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鎧虫戦記-バグレイダース-

作者:
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第02話 隻眼のハト

 
前書き
どうも蛹です。
今回からこの施設についての情報をここで皆さんに提供します。
服装‥‥‥全員囚人服仕様の白と黒のシマシマ模様。
    しかし、あまりダサくない。むしろ全員気に入るほどのデザイン。
    金属板を胸に付けなくてはいけない(鉄、銅、銀、金がある。右から順に偉い)           その他ある程度の装飾品は許されるがジャラジャラと大量につけるのはダメ。

ここは一応、福祉施設なので刑務所よりは色々ゆるいです。

それでは第02話、始まります!! 

 
〖目標補足、発射許可ヲ願イマス〗

 ガシャンッ!

対″鎧虫″用ライフル発射マシンの銃口がセキレイに向けられた。

「おわっ!もうお出ましっスか!?」

口では慌ててはいるが意外と頭は冷静なセキレイだった。

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新人類計画、いや、新人類“作成”計画というのが本当の名称だが
この計画は、人間という野生の中では非常にランクの低い我々が
圧倒的戦力を持つ″鎧虫″と戦うために立てられた計画である。

この計画の第一人者である″戦国《せんごく》″博士は
人類の進化の為にと、人権を無視した違法行為を平然と行い続けている男である。
しかし、腕も確かで過去は天才外科医と呼ばれていたとか。
同時にIQ180以上の天才科学者でもあり、さりげなく特許を7つと
ノーベル賞クラスの技術を20も持っている(非公式)。

今回の計画の成功の為に、″鎧虫″の能力に加えて
前世代の人類である“鳥類”の能力を融合するという
人間+鎧虫+鳥のDNAハイブリット手術が適用された。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ドンッ!ドンッ!

キンッ!キンッ!

発射された弾丸の延長線にセキレイはおらず
弾丸は壁に跳弾し、そのまま消えていった。

「ハハッ、当たんねぇよッ!!」 
〖誤差修正ハ終了シテイルハズ‥‥‥‥〗

セキレイはライフル発射と同時に加速をすることで
誤差を意識的に作り出し、弾丸を回避しているのである。
もちろん、これは人間業ではない。

 ボキッ!

セキレイは拳を握るようにして骨を鳴らした。

「こっちもいくぜ」

 ザワザワザワッ!!

セキレイは足を再び変身させた。

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まず、″鎧虫″の″鎧骨格″を人体と結合させる。

鎧虫には″素体型″と″変異型″の2タイプがある
素体型とは普段からそこらで見かける丸い体に尖った肢が6本の
特に特徴のないタイプの″鎧虫″である。
(私が″鎧虫″としか記載していないものはこのタイプ)
変異型とは変態の過程で形質が地球の節足動物に酷似したものに
変化した部分的に特化した能力を持つタイプの″鎧虫″である。
(アリ型やカマキリ型など)

特化した部分を持つ変異型に対して素体型は平均的な能力しか持たないが
この素体型の存在が新人類作成計画を成功させる上で必要だったのだ。

素体型の体細胞は、なんと人間の体細胞に移植しても拒絶反応を起こさないことが
戦国博士の(人体)実験の結果明らかとなっている。
※変異型の細胞は特異ゆえに適合率が低い。

移植した″鎧虫″細胞は、人体と完全に結合し一体化
そして、″侵略虫″の人為的作成まで持ち込むのである。

そして、″侵略虫″の人間より高い適応性を用いて
鳥の体細胞の移植も楽に行うことが出来るのである。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
 
「うおおおおォォォォォォォォッ!!」

セキレイは猛烈なスピードで、対″鎧虫″用ライフル発射マシンに駆け寄った。

「ドラアアァァァァッ!!」

 バキャッッ!!

放たれた一撃は、対″鎧虫″用ライフル発射マシンの電源部分を粉々に破壊した。

 ウィーーーン ウィーーーン

〖排除、排除、排除、排除、排除―――――――――――〗

しかし、対″鎧虫″用ライフル発射マシンの他にも
マシンガンやバズーカ、地雷を持った多数のマシンが起動し
ここに集まって来ていた。

「獲物を俺の為に用意してくれるとは‥‥‥‥ありがたいぜ」

 ザワザワザワザワザワザワザワッ!!

セキレイはついに全身を変身させた。
さすがにこの数では本気を出さなければ勝てないからである

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最終的にハイブリットした3つの遺伝子の微調整を行う。

″鎧虫″や″侵略虫″は分かりやすくいえば
チョウの″鎧人″マリーの口器が右腕から生えているように
遺伝子の選択的発現能力を持っている。
(ハチの針が本当に尻から生えたら強いか?という話)
本来変身する形をさらに弄ることで戦闘に特化したものにしようとする能力である。

この調整を行っておかないと、器官が欠如したものや本来いらない肢が生えているなど
バランスの崩れた不定形生物になってしまうからである。

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 ドォォォォンッ! バシュゥゥーーーッ! ドガガガガガガガガガガッ!

爆弾やロケットランチャー、サブマシンガンまで用意されており
セキレイは奴らに近づきようがなかった。

「ゴホゴホッ、テメェら、機械のクセに進化した人類なめんじゃねぇぞッ!!」

しかし、セキレイは諦めなかった。

それは彼の鳥の能力によるものだろうか?
黒い羽毛、青く染まった髪、太く発達した両の手足、獲物を引き裂く鉤爪。

否、鳥の能力ではない。

それはセキレイ自身の意志の力。彼の“自由”を求める心がそうさせているのだ。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

そんな大規模な手術など出来るわけがないと誰もが博士をあざ笑った。
しかし、博士はセキレイの手術を成功させてしまったのである。

そんな博士がセキレイに与えた鳥の能力は″火食鳥《ヒクイドリ》″
鳥類最強の脚力と獰猛さを持った危険生物である。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 ドサッ!

「はぁ、はぁ、はぁ‥‥‥‥少し疲れたな」 

セキレイはついに、ここに来ていた全マシンを破壊してしまった。

「まさか″能力″を使う羽目になるとは‥‥‥‥‥‥博士はあなどれねぇな」

鉄クズになったマシンの上に座りやや休憩をしていたが、すぐに立ち上がり
このフロアの出口へと走り出した。



    **********



「セキレイお兄ちゃん!!」

ハトが突然、曲がり角から飛び出してきた。

「うおッ!?」

 ドンッ!!

さすがにスピードを出しすぎていたため急ブレーキが効かず
二人は衝突してしまった。
そして、その勢いで二人は後ろに倒れこんだ。

「いたたた‥‥‥‥‥‥‥」
「すまねぇ、大丈夫だったか?」

セキレイはすぐに立ち上がりハトに駆け寄った。

「わ、私は大丈夫‥‥‥‥‥」

頭を押さえながら立ち上がるハトを見て、セキレイはつぶやいた。

「つぅか、前よりさらにに大きくなったな‥‥‥‥‥‥」

彼女の身長は目測6m強にまで伸びていた。
数年前より、体つきも女の子らしくなっていた。

「これは成長期だから‥‥‥‥‥ってそんな話じゃなくて!!
 セキレイお兄ちゃん外に行っちゃうって本当?行ったら私いやだよ!
 お兄ちゃんともっとお話ししたいんだもん!!」

ハトはセキレイをギュッと力強く抱きしめた。
だが、彼は勝手ながらもう一つ決めていたことがあった。

「お前も一緒に来るんだよ」
「‥‥‥‥‥‥えっ、私も?」

ハトはそれを聞いて少し焦っていた。
だが、同時にその言葉を期待していたのか、ぱあっと笑顔になった。

「ホントに!?行きたい行きたい!!」

ハトは軽く跳びはねた。だが、地面がグラグラと大きく揺れていた。

「おわっ、ちょ、落ち着けって!まずはここを抜ける算段を立てないと――――――――」
「いたぞーーーッ!!」

セキレイとハトの元に増援が現れた。
その中の一人の男は無線を取り出して連絡をした。

「博士、被験体NO.987とNO.995を発見。拘束しますか?」
〖いや、殺していいよ。二人はもう用済みだ〗
「Yes,sir」

その部隊の隊長が全員に銃を構えるように命令した。
全員は何の躊躇もなく銃口を彼女とセキレイに向けた。

「‥‥‥‥チッ、どこまでクソなんだあの博士は」

セキレイは本気で怒っていた。それはもちろん
射殺を命じた博士や何の躊躇のない部隊に対するものでもあるがそれと同時に―――――――

「女の子に銃向けてんじゃねぇよッ!!!!」

初めて得た大切なものを傷つけようとする奴らへの怒りでもあった。

「ハトッ!向こうに隠れろッ!!」

彼女は急いで曲がり角の向こうに隠れた。

「全員、掃射ッ!!」

 ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドッッ!!

隊員は持っていたマシンガンをセキレイに向けて連射した。

 ドシャッ!

セキレイは音を立てて床に倒れこんだ。

「セキレイお兄ちゃんッ!」

ハトは倒れたセキレイに向かって叫んだ。

「無駄だハト。彼はもう死んだんだからな」

隊長は黒人でサングラスでいかにも悪い印象を見せていた。
しかし、彼女は前からこの男と話したことがあるので
彼がどのような男か理解していた。それ故に彼女は信じられなかった。

「おじさんのバカ!お兄ちゃんを殺しちゃうなんてひどいッ!!」

彼女は曲がり角からわずかに顔を出して叫んだ。

「残念だがな、俺達はそういう仕事なんだよ。命令されたら従うっていうな」
「へぇ、じゃあ死ねって言われたら死ぬのか?」
「!!?」

隊員は目の前の光景に目を見開いた。
マシンガンを全弾もろに浴びたはずのセキレイが平然と立ち上がったからである。

「お前ら博士からおれの能力聞いてないのか?」

セキレイの全身は黒い金属体に変身していた。

「お前らも所詮あのクソ博士の使い捨ての駒なんだよ」

それを聞いた隊員たちは激怒した。

「貴様!!戦国博士が俺達を使い捨てにするはずが――――――」
「お前らはおれ達とは違うってのか?」
「‥‥‥‥‥‥‥‥ッッ」

途端に隊員たちは一言も発せなかった。

「分かったみたいだな。あの博士にとって自分以外はただの使い捨ての道具なのさ。
 それ以外の何でもない。いらなければ捨てる。それだけさ」

隊長もそれに関してはわかっていたらしく目を閉じてうなずいていた。

「それでも俺はミッションを遂行する‥‥‥‥‥そういう仕事だからな」

しかし、それでも彼は信念を曲げることはなかった。

「おれもやらなきゃいけねぇんだ」

セキレイは少し腰を落として構えた。

「″自由″の為にな」

二人はお互いの信念を貫いていた。


「だが、あんたはここで死ぬ男じゃねぇッ!!」

 フワッ!

「隊長ッ!急に体が軽くなっています!」
「ど、どういうことだこれは!?」

突然、全員の身体が宙にフワフワと浮き始めた。
隊員たちは予想外の出来事に慌てふためいていた。

「うわぁ~っ、これがお兄ちゃんの能力なの?」

ハトの大きな身体もフワフワと宙に浮かび上がっていた。

「あぁ、おれのもう一つの″超技術″だ」
「″おーばーすきる″?」

彼女は博士にほとんどの事を教えられていないので、この事も知らないのだろう。

「そんな事より早く逃げるぞ。お前は的がデカいから
 次に狙われたらさすがに守りきれねぇからな」

セキレイはこのような動きにくい状態に慣れているので
平然とハトの身体を持って、向こうの部屋へと逃げて行った。

 ドサドサッ 

「うおあッ!?」

全員は硬い床に不自然な体勢で落下した。
隊長はすぐに立ち上がり、あたりを見回したがすでに二人の姿はなかった。

「‥‥‥‥‥‥能力にはある程度の範囲があるようだな」

隊長はサングラスをかけなおしながらつぶやいた。



    **********



「ふーーーッ、ここまで来れば大丈夫だろ」

セキレイとハトは物置部屋に逃げ込んでいた。

「外は私たちを探してるみたいだね」

頑丈そうな扉の向こうでは騒ぎ声がこちらに聞こえるほど響いていた。

「そりゃそうだ。オレがマシンを全部ブッ壊したからな。
 ‥‥‥‥‥修理代でも請求されるのか?」
「怒られると思うよ」

そんな感じで普通に会話をしていると
セキレイはハトの前との違いに気付いた。

「そういえばハト、お前何で片目つぶったままなんだ?」

ハトはサッとつぶったままの左目を手で隠した。
何か言いたくない理由でもあるのだろうか?

「えっとね‥‥‥‥あのね‥‥‥こっちの目はね‥‥‥‥‥‥‥‥‥ないの」
「‥‥‥‥‥‥‥はぁッ!?」

セキレイは声を上げた。

「博士が私の目、手術でとっちゃったの」

そんな事を言いながら、ハトはあんまり悲しそうな顔をしていない。

「お前そんなことされたのに大丈夫なのかよ?」

セキレイはハトに訊いた。

「だって、セキレイお兄ちゃんに会えたから」

セキレイはそれを聞いて呆然とした。

「私ね、目の手術を受けた後、怖くなってお部屋から逃げ出したの。
 そしたら、セキレイお兄ちゃんと曲がり角でぶつかったの。
 ずーーーーっと会えなかったセキレイお兄ちゃんに会えたから
 私、とっても嬉しかったの!だからもういいの!」

ハトは必死に自分の考えを語った。
セキレイはまだ呆然としていた。そして、少し笑った。

「‥‥‥‥‥ハハッ‥‥‥‥‥‥お前は優しいヤツだな」
「そうかな?フフフフフ」

二人は笑顔で小さな声でしばらく笑い続けた。

「さすがに疲れたからおれはここで少し休ませてもらうぜ」

セキレイは床に寝転んだ。

「あ、だったら‥‥‥‥」
「ん?お、おい‥‥‥‥‥」

ハトはセキレイをゆっくりと抱き込んだ。

「これでどう?あったかい?」

セキレイはハトのお腹の上に乗せられていた。

「こりゃあいいや。前のベットは固いし冷たかったからな。
 あったかくて、すぐ寝れそうだ」

彼はこの状況はまんざらでもないようだ。

「ハト、お前はここを出てなんかしたいことあるのか?」

ハトは少し考えた。そして答えた。

「ここの外の森ってところでセキレイお兄ちゃんと一緒にお昼寝する♪」
「前の図鑑で見たあの緑が沢山あるところか、気持ち良さそうだな」

セキレイはゆっくりと腕を上げた。

「約束な」

セキレイは小指を立てた。

「うん、約束♪」

ハトも小指を立てた。

「そんじゃ、おやすみ‥‥‥‥」
「おやすみなさい‥‥‥‥‥」

二人はそのまま眠りの世界へと向かっていった。 
 

 
後書き
巨人系女子のハトちゃんがまた出て来ました!
彼女はしかも隻眼です!なんてヒドイ博士なのでしょうか。
ハトの目を奪った理由は後々分かります。

ちなみに彼女は今年で13歳です。しかし、閉ざされた世界の中での
生活だったので心は幼いままです。
というか、追われてんのに寝てて大丈夫なのか!?

次の話ではある男が活躍します!(下ネタバレ注意?)

次回 第03話 中年のヒゲ お楽しみに! 
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