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鎧虫戦記-バグレイダース-

作者:
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第04話 双璧のカイエン

 
前書き
どうも蛹です。
今回も施設の情報を提供します。
牢屋‥‥‥‥‥‥収容者の90%以上が入れられている部屋。
      分かりやすく言うとそのまま牢屋。あの鉄格子のある牢屋。  
      牢屋の大きさは部屋につき約8畳とまぁまぁの広さ。
      金属板の位によって部屋の大きさを選ぶ権利も与えられるが
      セキレイは普通の大きさの牢屋に入っている。
      ちなみに、職員には個室が与えられており
      好きなようにして生活を行うことが出来るようになっている。

収容者の部屋には、トイレとベットと机しかありませんので寂しいです。

それでは第04話、始まります!! 

 
「お兄ちゃん‥‥‥‥‥大丈夫?私重くない?」

ハトはセキレイに背負われたまま言った。

「軽い軽い♪少なくともさっきよりはな、ハハハ」

セキレイは笑いながら答えた。

「だが、まさかこんなことが起こるとはな‥‥‥‥‥‥」

ヒゲ中年は数十分前を思い出していた。



 
 数十分前――――――‥‥‥‥‥



「俺にこんなことして、後で後悔す――――――――」

 バキッ!

セキレイがサバキの顔に蹴りを打ち込んだ。

「ロープでグルグル巻きの刑と人間サンドバッグの刑、どっちが良い?」

セキレイは笑いながら訊いた。しかし、目がすわっていた。
彼なら本気でやりかねないと感じたサバキは黙り込んだ。

「それでいいんだ」

セキレイはサバキの口に布を巻いた。
これで彼は声を出せなくなった。

「‥‥‥‥‥‥やっぱもう一発打ち込もうかな?」

セキレイは拳を握った。サバキは慌てて顔を横に振った。

「‥‥‥‥‥‥‥‥‥嘘だよ」

セキレイは笑った。コイツなら絶ッ対にやりかねない、とサバキは思った。

「それより725号。ハトは大丈夫そうか?」

セキレイはヒゲ中年に訊いた。
ヒゲ中年はハトの身体を見回しながら答えた。

「弾はほとんど外に出てるし、彼女の再生力は相当のモンだな」

ハトの周りに弾丸が落ちていた。おそらく傷口から落ちた物と思われる。
彼女は血塗れだったが、意外と軽傷で済んだようだ。
よく考えたら一般人の6倍も大きいのだから当然でもある。

「痛いよぉ‥‥‥‥‥おじさん、セキレイお兄ちゃん」

ハトは身体を押さえながらゆっくりと体を起こした。その時――――――

 ボンッ!!

ハトの身体から煙が噴き出した。

「おわっ!何だ!?」

セキレイとヒゲ中年は突然のことに声を上げた。
煙が晴れると、そこにハトの姿がなかった。

「は、ハトが消えた!?」
「私はここにいるよ?」

ハトの声が聞こえたので二人は上げていた首を下ろした。
そこには小さくなった普通の人間の大きさの彼女がいた。

「小っちゃくなっちゃった、えへへ」

彼女は笑いながら言った。

「ハトが小さくなったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

二人は大声で鋼の天井に向かい叫んだ。


そして今――――――――‥‥‥‥‥‥


「それにしても、そのスーツは伸縮自在なのか?」

ハトの着ていた服はそのままの大きさだったが
中に着ていたウエットスーツ的なものは小さくなっていた。
スーツは黒の半袖半ズボンの長さで、所々に白いラインが走っていた。
とりあえずセキレイたちは、彼女の服をあのまま置いて走っている。

「うん。博士が着ておけって言ってたから着てたの」

ハトはセキレイに抱えられたまま言った。

「そう言えば、傷は大丈夫そうか?」

ヒゲ中年はハトに訊いた。

「ちょっと痛いけど、すぐ治ると思う」

ハトは身体を軽くさすりながら言った。

「頼もしい女の子だな」

ヒゲ中年は笑いながら言った。
二人もそれを聞いて笑った。


「ほれ、そこの青年」

セキレイの前に謎の老人が立っていた。

「止まるんじゃ」

彼がそう言ったので、セキレイは立ち止まった。
ヒゲ中年も泳ぎを止め、床の上に上がった。

「イヤ、マジで止まるんかいッ!?」

謎の老人はツッコんだ。本当に止まると思わなかったらしい。
確かに、セキレイの風貌から素直に止まる者とは思えない。

「まぁ止まるんならいいんじゃが。今からワシの部屋に来なさい」

謎の老人は突然セキレイたちを誘った。

「ここから先にも奴らはウヨウヨおるからのぅ。そこの娘の治療が先じゃ」

彼は良い老人のようだ。セキレイたちは彼に着いて行くことにした。



    **********



三人は和室のような所に連れられた。

「おじいちゃんありがとう♪」

ハトは足に包帯を巻いてもらったようだ。
彼女は老人に礼をした。

「礼には及ばん。当然のことをしたまでじゃ」

老人を手を横に振り言った。

「じいさん、あんたは何者なんだ?」

セキレイはどストレートな質問をした。

「ん、ワシか?」

老人は自分を指さして言った。

「ワシは″海炎(カイエン)″。ここの護衛を任されておる」

なんと謎の老人ことカイエンは護衛であった。

「アンタもしかしておれ達を騙したのか!?」

セキレイはカイエンに訊いた。

「ワシもボンクラ共だったら捕まえようかと思ったら
 まだ若い女の子と青年と中年ではないか!」

カイエンは目を見開いて言った。

「おまけにその女の子は撃たれとるしのぅ。可哀想に」

彼はハトの足をさすりながら言った。

「おじいちゃんって何でここにいるの?」

ハトはカイエンに訊いた。

「ワシが“ここ”に来てから戦っとったら、いつの間にかみんな帰っていて
 今はここでつつがない毎日を送っとる」

カイエンはさりげなく言っていたが
セキレイは彼の言った意味に気付いていた。

「アンタってもしかして″侵略虫″か?」
「んん、そうじゃよ」

彼の問いにカイエンは大きくうなずいた。

「‥‥‥‥‥‥‥‥はぁ!?」
「‥‥‥‥‥‥‥‥えぇ!?」
「‥‥‥‥‥‥‥‥何ィ!?」

三人は別々の言葉を同時に叫んだ。

「おじいちゃん″侵略虫″なの?初めて見た!」

ハトはうれしそうにはしゃいでいる。

「まさか初めての″侵略虫″が老人とはな‥‥‥‥‥‥」

ヒゲ中年は一言つぶやいた。

「″侵略虫″って人間そっくりなんだな」

セキレイはカイエンの髭を触りながら言った。

「知らんのか?ワシらの歴史はお主らの数万年早く始まっとるんじゃぞ?
 だから、ワシらが人間というのが正しいんじゃ。
 お主らは後から言い始めたんじゃから」

カイエンはセキレイの手を外しながら言った。

「アンタはそこでは偉かったのか?」

ヒゲ中年はカイエンに訊いた。

「昔は″双璧(そうへき)のカイエン″と呼ばれるほど有名じゃったんじゃ」

カイエンは自慢げに言った。

「今は無名のじじいじゃよ」

彼は茶を取り出しながら言った。

「おじいちゃんはそんなに強いの?」

ハトはカイエンの茶を作るところを見ながら言った。
セキレイとヒゲ中年も気になったらしく顔を向けた。

「‥‥‥‥‥‥‥‥ちょっと見とれよ」

カイエンはゆっくりと立ち上がり、居間にある盆栽の前に立った。
三人はその光景を座ったまま眺めていた。

 シャキン――――――――カチン

剣を引き抜き、鞘に納めるような音が聞こえた。

 グラ‥‥‥‥‥ バラバラ

盆栽が五、六個に斬り分けられていた。
そのまま畳の上に音を立てて落下した。

「スゲェェェェーーーーーーーッ!!」
「すっごーーーーーーーーーーい!!」
「目にも留まらない速さの居合か‥‥‥‥‥」

三人はそれぞれ驚嘆の声を上げた。

「ざっとこんなもんじゃ。最盛期ならもう倍には斬れたかのぅ」

カイエンはそう言い捨てた。

「昔はもう一人片割れがいたんじゃよ。だが、今は向こうの星で頑張っとるはずじゃ」

彼は元の位置に座りながら言った。
それを聞いたセキレイが声を上げた。

「こんな剣豪がもう一人いるのか‥‥‥‥」
「″騎士(ナイト)″と呼んでほしいのぅ。ほれ、刀じゃなくて剣じゃし」

カイエンはいつの間にか手の中に長剣を握っていた。
諸刃の剣で、鞘には鮮やかな装飾がされていた。

「ワシは王国の元騎士じゃからな。こいつはワシの相棒じゃよ」

カイエンは剣を懐にしまった。

「さて、老人の長話に付き合ってくれてありがとうよ。
 そろそろ間抜けな看守たちでも勘付いたじゃろう」

彼は入口まで歩いて襖を開けながら言った。

「ありがとな、カイエンじぃさん」
「じゃあね、おじいちゃん」
「お世話になりました」

三人はカイエンに一礼した。

「自由のために頑張れよ」

カイエンは三人を見送りながらそう言った。
三人はそれを聞いて彼に手を振った。

「‥‥‥‥‥時代は流れる、か」

カイエンは三人が去った後、小さな声でつぶやいた。
 


    **********



〖緊急警報、緊急警報、Bブロック内で暴動が発生――――――――〗

赤いランプが回転しながら、Bブロック内に放送が響き渡った。

「ここでそんなことを考えるヤツがいるのか?
 そいつって一体どこに―――――――」

 ザンッ!

「ぐあぁッ!」

老人が一人の軍人の背中を斬った。急所は外したらしく
彼は倒れたままうめき声を上げていたが、一応無事なようだ。

「貴様、カイエン!この施設を裏切るのかッ!!」

それを聞いたカイエンは鼻で笑った。

「気付いておらんかったとは、おめでたい奴らじゃのぉ」

彼の周りを軍人たちは取り囲んだ。

「よくも‥‥‥‥‥仲間の敵ッ!!」

全員はカイエンに銃を構えた。
そして、わずかながらに静寂が走った。

「‥‥‥‥‥‥撃てェッ!!」

ドンドドンドンドンドドドンドンドンドドンドンドンドンドドンドンッ!!

発射された弾丸は一直線にカイエンの命へと向かっていた。

ガンガンギギンッ!ガガガガガガガガガッ!ギギギィンッ!

カイエンの腕から先が消え、周囲には見えない壁が
あるかのように弾丸がはじかれていた。

「‥‥‥‥‥‥‥終わりか?」

カイエンの手にはいつの間にか剣が握られていた。

 ボウッ!!

「ワシもこのまま大人しくしておくつもりだったが‥‥‥‥‥事情が変わった」

彼の剣が発火した。それを見た軍人たちはやや驚いた。
カイエンは赫き長剣、″パーシヴァル″を逆手に持ち、低い声で言った。

「未来を担う者たちの船出の‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥邪魔はさせんぞ」

そして、一人の騎士が敵だらけの戦場を翔け抜けた。



    **********



「う‥‥‥‥‥ぐぅ‥‥‥‥」
「はぁ、はぁ‥‥‥‥‥‥」

軍人たちは全員、炎を纏いし剣によって重軽傷を負っていた。
傷は焼き切られたものなので、かなり痛むだろう。
全員は床に倒れたまま動けずにいた。

「あ、あいつはどれほどの男なんだ‥‥‥‥‥‥?」

軍人は誰にというわけでもなく訊いた。

「――――彼の名は"灼刃(しゃくじん)のジスタ"。
 立ちはだかる敵を斬り裂く十二の剣の一つさ」

突然、軍人たちの後ろから男が現れてつぶやいた。

「ま、まさか!15年前、戦場を炎の海に変えたという伝説の‥‥‥‥‥!!」

軍人の一人はそうつぶやき、それを聞いた周りもざわついていた。

「ほぅ、まだワシのような老いぼれの事を覚えている者がいるとはな」

カイエン、いや、ジスタはつぶやいた。
剣を逆手にもったまま声の方向を向いた。

「何者じゃ?」

ジスタはその男に訊いた。

「私は″草薙 洋一(くさなぎ よういち)″。あなたも知っているごく普通の日本人です」
「何?日本人じゃと?」

草薙の一言にジスタは思わず訊き返した。

「彼らも生きています。ここはあなたの戦場ではありません。
 退いていただけませんか?」

草薙はジスタに相談した。

「もし断ったなら?」

ジスタがそう訊くと、草薙の手の中には剣が握られていた。

「私がお相手いたしましょう」

 ズザッ!

そうつぶやくと同時に草薙はジスタの前に現れた。

「何ッ!?」

 ガキィィンッッ!!! 

二つの剣が激突し、衝撃で周りの空間が弾け飛んだ。

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!?」

そして、軍人たちも風圧によって壁まで弾き飛ばされた。
それにより、彼らは全員気絶してしまった。

 ギギッ ガリリッ

草薙の振り下ろした剣をジスタが逆手に持った剣で受けていた。
二つの刃が拮抗しており、二人は互いに動けずにいた。

「おぬし、″セイバー″を持っているのに日本人とな?」
「はい。嘘は言っていません」
「″セイバー″はワシらの国でしか発現せんのにか?」
「そこは‥‥‥‥‥‥‥察してください」

このような状態でも会話は行えるようだ。

「しかし、おぬし本当に人間なのか?ここでは敵なしじゃろう」
「そうですね」

ジスタは本音をぶちまけた。

「ワシはセキレイたちを応援したいんじゃ」
「私もですよ」
「‥‥‥‥‥‥‥は?」

ジスタはその言葉に耳を疑った。
草薙はそういうと自ら剣を下ろした。
ジスタも剣を下ろした。

「私も彼らが出て行くことを願っています」
「いや、でもワシらさっきまで敵対しとったよな?」
「それは彼らを衝撃で気絶させるための手段です」

草薙はさらっと言った。ジスタは眉をひそめた。

「ワシを騙すとは、おぬしなかなかやるな」

草薙はそれを聞いて笑った。それを見たジスタも笑った。

「さて、カイエンさん。あなたはどうしますか?」

草薙はジスタの名をカイエンと呼んで訊いた。
ジスタ、いや、カイエンはしみじみとした顔で答えた。

「やっぱりこの名の方がしっくりくるのぉ。
 ワシはこのせま苦しい監獄を出させてもらうよ」
「そうですか。では‥‥‥‥‥」

 スッ‥‥‥‥

草薙は剣を持ったまま腕を差し出した。
西洋刀の刀身に天井の照明が反射して輝いていた。

「ん?なかなか良い剣じゃな。刀身の輝きが何とも‥‥‥‥‥」
「″草薙の剣(クサナギノツルギ)″といいます。私の剣ですからね。」

カイエンも剣を差し出した。
草薙はそれを拝借し、眺めた。

「見事ですね。これが貴方の″セイバー″ですか‥‥‥‥‥素晴らしい」
「″パーシヴァル″じゃ。言わんでも知っとるじゃろうがな」

″パーシヴァル″の赫い刀身が草薙に語りかける様にして煌めいていた。

「お互い、良い剣をお持ちですね」
「ワシらの“魂の武器”じゃからな」

二人は互いに微笑み合った。

「お、そろそろ時間ですね」

草薙はカイエンに大きく一礼した。

「また、いつかお会いしましょう」

そう言うと、向きを変えて歩き始めた。

「あぁ、またのぅ」

カイエンもそう返答した。
二人の騎士は、そのまま各々の方向に歩き始めた。 
 

 
後書き
″双璧のカイエン″=″灼刃のジスタ″ すごい通り名ですね。
カイエンはこの後も出てくるのでしょうか?

あと草薙 洋一。初のフルネームキャラ。彼は一体何者なのか?
最強キャラ風の存在とだけ言っておきましょう。

″セイバー″とは何なのか?二人の剣に関連しているのか、それとも‥‥‥‥‥?

今回は謎が多いですね。

ルビの振り方をようやく知った私はそれを早速使用しています。
次からはこれを使い分けていきたいと思います。

次の話でセキレイたちは恐ろしい敵と対決します。
果たして″レヴィアタン″とは一体何なのか!?

次回 第05話 追撃のレヴィアタン お楽しみに! 
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