エセ秀才の生残りを目指した悪足掻き
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第4話 ネタばらし?・・・
第4話 ネタばらし?・・・
宇宙暦796年8月12日 自由惑星同盟首都星ハイネセン 宇宙艦隊総司令部作戦参謀部
皆様、いかがお過ごしでしょう?私ことアンドリュー・フォークはただいま、胃に穴が開いております。病院のベットの枕は私の友達です。
・・・などと現実逃避をしても宇宙艦隊総司令部作戦参謀部にて針のムシロであることには変わりなく、しかも改善させるきっかけすらつかめない状態です。
まぁ自業自得であることは自覚していますよ。
(だってねえ、『島○作』の世界風に言えば、社長(シトレ元帥)と副社長(ロボス元帥)の派閥争いの最中の社運をかけたプロジェクト会議で、
「副社長は行うべきこと行わなかった(民間人の護衛や後方基地守備の放棄)、一方社長は部下の管理ができていない(将兵のモラルハザートがひどい)」
「貴方達(社長、副社長)では市民の信用回復できないから退任しろ」
「新しい首脳陣としてヤン・ウェンリー(社長派の平取締役)を中心にしろ」
なんてことを、副社長の子飼いの部下である俺がぶち上げたようなものだから)
シトレから見れば、競争相手派閥の若造が自身の軍部経営の不備を論って退任要求してきた。
ロボスから見れば、子飼いの部下が恩知らずにも作戦行動のミスや指示ミスを論って退任要求してきた。
はっきり言って、敵だけを作って(二大巨頭及びその派閥)味方をなくしたとしか言いようのない事態。
そして宇宙艦隊総司令部作戦参謀部はロボス派の総本部と言っても過言でなく、そのおかげで昨日まで俺もかなり自由にやらせてもらっていた。
にもかかわらず、『自派のボスを更迭させてライバル派閥の若造をトップに持って来い』なんて言った俺は他の参謀連中から見たら、とんでもない裏切り者だ。当然きつく当たることになる。
(だって仕方ないじゃないか。俺の頭じゃあれ以上のことはできなかったんだから)
俺は自分の銀河英雄伝説ライフが始まってからを思い起こしていた。
****************
宇宙暦796年5月15日自由惑星同盟首都星ハイネセン
鏡を見て絶望した俺は1時間ほどのたうち回っていたが、ふと気がついた。
『転生にしろ憑依にしろ、こんな非現実的なことが起こるなら、ネットで見た二次制作の作品の人物がいるのではないか?もしそうなら、その人物を探し出して丸投げしてしまおう。』と
幸い今日明日は非番日だ。個人端末でムリなら作戦参謀部の端末を利用しよう(職場端末の個人利用は倫理的には良くないがこちらと命がかかっているのだ!)
(平凡さま、嘆きの提督さん、ココアさま、痛艦公爵さま、皇○子殿下、皇女○下、等々誰かいないか!)
『結論、誰もいませんでした!残念!!』ってシャレにならんわ!
結局2日間かかって判った事は、原作の世界に俺と言う異分子がアンドリュー・フォークの中に入ったと言うことだった。
宇宙暦796年5月25日自由惑星同盟首都星ハイネセン 宇宙艦隊総司令部作戦参謀部
内心の落胆を隠して、アンドリュー・フォークとして仕事(軍務と言うべきかな)をしていて気づいたことがある。
『アンドリュー・フォークってメッチャ優秀!』
いや驚いたのなんのって、フォークって原作やアニメでは小物感丸出しの人物として描かれていたものだから侮っていたんだけど士官学校主席卒業は伊達じゃない。
軍官僚としての仕事をテキパキとしか表現の仕様のないくらい進めていけるのだ。
こんな優秀な人物がまるで小物のように思えてしまう原作主人公(ヤン・ラインハルト)や主要人物はチートだと改めて思ったものである。
そんなチートキャラを相手に原作知識があるだけの俺が勝てるわけがない。
「やはり、チートであるラインハルトやその部下たちには、同じくチートであるヤンやビュコック・ウランフ達にお願いするしかない!」
そんな決意の元、原作ブレイクのために俺はさまざまな部署に連絡を入れていった。
(もちろん一番連絡をしたいヤン・ウェンリーには他の参謀連中が敵対視しているので作戦参謀部からはムリ、個人的伝手も無いためできなかったが(泣)・・・)
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宇宙暦796年8月11日自由惑星同盟首都星ハイネセン 宇宙艦隊総司令部司令長官室
ロボス宇宙艦隊司令長官は上機嫌だった。
なにせ今度の遠征作戦が成功すれば、ライバルだったシトレ元帥を追い落とし、念願だった統合作戦本部長になれるのだから。
そんな彼の元に目をかけているフォーク准将が「どうしても閣下に聞いて頂きたいことがござします。お時間を頂けないでしょうか?」とやけに追い詰められた表情で言ってきたのでなてなとは思いつつ快諾した。
(これからが本当の正念場だ、この人を説得できなければ何も始まらない)
「元帥、お時間をいただきありがとうございます。早速ですが、今度の遠征作戦は大失敗に終わる可能性しかありません!」
ロボスはキョトンとした顔だったがみるみるうちに真っ赤になり鬼のような形相で怒鳴った。
「ふざけるな!馬鹿にしておるのか貴官は!大体この作戦はフォーク准将、貴官の発案だろうが!」
「その通りです。小官はあえて失敗する案を作りました。その理由をお聞きいただいた上で今一度ご判断ください。」
幾分、冷静さを取り戻したロボスに説明をしていった。
1、戦いのおいての三大要素が無いこと
2、焦土作戦を取られる可能性が大
3、同盟軍全体としてのモラルハザード及び同盟市民からの信用失墜
4、帝国辺境星域の特殊事情
5、自由惑星同盟の経済事情
6、自由惑星同盟と帝国における人口減少の推移とその危険性
特に4~6については、ロボスは初耳だったらしく何度もうなっていた。
識字率20パーセント以下(中等教育を受けていればエリート扱い)
基本手作業農法で大多数が蓄えが無い
同盟政府が発行した国債約十兆ディナール。をフェザーンに握られている
同盟主要機関企業の40パーセントがフェーザーン資本に乗っ取られている
人口が最盛期に比べて約十分の一になっており、連年の戦火によって毎年二百万人を越える戦死者が発生しており、軍を支える基盤としての社会が崩壊しつつあること
(まぁ、こんなことを聞かされたら将来の展望なんてのは吹っ飛ぶだろうよ)
俺の説明を聞き終えたロボスは一気に10歳以上も老け込んだように見えたが間髪をいれずに畳み掛けた
「閣下が統合作戦本部長になるために今次作戦を行うのでしたら、それは貴族の見得を満足させるためだけに出兵してきた帝国となんら変わりのないものとなりましょう」
「同盟軍と帝国軍はこれまでの攻守を逆転した状態になるのです。『毎年のように進攻をして損害だけを出し得るものも無く撤退する』そんなことを同盟市民や政府が許すとは思えません」
「民力休養には20年、いえ少なくとも10年は必要となりましょう」
『今、今こそが閣下が後世『自由惑星同盟の終焉の引き金を引いた』と評価されるかどうかの分水嶺なのです」
3時間に及ぶ俺の熱弁?を浴び続けた結果、ロボス元帥陥落(笑)!
****************
「フォーク准将、司令長官がお呼びだ」
作戦主任参謀のコーネフ中将が舌打ちしながら蔑むように俺に伝えてきた
(まぁ、「顔も見たくないわ」って顔に出していわれてもなぁ)
「はっ!ありがとうございます」
宇宙暦796年8月12日自由惑星同盟首都星ハイネセン 宇宙艦隊総司令部司令長官室
憑き物が落ちたような表情のロボスがしみじみとしたように言ってきた
「まさに貴官の言う通りの結果になったな。それで、確認し損ねたのだが後任人事について何か腹案があるのだろう?」
「はい。統合作戦本部長には第一艦隊司令官クルブスリー大将を、宇宙艦隊司令長官にはウランフ中将を、総参謀長にボロディン中将を、イゼルローン要塞司令官と駐留艦隊司令官をヤン中将に兼任させ、超光速通信(FTL)にて緊密に連絡を取り合って貰い、軍本部と最前線の心理的距離を縮めることに腐心していただきます」
ロボスはいかぶしげな顔をしながら尋ねてきた
「ウランフ中将を宇宙艦隊司令長官に?ビュコック提督ではいけない理由があるのかね?」
「はい。ビュコック提督はその戦歴、兵士からの人望も厚く申し分無いように思えますが、士官学校を出ていません。その点が他の諸提督に心理的ブレーキをかけてしまいます。その最たる例が「第三次ティアマト会戦においてホーランド中将の『先覚者的戦術』なる突出による壊滅的被害」です」
「ビュコック提督は一艦隊司令官としては比類なき人物ですが、将の将たる司令長官としては何かが足りない。その何かを持っているのは現状ロボス元帥とシトレ元帥です」
「しかし、今後20年のためにお二人には退場して頂かなくてはなりません。必然現艦隊司令官の内から後任を選ばざる得ないとなれば、ウランフ提督かボロディン提督が適任かと」
「・・・よかろう。後任人事については私からシトレ本部長に伝えよう」
「それと、小官を記録統計室に転任させていただきたいのです。『今日の作戦会議においてヤン提督に作戦の不備を指摘され、一言も反論できずに結局ヤン提督の主張する『無理をしない計画』に変更されたという噂を流布させた上で」
ロボスはあきれたように言ってきた
「それも『ヤン提督を同盟軍の“顔”にする』ためかね?」
「はい。どの道、先程の作戦会議のおける小官したことは組織人として許されないことですし、ヤン提督に注目させる良い機会です」
(本音はこれ以上チートキャラに関わりたくないです(切実))
「分った。ただし、貴官の転任は今次作戦後だ。せめて発案者として作戦終了まで付き合いたまえ。ご苦労だった」
「はっ!ありがとうございます」
(やった!やった!やったぁぁぁ!死亡フラグクラッシュ&生存フラグ構築だぁ!)
(ヨブさんにも捕虜交換の入れ知恵をしてあるからクーデターも防げるはず!)
その時、俺は死亡フラグが消えたと思って浮かれまくっていた。
まさかロボスが『楽隠居なんか絶っ対許すものか!』と思っていたとも知らず。
後書き
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