それじゃあ」
「付き合わない?俺と」
カーラちゃんを抱き締めたまま耳元で囁いた。玉座に縛り付けている感じで逃げられないようにした形で。何か卑怯だけれどそれでも囁いた。
「どうかな」
「貴方と!?」
「そうさ。どう?」
またカーラちゃんに囁いた。
「カーラちゃんだったよね」
「え、ええ」
何だかんだで乗り気みたいだった。ちゃん付けで呼ばれても怒らない。
「別に財宝なんていらないし。だから」
「私と。付き合う」
「そう。駄目かな」
横目でその表情を窺いながら尋ねる。どんな感触かを見る。
「俺でよかったらさ」
「馬鹿を言えっ」
やっぱりだった。まずはこう言い返してきた。
「この私がどうして人間なぞと」
「嫌だっていうんだね」
「そうだ。私は魔王だ」
この言葉も予想通りだった。けれど顔が赤くなっているのはもう見抜いていた。これは思ったより純情な相手だ。見ながらそう考えていた。
「どうしてそんなことが」
「じゃあさ。聞くけれど」
「何だ?」
カーラちゃんは俺に問い返してきた。よし、いい感じだ。
「魔王は負けちゃいけないんだよね」
「そうだ」
これはまあ常識で。強いから魔王なんだよな。
「それがどうしたというのだ」
「じゃあもう失格じゃない、魔王が」
「何っ!?」
「だってほら」
ここで一気に一撃を繰り出す。まあこれで大分決まると思う。
「今こうやって俺に完全に捕まってるんだしさ。攻撃も魔法も使えないでしょ」
「くっ・・・・・・」
それは認めるしかないみたいだった。歯噛みしているのも横目から見える。
「それは・・・・・・」
「そうだよね。事実でしょ?」
「事実なら。どうするつもりだ」
「だから付き合ってよ」
これはさっきから言っていることで。何か向こうは全然認められないことみたいだ。
「俺とさ」
「付き合ったらどうするんだ?」
「別に」
俺はくすりと笑って答えた。
「悪いようにはしないよ」
「悪いようには?」
「そうさ。だって惚れたんだもん」
さて、一撃を浴びせたけれど。どうなるかな。
「カーラちゃんにね」
「カーラちゃんだと」
「そうだよ。魔王だろうが何だろうが可愛いんだし」
「可愛い!?私が」
おやおや。そろそろ反応が変わってきたかな。いい感じいい感じ。
「この私がか」
「可愛いからこう言ってるんだし。どうなの?」
「どうなのって」
「付き合ってくれる?」
また尋ねた。さあ、今度でいけるかな。
「俺と」
「付き合ったらどうなるの?」
おっ、来た来た。いい感じに。
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