鎧虫戦記-バグレイダース-
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第05話 追撃のレヴィアタン
前書き
どうも蛹です。
今回も情報を提供します。
金属板‥‥‥‥‥‥収容者全員が胸に付けている名札的な物。金、銀、銅、鉄の順で偉い。
鉄は最も位の低い階級。収容者のほとんどがこれである。
大体新入りにはこれが与えられる。
銅はその次に偉い階級。一部の収容者と軍人に与えられる。
あまり言いふらせるほどのものではない。
銀は成功例の低い実験の被験者や、隊長クラスの軍人にのみ与えられる。
収容者の中では最も偉い階級である。
金は最も権限の強い階級。この施設の職員にしか与えられない。
いつか被験者にも、この階級を与えるつもりだとか。
セキレイはそれゆえに銀の金属板なんです。
それでは第05話、始まります!!
「それにしても725号」
セキレイは725号に尋ねた。
「何だ?セキレイ」
725号は返事をした。
「あんたの名前、725号じゃ言いにくいから自分の名前考えてくれよ」
セキレイは彼にそう勧めた。
「んーーー‥‥‥‥‥なら、″ジョン″でいい」
「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥安易だな」
725号は今からジョンになった。
「セキレイお兄ちゃん、なんかここ暗いよ?」
「‥‥‥‥‥‥確かに」
セキレイたちのいる広く 床が部分的に黒くなっていた。
これは‥‥‥‥‥‥‥‥‥何かの影!?
「ハッ!危ないッ!!」
「何ッ!?」
セキレイはそう叫びながらその場を回避した。
ジョンもそれを聞いて急いで影から抜けだした。
ドゴォォォォォォォォォォォォォンッ!!
何か巨大な機械が大きな影のあった位置に落下した。
床は大きく陥没し、周りの部分がはじけ飛んできた。
「うぉぉぉぉぉぉぉぉッ!?」
セキレイはハトに欠片が当たらないように腕でガードした。
ジョンは波に呑まれた人のように流されていた。
「何が落ちて来たんだ!?」
ジョンは壁に手を置いて身体を安定させて叫んだ。
ガコンッ プシュゥゥーーーーッ!
謎の巨大機械の若干後ろに伸びた操縦席のような部分の
ハッチが開き、見たことのある顔が姿を現した。
「また会ったな、セキレイ」
「あ、あんたはッ!!」
三人の目線の先にいたのは、サングラスをかけたあの時の黒人の隊長であった。
「何でこんなところに!?」
セキレイは隊長に訊いた。
「何故?簡単な事だ。俺はミッションを遂行しないといけないのさ」
隊長は即座に答えた。
「おじさん、それは一体何なの?」
ハトは隊長に訊いた。 隊長は拳の裏で機体を叩いた。
「これは俺の愛機、″レヴィアタン″だ」
「″レヴィアタン″だってェ!?」
三人は驚きのあまり声を上げた。隊長は眉を上げた。
「何だ知ってるのか?」
″レヴィアタン″とは人間が搭乗するタイプの人型マシンである。
カラーは青をベースに白や黄色の装飾が加えられている。
顔の形状はサメをイメージしているように見える。
エラのような切れ込みや、大きなヒレがそれを裏付けしている。
肩には車輪状のパーツが付いており、そこからは鉤状の武器が垂れ下がっていた。
一体どういう武器かわからないが、油断はできないだろう。
「俺の目的はただ一つ、お前を見極めることだ!」
プシュゥゥーーーーーッ! ガコンッ
隊長は再び″レヴィアタン″に乗り込んだ。
目には黄色い光が灯り、少しずつ稼働し始めた。
〖さぁ、かかってこいッ!!〗
どこかに付いているであろうスピーカーから隊長の声が聞こえてきた。
セキレイはハトをゆっくりと床に下ろして、″レヴィアタン″の前に立ちふさがった。
「いいぜ、その挑戦受けたッ!!」
ザワザワザワザワザワッ!!
セキレイは全身を変身させた。彼の鋭い鉤爪が″レヴィアタン″を狙っていた。
「一つだけ約束しろ。この戦いの間、ハトを狙うな」
〖始めからそのつもりだ〗
二人は場所を少し下にあるところに移した。
そこはとても開けていて、東京ドーム並に広かった。
収容者全員がスポーツなどをするための“地下運動場”である。
〖では、今度こそ始めようッ!!〗
「あぁ!来いッ!!」
バシュッ!!
セキレイが大声でそういうと同時に
″レヴィアタン″の肩の鉤状の武器が高速で射出された。
それは一直線にセキレイの身体を狙った。
ドガッ!!
鉤は地面に激突し、深々と突き刺さった。
それは肩の車輪状のものとワイヤーで繋がっていた。
「危ねぇッ!何だあの武器は!?」
セキレイは体勢を持ち直して言った。
〖それの恐ろしさはすぐに分かるッ!〗
そう言うと隊長は手元のレバーのスイッチを押した。
カチッ ギュイイィィーーーーーーーッ!!
ワイヤーが肩の車輪状のものへと高速で巻き取られていった。
それにより、セキレイに猛スピードで近づいて来ていた。
〖これが俺の″レヴィアタン″のハーケンのなせる技だ!!〗
隊長は自慢げに叫んだ。
※ハーケンとは鉤の付いた登山でも使われる道具である。
「あれで高速移動ができるってわけか!だったら!!」
セキレイはそう言うと同時にハーケンに向かってジャンプした。
おそらく、先にこれを破壊して機動力を削ぐつもりなのだろう。
〖考えたな。確かに、お前のパワーならいけるかもな。
だが、そんな簡単にはやらせないぞッ!!〗
「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉッッ!!」
しかし、セキレイの方が先に攻撃を仕掛けた。
ガキィィィンッ!!
「ち、千切れない!?」
セキレイは思わず叫んだ。
カチッ
隊長はレバーのもう一つのスイッチを押した。すると――――――――
バリバリバリバリバリバリバリバリッ!!!
「ぐあぁッ!!」
高圧電流がワイヤーとハーケン上を走った。
セキレイはすぐに腕を離して床に降りた。
ズザッ!
「何だそりゃッ!?」
彼は立ち上がり指をさしながら叫んだ。
ギュルルルルルーーーーーーッ! ガコンッ
″レヴィアタン″の車輪状のものにワイヤーが完全に巻き取られた。
〖これが″レヴィアタン″の真の武器、″プラズマハーケン″だ〗
「″プラズマハーケン″!?」
皆さんは超伝導をご存じだろうか?
温度が非常に低い状態である時、電気抵抗がゼロになるという現象で
最近では、リニアモーターカーに使われている技術である。
これが室温で可能になれば、さらに科学は進歩していくのに‥‥‥‥‥‥
科学者たちは、自分たちの限界を感じ始めていた。
しかし近年発見されたレアメタル、″エマニウム″によって
高温状態でも超伝導を確認することが出来たのである。
そして、それを応用した新技術が“磁回転電源装置”である。
分かりやすく説明すると、中の超伝導状態のコイルが磁力を受けて回転し
それで得たエネルギーを使って活動するというものである。
エネルギーは無限に供給されると仮説が立てられていたが
現実は上手くいかなかった。
そのため、“永久磁回転装置”を作るべく計画が進められていた。
しかし、今だ成功は見られなかった。一人の黒人の少年が現れるまでは‥‥‥‥‥
何十回も実験が繰り返され、ついに一度目の成功を期した。
しかし、その装置はその後の実験には失敗してしまった。
この事例が三回起こっていたが、その三回には必ず黒人の少年が見学に来ていた。
見学は収容者がガラスの向こう側からその実験の経過を見ていくというものであり
誰でも自由に見ていくことが許可されていた。
その法則性に気付いた戦国博士は彼に精密検査を行い
彼が″侵略虫″と人間の混血児であることが分かった。
さらに、彼は我々の科学では説明できない物理現象を引き起こす能力
″超技術《オーバースキル》″を使うことができたのである。
彼の″超技術″は″磁界制御《マグネティックコントロール》″。
磁石に関する現象そのものを制御する能力であり
この能力が実験の結果を大きく変えたのでる。
結論により、“永久磁回転装置”の作成は不可能とわかった。
しかし、彼の能力を今後の計画に生かすために
彼専用の兵器を作ることになり、それに“磁回転電源装置”が導入された。
ちなみに、それが″レヴィアタン″で彼とは隊長のことである。
″プラズマハーケン″とは装置内のコイルと発電装置を接続し
回転により発電された電気を蓄電池に貯め込み
それを場合に応じてワイヤー内に流すという武器である。
電圧は3万ボルト、電流は5百アンペアで、通常の人間なら即死である。
(人間は42V以上の電圧、100mA以上の電流で死に至る。
注意すべきは電圧ではなく電流なのである)
「電気とかズルいぞお前ッ!!」
セキレイはハーケンの説明を聞いて叫んだ
〖だから説明したんだ。これでチャラだ〗
「チャラじゃねぇよ!お前、不意打ちしただろうがッ!!」
隊長の言葉にセキレイはキレた。
「それに戦う上での不利さに変わりはないしな!
‥‥‥でも、俺はお前に絶対負けねぇぞッ!!」
ダダダダダダダダダダッ!!
セキレイはそう言いながらレヴィアタンに向かって走っていた。
〖フッ、無鉄砲なヤツだ〗
バシュッ! バシュッ!
隊長はレヴィアタンの肩のハーケンを発射した。
ドガドガッ!
しかし、セキレイの走力はハーケンより速く
彼は全てのハーケンを回避した。ハーケンはそのまま床に突き刺さった。
「当たるかよ、そんな遅い武器!」
ついに、セキレイは肩のハーケンの狙えない至近距離の位置に入り込んだ。
そしてそのまま彼はジャンプをして″レヴィアタン″に飛びかかった。
「これで終わりだぁッ!!」
セキレイの鉤爪が、″レヴィアタン″の頭部を狙った。
ガシッ!
「な、何ッ!?」
″レヴィアタン″はセキレイ手で掴んで捕まえた。
彼は空中で回避することができなかったのである。
そもそも″レヴィアタン″の腕の動きにセキレイは気付いていなかったのだが。
〖捕まえたぞ、セキレイ〗
″レヴィアタン″は手に力を込めた。
セキレイは完全に身動きが取れなくなった。
締め上げられているため彼は苦悶の表情を浮かべていた。
〖このまま電撃を与えてすぐにあの世に送ってやろう〗
バチチッ! バチバチッ!
″レヴィアタン″は腕にも電流を流すことが可能なのだ。
電撃が腕付近で流れているのか、そこには火花が散っていた。
「セキレイお兄ちゃんッ!!」
ハトが遠くからセキレイに叫んだ。
「バカッ、どこかに隠れてろッ!!」
セキレイは締められて呼吸のほとんどできていない状態だったが
それでも彼女に忠告するために必死に叫んだ。
「まだ隠れてるんだ!」
「いやぁッ!お兄ちゃんが死んじゃやだぁッ!!」
ジョンがハトを抑えているが、彼女は必死に暴れながら泣き叫んでいた。
「お願いだ!ハトだけは助けてくれッ!!」
セキレイは必死に隊長に叫んだ。
〖‥‥‥‥‥‥駄目だ。お前を殺した上で、彼女も殺させてもらう〗
それを聞いたセキレイは絶望した。
〖‥‥‥‥‥‥命令だからな〗
カチッ バリバリバリバリバリィッ!!
「ぐああぁぁあぁぁああぁぁぁぁぁあぁぁああッ!!!!」
セキレイは強力な電撃を浴びて、苦痛の声を上げた。
そして、″レヴィアタン″は手を広げて彼を離した。
ドシャッ!
セキレイは音を立てて床に激突した。
そして、彼はそのまま動かなくなった。
〖‥‥‥‥‥‥‥‥‥任務完了《ミッションコンプリート》〗
隊長はそうつぶやいた。
「いやああぁぁぁあぁぁああぁぁぁあぁぁッ!!」
ハトは悲痛な叫びを上げた。
ジョンもそれを見て、全く声を出せずにいた。
〖‥‥‥‥あとは君達だけだ〗
隊長は″レヴィアタン″を二人の方に向かせた。
「やばい!逃げるんだ!!」
「やだぁぁあぁぁああぁぁぁあッ!お兄ちゃぁぁああぁあぁぁぁぁんッ!!」
ジョンの警告を無視して、ハトは遠くで骸と化しているセキレイに向かい叫んだ。
「セキレイお兄ちゃあぁぁあぁぁぁああぁぁぁあぁぁぁぁぁあぁんッッ!!!!」
しかし、ハトの声がセキレイに届くはずがなかった。
〖無駄だ。彼はもうすでに息絶えているのだから――――――――――――〗
そう言いかけた隊長は後頭部カメラの光景を見て絶句した。
〖ま、まさか‥‥‥‥そんな馬鹿なッ!?〗
隊長は驚きのあまり叫んだ。
グッ‥‥‥‥ググッ‥‥‥‥
セキレイがゆっくりと立ち上がっていたのだ。
腕や足は震え、今にも再び倒れそうなほど弱っていた。
彼は自らの意志だけで身体を動かしていたのだ。
〖や、やめろ!もういい!立つんじゃないッ!!〗
隊長は″レヴィアタン″を動かし、セキレイの近くに寄った。
彼はついに力尽き、再び床に倒れこんだ。
ガコンッ プシュゥゥーーーーーーッ!
隊長は″レヴィアタン″を飛び出してセキレイに駆け寄った。
ハトやジョンもセキレイの元に走って行った。
「電撃の威力が少し高すぎたか‥‥‥‥‥」
隊長はセキレイの身体を診ながらつぶやいた。
ハトやジョンも二人の元にようやく着いた。
「アンタはどうしてセキレイを診ているんだ?
さっきまで殺すつもりだったんだろ?」
ジョンは隊長に訊いた。
「俺は始めから彼を殺すつもりはなかったんだ」
隊長の衝撃の一言に二人は驚いた。
「じゃあ、どうしてあのビリビリをセキレイお兄ちゃんに使ったの!?
そんなことされたらお兄ちゃんでも死んじゃうよ!!」
ハトは隊長に向かって叫んだ。
「“しなければならなかったんだ”。そうしないと
彼はここを出た瞬間に死んでしまうのだから」
それを聞いた二人はその言葉の意味を理解できなかった。
「あらあら、何だか大変そうねぇ」
謎の女性が三人の後ろにいつの間にか立っていた。
「あ、あなたは!!」
隊長は彼女を見て笑顔になった。
そこにいたのは、施設内なら誰もが知る人物だったからである。
後書き
レヴィアタンがサメな理由は特にありません。
名前が“海の怪物”なのでこういうデザインにしただけです。
″プラズマハーケン″は私は気に入っています。
セキレイが出た瞬間に死ぬ、という言葉の意味とは一体何なのか?
突然、彼らの元に現れた女性は一体何者なのか!
次回 第06話 (題名でばれるので伏せておきます) お楽しみに!
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