鎧虫戦記-バグレイダース-
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第03話 中年のヒゲ
前書き
どうも蛹です。
今回も情報を提供します。
食堂‥‥‥‥‥‥見た感じはごく普通の数千人は入るとても広い食堂。
栄養満点でバランスも良い、とても美味しい食事を毎日提供している場所
注意:食べない人は廃棄処分!?
そして同時に、気性の荒い人たちもここでは気が和むとかどうとかで
まったく争いのない場所でもある。
おばちゃん‥‥‥この食堂の経営者。いつも、かっぽう着姿でいる。
やや小じわが目立つが、明るくて美人でとても素敵な女性。
食べ物にもったいないことをする人が大嫌い。
気が合うセキレイとはよく休みの間に話している。
実は施設内でも屈指の実力者という噂が立っているが
実際は誰もそれについての本当の事を知らない。
かっぽう着に厚手の服で分かりにくいが、隠れ巨乳。
できたら一度は食べてみたいおふくろの味です。
それでは第03話、始まります!!
「ハッ!」
セキレイは意識を取り戻し、起き上った。
「ハトッ!!」
そこには、床に倒れこんだハトがいた。
足や体からは血が流れ出ていた。
「セキレイ‥‥‥‥‥‥‥お兄ちゃん‥‥‥‥‥‥‥‥」
ハトは倒れ込んだまま言った。
「これは‥‥‥‥どういう‥‥‥‥‥」
セキレイはこの状況を理解するのに時間がかかった。
「一体どういうことだ‥‥‥‥‥‥?」
セキレイに分かるはずがなかった。なぜなら
彼は今まで完全に眠っていたのだから。
数十分前―――――――‥‥‥‥‥
バンッ!
「キャッ!な、何?」
ハトは突然の銃声に飛び起きた。
「観念しろ!これ以上は逃げられんぞ!!」
多くの銃を持った軍人が立っていた。
「お兄ちゃん、セキレイお兄ちゃん、起きて!」
ハトはセキレイを手で軽く揺さぶった。
「無駄だ。そいつはどうやっても数時間は起きることはない」
いつの間にかハトの足元まで来ていた男が言った。
「そいつが戦った対″鎧虫″用マシンの中には
麻酔弾入りの小型の奴が用意されていたんだよ。
その弾にそいつが気付かない内に当たったようだな」
ハトはセキレイの横腹に刺さった針の付いたものに気付いた。
彼女はそれを指で外した。抜くというよりデコピンで弾き飛ばした。
「それで、お兄ちゃんをどうするの?」
ハトは足元の男に訊いた。
「決まってるだろ?処分するのさ」
足元男は口元を歪ませて言った。
それを聞いたハトは叫んだ。
「しょぶんって何?もしかして、セキレイお兄ちゃんを殺しちゃうの?」
足元男は笑い出した。
「決まってるだろ。ここを抜け出したんだ。失敗作に用はないってことさ」
ハトはショックを受けた。
博士がここまで人間性のない男だったとは。
足元男は笑顔で言った。
「安心しろ。お前もどうせ殺されるんだ。寂しくはないよ」
ハトの目は涙で溢れていた。
ポロッ‥‥‥ポロポロッ‥‥‥‥‥‥
ハトの身体が大きいため、涙も大きかった。
涙は足元男にも当たりかけた。
「うおっと、んじゃそろそろ、さいならだ」
足元男は後ろの軍人たちに手で合図をした。
軍人たちは銃を躊躇なく構えた。
「セキレイお兄ちゃん!!」
ハトはセキレイを抱きしめた。その瞬間―――――――
ザッパァァァァァァァン!!
地面から謎の中年が姿を現した。
どういうわけか床をクロールで泳いでいる。
目の前の光景に軍人たちも少し動揺があった。
いきなり地面から現れた中年が今ここで泳いでいるのだから。
床の上ではなく本当に床をだ。
「‥‥‥‥グスッ、おじさんだぁれ?」
ハトは泣きじゃくりながら中年に訊いた。
「俺か?俺の名は‥‥‥‥‥‥じゃなくて、今なら逃げられるだろお嬢ちゃん!!」
「あ、ホントだ!!」
ハトも軍人たちの動揺に気付いた。
「キミ達どきたまえ!!」
中年は一列に並んだ軍人たちの真ん中に笑いながらのバタフライで向かった。
彼らは何やら気味の悪さを感じたのか、通れるように間を開けた。
中年はそのまま彼らの間を突っ切って行った。
「さぁ、いくぞお嬢ちゃん!!」
中年は大きく手まねきをした。
「うん!」
ハトは立ち上がって軍人たちの間に向かって走り始めた。
全員は撃つのは間に合わないと思ったらしく急いで退避した。
ハトが本気で走ると少し地鳴りがするが、その分とてつもなく速かった。
「私はハト。おじさんはだぁれ?」
ハトは床を泳ぐ中年に訊いた。
「俺は725号だ。君の抱えてるそいつの友達さ」
中年はセキレイの隣の牢屋にいたヒゲ中年だった。
「何でおじさんは床を泳いでるの?」
ヒゲ中年はその質問にすぐに答えた。
「これが俺の″超技術″、″物体潜行《サブマリン》″だ!!
物の中を自由に泳ぐことが出来るのさ!」
ヒゲ中年は彼女に分かりやすいように説明を加えた。
「へぇ~~、気持ちいいの?」
ハトは物を泳ぐということに興味があるようだ。
彼女は笑顔で訊いた。
「まぁまぁだな」
ヒゲ中年は背泳ぎをしながら答えた。
「待てーーーーッ!!」
軍人たちが走りながら口々に叫んでいた。
「また追いついてきたぞ!もっとスピードを上げよう!!」
ヒゲ中年はさらに速く泳ぎ始めた。
ハトはさらに走る速度を上げた。
猛烈なスピードでどんどん軍人たちから距離を離して行った。
「何でおじさんは走らずに泳いでるの?」
「それは訊いてはいけないよ!?」
彼女は空気というものが読めなかった。
そのまま二人は逃げて行った。
**********
「はぁ、はぁ、ここまで来れば大丈夫かな‥‥‥‥‥‥?」
ハトは立ち止まってつぶやいた。
ザバッ
ヒゲ中年はようやく床を上がり床に立ち上がった。
「ふぅ、多分大丈夫だろうね」
彼はカッコつけて言った。
「おじさんは良い人なの?」
ハトはヒゲ中年に輝くような笑顔で訊いた。
「少なくとも、こんなカワイイ子を襲おうとする気は俺にはないよ」
ヒゲ中年も笑顔で答えた。
「いたぞーーーーーッ!!」
一人の軍人に見つかってしまった。
「また見つかっちゃった!」
「逃げるぞ!!」
ザバァン!!
ヒゲ中年はまた床に飛び込みクロールを始めた。
「待ってよおじさん!!」
ハトも急いでヒゲ中年の背中を追いかけて行った。
**********
「はぁ、はぁ、はぁ、疲れた‥‥‥‥‥‥」
ハトは床にへたり込んだ。セキレイは今だハトに抱かれて熟睡している。
「全く、そろそろ彼には起きてもらいたいものだが‥‥‥‥‥‥‥」
ヒゲ中年は腕を組んだまま言った(すでに解除中)。
「まだ、私たちを探してるのかな?」
ハトはヒゲ中年にげんなりした顔をして訊いた。
「俺達は二人だが、敵は大勢だ。探す体力も追いかける体力もその分少なくすむ。
このまま探されたら厄介だな‥‥‥‥‥‥‥」
ヒゲ中年はため息まじりに答えた。
「私もおじさんぐらいの大きさだったらよかったんだけど‥‥‥‥‥」
ハトが顔をうつむかせてつぶやいた。
「そうだと彼を運ぶのに体力を使うことになる。
そのことを気にする必要はないよ」
ヒゲ中年はハトにそう言い聞かせた。
「セキレイお兄ちゃん‥‥‥‥‥‥早く起きてよぉ」
ハトはセキレイの顔をぐいっと指で突いた。
「無駄だよ。麻酔で眠ってるんだから」
ヒゲ中年は床に座り込んだ。
「こうなったら少しでも休――――――――」
「いたぞ!あそこだーーーーーーッ!!」
「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥」
二人はまた全速力で軍人たちから逃げて行った。
**********
「もう!どうしてこんなに追われなきゃいけないの!?」
ハトはついに怒った。
「それは俺達が脱走者だからだよ」
ヒゲ中年はハトに軽くツッコんだ。
「私はセキレイお兄ちゃんと外に行きたいだけなのにぃ!」
ハトは頬を大きく膨らませて言った。
「それがダメだから追われてんだよ」
ヒゲ中年は再びツッコんだ。
「そこにいたぞーーーーーーーーーー!!」
また軍人たちが現れた。
「逃げるぞ!!」
ヒゲ中年は床に沈んでからハトに叫んだ。
「うん!!」
ハトが走り出そうとした。その時――――――――
バンッ!
「キャッ!」
ハトの足を銃弾がかすった。傷から少し血が流れていた。
「ハトちゃん!」
ヒゲ中年はハトに泳ぎ寄ろうとしたが
それは軍人によって阻められた。
「全員そのままでいろよ‥‥‥‥‥‥‥」
偉そうにしている男が言った。
よく見たらさっきの足元男だった。
おそらく彼が隊長なのだろうか。
「痛いよ‥‥‥‥セキレイお兄ちゃん‥‥‥‥‥‥‥」
ハトはそれでもセキレイを抱きかかえて守っていた。
「でも‥‥‥大丈夫‥‥‥‥お兄ちゃんは‥‥‥‥私が‥‥‥守るから‥‥‥‥‥」
ダダッ!!
ハトは急に立ち上がり走り出した。
「全員構え。殺すなよ‥‥‥‥‥撃て」
ドンッ!ドンドン!ドドン!ドンドンドン!
発射された弾丸がハトに命中した。
ハトはそのまま前に倒れ込んだ。
セキレイは少し遠くに落ちてしまった。
「うぅ‥‥‥‥セキレ‥‥‥お兄‥‥‥‥ちゃん」
ハトは泣きながらセキレイを見た。
セキレイは銃弾を一つも浴びていなかった。
「お兄ちゃんが起きるまで‥‥‥‥‥‥‥‥私が守ってあげるからね」
ハトはセキレイに手を伸ばしながら言った。
「ハッ!ハトッ!!」
ようやくセキレイは意識を取り戻し、立ち上がった。
そして、今に至るのである。
「遅いぞセキレイ!彼女がずっと運んでくれていたんだぞ!!」
ヒゲ中年は叫んだ。
「まさか40分で起きるとはな。並の鎧虫でも数時間は眠ったままの麻酔弾を喰らって
こんなに早く起きてくるとは‥‥‥‥‥‥‥正直舐めてたよ」
足元男はつぶやいた。
「ん??テメェは!!」
セキレイは足元男を見て気付いた。
「数年前、俺が胸ぐら掴んでササッと逃げて行ったあの‥‥‥‥‥‥誰だ?」
セキレイはその時、名前を見ていなかった。
「テメェはどこまで舐めてんだコノヤロー!!」
足元男の胸には銅の金属板が輝いていた。
つまり、こいつはあの時の札付きのワル男である。
「俺の名はサバキ。戦国博士によって付けられた誇らしき名前だ!!」
足元男=札付きのワル男=サバキは叫んだ。
「言われてねぇんだから知るわけねぇだろ!!」
セキレイはツッコんだ。
「俺はここの隊長クラスの権限を手に入れたのさ。今なら
お前をここで射殺する許可も出ている。ぶっ殺してやるぜ!!」
サバキは何というか正直言って気持ち悪い顔をさらに気色悪くさせて叫んだ。
「お前がハトを撃つように言ったのか!?」
パキッ!
セキレイは拳を握るように手の骨を鳴らして訊いた。
「だったらどうなんだ?あぁん!?」
気持ち悪いを超えた気色悪い顔が気味悪く歪んだ。
メンチを切っているのだろうが顔がそれどころじゃない。
セキレイはキレた。キモイ顔にハトを撃たれた怒りに、そして寝ていた自分に。
「テメェらはどうしてこんな小さな子供を撃てるんだ!?」
パキッ!!
セキレイはまた手の骨を鳴らした。
「あんなデカいガキ、化け物と代わりねぇよ!」
サバキは大声で叫んだ。
その言葉にセキレイはキレた。
「ここにいる奴らは全員化け物だろうが!!」
ザワザワザワザワザワザワッ!!
セキレイはヒクイドリの能力を発動した。
彼の全身はもう完全に鳥の姿と化していた。
「さぁ、勝負しようぜ。どっちが生き残るかをよぉ!!」
バキキッ!
セキレイは両手の骨を握るようにして鳴らした。
「全員撃てェッ!!」
ドンドン!ドドン!ドンドンドン!ドドドン!ドンドン!ドンドドン!ドンドンドン!!
ギギギンッギギンッギギギギッギギンッギギギギンッギンギンギンッ!
セキレイの身体には弾丸は全く歯が立たなかった。
彼が弾丸を喰らう度に羽毛が散っていった。
しかし、肝心のダメージは全くないように見られた。
「″超重堅鋼《ヘビメタ》″ッ!!」
セキレイの全身が超硬質の物体に覆われていた。
その肌が弾丸を全て弾いているのだろう。
しかし、彼のスピードは全く衰えていなかった。
「何だアイツ銃が効かねぇえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇッ!!!」
ドゴォォォォォォォォォォォォン!!
セキレイは軍人たちのど真ん中に突っ込んで行った。
サバキはギリギリその場を離れていたので回避することが出来た。
「何避けてんだよお前‥‥‥‥‥‥」
セキレイはサバキに声をかけた。
「お前のせいでやられたんだぞ?コイツ等」
セキレイの足元には軍人たちが倒れていた。
怪我を負っているようだが命に別状はなさそうだ。
軍人たちの残りもそれを見て一目散に逃げて行った。
「まっ待て、逃げるなお前らッ!!」
「ならお前が避けんなよ。口だけのクズ野郎かお前は?」
セキレイは明らかに挑発をしていた。
しかし、今のサバキになら十分効くものだった。
「それで俺に勝ったつもりか?」
サバキの顔はまだ余裕だった。
「まだ俺の部隊には″レヴィアタン″がいるんだ!
そいつが来ればテメェらなんてグチャグチャに潰されちまうぜェ!!」
「″レヴィアタン″?」
セキレイが全く訊いたことのない名前だった。
少なくとも、ハトの様に巨大な人間か戦闘マシンということだけは分かるが。
しかし、サバキは知っているようだった。
「″レヴィアタン″は“戦場の青い悪魔”だ!!
お前らなんざ、そいつの一撃でズタズタになっちまうぜェッ!!」
やたら余裕そうなコイツを殺せばなんとかなりそうな気がする。
自分がするわけでもなさそうなコイツを差し出せばどうにかなりそうなものだが
セキレイはあえて動かなった。
「‥‥‥‥うーーー‥‥‥‥ん‥‥‥‥‥」
それはハトがまだここに倒れているからである。
ゆえに下手には動けない。彼女にこれ以上のダメージは危険だからである。
「さぁ、現れよ″レヴィアタン″!!そして、セキレイを殺してしまえ!!!」
サバキは天に両手をかざして叫んだ。
しかし、その″レヴィアタン″なる者は現れなかった。
「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥あれ?」
サバキの顔は少しずつ焦りへと変わっていった。
後書き
サバキに死亡フラグが立ちました。彼は生きて次の話に出られるのか?
一体″レヴィアタン″とは何者なのかでしょうか?
サバキのとっさについた嘘なのか、それとも‥‥‥‥‥? 実際は分かりません。
次の話では謎の男が猛威を振るいます!!
次回 第04話 双璧のカイエン お楽しみに!
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