Fate/EXTRA〜もう一人のアーサー王〜
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情報収集
前書き
最近寒い日が続きますねぇ…。
自分手足が冷え性なんでいつもコタツでぬくぬくしてます。
おかげでよく寝落ちしたりしてます。そのせいか最近喉が痛くて、声が出しずらいですw
皆さんも体調管理にはお気をつけて。
翌日。俺、白羽 優は穏やかな眠りの中にいた。ちょうど良い静けさやちょうど良い布団の温もり、誰もが起きようとは思わない環境だ。
こんな日にはずっとゴロゴロしているのが一番だ。
更に深い眠りにつこうとした時だった。
「起きろ、マスター」
ドン!と鈍い音を立てながらベッドから蹴落とされた。その際、俺はゴツンと頭を強く打ち付けた。
「いってぇ……」
頭を摩りながらだるい体を起こし、視線を後ろに立っている人物へと向けた。この時、いくら相手がセイバーだからといって人の起こし方ぐらいはちゃんとしろ、と文句を言ってやろうと思っていたのだが…。
「貴様……今何時だと思っている?」
ゴゴゴ、と効果音が聞こえてきそうな程にセイバーの雰囲気はヤバかった。腰に手を当て、眉間にシワを寄せる彼女はぐいぐいとこちらに歩みを進めて来る。
「あぁ……12時……だね……」
体をセイバーから離れるように後ろへと下がりながら、時間を確認すると既に昼を廻っていた。確かにこれは大変な寝坊だ……しかし、弁護させてもらいたい。人のせいにするようで悪いが、この時間まで寝かせていたセイバーも悪いと思う!
声をかけてくれさえくれれば俺だってちゃんと起きるのに…。それに、散々時間を消費しただけではなく、ましてやマスターにあんな起こし方をしてはたまったもんじゃない。少しはあっちにも非があるのだ。
俺はそう言ってやろうと口を開けかけた時だった。
「なぜ起こしてくれなかったかなんて簡単に言えると思うなよ」
なぜ分かった……。
「オレは散々起こしたぞ…もうウンザリする程に……朝の7時から12時までずっとだぞ!だがお前はまるでオレの声が届いていない。だから最終的にああいう起こし方になったのだ。それでもオレに何か非があるというのか?」
説明しながらセイバーはぐいぐいと迫り、やがては俺の逃げ場はなくなっていた。
「ない、です」
セイバーの話を聞く限り、どう考えても俺が悪い。と言うか、よくこの時間帯まで普通に起こそうとしてくれたな。大概の人は何度か起こした後、諦めるかキレて強行手段をとるのだが、すぐにそれを行わなかったセイバーは案外優しい奴だな、とそう実感できた。
俺の言葉を聞くと、若干不機嫌だがセイバーはこれ以上の追求はしなくなった。
「ごめんな…セイバー」
「別にもう気にしてはいない。お前もそこまでにしておけ」
セイバーは俺から離れ、背筋を伸ばすとこう言った。
「では飯だ。おい、マスター何してる。早く支度しろ」
「おう!」
セイバーの優しさに感謝しながら、俺は身支度する。その時、ふとセイバーが一言こう漏らした。
「今度寝坊したら、本当に眠らせてやる」
背筋に寒気が走った。全然怒ってるじゃん!と突っ込みたくなる気持ちと共にもう二度と寝坊はしないと決意した。
しばらく時間が経ち、俺とセイバーは廊下を歩いていた。目的は図書館で相手サーヴァントの情報収集。慎二が使役しているサーヴァントが本当に英霊なら本に載っている可能性が高いはずだ。
なら本が多く集まる図書館ならと思ったのだが、向かう途中に問題が発生した。
図書館の前に慎二と誰かが話していたのだ。最初は慎二の仲間かと思ったがお互いがいい表情をしていないところを見ると敵同士だということが分かった。
慎二と話しているのは俺とそんなに変わらないくらいの女子だった。赤をモチーフとした服装に短い黒のスカート。左右に結ばれたツインテールがゆらゆらと揺らしながら、慎二の言葉を涼しげな表情で会話している。
「大体なぁ!僕はお前のその態度が気に入らないんだよねぇ!いつも気取っちゃって何でも出来ますよってアピールしてるのが気に食わない!」
「あら、気に障ったかしら?アジアゲームチャンプの間桐 慎二君?」
ここで女子は皮肉たっぷりの笑みを浮かべて慎二に振りまく。その対応にイラッときたのか慎二は女子に人差し指を突き出してこう言う。
「はん、今の内に大口を叩いておけよ!お前なんか僕のライダーがいれば簡単に潰せるんだよね!何しろライダーのあの艦隊がーーー」
「そんなに情報を流しちゃって良いのかしら?」
女子の言葉にハッと自分が何をしようとしていたのか気付いた慎二。
「は、ハンデだよハンデ!何も知らない状態で僕と戦うのは辛いだろ?だからもっといい勝負にしたくてさ、あえて不利な状況を作ったんだよ!それに艦隊っていうワードだけでどこの英霊かなんて正確に分かるわけがない!」
「なるほどね、『ライダーのクラスで艦隊を使う』。考えるなら船とかに乗って遠距離からの攻撃とか船諸共突っ込むとか……かしら?となると、対策は近距離に持ち込んだ戦闘の方がベストね」
女子がブツブツそう言い出すと慎二の顔はどんどん真っ青になっていった。見てるこっちからしてみれば慎二にいい気味だと言ってやりたいところだが、そろそろ言うの止めてあげないと彼が倒れそうで心配だ。
「まっ、精々気をつけなさいよ」
良い笑みで慎二の肩をポンと叩くと後ろを向いた。慎二からしてみれば最大の屈辱だ。自分をとことんバカにした挙句、プライドをズタズタにされたのだ。
顔を真っ赤にし、体を震わせてこう言う。
「う、うるさい!絶対恥かかせてやるからな!」
慎二はそう言うと、女子を追い越して走る。慎二が走っていく方向にちょうど俺がいた。慎二は俺を見つけると、一瞬だけ立ち止まった。鋭い視線をこちらに向けると、再び走り去ってしまった。
慎二が走り去った後、さっき慎二と話していた女子がこっちに歩み寄ってきた。黒い髪のツインテール、赤を主にした服に黒の短いスカート。他の学生とはまた違う服装でとても目立っている。
第一印象がとにかく派手としか言いようがなかった。
「あなたが慎二の対戦相手?」
女子は愛想の良い笑みを浮かべながら俺に話しかけた。何の目的がなのかは分からないが、とりあえず頷いてみる。
俺が頷くと、女子はへーと言いながら俺の体をまじまじと見る。いくら女子とはいえ、こんなに舐めるように見られると落ち着かない。と言うより気になって仕方ない。
「な、何?」
質問しても、彼女は無視し黙って俺の体を見ている。あまり自分の体を見られているというのはあまり良い気がしない。何か一言ぐらい言ってくれればまだマシな方なんだが…。
少し愚痴を心の中で零し始めた時、女の子はやっと口を開き始めた。
「思ったより普通ね」
「……」
それは彼女の呟きなのかそれとも俺への当てつけなのか、彼女はそう言うと俺の体から顔へと視線を移した。
「顔も平凡……あなた、本当にイレギュラーで参加した魔術師?」
「……」
言葉にトゲがある言い方ではあるが彼女の言う言葉には心当たりがあった。イレギュラーで参加した、以前にも言峰神父が言っていた。俺がイレギュラーでこの聖杯戦争に参加したと。それをこの女の子が知ってるていうことは意外と俺のことが有名になっているのか…。
いや、下手なことは考えない方が良い。とりあえず女の子の質問に答えなくては。
「そ、そうだ」
俺の答えにやや納得してなさそうな表情をしているが、そう…と言った。少し間が空くが、気分を入れ替えるようにフッと笑みを作った。
「いきなり変なこと聞いちゃってごめんなさい。私、遠坂 凛(とおさか りん)よ」
遠坂っていう女の子はそう言いながら握手を求めてきた。少し戸惑ったが彼女自身悪い人物ではないらしいし自己紹介されたならこっちも返すのが礼儀だ。
俺も彼女の手を握った。
「白羽 優。よろしくな、遠坂!」
「よろしくね。白羽君」
握手を交わした後、ふと俺は気になった事を口にした。
「そう言えばなんで俺が慎二の対戦相手だって分かったんだ?それに俺がなんでイレギュラーで参加した奴だって分かったんだ?」
「一辺に質問しないで。こんがらがっちゃうわ」
遠坂は腕を組んで、答えた。
「さっき慎二と話してる時あなたジッと慎二を見てたでしょ?こそこそと見つめるなんて大抵対戦相手かその人に恨みを持っている奴ぐらいでしょ。あなたのさっきの態度からしてそんな恨みを持つようなタイプじゃないし、対戦相手なら納得できる」
「だから俺が対戦相手だって分かったのか?」
ええ、と答えながら髪をなびかせる遠坂。じゃあ次の質問だ。
「なんで俺がイレギュラーで参加した奴だって分かったんだ?」
「白羽君、つい先日校舎内であなたのサーヴァントが他のサーヴァントを襲った時があったでしょ?」
「ああ」
確かにあった。なぜセイバーがレオのサーヴァントを襲ったのかは今に
なっても話してくれないが、まさかそれが原因なのか。
「その時野次馬のマスターから聞こえてきたのよ。襲いかかったサーヴァントのマスターはイレギュラーで参加したマスターだ、って。ちょうど白羽君の顔も遠くからだけど見えてたから、ああ、なるほどねっていう感じかしら」
ということは俺って本当に他のマスターからしたら有名人…。その瞬間、俺の体から血の気が引いてくのが分かった。もし、自分の情報が周りに渡ったらそれを利用されるかもしれない。
『案ずることはないマスター。たかが素性がバレただけだ。たったそれだけでは敵に付け込まれない』
俺の心を見透かしたようにセイバーが声を掛けてくる。励ましのつもりだろうが、一言言いたい。
(元々はお前のせいじゃねぇか!!)
「どうかしたの?」
俺の些細な様子の変化に遠坂が聞いてきた。
「いや、なんでもない」
俺の返答を聞くと、遠坂は少しの間沈黙した。特に何かこっちを疑っているような目でみているわけでもなく、ただポカンとした表情で見ていた。
しかし、それは少しの間だけだった。
「そっ、じゃあ私は行くわね」
遠坂はそう言うと、じゃあねと言い残し、階段の方へと歩いていった。
とりあえずここで突っ立ってはいられない。今はとにかく慎二のサーヴァントの情報を集めなくちゃいけない。
俺は図書館へと急いで歩みを進める。
セイバーはマスターの背中を見つめていた。自分の手首をしきりに気にしながら。
(……)
ライダーとの戦闘の後からずっと続く手首の違和感は消えない。それどころか、微かに鈍い痛みとなって悪化していた。もうただの傷じゃないことはセイバーでも分かった。
このまま放置して戦い続けたら手が使い物にならなくなるかもしれない。そんな可能性もあるのにセイバーは誰にも言うつもりはなかった。
ガリッと歯を軋ませ、白羽の後を追っていくのだった。
後書き
つい先日、これをもう少し早く投稿する予定でしたが色々なゴタゴタがあり、投稿するのを遅れました。
時間が欲しい……。
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