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ソードアート・オンライン 蒼藍の剣閃 The Original Stories

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SAO編 Start my engine in Aincrad
Chapter-8 74層攻略
  Story8-13 鈍色の殺意と速さの代償

第3者side


55層 とある渓谷。



キリト達はまさに絶体絶命だった。


それは、訓練の休憩中の事。


ゴトフリーが配布した食料と水に麻痺毒が仕込まれていたのだ。

それらを用意したのが、もう1人、キリトとゴトフリー以外の男。

嘗て、キリトとデュエルをし打ち負かした男。
アスナにとっては心底嫌悪する男。

クラディールだった。



その表情は狂気の表情。
奇声の様な雄叫びを上げながらまずゴドフリーを殺した。
毒のせいで動けず、死の恐怖に襲われながら、そのままその魂は四散した。


キリトはこの時のクラディールの様子から、正規ギルド者じゃないと言い放った。


犯罪者ギルドの方が似合いだと。


その疑念に、クラディールは笑いながら答えていた。

そして、腕の紋章を見せ、告白した。

自分は笑う棺桶のメンバーだと。

そして、キリトの身体にも剣の刃をつきたてた。
徐々に奪ってゆくHP。



それを見てもキリトは、何処か遠い目をしていた。

ここで、死ねばひょっとしたら、現実へと戻れるかもしれないと言う希望も一部は残されていた。
そう考えれば、死の恐怖も少しは薄れるんだから。

キリトは、そのHPが赤に差し掛かった時に、心臓を鷲づかみにされるような気配がした。


脳裏に鮮明に浮かび上がるのはアスナの笑顔だった。
もし、自分がこのまま死ねば、今自分を襲っているこの狂人の手にかけられてしまうかもしれない。
この狂った世界で取り残されてしまう。

――自分は、まだ死ねない

キリトは、そう強く思いクラディールの剣をつかんだ。

クラディールはより一層狂気の笑みを浮かべていた。

「そうか!なんだよ、やっぱ死ぬのは怖えェってのかぁ?」

「そうだ、オレはまだ死ねない…………」

「カッ!!ひゃひゃ!!そうかよ!そう来なくっちゃなぁ!!!」

クラディールは両手で剣を突き刺すのに対し、キリトは片手。
様々な補正がかかるが、筋力値的にはどうしても押し負けてしまう。
徐々に身体に近づくように突き刺さってくるその剣。
残り少ないHP。

――ここまでなのか?

キリトの頭にその言葉が過ぎる。

――皆を置いて、アスナを置いて、この狂った世界へ残して、逝ってしまうのか?

「くひゃひゃひゃぁぁ!!!!死ねェェェェェェ!!!
死ねえええェェェェェ!!!!!」

クラディールは、金切り声で絶叫する。
1cm、また1cmと鈍色の金属に形を借りた殺意がふってくる。
僅かに潜り込み、そして命を奪おうとしたその刹那。





一陣の疾風が吹いた。
白と赤の色彩を持った風だ。

「な…………ど…………!?」

驚愕な叫びと共に殺人者の身体は剣ごと空高く跳ね飛ばされた。
キリトは目の前に舞い降りた人影を声も無く見つめた。
一陣の閃光が見えた、キリトは、その姿を見て、白く光りこの場に舞い降りた姿を見て、まるで天使の様に思えていた。

「ヒール!」

その人影は吹き飛ばしたクラディールには目もくれず、すかさずキリトの傍で回復結晶を掲げ唱えた。
回復結晶はポーションと違って、全快までに時間を要する事はない。
だから、直ぐに回復結晶は砕け散り、代わりにキリトのHPは、即全回復した。
生憎、解毒結晶じゃない為に麻痺属性が解ける事は無いが、一先ずは安心だ。

それを見届けた後、震えるような声で呟く。

「間に合った。間に合ったよ……神様。間に合った…………」

アスナは、目に涙を浮かべながら何度もそう繰り返す。
震えているその声はキリトにとって、天使の羽音に勝るほどに美しく響いていた。

そのまま跪き、キリトの傍で目をいっぱいに見開かせ、見つめ。

「生きてる…………生きてるよねキリト君…………」

「ああ、生きてるよ、アスナ……」

キリトは、自分でも驚くほど、弱々しく掠れていた。
アスナは、その事実をぐっと飲み込み……そして、目の質を変えた。

慈愛のものから全くの別物、正反対のものに。
アスナには似合わない憎悪の炎を漲らせた。

「待っててね。直ぐに終わらせるから……」

囁いて、アスナはすくっと立ち上がった。
その手には鮮やかな細剣が構えられている。
その向かう先ではクラディールが漸く身体を起こそうとしていた。
何があったのか?理解できていなかったが、その近づいてくる人影を認めて、両目を丸くする。

「あ、アスナ様、ど、どうしてここに!? い、いや!これは、訓練!そう、訓練でちょっと事故が!」

裏返ったその声で言い募るその言葉は最後までは続かなかった。
アスナの右手が閃き、剣先がクラディールの右頬を掠めたのだ。
既に、クラディールは犯罪者カラーになってる為、アスナに犯罪者フラグが立つ事は無い。

「がぁっ!!」

クラディールは、片手で頬を押さえ仰け反った。
一瞬動作を止めたあと、その顔には見慣れた憎悪の色が浮かんでいた。

「このアマァ…………!!調子に乗りやがっっ……
がぁぁぁ!!!」

その台詞も中断を余儀なくされる。アスナが細剣を構えるや猛然と攻撃を開始したのだ。
その凄まじい速度の剣速はクラディールの身体を貫き続けた。

クラディールは両手剣で必死に応戦するが、それは戦いとは呼べないものだった。
アスナの剣尖は無数の光を帯を引きながら恐ろしいまでの速度で貫き続けていったのだ。


まるで、舞うかの様に、細く美しい剣を操る白い天使。
暫くキリトは思わず見惚れていた。

「ぬあぁぁ!くぁぁぁっ!!」

半ば恐慌を来たし、無茶苦茶に振り回すクラディールの剣は掠りもしない。
見る見る内にHPバーが減少し、続けて赤へと突入していた所で、剣を投げ出し両手を挙げて喚いた。

「わ、解った!!解ったよ!!オレが悪かった!!」

そのまま、クラディールは、武器を落とし地面を這い蹲った。

「も、もうギルドは辞める!!アンタ達の前にも二度と現れねえよ!だからーー!」

甲高い叫び声をアスナは黙って聞いていた。
だが、ゆっくりと細剣を掲げ、手のひらの中でかしゃりと逆手に持ち換えられた。

自身の愛する人を、そして仲間だった人に手をかける相手に慈悲など必要あるのだろうか。
アスナの右手が強張り、さらに数cm振り上げられ、一気に突き立てようとした瞬間。
殺人者が一際甲高い悲鳴を発した。

「ひぃぃぃぃぃぃ!!!死に、死にたくねぇぇぇ――――ッ!!」

その言葉を聞いた瞬間、見えない障壁にぶつかったかのように切っ先が止まった。
その細い身体がぶるぶると激しく震えていた。

その言葉は、これまでに何度も聞いた事がある。


アスナはこの時葛藤をしていた。

だが、その葛藤はこの場ではマイナスにしか働かなかった。

その瞬間を強かに狙っていたからだ。

「ッッヒャアアアア!!!」

土下座していたクラディールがいつの間にか握りなおしていた大剣を突如奇声と共に振り上げたのだ。


金属音と共にアスナの右手からレイピアが弾かれた。

「あっ!?」

短い悲鳴を漏らし、体勢を崩すアスナの頭上でぎらりと金属が輝いた。

「アアアア甘ぇぇんだよぉぉぉ!!!副団長様よぉぉぉぉぉぉ!!!!!」

狂気を滲ませながら絶叫と、どす黒い赤のライトエフェクトを撒き散らしながらクラディールは剣を何のためらいも無く振り下ろしていた。


ガスッ

「くっ…………」

肩口を斬られ2割減ったアスナのHPバーが緑色の枠に点滅する。

「アスナ!!

クラディール、貴様ァァァァ!!!」

「言うの忘れてたなァ……アンタらの麻痺毒、最高レベルの麻痺毒の液体を刀身に塗ってるから40分は動けないぜェ…………」



「はぁぁぁぁぁぁ!!!!」

そんなクラディールにフローラが突っ込む。

ドリームスピナーをめいっぱい大剣に押し込む。

「おやおやァ……第一の獲物が来るとはなァ」

「第一の…………獲物?」

「アンタがKoBにいたころから俺は目をつけてたんだよ。俺が入る前にアンタは抜けちまったけどなァ」

クラディールの狂喜の目がフローラの視線とぶつかる。


そのたった一瞬、フローラの力が緩む。

「アメェなァ…………舞姫様ヨォォォォ!!」

「がっ…………」

大剣の一振りに耐えきれず、壁に向かって飛ばされるフローラ。

そこでクラディールが大剣スキル突進技〔アバランシュ〕でフローラの胸部を貫通し、そのまま大剣を壁に突き刺した。

「がっ…………げはっ…………」

「そうだなァ……良い事、教えてやるぜ。この場所はなぁ……奴等は知ってる。

当然、小僧、オマエがここにいる事もな。今も見てる筈だ。果たして、あのメンバーを凌ぎきれるかなぁ…………」


それは絶望。

「くっ…………あうっ…………」

胸に残る強烈な不快感に顔をしかめるフローラ。

「つらいかよォ……んー?」

クラディールの目がフローラの胸元のペンダントにいく。

それをクラディールは持ち上げる。

「やめてっ!!それだけは!それだけはっ!!」


その声は無惨にも聞き入れられず、ペンダントはピックで破壊され、そのピックごと髪留めのリボンを切り裂いて落下した。

「ああ…………」

フローラの両目からハイライトが消え、涙があふれでる。


精神状態も不安定。


クラディールは壁に刺さったままの大剣を放して、予備の大剣を装備した。





ここでキリトは戦慄した。
今の状況で、クラディールの言う笑う棺桶の連中がこの場に来ればどうなってしまうのか?と。


今も見ていると言う事は、副団長であるアスナが来ていることも解っている。
しかも、今のアスナ、フローラの精神状態もいつもと違う。
今の遭遇は危険過ぎる。

「く、くひゃはは……」




クラディールはフローラの絶望をした顔を見れて良かったと嗤い続けた。

間違いなく死ぬのだから。

そして、クラディールはゆっくりと、その顔を上げ、細い目で前を見た。


もう、笑う棺桶のメンバー達が来ていてもおかしくない。
だから、もう直ぐ連中がここへ来るのだろうと確信していた。

「あ、あぁ!?」

だが、この時クラディールは、信じられないものを目にしていた。

この場所へ来た副団長アスナ、元KoBフローラのことだけでも驚愕の事だったのだが、それ以上の人物、この世界最速と言われた男がこの場に現れたのだった。






人物はその場から消えた。



次の瞬間、後ろで大剣が外れる声が聞こえた。

「…………」

精神状態が不安定なフローラを座らせ、こちらを見据えていた。

「てめえ、蒼……」

「ラフコフの残党どもはさっき始末させてもらった。

後はお前だけだ」

「はっ、てめえもこの麻痺毒で痺れさせてやる…………」

「無理だな」

ヒュッ ヒュッ ヒュッ ガキン

「クソ! クソ! クソ!!! 何で当たらねぇんだ!!

こんなビーター野郎に!!」

「理由は簡単、4つだけだ。

1つは……血盟騎士団にいるという慢心だ。

1つは……俺の実力を把握出来てないことだろう。
お前よりは能力高いぞ

1つは……お前の剣は軽いんだ。意志が全くこもってない」

「うるせぇんだよ!!」

「最後の1つは………………俺の大切な人を傷つけたことだ!」



そこから、誰も目で捕らえることの出来ない、不可視の領域。

連二刀流スキル22連撃技〔ツインソード・トランズレイド〕

神速の二剣から放たれる流星のごとき剣撃がクラディールを襲う。

クラディールは一瞬たりともシャオンを見ることが出来ず、一撃も防げず、無惨に散った。


人殺し……と言いながら。

















その後、アスナとキリトが麻痺から自然回復してシャオンの元にきた。

「シャオン、助かった。


お前が来なきゃ危なかったよ」

「そうね、お礼を言うわ。ありがとう。


でも、フローラは…………」

フローラは壊れたペンダントを見つめながらハイライトの消えた目から涙を流していた。


そんなフローラの横にシャオンが行く。

「…………ペンダント、貸して」

シャオンはペンダントを取ると、アイテムからリペアキットを取りだし、修復した。

「こういうときのためにこれを持ってきておいてよかった。

はい、これ」

フローラは差し出されたペンダントを見て、目に光を取り戻した。

「よかった…………私の宝物…………」

もう一度、首にかけると、シャオンに抱きつく。

「ありがとう……私の…………ヒーロー。

いつも迷惑かけてごめんね……」

「いいんだ。俺はフローラたちを助けられたから…………」

そこでSEEDがきれ、シャオンの体から力がすっと抜け、その場に倒れた。

「「「シャオン((君))!!」」」

残り3人の声がこだました。
















◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆















クラディールの事件から1日後、シャオンは50層アルゲードのエギルの店2Fで目覚めた。

「ん…………」

「シャオン君!」

「俺は…………どれくらい…………」

「ほぼ1日寝てたわよ、シャオン君」

「倒れたからびっくりしたぞ」

「悪いな、みんな」

「シャオン君…………」

「…………そろそろ話さないといけないか…………」

シャオンはあることを話し出す。

「SEEDスキルに防御力ダウンのデメリットがあるのは知ってるよな?」

「うん。知ってるよ」

「SEEDスキルにはもうひとつ、大きなデメリットがあるんだ」

「?」

「それって…………?」

「?」

「連発すると体にくるんだよ。

体や脳が極限の状態でフルに使われるから、その分あとに来る疲労も大きい。
それに、SEED Mode-Accelerationを短期間に連発、または長時間使うと、体に異常なレベルの疲労が出てくるんだ。
最近ヒースクリフやらグリームアイズやらで連発してたからな…………

まぁ、状態変化はステータスで分かるからいいけどな。


だから、あまり連発させないでくれよ」

「そんなデメリットが…………」

「…………なんかモヤモヤする。

シャオン君のSEEDは攻略に必要。
でも、使わせ過ぎると体に負担がかかる…………

どうすればいいんだろう…………」

「フローラが気負うことはないよ。

俺はよく分かってるから普段はあまり使わないようにしてるし」

「とにかく……今日はゆっくりしてね」

「ああ」

シャオンのSEEDスキルにある大きなデメリット。

意外な形で出てくるのだった。













Story8-13 END 
 

 
後書き
シャオンの最大の弱点がここで出てきました。

シャオンがチート化しても弱いところがあるのはそのためです。
やっぱり原作主人公も活躍させたいのであえてこういった弱点を着けました。

次回からはChapter-9 題名は秘密です。

じゃあ……

フローラ「次回も、私たちの冒険に!」

シャオン「ひとっ走り……付き合えよな♪」
 
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