| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

エセ秀才の生残りを目指した悪足掻き

作者:バンダナ
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第5話 壮大なるピンポンダッシュ(笑)

第5話 壮大なるピンポンダッシュ(笑)

宇宙暦796年9月11日 惑星モールゲン
 帝国軍はもとより辺境伯、徴税官果ては警察官に至るまで貴族・官吏の人間全てが逃げ出しており、残されていたのは農民や鉱夫たち民間人だけであった。
彼らは一様に同盟軍の宣撫士官にこう詰め寄った
「政治的自由とやらよりも今日の晩飯を恵んでくれ、軍が赤ん坊のミルクまで取り上げて言っちまった。医薬品もひとつ残らずだ」

宣撫士官たちは驚愕しながらもこたえた
「も、もちろんだとも。すぐに用意させよう」
(まさか、本当に軍が逃げ出していたのか)
(総司令部の危惧していた焦土作戦をしかけてきたのか)
宣撫士官たちは笑顔を引きつらせながら、残された民間人に食料などと供出していった。

宇宙暦796年9月17日 イゼルローン要塞 遠征軍総司令部
 遠征艦隊指令官が全員スクーリーンに写っている。
全遠征艦隊と総司令部で今後の作戦方針を決定し速やかに実行するためだ。
グリーンヒル総参謀長が眉間にしわを寄せて報告した
「占領したモールゲン、ダンク、クラインゲルト、ハーフェン、そのいずれにも帝国軍・官吏は一人もいませんでした。またいずれの惑星も食料・医薬品が残らず帝国軍によって接収されており、現状我が軍から供出しております。特に最後に占領したハーフェンでは、『後2日遅れていたら大規模の暴動が発生し収拾がつかない恐れがあった』とのことです」
「フォーク准将が恐れていた通り、帝国軍は焦土作戦を行うつもりのようです」

(まぁ、艦隊速度を通常の六割にまで落として偵察と周辺宙域の調査に当てたから、進行速度が遅くなったのが原因だろうけどね)

「まさかな・・・」
「ほんとうにやるとは・・・」
「卑怯な!」

事前にその可能性が指摘されていたとはいえ本当に焦土作戦を取るとは思えなかった同盟軍の将官から呆れと憤懣の声が続いた。

(よし!ここでラインハルトへの反抗フラグを増やしておこう)
「広域通信での声明を進言したします」

「広域通信?」ホーウッド提督がいかぶしげな顔をした

「そうです。広域通信で帝国、同盟双方に聞かせるのです
1、『今日のパンすら取り上げられた住民に対し我々同盟軍は人道的見地から食料の供給を行った。住民は自ら同盟軍を頼ったわけではなく、止むに止まれずおこなったことである』
2、『しかし、これらの供給は一時的なものであり、同盟軍に彼らを助けるのに十全な食料はない』
3、『この先、住民の要求を答え続ければ、早晩軍の補給計画が破綻する。その場合、まことに遺憾ながら住民を見殺しにせざる得ない状況に追い込まれる可能性がある』と」

「バ、バカな・・」アップルトン提督の顔が蒼白になった
「民間人を見殺しなどと、同盟軍の大儀を否定することになる」ルフェーブル提督がうろたえた様に拒否反応を示した

「問題ありません。彼ら現地住民は一時的に保護しただけであくまで帝国民です。我々同盟軍が守らねばならない同盟市民ではありません。現地住民を助ける義務を負うのは帝国政府です。つまり彼らを食わせなければならないのは帝国政府です」
「そして同盟市民に帝国辺境の実情を、『同盟軍を解放軍として歓迎しているわけではない。辺境住民は食料にこそ価値を見出している』ことを伝えることにより撤退する理由のひとつにできます」
「同時に帝国軍いえ、ローエングラム伯に圧力をかけることができます」

「どういうことだ。ローエングラム伯に圧力をかけるとは?」ボロディン提督はラインハルトの名前が出てきたことに納得がいかないようだった

「ローエングラム伯は、先の会議で報告しました通り、5年で元帥に昇り詰めた戦場の天才です。しかも勝つための手段を選ばない」
「ですがそんな彼にも弱点があります。これも諜報部の功績ですが、帝国の宮廷・閣僚に彼の勢力が無いことがわかっています。」
「つまり、彼は勝っている間は黙認されていますが、一度失敗すればその地位、権力を引きずり落とそうとするものしかいなく、窮地に至った時救うどころか手助けするものもいません」
「この状況で、彼の取った作戦が『同盟軍ではなく帝国民を傷つけるものでしかなかった』となれば、帝国の宮廷・閣僚から彼を攻撃する絶好の機会になります。失脚を避けるために彼は早晩出撃を余儀なくされます」
「そして、我々同盟軍は彼が出陣した頃には当初の予定である威力偵察を終えて撤退いたしたます」

                       ・
                       ・
結局、広域通信で俺の提案した1と2はそのままに、3については使わず代わりに
『例え戦争をしていたとしても最低限守る信義というものがある。しかるに自国民を飢死にさせる作戦を実行するような人物には信じるに値するだろうか』をある意味さらにきついセリフになったものを繰り返し流し続けた。
(まぁ、下手に「食料ないよ」と言って暴動でも起こされたらシャレにならんし)
 そして同盟本国には
『二百万トン超の穀物、食用植物の種子、人造蛋白製造プラント、水耕プラント、それを運ぶ輸送船が必要になり、今後進攻星域が増えればさらに増加することが確実である』
と言う作戦の破綻をにおわせた要求を送った。

宇宙暦796年9月23日 イゼルローン要塞 遠征軍総司令部
 何故だか知らないけれど、同盟首都惑星のハイネセンで遠征決定の会議の内容が流出してしまい(しかもなぜか俺編集Ver(笑)が)、野党が議題にあげて議会が紛糾、世論も政権非難が激しくなっている
(ええ、理由なんか見当もつきません(キリッ)。録音データを何軒かのネットカフェの端末にコピーして消し忘れたとか、ICレコーダーのデータを消去せずに『面白データあります』って匿名オークションで落札されたとかしましたが(笑))
加えて遠征軍からの大規模な要求を知った、当初出兵に熱狂的な賛同していた民衆・マスコミが手のひらを返して政府を非難しだし始めている。



宇宙暦796年10月12日 イゼルローン要塞 遠征軍総司令部
 首都惑星ハイネセンからFTLで新評議会議長ヨブ・トリューニヒトが遠征軍撤退の命令を伝えてきた。
それは、第13艦隊が帝国軍発見及び即時撤退を報告してきた30分後であった。



 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

感想を書く

この話の感想を書きましょう!




 
 
全て感想を見る:感想一覧