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リリカルな世界に『パッチ』を突っ込んでみた

作者:芳奈
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第七話

 
前書き
今回はいつも以上に短いかも?
今年中に出すために、急いで書き上げました。まったく物語進んでないですけど。次あたりは最初の事件の話にする予定。

 それと、私は基本的に書くのが遅いです。それと、メインで進めるのはカンピオーネなので、こっちは結構遅くなります、ご了承ください 

 
(うーん・・・)

 朝食中。手の中の陶器製のカップを見ながら、葵は小さく唸った。

(・・・やっぱり、力加減は完璧だな。流石パッチ)

 例えば、誰かが腕を怪我して切断せざるを得なくなり、その代わりに義手をつけたとしよう。その誰かは、カップを割らずに持つことが出来るだろうか?

 答えは否である。

 力を強く入れすぎて割ってしまうかもしれない。もしくは、力を抜きすぎて落としてしまうかも知れない。

 今まで合った物から変わってしまえば、それに対する習熟期間が必要だ。それがリハビリである。

 しかし、パッチは違う。

 原作で、主人公の不知火も言っていた。

 『ちょっと力を入れれば殺すことは出来る。だが、手加減して怪我させない事も出来る(・・・・・・・・・・・・・・)』と。

 パッチとは、刹那の間に進化を完了させる力であり、同時に、その刹那の間に、本来長い長い時間をかけて行うハズの習熟を、体に叩き込む力も持っている。進化したその瞬間には、力の使い方を完璧に理解している。力に振り回されることなく、その力を十全に使い切る事が出来る。

(・・・パッチか・・・。すげえよな。この世界の火星にはないのかな。・・・まあ、合ったら合ったで戦争の原因になりそうだけどさ)

 人や動物を進化させる力だけではない。何せ、環境調整パッチと呼ばれる巨大なパッチさえあれば、一つの都市分の水や電気、ガスなども生み出す(・・・・)事が出来る。無から有を生み出すという人類の夢が、現実のものになる。

(・・・ダメだな。間違いなく戦争の原因になるわ。第三次大戦が俺のせいで勃発とか洒落にならん。いつも以上にウッカリには気を付けないと・・・)

 自分が知らぬ間にかなりのミスを犯す性格であることを理解している彼は、絶対にこの力は政府とかにバレないようにしないと・・・と決意を新たにして、カップに入ったコーンスープを飲み干した。

「行ってきまーす。」

「はい、行ってらっしゃい。」

「気をつけてな。」

 両親の言葉を背に受け、寝不足で重い頭を振りながら、彼は家を出た。





(・・・あっちゃ~・・・)

 授業中。葵は頭を抱えていた。別に勉強が分からない訳ではない。これでも、前世では高校生だったわけで,小学生の勉強程度で躓くわけもない。それに、記憶を取り戻すまえの伏見葵としても、かなりよく勉強していたのだ。前世の小学生の時よりも授業内容が進んでいる気はしたが、それも誤差のようなものであった。

 彼の隣の席には、なのはが座っている。・・・そのなのはは、先ほどから机に突っ伏してグッスリと眠っていた。今は教師が説明に夢中になっていて気がついていないが、それも時間の問題だろう。教壇というのは、意外と教室の隅々まで見渡せるものだ。端っこの席で携帯を弄ったりすると、案外簡単にバレるものなのである。

 それに、教師にはバレていなくても、彼女の後ろの席の子供たちにはバレている。普段、授業態度がしっかりしている彼女だけに、この居眠りは非常に目立つ。

 現に、アリサやすずかも驚いた顔をしているし、同時に葵の背中には、アリサとすずかを含む、多数の強い視線が突き刺さっていた。

 ―――曰く、早く起こせよ!―――と。

(・・・くっそ、簡単に言ってくれるぜ・・・)

 昨夜―――というより、既に今日の早朝だったのだが―――その時間まで、葵と高町家の話し合いは続いていたのだ。葵の体調の事を考えた高町家の面々は翌日に話し合おうとも言ってくれた。しかし、その時点で既に登校時刻まで4時間もなく、今更寝ても仕方がないし、地球の未来がかかっている話し合いだから大事な部分だけはさっさと決めておきたかった葵は、彼の両親が起床するギリギリまで打ち合わせを続けていたのだ。

 なのはは士郎や桃子が部屋に行って休みなさいと言われて渋々行ったが、原作よりも命の危険があったあの戦いで興奮して、なかなか寝付けなかったようだ。おまけに、リビングでは他の家族と、彼女の親友である葵が、地球の未来をかけた話し合いをしているのである。気になって当然だ。

 葵は前世で徹夜など腐るほど経験している。まだまだ成長期である体は睡眠を欲してはいたが、それも意思の力で押さえつける事が出来る。が、彼女には辛いだろう。

 実際、朝見た彼女の顔には、強い疲労感が漂っていた。

(可哀想だけど・・・怒られるよりはマシだと思ってくれ)

 事情を知っている彼としてはこのまま寝かせてやりたいが、そうもいかない。怒られるのはなのはなのだ。彼女のために、心を鬼にして起こすことに決めた葵は、そ~っと手を伸ばし、彼女の肩を叩いた。

「なのは、起き―――

「うひゃあ!?」

  その刺激に驚いた彼女は、文字通り飛び上がった。その叫び声は当然教室中に響き、教師が訝しげにコチラを見る。なのはは顔を赤くし、葵は乾いた笑いを溢し、そして周囲の生徒は、顔に手を当ててため息を吐く。

「・・・何か弁明は?」

「俺がやりました。」

 まるで犯罪者のような台詞を吐き、彼はなのはを庇ったのだった。 
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