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神葬世界×ゴスペル・デイ

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第一物語・前半-未来会議編-
  第五章 覇王の会議《3》

 
前書き
~明・灯による前章説明・第四回目~

【明さん】  :『今回も私のコーナーの始まりよ!
 独立宣言をした日来に対し、奥州四圏はどんな手を打ってくるのか心配よねえ』

-前章のあらすじ-
 いよいよ会議が始まり、日来の先行で始まったのよ。
 “その一”、“その二”が早く終わり、“その三”で会議はヒートアップ!
 ヒートアップし過ぎた中二病戦術師のレヴァーシンクが独立宣言!
 人民の、人民による、人民のためのなんちゃら。
 で、あーだこーだして前章は終了よ。
 つまらないから会議なんて見てなくて、これしか書けないわ。
 まあ、いいわ。
 今回はその続きよ!

【明さん】  :『また会議なんてつまらないわ。何して暇潰そうかしら』
【飛豊】   :『時間軸が違うから暇潰しても仕方無いだろ』
【明さん】  :『あら、無い乳ぺたん子じゃない』
【飛豊】   :『変な呼び方するな!』
【明さん】  :『事実を口にしただけなんだからいいじゃない。ほんとに無いんだから』
【飛豊】   :『まともに構うと馬鹿らしくなるからここら辺にしとくか。
 説明しとくが、この“前書き”は本編との時間軸が異なる。と言うよりも、時間軸自体無いと言った方が正しい』
【明さん】  :『意味不明だったら、とにかく深くは考えるな、てことよ』
【飛豊】   :『今回はえらくおとなしめだな。もしや偽者か?』
【明さん】  :『あんた、何言ってんの。私は本物、偽者じゃないわ! 語ることがなくて困ってるのよ! あんた、なんかボケなさいよ! ほら、ほら! 
 このコーナーを仕切ってるのは私よ! だからこのコーナーでは私は神なのよ!』
【飛豊】   :『仕方無いな、なんか面白いのあったっけなあ……?』

~ これから五分間、この室内|《ルーム》での間接会話|《チャット》は行われませんでした。 ~

【飛豊】   :『よし、これならどうだ』
【明さん】  :『時間掛かったわね』
【飛豊】   :『別にいいだろ。それじゃあ、行くぞ。

 この問題は難解だ。何回考えても分からない。

 ――どうだ?』

~ これから三十分間、この室内での間接会話は行われませんでした。 ~

【明さん】  :『さ、さすが貧乏知恵で考えたボケね。おやじギャクと変わらないのに、それを突くためのツッコミを殺しに来るなんて』
【飛豊】   :『何分待たせるんだよ』
【明さん】  :『予想を越えるボケに映画面|《モニター》が動かなくなったのよ』
【飛豊】   :『私のは異常は無かったが』
【明さん】  :『(あんたのボケで日来中の映画面が動かなくなったことは秘密にしておくわ)』
【飛豊】   :『いや、これ間接会話だから秘密にしておくなら書き込むなよ……』 

 
 言葉飛び交う会議のなかで、日来と宇天の覇王会は互いに言葉を放つ。
 今はアストローゼが宇天覇王会に向かって、こう言っている。
「いいか、日来に最も重要な資源。それは金属だ」
「お金お金、五百玉は金色で最高!」
 ニチアは陽気に跳び跳ねてしている。
 その横でアストローゼは資金の表が映る映画面|《モニター》を前に出すようにと、ニチアに視線で合図する。
 合図を確認し、ニチアは自身の頭に干さているように載っている子狐型の生霊|《ナビ》であるウタタネの頭を軽く数回叩く。
 それを合図に、映画面が前へと移動した。
「よく聞け貴様ら。日来は十年前から貿易に年間数億という多額の資金を使い、その内の大半である金属を他国から掻き集めてきた」
「そう言えば辰ノ大花からも異常に金属類を掻き集めてたわね」
「なるほどになるほど。全ては繋がっていたわけですか」
「棚部、それはどう言うこと?」
 一人で頷く御茶丸に実之芽は問う。
 資金の表が映る映画面を指しながら、頷きを止め御茶丸は説明した。
「分かりませんか? つまりは何時でも独立出来るように、必要になる資源を集めていたわけですよ」
「日来が多額の資金を十年前から使い、金属類を掻き集めていた。と言うことは、十年前から独立することを考え、何時でも戦える準備をしていたってこと?」
「そうなるで御座る」
 それは幾らなんでも無茶苦茶だ、と実之芽は思った。
 日来を調と交換することは二年前に決めたことだ。しかし日来はそれを予知したように、十年前からその準備を水面下で進めていたことになる。
 未来を予知出来る者は確かに存在するが、神州瑞穂にはそんな者はいない。
 ならば誰か何時考えたのか、知りたかった。
「日来に問うわ、日来は何時から独立することを考えていたの?」
「それは私ではなくレヴァーシンクの担当だ」
 なのでレヴァーシンクは立つ。
「まあ、独立って言っても神州瑞穂から抜けるわけじゃない。これを前提としてくれ。何時からなんて分からない。だってこれは僕達の先輩、社交院が昔に考えていたことだからね」
 日来覇王会の伝達者と補佐は席に座りながら映画面を消し、その間にレヴァーシンクは答えを返す。
 何時からと聞かれれば、そんなのは知らない、これが答えだ。
 レヴァーシンクの答えに、宇天学勢院の者達は戸惑いを隠せない。
 それもそうだ。
 独立宣言をしておいて、その準備をしておいて、始まりを知らないのだから。
「貴方達、頭大丈夫?」
「頭を心配された……」
「もう終わりですわ……」
「ふ、二人ともしっかりするネ。頭おかしいのはみんな一緒ヨ」
 空子の余計な一言に二人は更に落ち込んだ。
 慰めている空子の努力も空しく、その言葉は二人には届かない。
 レヴァーシンクは半目でそれを見て、ため息を一つ入れた。
「二人は空子に任せるとして、会議に戻ろうか」
「それじゃあ、始まりは分からないってことね」
「その通り。でも今ぐったりしてる僕達の長なら何か知ってるだろうけど」
 その長であるセーランに視線を向けるが、彼はまだ気絶している。
 視線を戻し、その間。落ち込んでいた二人は空子の努力の末、どうやら少し立ち直ったのが見えた。
 戻したならば、言葉の続きを口にする。
「資源は上手く行けば貿易無しで賄える。再利用すれば日来の資源はかなり保つね」
「日来存続のための防衛に資源はまず最初に尽きるだろう。そうだとしても最低一年保つようには計算している」
「抜け目無いわね」
「当たり前だよ。それくらいしてもまだ足りないくらいなんだから」
 結果、何もせずにただ存続のために防衛をし続ければ、日来はいずれ消える。
 だから、抗うために戦う術を見つけた。
 それが、

「日来は動くよ」

「そうね、動かなければ消えるだけだものね」
 予想していたよりも、彼方の反応は薄いものだった。
 意味はちゃんと伝わってないみたいだね。
 別に伝わっていないのならば、そちらの方がことを運ぶには好都合だ。
 話すことはもう話した。レヴァーシンクは皆に視線を向け、首を傾ける。
 “まだ会議を行うかい?”と。
 皆の反応は首を横に振るもので、それを踏まえて発言する。
「だから僕達日来はこれ以上この会議を行う意味が無い。どうするんだい、そっちは。まだ会議を続けるかい」
「そちらが必要無いのならこちらも必要無いわ。だけど忠告しておくわ、日来は既に神州瑞穂の、世界の敵よ」
「解り切ってることだよ。咲先生、もう会議必要ありません」
 レヴァーシンクは咲の方を向き、会議がこれ以上必要無いことを告げる。
 聞いて咲は横にいる榊と、宇天学勢院の教員二人に確認を取る。
「どうしますか」
「双方同じ意見だからいいんじゃない?」
「榊と同じだ」
「そうかい。だけどいいのかい、それで。もう後戻り出来無いよ」
「後戻り出来無いのなら、もう進むしかないよね」
 榊の言葉を消すように、会議終了を告げる警報が鳴り響く。が、その時だ。
 何かが壊れる音がした後に会議場に立ち上がる者が一人いる。
「てちょっと待て――い! そっちの長さん何も言ってねえぞおい」
 日来側の机に、日来学勢院の長であるセーランが立つ。
 銀の縄に椅子ごと縛られていた筈だが、椅子を壊して抜け出したらしい。
「椅子を壊してまで抜け出すとは、しぶといですわね」
「全く、お前って奴は……」
「まだまだ甘えよ。てか、それよりそっちの長さん何も発言してなくね? いいのかよ」
 セーランは宇天覇王会の長を指しながら言った。
 その問いに宇天覇王会の長である奏鳴は焦り、動揺したように少し動いた。
「わ、私は……」
「奏鳴様、お気になさらず」
「俺は長さんの言葉が聞きたいの。なあ、委伊達・奏鳴――」
 机の上から、彼女に向かって言う。
 これが人生初の告白だ。
「俺と付き合わね?」
 この言葉に周囲は固まった。
 言われた本人も同じだが、予想外のことなのでどう対処したらいいのか分からない。
「っな!?」
 この“な”には意味は無い。
 ただ何か言わなければと思い、準備が整う前に漏れてしまった声だ。
 告白されたのか? わ、私が? 会ってまだ数分という短い時間で告白? 駄目だ、告白されたのは初めてだから、どうしたらいいのか分からない。
 セーランの言葉に彼女の顔が赤くなる。
 今までじっとしていたが、思いがけない言葉を掛けられたためにもじもじし始めた。
 赤面している奏鳴の両の耳の上から、青の光を帯びてそれぞれ一本の角が現れた。
 竜の角のようにも見えるが、角の形をした結晶のようにも見える。
「つ、角が生えてきた!? どうなってんだ?」
「これは生えてきたんじゃない」
「見た感じ流魔の角、でいいのか。生えてきたんじゃないなら現れた、だな」
「物分かりがいいな」
 彼女は角をいじりながら、日来の長と会話をする。
 彼が笑いながら話していたので、彼女も自然と頬を上げる。
 悪い奴には見えないが、なんだろう。彼だけ、周りの者とは何かが違う気がする。
 何かは分からないが、そう感じる。
 自分も周りとは違うからだろうか、と一人思っていたところに実之芽の声が聞こえた。
「奏鳴様、これからの敵に会話など無用です」
「あ、す、すまない……」
 何処か落ち込むように暗い表情を見せた奏鳴。
 セーランはその様子を黙って、何かを感じるように見ていた。
「学長、そろそろ行きましょう。これ以上はここにいても意味がありません」
「それもそうね。それじゃあ私達は行くよ、交わる時にでもまた会おうかしらね」
「おう。まあ、その時は色々と面倒臭くなってるだろうけど、これからも楽しくやってこう」
 昔馴染みの友である榊と蓮は言葉を交え、さよならの挨拶とした。
 その会話を、呑気なもんだ、とタメナシが言った。
 蓮やタメナシ、明子と呼ばれていた学勢は榊と咲にお辞儀をして、宇天覇王会と合流するためにこの場から離れる。
 榊は腕を伸ばし、緊張が解けたように大きくあくびを一つした。
 そんな榊に向かい、咲は過去を振り返るように言う。
「会議、終わってしまいましたね」
「そうだね。結果、喧嘩吹っ掛けただけだったけど」
「これからどうなるか分からないのに、あまりにも落ち着いている自分が怖いくらいですよ」
「ははは、それだけ成長したってことだね。いいことだ」
 笑う榊に咲も笑いながら声を返す。
 新任の教員で三年生を任されたのは驚いたが、それだけ信頼があってのことなのだろうか。
 だとしたら私も成長しましたね。これから争うかも分からないのに、平然としてられるなんて。て、あれ? この感覚はヤバくないですか? 戦争慣れはいけませんよ! 私!
 一人で何か言っている咲を、榊は首を傾げて見ていた。
 そんなことをしていると、会議場から声が聞こえてきた。
「お集まりのなか悪いんだけどさ、俺のナンパの返事。まだ返って来てないんだけども」
「喧嘩吹っ掛けた相手にナンパって馬鹿かお前は!」
「だって俺、馬鹿長だぜ?」
「そうだったな、お前は馬鹿だった」
 はっきりと言うセーランに、飛豊は額に手をやりため息を付く。
 セーランは机から飛び降り、宇天学勢院の方へ歩いた。
「で、どうなのよ。俺と付き合う?」
「すまない! それは出来無い!」
 速答だった。
 傷付いたが、これで挫けないのが漢と言うものだ。
「でも俺、諦めないなら!」
「おーい、フラれたショックで何処に行くんだセーラン」
「心の傷を癒しに行ってくるぜえい」
 そう告げ、セーランはフラれた傷を癒すため全速力で正門を目指した。
 遠くへ走っていくセーランを見つつ、口で飛豊はなんとも言えなかった。
 ノリで告っておいて、何傷付いてんだアイツ。てか、今日好きな子に告るってまさか宇天覇王会の長だったのか? いや、ただ馬鹿だからふざけただけだよな。……まさか、さすがにそれはないだろう。
 セーランの姿が見えなくなり、飛豊は嫌だが宇天学勢院の方へと近寄った。
 宇天覇王会隊長の視線が鋭く、こちらを射抜くように向けられる。
 心臓が締め付けられるかのような感覚が、胸の辺りにある。
「気にしないでくれ。周りから馬鹿長呼ばわりされる程の馬鹿なんだ」
「いきなり告るなんて、恥知らずの長なのね」
「そういう奴なんだよアイツは」
「自分達はもう行くで御座るよ。この会議は意味あるものに御座った」
「そう言われるとありがたい。私達も意味がある会議だった」
 宇天覇王会の忍者が握手を求めてきたので、それに応じる。
 普通に握り、数回振って離す。それだけの行為だが、心を落ち着かせてくれた。
 意味があったか……それはどんな意味何だろうな。
 そんなことを思いながら、飛豊は彼らに顔を向ける。
「日来の代表として言わせてもらう。今回は来てくれてありがとう、また会う日まで」
「なら奥州四圏の代表として言わせてもらうわ。また会う日は日来の最後よ。その日が遠退くように、下手な動きは見せないことね」
「ぶー、あの女、感じ悪ーい!」
「ニチアも同じことを思われてるに違いないな」
「確かに、宇天の長に喧嘩吹っ掛けたからね」
 うるさーい、と日来の指揮官補佐が騒いでいる。
 ニチアの言葉が背後から聞こえるなかで、宇天学勢院の者達は正門へと向かった。
 彼らの背に向かって、会議場にいる面々は頭を軽く下げた。そして顔を上げ、
「いよいよ始まるけど、何か策はあるのかい」
 問うたのは榊だ。
 覇王会に向けて疑問を投げ掛けた。
「まあ策はあるにはあるんですが、長が……」
「フラれて正門の方に走って行ったね。当分は帰ってこないかな」
 全く、と飛豊はぼそりと言った。
 正門の方を見て、次に会議場に表示されている映画面を見た。
 時間は午前十一時ぐらいだった。
 緊張していたからな、思ってたよりも進んでいなかったな。
 身体を締め付ける緊張を解くように息を吐く。
「見事な会議に御座った」
 息を吐いていた飛豊の元に、敷地内に建てられた建物から何時の間にか出て来た魅鷺が言った。
 彼女の方を向き、微笑みを得て名前を呼ぶ。
「魅鷺か、他の奴も出てきたな」
 見れば建物の出入口では、建物の中で待機していた仲間たちが次々と出て来る。
 退屈だったのかなんなのか、身体を伸ばしている者やあくびをする者もがいた。
「いよいよだね」
「そうですね。私は今にも緊張で倒れてしまいそうです」
「このお調子巫女! 勝手に人のもの取ってんじゃないわよ、琴姫は私のものよ!」
「まだ巫女じゃありませんし、それに明。何時も美琴ちゃんを胸に挟まないでください」
「何よ私のおっぱいが羨ましいの? でも美兎、あんたそれでも私の次におっぱいでかいじゃない。デカパイ巫女の登場よ!」
 美兎から取り戻した美琴の頭に胸に押し当てて、左右に揺れながら灯は話す。
 対する美兎は身体の内、最も気にしている胸を隠し、恥ずかしさを堪えている。
「リュウは何言ってんだか分からなかったなー」
「心配するな、会議に出てても理解出来ていない者が一人いる」
「トオキン、それってうちのこと言ってるナ。何逃げてるカ、逃がさないヨ」
「あらあら、元気一杯ありますね」
 機竜であるトオキダニを追いかけている空子を見て、可愛らしく思えて恋和は頬を薄く赤めて眺める。
 会議場には太陽の光が真上近くで彼らを照す。
 木々から漏れ出す木漏れ日を浴び、彼らは会議のことについて話し合った。
「にしても喧嘩吹っ掛けておいて、彼方が何もしないなんてことはないですよね」
 美兎は不安を口にする。
「まあ、確かにな。宇天隊長が最後に言ってた言葉から推測するに、日来には奥州四圏から監視されるだろうな」
「それって下手に動けば戦闘艦でドカンですか!」
「ロロアの答えは正解に近いだろうな。まずはそれをどうするかなんだが……」
 考える飛豊に対して、ロロアは本当に真面目な人だと印象を持った。
 会議場は先程までの雰囲気は消え去り、個人個人が騒ぐ場となった。だが彼らとは違い、一人、ネフィアが正門の方を見ていた。
「あっちを見ているが何かあるのか?」
 飛豊が問うと、ネフィアは顔を向けないまま指先を正門へと向けた。
「あのですね、正門から出ようとした宇天学勢院の皆様が何故か立ち止まっていますの」
「何か話しでもしているんじゃないか」
「話しているようには見えませんが……」
 飛豊は正門の方を見るが、直線とはいえ百数メートル先のものをはっきりと見ることは出来なかった。
 正門の様子は見えないので、近くにいるので確かに見えるネフィアの方を向く。
「ちょっと確認に行ってくる」
「うちも付いてくヨ」
「逃げきれたねー、トオキンー」
「全くだ。鎧甲に蹴りを入れられる身にもなってほしいものだな」
 正門へと歩く二人を見ながら、一匹と一人の竜は言葉を交わした。
 歩く二人が正門に続く道を行き、宇天学勢院の者達の元へ辿り着く。と、あることに気が付く。
「うん? てか、あれセーランじゃないか」
「また縄に縛られてるネ」
 セーランは縄に縛られ、制服には地に引きずられたような汚れが目立つ。
 近付く飛豊はその縄を持つ者を見た。
「社交院か」
「日来覇王会伝達者、岩清水・飛豊か。あの時の会議以来だな」
「……葉木原・功一郎」
 飛豊の目には社交院の面々が映る。
 縄を持つ者はそのなかの女性だ。
 視線に気付き、縄を持つ女性が口を開いた。
「長が何処かに走り去ろうとしてしていたので、首にラリアット食らわせて連れて来た」
「魅鷺の姉さんのラリアットはマジやべえぞ。一瞬昇天しかけた」
 セーランは縛られた身体を、全身の筋肉を使い跳ねていた。
 見ていると、宇天学勢院側から声が聞こえてきた。
「何用かしら? わざわざ日来の社交院が出て来るなんて」
「これはすまない。会議を見ていたら何やら勝手に独立宣言をしていたのでな、介入しようとして来てみたら既に終わっていた」
「よく言うわね」
「ふん、少し話しをしようか」
 そう言い、相手の答えを聞かず話し始める。
「私達、社交院側としては争いを望んでいない」
「だけど貴方達の学勢院は違うみたいね」
 威圧するかのように、鋭い視線を相手に送る。
 若くして視線だけで相手を威圧する力に関心を覚えつつ、葉木原はその視線とやり合うように視線を合わせる。
「確かに私達も昔は争うことを考えていた、これは認めよう。しかし、もう私達の戦意は喪失している」
「それは何でかしら?」
「日来を終わらせるからだよ」
 言葉を聞き、飛豊が前に一歩踏み込む。
「そんな話し聞いてませんよ!」
 聞いていない、そのような話しは。
 独立するという同一目的の筈が、何故、今頃になって変えてきたのか分からなかった。
 いや、理解出来なかった。と言う方が正しいかもしれない。
「だろうな、学勢院側にはまだ長にしか伝えていない。伝えるな、とは言っていない。
 しかし、まあ、伝えなかったということは――」
「その考えを否定する、ということですね」
「そう言うことだ」
 飛豊は何故こんな話しをしているのか、分からない。
 長であるセーラン本人は口笛を吹き、自分は関係無いと態度で現していたので後でぼこす。
 まず辰ノ大花が見ているなかで、そもそもする話ではない。
 知っていて何故言ってくれなかった。同じ覇王会だろう。
 セーランは一体、何を考えているんだと思った。
 日に照らされているせいもあるだろう、額に汗が浮かぶ。そして、その話しに宇天覇王会隊長である実之芽が割って入って来た。
「自分達の意思さえ決められないなんて、よくそんな状況で独立宣言をしたものね」
「申し訳無いな。何時までも来訪者を待たせているのはいけない。長よ、この話しはまた今度にしよう」
「お、おうよ」
「なに震えてるんダ?」
 空子は震えているセーランに気付き、疑問に思いながら言葉を掛ける。
 当のセーランは顔色が悪く、青ざめていた。
「べ、別に気にしてねえよ? フ、フラれたことに対してショ、シショ、ショックなんて受けてねえよ?」
「もろに受けてるだろ」
 正門へと続く道の上で、その場にいる者達は立ち止まっていた。そしてその空間とは別に、空から大気を震わせる音が響いて来た。
 何の音だと、聴こえる方に飛豊は体を向けた。
 この音は貿易区域に行けばよく耳にする音だ。しかし、今はその音がとても恐ろしく感じた。
「まさか、この音は……」
「来たようね、貴方達を監視する者達が」
 丁度、真上を通る軌道でやって来る幾つかの巨大なもの。
 地上から目で、その姿を飛豊は捕らえる。
 航空船? いや、あれは戦闘艦か!
 遠くから戦闘艦がこちらへとやって来る。
 数にして八艦が、日来を監視するためやって来た。
「つい先程まで、日来の警護用に配備されていた艦よ。戦闘艦にしては心もとないけど、日来程度の戦力ならいい働きをするわ」
 言葉通りだ。それはここにいる面々、全員が分かっていたことだ。
 彼らの元に、空から聴こえる音は徐々に近付いて来た。



 会議場で日を遮るように、額に手を当たてていた榊が空を見ていた。
 空には小型戦闘艦が八艦あり、日来に向かい真っ直ぐ航行していた。
「神州瑞穂の主戦力である奥州四圏のなかの更に主戦力の黄森の小型戦闘艦か。八艦ぐらい見えるなあ」
「終わった、日来が終わってしまいました!」
「おいおい、さっきまでの冷静さは何処に消えんだよ。そんなに焦んなくても平気だよ、砲撃なんてしやあしない。どうせまだ監視だけだ」
 咲は榊の言葉を聞きながら空を見上げた。
 小型と言えども、大きさは全長百メートルはある。それに加え、小型と言うだけあってその機動力は戦闘艦のなかでも一番。更には黄森の小型戦闘艦には射程距離二キロ弱の主砲も一基は備え付けられている。
 騎神隊はさすがに来ませんよね…。
 咲は近付く戦闘艦を見て、最悪のことを考えていた。
「どうせまだ来るよ。独立宣言したから何をやらかすか分からない、今や日来は危険度マックスだからね」
「これからどうなるんでしょうか」
「教員である以上は学勢院、社交院に手を出すことは出来無いからなあ。辞めようにも決まりで教員は原則辞められない」
「大人になったら社会院に入るか、教員になるか、それとも働くかだけですもんね」
「どれを選ぶかで歩む人生も変わるからねえ。なんだかんだ言っても、こんなじじいが今更社交院入っても意味無いけどさ」
 周りにいる学勢達も、同じように空を見上げていた。
 大気を震わせ、音を轟かせ、威嚇のように空気が吠える。
 風を切ながら、日来を監視に八艦がやって来た。
 始まりはこくこくと彼らを飲み込む。
 今はまだ。それをただただ彼らは感じていた。 
 

 
後書き
 ということで、会議終了。
 結論、日来は貿易無しで幾日は保つから、その間で残る術を探すというもの。
 まあ世界は日来の敵なので、あては他勢力群|《イレギュラー》だけといバクチっぷり。
 何故そこまで日来を残したいのかは後に分かります。
 黄森の艦来て本格的にヤバくなった日来はどうなるか?
 次回は監視された日来の物語。 
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