ソードアート・オンライン 蒼藍の剣閃 The Original Stories
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SAO編
Chapter-4 シリカとピナ
Story4-3 MMOの光と影
第3者side
「わぁ、美味しい」
シリカたちはワインを飲んでいた。
シリカは二週間の滞在でこのレストランのメニューにある飲み物は一通り試したのに、この味は初めてだった。
「あの、これは?」
シリカがキリトにそう聞くと、
「NPCレストランは、ボトルの持ち込みも出来るんだよ。俺の持っていた【ルビー・イコール】って言うアイテムさ。カップいっぱいで敏捷力の最大値が1上がるんだ」
「そ、そんな貴重なものを………」
シリカは申し訳ない気持ちでいっぱいだった。
助けてくれた上に、こんな貴重なものまで、と。
「酒をアイテム欄に寝かせてても味が良くなるわけじゃないし、俺知り合い少ないからな」
「寂しいねーキリトは。
まぁ、こういう場面で思い切り使った方が良いと思うな?それに未成年がお酒を飲めるなんてここくらいだし」
「あはははっ!そうですねっ」
シリカはそんな2人のやり取りを見ていて、更に笑顔になった。
さっき、嫌な事を思い出していたが、それも吹き飛ぶようだった。
――凄く、温かい。この人たちと一緒にいたら……
ピナを失って、物凄く辛いはずなのに、悲しみを和らげてくれる。
だが、さっきの不快感は拭えない。
「でも、なんで、あんな意地悪を言うのかな。シャオンさんやキリトさんは凄く優しいのに」
シリカの表情を見たシャオンは、表情を引き締めた。
「そっか。シリカはMMOはSAOが初めてなんだ?」
「はい、そうです」
「現実でもいるだろ?どうしようもない人が。
ここはゲーム内の仮想世界。そんな人たちの本質が浮かび出てくる」
シャオンは、どこか呆れたように言っていた。
「キャラクターに身をやつすと人格が変わるプレイヤーも多い。
それがロールプレイってものなんだろうけどな。
でも、SAOの場合は違う。
今はこんな状況。
そんな異常な時にプレイヤー全員が一致協力するなんて不可能だってことは解っている。
それでも、他人の不幸を喜ぶ、アイテムを奪う………何より、殺人を犯す連中が多い」
怒りの中に、どこか深い悲しみも見える。
「ここで悪事を働く連中は現実世界でもダメな奴らなんだろうなと俺は思っている。どうしようもないな」
シャオンは、口元をへの字に曲げていた。だけどそれは一瞬。
「あ、悪い、食事中に言う事じゃないよな。不快にさせて、ごめん」
シャオンは直ぐにその表情を止めた。
シリカが気圧されたような表情をしていた事に気が付いたからだ。
「人のことを言えたもんじゃないのにな。俺だって……」
「シャオン………」
そんな2人を見て、シリカは
――2人は優しいだけじゃない。何か、深い懊悩を抱えている
そうおぼろげに感じた。
何かいたわりの言葉をかけたかったが、言いたいことを形に出来ない。
だから、思わず身を乗り出しかねない勢いで立ち上がり、
「いいえ!お2人は良い人です!だって、だって!」
しっかりと2人の目を見て、
「私を助けてくれました!元気付けてくれました!私の恩人なのですからっ!」
2人して、一瞬驚いた表情をしていた。
ついさっきまで、本人が一番悲しい思いをしていたはずなのに、いつの間にかこちらの方を気にかけてくれていた。
「これじゃ、どちらが慰めてるのかよくわからないな」
キリトはひとつ息をはくとシャオンの方をみた。
「そうだな。俺が慰められちゃった。ありがとな、シリカ」
シャオンは優しく微笑みかけた。
キリトも優しい笑みを返した。
とたんにシリカはわけもなく心臓の鼓動が早くなる。
そして、顔を赤くさせていた。
「?」
シャオンとキリトはふと表情を見たら、真っ赤にしていたシリカの顔が見えたため
「どうかした?」
シャオンが聞いてきた。
だけど、聞いてもシリカは慌てて
「な、なんでもないですっ!あっ、あたし!おなか減っちゃって、チーズケーキ遅いですねっ!」
その勢いのまま、NPCのウェイターに、
「あっ、あの〜〜!まだなんですけどぉ〜〜!!」
注文の催促をしていた。
Story4-3 END
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