ソードアート・オンライン 蒼藍の剣閃 The Original Stories
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SAO編 Start my engine in Aincrad
Chapter-4 シリカとピナ
Story4-4 出発前夜
第3者side
チーズケーキは、最後だった。
とりあえず、シチュー・黒パンを食べた後、
そのシリカオススメのチーズケーキを頂いた。
そして食事を終えたときには既に時刻は夜八時。
シャオンにとっては夜遅くまで起きるのが普通だが……
『夜は早めに休むものですよ?睡眠は大切ですっ!』
『いや早すぎるって』
『十分ですっ!』
『…………はい』
という会話でシリカに諭され、同じパーティを組んだ。
3人は風見鶏亭の2階に上がった。
その広い廊下の両脇にずらりと客室のドアが並んでいる。
客室を選べるというシステムは備わっていないから、基本的に部屋位置はランダム仕様だ。
だが、偶然にも3人は並びの部屋だった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
そして、シリカは自分の部屋に入り、貰った装備を確認していた。
まずは、キリトに貰った短剣の練習を行う。
シリカは今までの愛剣よりいくらか重い武器に意識を集中しようとするが………
やっぱり、胸の奥がずきずきと鳴る。
だから、うまくいかなかった。
それでもどうにか失敗無く5連撃を出せるようになった。
「ふぅ………」
とりあえず落ち着き、
「2人にもっとお礼を言っておかないと……」
また混乱しそうになってしまいそうなので、直ぐに頭をふった。
シリカは武装解除をし、下着姿でベッドに倒れこんだ。
壁を叩いて、ポップアップメニューを出して部屋の明かりを消す。
ピナがいなくなってしまって、広いベッドで凄く心細かった。
散々ゴロゴロとしていたから寝ることを早々に諦めて、シリカは上体を起こした。
――もう少しお話してみたい……かな
シリカはそう思う。
だが、そんな自分にちょっと戸惑っていた。
――これまで一定距離以内に近寄る事を頑なに避けてきたのに、なんでだろう?
なんでこんなに2人が気になるんだろう?
考えて……考えて……時間がたつのが凄く早い
シリカが気がつくと、もう10時を示していた。
窓下の通りを行き交うプレイヤーも少なくなって足音も途絶えてかすかに犬の遠吠え、多分設定上のものなんだろうが、それだけが聞こえてくる。
――寝られないなぁ、やっぱり
シリカは、上体を起こしたままだ。
そんな時、
コンコン
はっきりとしたノックが聞こえてくる。
こんなにはっきり聞こえてくる以上は気のせいじゃない。
「ひゃっ!」
シリカは驚きながらドアの方を見た。
「あー、シリカ、ごめん。寝てた?」
「し、シャオンさんっ?」
「47層の説明を忘れちゃってて。明日にしようか?」
それを聞いて、シリカは内心嬉しかった。
自分もお話をしたかったから。
ベッドから降りると、ドアへと近づく。
「良いですっ!あたしも色々聞きたかったところで……」
ノブに手をつけたその時、気が付いた。
自分自身の姿に……
今は寝るときいつもなっている下着姿。
「〜〜〜ッ!」
シリカは素早く装備ウインドウを呼び出していた。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
シリカは、暫くシャオンと目をあわせられなかった。
その間に、シャオンは部屋に備え付けてあるテーブルを準備、そしてアイテムを準備していた。
「とりあえず話を進めるよ」
シャオンはテーブルの上にアイテムを置いた。
そのアイテムは水晶球だ。
「きれい……なんですか、それは?」
シリカは思わずそう呟いて聞いていた。
「ミラージュ・スフィア、って言うアイテム。キリトに借りてきた」
シャオンが水晶を指でクリックするとメニューウインドウを呼び出す。
そして、手早くOKをクリックすると、球体が青く発光し、その上に大きな円形のホログラフィックが出現した。
システムメニューで確認できる簡素なマップとは雲泥の差だ。
「うわぁぁ……」
シリカは、夢中で青い半透明の地図を覗き込んでいた。
目を凝らせば、そのリアルな風景に人が行き交うところまで見れそうな気がする。
「あれ?そう言えばキリトさんは?」
「キリトなら【説明だったら、シャオンがいれば十分じゃないのか?】って言って出てこなかった」
そう言って苦笑いをしていた。
「そうですか」
シリカは、この時少し残念だった。
――確かにシャオンが来てくれた事は嬉しい。
でも、キリトさんともお話したかった
と思っていた。
「あ、あたし、ちゃんとお礼を言わないと」
シャオンの方を向いて
「あのっ、頂いたアイテム、確認しました。あんなに高価なものを無料だなんて………」
「ああ、本当に良いって。余ってたって言ってたからな」
シャオンは両手を振っていた。
「それでもっ、凄い装備ばかりだったし……」
「あいつ整理整頓下手だから、使わない装備品がたまっていって必然的にあんな装備品が残るんだろうね。
あ、話がそれたな。47層の事だけど……」
しとるからなは、水晶に視線を戻した。
「あっ、はいっ!」
シリカもそっちに集中していた。
「ここが主街区で、こっちが………」
シャオンが指差し説明していたその時……
ズガァァァ!!
突然、部屋の外でまるで何かが爆発したような騒音が聞こえた。
「ッ!!」
シャオンはすぐさまその音に反応。
すぐに部屋の外へと向かった。
シリカは、あまりの出来事に、身を固くしていた。
ここは宿屋で、圏内だ。
トラブルがあるはずもない。
シャオンが外へ出て見ると
「キリト……」
キリトが立っていた。
その手には、片手剣が握られていた。
「キリトさん?」
シリカも気づき、外に出てきていた。
「盗み聞きされてたみたいだな」
キリトは廊下の先を睨み付けていた。
その突き当りには窓があり、開けられていた。
「誰かいたみたいだね」
「なんか不穏な感じがしたんだ。だから、外に出てみたんだけど……」
キリトはそのまま、視線を窓の方に向ける。
「あの窓から逃げられた。捕まえようと思ったんだけど、迷惑になるからな」
「そうだな」
シャオンも頷いた。
「えっ、で、でもっドア越しになんて、ノックもありませんでしたし、声は聞こえないんじゃ………」
シリカは、納得がいかないようにそう言っていた。
「聞き耳のスキルをある程度上げたらドア越しにも聞こえるんだ。そんな姑息なスキル、上げている奴中々いないんだけどな」
シャオンがそう答えていた。
「えっ、でも何で?あたし達を?」
シリカは気になっていた。
これまで、そんな事本当に無かった。
――気づいていなかっただけ?
「深く考えなくていいさ。考えても分かるもんじゃないし」
キリトは少し強張った表情のシリカにそう言った。
「そうだな。すぐにわかるさ」
シャオンも笑顔に戻しシリカに笑いかけた。
「は、はい」
シリカは2人を見て凄く安心できた。
「そうだ!メッセージ打つから、ちょっと待ってて」
キリトはシリカにそう言うとメッセージを打つ。
シリカは、ドア越しに腕を組んでいた。
どうやら見張りをしてくれているようだ。
――あたしが安心できるように?
シリカの体から力が抜けた。
キリトのメッセージを打つ後ろ姿は、遠い現実世界のお父さんの後姿に似ていた。
シリカは忘れていた温もりを思い出した。包まれているような温もりを。
シリカはいつしか目を閉じていた。
Story4-4 END
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