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Fate/EXTRA〜もう一人のアーサー王〜

作者:Nelfe
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考えの模索

 
前書き

どうもお久しぶりです!
なかなか更新できなくて面目ないです……w
予定とかが合わないのもありますけど、第一に時間が足りない……
はい言い訳ですね、では続きをどうぞ!
 

 

時刻は6時。夕飯を済ませ、俺とセイバーは今アリーナにいた。決戦のためのトリガーは既に入手し、あとはセイバーの経験値稼ぎだ。

最初は不安でいっぱいだったこの階層も何度も来たせいか、若干だが心に余裕が持てる。この先の戦いも何とかこの調子でいけると良いのだが…。

「さて、やらせてもらうぞ!」

セイバーがそう言い、剣を構える。彼女のそんな後ろ姿を見ると本当に心強い。数あるエネミーをなぎ払い、慎二のライダーを倒す一歩手前のところまで追い詰めた彼女ならこの聖杯戦争、簡単にいけるかもしれない。いつもと変わらないセイバーの背中を見ながら、おう!と返事をした。




あれから10分後。セイバーは通路に湧いて出るエネミーを一振りするだけでなぎ払っていく。これだけで大体の敵は消滅し、経験値又はアイテムを残していく。

これを何度も出会い頭に行っていてエネミーをどんどん潰していく。これで経験値なんて稼げるのか…。 それに戦いが一方的過ぎて、勝負になっていない。というより、見た感じからすると単なる狩りだ。

少しだけエネミーに同情する。

それにしても10分の間ずっと動き回っていたセイバーのスタミナが少し心配だ。いくらサーヴァントといっても体調は管理しておいた方が良い。そう思いながら、セイバーに声をかける。

「少し休憩するか?セイバー」

「いいや、まだだ。まだいける!」

メラメラと燃え上がる闘志を見せる。ああ、完全にスイッチが入ってる。これなら休憩はまだいらなそうだな。

「やる気あるのは良いけどあまり無理すんなよ。それで怪我されたら元も子もないからさ」

「……ああ」

「……?」

気のせいだろうか、さっきまで元気が有り余っていたセイバーが一瞬だが暗くなったように感じた。

「よし、では次に進むぞ!」

だが、そんな事を考える暇もなくセイバーはいつもの元気で言いつつ、次のエネミーへと足早に歩いていった。

「ちょっ、待ってくれよ!」

慌てて俺も追いかける。どうやら俺の気のせいだったようだ。いつもと変わらないセイバーの態度に呆れつつも少し安心した。


それからセイバーはエネミーを倒しては次のエリアに行き、またエネミーを倒す。それをずっと繰り返して、いよいよ最後のエリアだ。ここのエネミーを倒せばこのアリーナの敵は全滅する。

「いよいよここで最後か」

「ああ、そうだね。とりあえずここを狩ったら引き返そう。これ以上いる意味がないからな」

「少し物足りなさもあるが仕方ない」

少し不満気に言うが特に反対するようでもないようだ。

その時、奥の闇からエネミーがふわふわと宙を浮いてやってきた。そんな不可解な動きをしながらこちらの方へとある程度まで近づくと動きを止めた。

どうやら俺たちに気付いたらしい。即座にエネミーは臨戦態勢に入ろうとした。が、その時は既に遅かった。セイバーはそのエネミーより早く動いていた。

バッ!とセイバーは勢い良く走り出す。そして、その勢いのまま横の壁をまるで重力でも感じないかのように上る。エネミーへと距離を詰ると、セイバーは自分の体を敵の方へと跳ね上げる。

エネミーより高く舞ったセイバーは、体をプロペラのように回転させ、真下に漂っているエネミーに剣を突き刺した。

剣はエネミーを貫いたまま床へと突き刺さる。その剣の柄の上にセイバーは器用に着地した。


相変わらず凄い戦い方だ。あんな動き普通の人間では到底真似できない。セイバーのあの動きに余韻に浸っている時だった。

「右から来るぞマスター!!」

「ッ!?」

セイバーの声に反射的に右を見た。そこには通路から俺へと攻撃を仕掛けるもう一体のエネミー。もう攻撃は数センチの所まで近づいていて、避けることなんてできない。

完璧に油断していた。何度も来ていたという慣れで、自分の周りの警戒を怠っていた。失敗だった。もうダメだ。頭の中でマイナスな言葉が巡り巡る中、今までの思い出がフラッシュバックになって蘇る。

(ああ……これが走馬灯か…)


自分の死を覚悟した時だった。


迫り来る敵の姿が1人の騎士によってその影と形を消されている所だった。





セイバーが気付いた時には敵は白羽を攻撃していた。剣を抜いている暇もなく、手ぶらの状態でギリギリ間に合うかどうかのタイミングだ。セイバーは突き刺さる剣を踏み台にし、敵エネミーの元へと加速する。


セイバーは手を伸ばす。それが故障を抱えている左手であっても…相手を確実に倒す為に魔力を込めた。


ドォン!

セイバーの伸ばした手はエネミーを貫き、そのまま壁へとめり込んだ。

「ッ!!」

瞬間、左の手首から激痛が走った。直に電流を腕に流されたように痛みが流れ、騎士と言えどもキツイものだった。セイバーは腕をゆっくりと壁から引き抜き、マスターの安否を確認する。

「マスター、無事か?」

「あ、ああ。助かったよセイバー」

ペタン、と座り込むマスターから無事だと聞いて安心するセイバーだったが、ふつふつと怒りが込み上げてきた。

「周りを徹底的に警戒しないでなにがマスターだ!」

「セイバー……?」

セイバーは主の方へと向かうと彼の胸ぐらを掴み上げ、自分のところへと引き寄せた。

「これは聖杯戦争だ!生き残りをかけた戦いだ!お前がこの戦いをどう思おうが勝手だがそれを他の誰かに巻き込むというならオレはお前を殺す!そんな奴はオレのマスターではない!」

「……ごめん」


セイバーは彼の胸ぐらを離すと、自分の剣を取りに行った。







俺はこの聖杯戦争を舐めていた。サーヴァントであるセイバーが襲われることはあっても俺は襲われないと心のどこかで思っていた。しかし、現実は違う。

これはサーヴァントと共にマスターを試している。ここで死ぬようなら聖杯を手にする資格はないとでも言うかのように。

セイバーの言う通り今までの甘っちょろい考えは棄てよう。とにかく、周りに迷惑をかけたくない。

俺はそう心に誓いながら立ち上がった。そして、剣を引き抜くセイバーへと視線を移す。セイバーには申し訳ないことをした。自分のせいで色々と苦労をかけて…。

俺はセイバーの元へと歩いて行き、伝えるべきことを伝える。

「本当にごめんなセイバー……」

「………」

背を向けたまま、セイバーは答えない。

「俺……甘かったよ。セイバーが戦うことが当たり前で自分は関係ないと思ってた。だけど、それは間違いだって気付いた。俺も戦うよ。セイバーだけで戦わせないから……だから!」

ガシャン

「セイバー!?」

セイバーが倒れた。急いで彼女の体を抱き起こし、必死に名前を呼ぶがセイバーから返事はない。兜の中から苦しそうな息つがいが聞こえてくる。

「大丈夫かよセイバー!セイバー!!セイバァァァァァァ!!」














俺は一人席に座り、目の前のベッドで横になっているセイバーを見つめる。彼女がこうなったのは俺のせいだ。彼女の足を引っ張ったせいで今セイバーは寝込んでしまっている。

「セイバーさんのお加減はどうですか?」

俺の後ろから桜が声をかけてきた。

「ああ、さっきよりは良くなった。ありがとな、桜」

セイバーがこの保健室に運び込まれた直後、彼女は酷い汗をかいていた。左手首を見ると真っ赤に腫れ上がり、触ることさえ躊躇うくらいだった。

だが、今はセイバーから汗は引いていき、顔色が少しだけ良くなって見えた。しかし、左手首の腫れは一向に引かない。もしかしたら骨にヒビか折れているのではないかと不安になる。


「いいえ、当然のことをしたまでです」

笑顔で答える桜に心からホッとする。だが完全に安心しきってはいけない。セイバーの怪我の状態を把握しない限りは本当に安心できない。

「なぁ、セイバーの怪我ってどうなんだ?」

すると、桜の表情が曇った。なんでそんな深刻そうな表情するんだよ……何とか言ってくれよ…。心にあった安心感は急に何処かへと消え、とてつもない不安感に襲われた。

桜は重苦しい表情で落ち着いて聞いてください、と俺に念を押す。




「セイバーさんはまともに戦うことはできません」


「えっ?」

今桜はなんと言ったんだ?セイバーが戦えない?まさか、そんな……。

「ショックなのは分かりますが、気を落ち着かせてください」

「……ッ」

言いようのない絶望感と後悔の念に襲われる。もしこれが夢だと言うのなら早く覚めてくれ…。時間が巻き戻るなら巻き戻してくれ!

気付いた時には俺の目から涙が溢れていた。


「何を……泣いている……マスター!貴様は……この程度で動じる……のか!」

「セイバー……!」

まだ安静にしなくてはいけない体を起こすセイバー。いつもならここで恐怖しているのに今は全然恐くない。むしろ痛々しくて見ていられなかった。

「ダメですよセイバーさん!安静にしててください!」

慌てて桜がセイバーを寝かせる。

「マスター……諦めたら……承知…し……な……い」

セイバーのまぶたがゆっくりと降りていき、意識が遠のいていった。セイバーが完全に眠りに落ちたのを確認すると、桜は言いにくそうに口を開いた。

「セイバーさんが戦えないのは手首の腫れもあるんですが、他に原因があるんです……」

「……えっ?」

手首のあの怪我が大元ではないのか?じゃあ何が原因なんだ?


「セイバーさんと白羽さんを繋ぐ魔力が極端に少ないんです」

「 ……」

マスターとサーヴァントは魔力で繋がっている。マスターからサーヴァントへと魔力は供給されるのだがその量でサーヴァントの力量が左右される。俺とセイバーの場合はその繋ぐ魔力が少ないということ。つまりセイバーは最初から本調子で戦えなかったのだ。

つまりはこの原因も俺のせいだ。自分の力不足が本当に恨めしい。膝の上に
置いてあった握り拳に力が入る。

「普通ならここでしばらく安静にしていてもらうのですが、今は聖杯戦争中。こんな事は言いたくはないんですが……」

ここで桜は言葉を濁らせた。桜は俯き、表情を暗くする。彼女がこの先何を言おうとしているのはなんとなくだが察した。

彼女が言おうとしていた辺りは大体こんなものだろう。

ーーー怪我であっても決戦には出てもらう。

こんなこと俺でも言いたくない。

「いや、いいよ桜。何が言いたいかは分かった」

「……すみません」

桜が訳もなく謝る。

「桜は悪くないむしろ礼を言うよ。ありがとう」





夜、セイバーを保健室に預け、俺は一自分の人部屋に戻っていた。今日だけで色々な事が起きた。慎二のサーヴァントのことやセイバーの怪我のこと。問題が重なり、パンクしそうだ。

疲れに悲鳴を上げる体を引きずりながらベッドへと倒れこむ。

(これからどうする?セイバーは左手首を怪我してて、魔力もうまく供給されてない状態だ。そんな状態でどうやって戦う…?)

布団をギュッと握った。

(俺に何かできるのか?)

そんな疑問が頭の中に浮かぶが、当然そんなことはすぐに思いつかない。しばらく時間が経った時だった。色々と思考を繰り返す内に睡魔に襲われた。

(何か方法が……あ……る……?)

眠気の波に呑まれ、俺は静かに落ちていった。



 
 

 
後書き

最近ますます冷え込んできましたねぇ…。
そのせいか、自分のベッドがコタツに変わってきています。
たぶん自分の他にもそういう人がいるはず!

ただそれが言いたかっただけです。 
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